中華料理屋・口福
明倫は家の手伝いをしていたが、晴人の一件が気になり、覚束無いでいた。
(アタシに何か出来る事があるか分からないヨ。メモリアン……先生が言ってた行方不明と……)
「りん……明倫」
後ろからの声で明倫は振り向くと、そこには美凰が少し厳しい顔つきをしていた。
「ママ」
「仕事中に余計な考え事はダメ。メリハリをつける、それが李家のルールよ」
「ごめんなさい」
「うん。分かればよし!」
穏やかな顔つきになり、明倫の肩をポンっと叩いた。
「おーい!」
「はい!!」
客の呼び掛けに明倫が応じ、気持ちを切り替え仕事に取り組んだ。
―――*―――
営業も終わり、明倫達は遅い夕食に入ると席に座った。
「お腹ペコペコだヨ!」
「ふふふ、お疲れ様」
テーブルには
トマトと卵の炒め物
回鍋肉
海老のチリソース
棒棒鶏
中華スープ
が並ぶ。
「お疲れさん……今日も上手くいったかな?」
日本人で黒髪の男性は李家に婿養子として入った明倫の父親、李駿も席に着く。
「うむ!今日もそこそこの出来だな」
老いを感じさせない黒髭を蓄えた老人がそう言うも隣に立つ、白色の髪を1つの団子に縛った老婆はクスッと笑う
「おやおや、何時もお代わりするのは何処のどなたかしら?」
「
「相変わらず
「それはツンデレって言うんだヨ」
「お、お前達……」
娘と孫娘の言葉に英峰は照れ顔を見せるも、ゴホンとワザと咳をして神美と共に座った。
「それじゃ……いただきます」
家族一同は手を合わせ、駿と同じ言葉を言うと食事に取り掛かり。仕事の疲れを癒す。
「うむ。上手いな」
「素材の味を失っていない……」
「当たり前じゃない。私の旦那様だもの」
夫の料理を高く評価する両親に美凰は照れながらそう答える。
「美凰……」
その駿も照れ隠しにご飯をかき込んだ。
「……」
「明倫?」
何時もより箸が進んでない明倫に美凰が尋ねるが……。
「何でもないヨ。何時も美味しいのを作ってありがとうネ!パパ」
エビチリを皿に取り、食べる明倫。それを見て美凰も箸を進めた。
食事も終え、風呂に入った明倫は自室のベッドで寝て明日の事を考える。
(晴人の全てが分かる。それでもアタシは……)
明倫は瞼を閉じて眠りについた。自分の決意は変わらないそう思い……。
―――*―――
眠らない街とも呼ばれる繁華街。その1つの店にトウテツは入る。
「いらっしゃいませ。申し訳ないですが、男性の入店は……」
「待って。その人は俺と合う約束してるから」
「そ、そうでしたか!申し訳ございません」
受付の男が一度は断ろうとするも、金髪で色黒のホストが顔を出し、事情を説明すると後ろに下がる。
「【頼みます】その一言を言いに来ただけですので……お仕事頑張ってください」
トウテツはそのまま、店を後にした。
「何しに来たんですかね?あの人?」
「気にすんな。お前は自分の仕事に集中しな」
そう言い、色黒の男は自身を待つ客の方へ戻った
「ごめんね!待たせた分……ときめいちゃった?」
何時ものホストの顔を見せるが、内心では……。
(黒の執行隊としては俺が最初……他の奴らには悪いが青龍の首はオレが貰うぜ)
客の女性やヘルプのホストには見せられないどす黒い感情を隠していた。
「彼の実力なら何処まで行けますかねぇ……」
トウテツが考えていると電話が鳴る。
「はい……あ、はい!はい……わかりました。明日の9時に駅ですね」
急な仕事の用が入り、歩きながら対応するトウテツ。そのまま雑踏する方向に紛れ込んで消えていった。
―――*―――
翌日、明倫は晴人の家の前に立つと、チャイムを鳴らす。
「明倫さん……上がって」
「うん」
晴人に従い階段を昇る2人の間に沈黙がただあった。
(緊張するヨ……)
モンドの部屋につくと扉を開ける。その内装は明倫が考えていたものとはかなりかけ離れていた。
「僕はモンド・センヴィレッジ……明倫ちゃん?」
