青龍魂心セイリュード   作:サナギ@北の大地

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第2話です

何故、晴人がセイリュードになれたのか、
その真意が分かるエピソードです


メモリアン

保健室で応急処置を終えた美風は、晴人に連られて、彼の家の裏口から入った。

 

「ただいま」

 

「随分と遅かったな……って、美風ちゃん!?」

 

「ご無沙汰してます、おじ様」

 

赤いバンダナを頭に巻いた黒髪の男性……晴人の父親、源二は久方ぶりに訪れた美風に驚く。

 

「本当に久しぶりだなぁ、ミカちゃん!大きくなって……」

 

「あら、いらっしゃい!可愛くなったわね~、ミカちゃん」

 

薄茶色のショートヘアに白いバンダナを巻いた女性……晴人の母、葵も手を拭きながら顔を覗かせる。

 

「おば様もお久しぶりです」

 

「ホントに久しぶりね。どう、元気?」

 

「どうなんだい、学校は。まさか、晴人とはこう……アレだったりするのかい?」

 

「いえ、その……ハルく……寺野くんとは別にそういう仲では……ッ!」

 

小指を立てる源二に、美風は慌ててわたわたと手を振るも、その顔は耳まで真っ赤だ。

 

「気にしないで、この人の冗談だから」

「は、はぁ」

 

呆れた声で、葵が源二の肩に手を置く。

そこで晴人が、美風に声をかけた。

 

「ミカちゃん、そろそろ」

 

「うん、そうだね。おじさん、おばさん、お邪魔します」

 

美風は二人に会釈すると、晴人に続いて2階へと上がっていった。

 

「晴人の奴、やっぱり──」

 

「2人をからかう暇があるなら、洗い物終わらせなさーい!」

 

「いてててて!分かってる!分かってますって!」

 

相変わらず二人の仲を勘繰っている源二は、葵に耳を引っ張られて仕事に戻るのであった。

 

「ごめんね、うるさくて」

 

久々とはいえ、源二と葵の夫婦漫才を見せられ、たじろいでいた美風に謝る晴人。

 

「気にしてないよ。賑やかで変わらないね、ハルくんの両親」

 

「アハハ……ホント変わってないよね。……此処だよ」

 

そんなたわいも無い会話の後、晴人は自室の向かいにあるドアをノックする。

 

「モンドさん、僕です」

 

「晴人くんか。入ってくれ」

 

モンドと呼ばれた人物の許可を貰い、晴人はドアを開けた。

 

―――*―――

 

「おや?その子は?」

 

茶色の天然パーマに痩せすぎな体型、白衣を羽織った眼鏡の男性がそう尋ねる。

 

「大羽美風。僕の幼なじみで、さっきのメモリアンに襲われていました」

 

「何だって!」

 

 

ずり落ちかけた眼鏡を掛け直し、男は美風に近付く。

 

「あ、あの!近い……です」

 

「あっ、すまない……つい、ね」

 

若干引き気味の美風にそう言われ、男は後ろに下がる。

 

「僕はモンド・センビレッジ。モンドでいいよ。よろしく、美風ちゃん」

 

「はぁ……どうも」

 

「それで晴人くん、調子はどうだい?」

 

「はい。まだ2回目ですが、大分慣れてきました」

 

手を開いて見せて、先程の疲れが無いような素振りを見せてみる晴人。

 

「君はこの力の適合者。だから、使う度に馴染んでいく筈だ。この調子なら、動作にも問題は無いだろう」

 

それを見て、モンドはメガネをクイッと指先で直した。

 

二人の会話に美風は、遠慮がちに手を挙げて質問する。

 

「あの、私にも分かるように教えてください。あの怪物……メモリアンの事もですけど、ハルくんが変身した、セイリュードの事も……」

 

「僕からもお願いします!ミカちゃんは口が固いから誰かに言いふらしたりは絶対しません!それに、僕もまだ、確認したい事とかありますし……」

 

晴人と美風に詰め寄られると、モンドは暫く考え込み……そして、首を縦に振った。

 

「うーん……分かった。ここまで知ってしまったら、君も関係者だからね。但し、誰にも口外しないように。いいね?」

 

人差し指を口に添える、ジェスチャーをするモンドに、美風は黙って頷く。

 

「まずは、メモリアンについて」

 

「はい」

 

モンドと対面して座る2人。その様子は宛ら、教師と生徒の様であった。

 

「メモリアン、奴らは発達した文明を持つ惑星に飛来し、知識を吸収する人工生命体だ」

 

「人工生命体……」

 

「その惑星の住民から知識を吸い取るだけではなく、その人物に成り代わり、社会に紛れ込む……。これは、現在進行形で行われているよ。全部を食い止められないのは、僕としても悔しいけどね……」

 

「待ってください!モンドさんって、その……宇宙人、なんですか?」

 