「す、スゴいヨ!こんな設備まるでアニメ見たいダ」
どことなく興奮している明倫。晴人は予想外な事に目が点になっていた。
「明倫さん。話があるんでしょ、聞かないと」
「そうだった。ごめんなさい、モンドさん」
晴人に言われ自身の目的を思い出した明倫はモンドに頭を下げると椅子に座る。
「僕は気にしてないよ。まずはメモリアンについてだね……」
モンドによる説明が始まる。
メモリアンが人間の記憶を狙っている事。
モンドが惑星ホープの生まれである事。
メモリアンには【バグ】と呼ばれる吸収された人間の記憶を維持したままの存在がある事。
その【バグ】の協力で惑星ホープの文明にも生かせれた四聖獣を参考に作ったシステムの事。
晴人がその内の青龍の適合者でセイリュードとして戦っている事。
朱雀の適合者の存在。
そして……。
「その適合者の1人が明倫ちゃん、君なんだよ」
「アタシが……」
明倫は親友の晴人の為に何か出来るか悩んでいた。それが一気に解決出来るのだから……だから、次に口にする言葉は決まっていた。
「分ったヨ……アタシも協力するヨ!」
意気込む明倫。だが、モンドの顔は若干だが険しくなるのに明倫は気づいていない。
「明倫ちゃん、君が戦いたい理由は何だい?」
「理由?それは晴人を……友達を助けたいからだヨ」
先程とは違うモンドの声のトーンに、明倫は萎縮していたが、モンドは話を続ける。
「その気持ちも大切だ。けれど、僕には言葉だけにしか聞こえなくもないんだ」
その言葉に明倫は下を向いて黙り込む。
「時間はかかるかもしれいけど、考えて欲しいんだ。この力の意味を」
モンドの言葉に明倫は顔を上げて立つ。
「モンドさん……アタシ探してみるヨ、晴人……その時まで頑張ってネ」
どこか物悲しい顔をする明倫は部屋を後にすると、晴人が口を開く。
「モンドさん……」
「少し厳しいと思うだろ?でも、彼女は白虎の適合者……答えは見つけられる筈だよ」
「見つけられるますよ。明倫さんならきっと」
「そうか……」
―――*―――
少し歩いた明倫は河原の階段に腰を下ろし黄昏れる。
(そうは言ったけど呆然としてるナ……でも、いつかきっと!)
「李さん?」
後ろから声をかけられる。聞いた声だ、立ち上がり振り返るとそこに居たのは……。
「龍也」
「どうしたの?」
買い物カゴを手にした龍也であった。明倫は先程の事を隠し、対応する。
「家の事だヨ。最近忙しくて……」
「今は良いの?お昼時になるのに」
「あっ……ママに頼んで少し休み貰ったんダ」
はにかんだ顔に龍也は目を逸らしてしまう。
春の終わりの風が河原に立つ2人に通る中、色黒のホスト風の男が現れる。
「いい雰囲気の所申し訳無いけど……君に話があるんだよ。黒髪ちゃん」
この男は人間では無いと感じる明倫は自分に迫る【死】に身体が動かないでいた。
だが、それを遮る者がいた……。
「やめろ!」
側にいた龍也のタックルで、ホスト風の男は少しぐらついてしまう。龍也はその隙に男の腕にしがみつく。
「逃げて!早く!」
「でも!龍也は!?」
「逃げろ!明倫ッ!」
「だが無意味だ……」
男は龍也がしがみついている腕を払うと壁に叩き付けられる。
「龍也!いやぁ!!」
明倫は恐怖で声をあげ、絶望の表情を浮かべていた。
「大声出さないで……大丈夫。加減してるから、だって俺達は人の記憶を吸うのが仕事だから」
男はチーターの怪人態、チーター・メモリアンになり、明倫の元へ近づく
「え?え?」
腕を前に出すと触手が明倫に突き刺さろうとした時、レーザーがチーター・メモリアンの身体に当たり火花をあげる。
「明倫さん!」
セイリューバー・銃モードを手にし、駆け付けたセイリュードが明倫を守るように立つ。
「来たか!セイリュード!」
湾曲した刀身の剣を持ち、駆け上がると真っ先にセイリュードを狙う。
「明倫さん、下がって」
セイリュードに言われ下がる明倫。
(アレが晴人……アタシ達を守ってくれたヒーロー)
チーター・メモリアンの攻撃を剣モードに変えて弾いていく。
「流石だね……だが!これはどうかな!」
腹部を狙う蹴りを繰り出すが、セイリュードは回避する。その隙をチーター・メモリアンは逃さないでいた。
「ヒャッハァァァァァァァ!」
高速でセイリュードを円で囲むように走るチーター・メモリアンは飛び出しては剣でセイリュードを攻撃する。
その攻撃は、徐々にセイリュードを追い詰めていく。
「グッ……倒して来た奴らとは違いがありすぎるッ!」
「当たり前……だろ!!」
回し蹴りを仕掛けるチーター・メモリアンに対し、剣モードで防ぐが隙を見せずに剣で斬りかかり直撃をくらう。
「まだまだ!」
ぐらつくセイリュードにダメ押しと言わんばかりに剣で斬り付け、外装に火花が上がる。
「晴人!」
「来たら駄目だ!明倫さん」
駆けつけようとする明倫を静止するが、チーター・メモリアンはそれを逃さずに膝蹴りをセイリュードの腹部に入れた。
「ガバァ……」
「おいおい、期待はずれか?」
チーター・メモリアンは頭を搔く素振りをして呆れていた。
―――*―――
「晴人くん!」
小型カメラで見ていたモンドが声を上げる。
「朱雀の持ち主がブレスレットなら感知出来るのだが……石では」
せめて、翔真がここにいれば……そんなもしもを語るモンド出会ったが直ぐに現実に戻る。
「ん?これは!白虎のブレスレットが!?」
光り出すブレスレット。その光は、あの日の晴人が青龍の適合者になった時と同じ光であった。
「この光……ならッ!」
ブレスレットを手に取り、モンドは勢い良く扉を開け、河原に向かう。
―――*―――
モンドが河原に向かう最中にもチーター・メモリアンの攻撃は止まることはなく、セイリュードはセイリューバーを杖にして立つのがやっとであった。
「ハッ!無様だな。青龍」
「晴人……どうして」
(何でそこまでして)
明倫が何故、晴人はそこまでして立ち上がるのか気掛かりであった。
「黙れ……たとえ無様でも……立たなきゃいけないんだ!お前達の様な奴らに未来を!明日を奪わない為にッ!」
「ッ!」
(晴人はそんな思いで戦っていたんダ……アタシはそんな事も知らずに、ただ……)
(アタシは友達には笑顔でいて欲しい。そんな明日を作りたい!)
「言いたい事はそれだけか……死ね」
剣を両手で持ったチーター・メモリアンはセイリュードの頭を狙い構えた。
「晴人!」
「間に合った……」
「モンドさん?」
息を切らしてここまで駆け付けたモンドは明倫にブレスレットを渡す。
「これは!?」
「君の気持ちに反応したんだ……その思いをこのブレスレットに!」
モンドのその言葉に明倫はブレスレットをつける。身体が熱く感じるものの、心は暖かくなる。そして……。
(この力があってもアタシは変わらない……大切な友達を、家族が笑顔でいられる事)
その思いが強くなる時、明倫は心からの言葉を口にする
「
球体状の白きオーラが明倫を覆うとその姿を表す。
白いボディにピンクのラインと四聖獣の一つ白虎をイメージした外装。虎の顔をモチーフとし目の色は黒でバイザーのマスク、ベルトには白虎のエンブレムがつけられた戦士がここに立つ。
「白虎魂心!ウォンフウ!!」
「ウォンフウ?確か、それはビャッカルの筈では……」
「えっと……アタシが思った事だから、それでいいんダ!」
俊敏な動きでウォンフウは戦場へと向かった。
「ハァァァ……ハッ!」
今にもトドメをさそうとするチーター・メモリアンに上段回し蹴りを浴びせる。
「甘いッ!」
だが、振り向きざまに剣で返されるが、ウォンフウは体勢を直してチーター・メモリアンと対峙する。
「明倫さん?」
「晴人……ここはアタシが。晴人を、龍也を傷付けたコイツは許さないヨ!」
仮面越しでもわかる怒りをセイリュードは感じる。
「白虎か。なら……今ここで潰す!」
「アンタなんかに負けないヨ!」
ウォンフウは両腕虎の爪を催した武器、ビャックローを出現させ、走り出す。
「晴人は龍也を安全な場所に運んで!」
「わかった!」
セイリュードが龍也の元に向かう。その間にウォンフウはビャックローでチーター・メモリアンに斬り掛かる。
「素人だな……!」
チーター・メモリアンは俊敏な動きで回避すし、逆に剣で斬り付けようとするがウォンフウはビャックローで防ぐ。
「ハッ!」
片方のビャックローで突きを繰り出すも、チーター・メモリアンは後ろに下がり避けるやいな高速移動でウォンフウの周りを囲む。
「切り刻まれろ!」
「そうはいかなイ!」
それと同時にウォンフウも高速移動で対抗し、爪と剣の打ち合いになった。
―――*―――
「晴人くん!そっちの彼は大丈夫なのかい?」
龍装を解除した晴人は気絶したままの龍也を地面にそっと置く。
「はい。アレが白虎のシステム、速い……」
「白虎はスピードに特化したシステムなんだ」
「じゃあ勝てるかもしれないんですね」
「うん。後は明倫ちゃんの精神力次第だよ」
肉眼では追い付けない速さで凌ぎ合う、ウォンフウとチーター・メモリアン。
(チッ、この女……先程より動きが違う……このままだと負ける!)
(隙あり!)
「風撃・一点!」
ビャックローに纏う風の一撃がチーター・メモリアンに当たり、吹き飛ばされる。
「グッ……ッ!」
爪を引っ込めたビャックロー・ナックルモードのパンチを腕で防ぐチーター・メモリアン。その拳には重みが乗っていた。
「今のは晴人の分!」
じわりじわりと歩み寄る、ウォンフウは2発目の拳を振り降ろす。
「そして、これは!龍也の分ダ!!」
渾身の一撃がチーター・メモリアンの腹部にめり込むように入ると膝を着いて倒れやうとするが……。
(アイツらを人質にすれば!)
何とか手柄を立てようと晴人達に目線をやり、駆け上がろうと目論む。
「うぉぉぉ!」
「龍……」
「遅い!」
龍装より早く、チーター・メモリアンが剣を構えようとするがその後ろの存在に気付き、振り向く。
「アタシは誓った!アンタ達がいる限りこの力で友達を……大切な人達をこの力で守って見せる!!」
ウォンフウの両腕に風の様なエネルギーが溜まると、腕でクロス状の形を作る。
「風裂・交刃!!」
クロス状の風の刃がチーター・メモリアンの身体を切り裂く。それはを自身の敗北を意味していた。
「青龍の首も取れずにこんな素人に……チクショォォォォォォォ!!」
チーター・メモリアンはそう言い残し、風に舞う塵になり消滅した。
―――*―――
「うん……ハッ!」
「良かったヨ……目を覚まして」
気絶していた龍也が目を開くと、心配そうな顔で見る明倫が顔をのぞかせ自分を見ていた。
晴人とモンドはそんな2人を気遣い、顔を合わせ河原を後にしていた。
龍也は自身が気絶した男がどうなったかを尋ねる。
「李さん、あの化け物は!?」
「大丈夫……あの後、晴人が来てくれてネ。対処してくれたヨ」
「そっか、俺がこんなんじゃダメだな……」
「そんな事ない!龍也はアタシを守ってくれた……ありがとう」
真剣な眼差しで明倫の感謝の言葉を聞き、思わず目を背けると、腕時計に目をやる……。
「もうこんな時間か、今日は母さんに料理作るって言ったんだった……じゃあ李さん、月曜日に学校で!」
近くに置いてあった買い物袋を手にし立ち上がる。
軽く手を振り、振り向くと急ぎ足で明倫に別れを告げて家路に向かう。
「うん!月曜日にナ!」
明倫は龍也が見えなくなるまで元気よく手を振る。
(そうだ。アタシはこの日常も守る為に戦うんダ……だから、今日よりも明日は強くなろう)
改めて、戦いへの決意をする明倫。そんな彼女に勇気づける様な風が吹くのであった。
さて、次からは新作……なるべく開かないようにします