モンドの言葉に、美風は首を傾げる。

 

「その通り。僕の故郷、惑星ホープは地球とよく似た星でね。美しい星だったよ……」

 

「へぇ……宇宙人って、こう、もっとタコっぽいのとか、目が大きかったりするのを想像してました」

 

「火星人とか、グレイタイプってやつだね?まあ、他所の星ならそういうのがいてもおかしくないけど、ヒューマノイドタイプの宇宙人ってのは、それほど珍しくないよ」

 

宇宙人コラムを少々挟み、モンドは説明に戻る。

 

「奴らは文明国家同士の惑星間ネットワークを利用して、侵略範囲を広げて行った。そして、僕の故郷も……」

 

「そう……だったんですか……」

 

モンドの過去を聞き、俯く美風の肩に晴人が手を置く。

 

「でも、仲間を裏切って僕に協力してくれた個体が居たんだ。メモリアンの危険性も教えてもらったし、セイリュードのシステムも彼と協力して作ったものなんだよ」

 

「なるほど……」

 

「でも、何で青龍何ですか?」

 

納得する晴人であったが、美風は四聖獣の1つである青龍が何故、異星の技術であるセイリュードのモチーフになったのかと疑問を抱く。

 

「実は、僕らの先祖は昔、地球へ飛来した事があるんだ」

 

「そうなんですか!?」

 

「幾多の星の文明を知る為にね。何年かに1度は訪れてるんだよ」

 

惑星ホープと地球との意外な接点に、晴人と美風は驚く。

 

「特に四聖獣は、ホープでも大人気でね。僕らの文化の1つに取り入れられてるくらいさ」

 

「じゃあ、このセイリュードは……」

「そう!祖先が愛したこの星を護るための力。だから、四聖獣をモチーフにしたのさ!」

 

ビシッと指を指すモンドに、2人は少したじろいだ。

 

「ところで、メモリアンはいつ頃、地球へ来たんですか?」

 

「おっと、失敬。つい盛りあがってしまった」

 

晴人からの質問に、モンドは冷静さを取り戻す。

 

「僕の調べでは1年前だ……」

 

その答えを見せる為に、モンドは本棚からスクラップブックを取り出した。

 

「これさ。小さな農村で起きた、村人達の一斉消滅事件……。世間ではオカルト扱いされているけどね」

 

「もう既に……」

 

晴人はスクラップブックを強く握り締め、メモリアンの脅威を改めて感じ取った。

 

「アイツらは、その惑星全ての人間から知識を奪い、それが終われば他の星へと移っていく……。ホープもそうやって、ゆっくりと滅ぼされて行ったんだ」

 

「許せない……。そんな、食べ終わったコンビニ弁当のパックを捨てるみたいに、他の惑星を……」

 

「ハルくん……。モンドさん、ハルくんとは、どうやって知り合ったんですか?」

 

怒りを滲ませる晴人に、美風は話題を変えようとモンドの方を見る。

 

「晴人くんとの出会い、か。そうだね。あれは──」

 

―――*―――

 

数日前、晴人がコンビニに寄って帰ろうとしていた時だった。

 

「うわッ!」

 

「わあッ!?」

 

路地裏から、何やらただ事ではなさそうな形相をした男性が飛び出してきたのだ。

ぶつかって尻もちをついてしまった男性に、晴人は慌てて声をかける。

 

「大丈夫ですか?」

 

「君!ここからすぐに逃げるんだ!」

 

ぶつかった男性……モンドは、晴人の肩を掴んでそう言った。

 

「えっ?それはどういう……」

 

「話してる暇はない!くッ、君も来るんだッ!」

 

「あっ、ちょっと!?」

 

モンドは晴人の腕を掴み、反対側の路地へと走る。

その直後、モンドが出てきた路地から、蟻の姿をした怪人が姿を現す。

 

「逃がしたか……。だが、袋の鼠だ」

 

蟻の怪人は、人間の姿に変身すると、2人の逃げ込んだ路地へと進んでいった。

 

廃れて廃墟となったバーの中に、晴人とモンドは隠れていた。

 

「あなたは?」

 

「私はモンド・センビレッジ。手荒な事をして申し訳なかったね……」

 

モンドは、ずり落ちかけた眼鏡をかけ直し、晴人に詫びる。

 

「寺野晴人です。モンドさん……どうして、逃げているんですか?」

 

「信じてもらえないと思うが、僕は狙われているんだ。メモリアンという、この星の外からやってきた怪人にね」

 

「え?」

 

あまりにも突拍子もない言葉に、晴人は疑いの目を向ける。

だが、モンドの目は真剣そのものだった。

 

「どうかしたのかね?」

 

そこに現れたのは、老年の警察官であった。

 

「お巡りさん!丁度良かった……モンドさん、取り敢えず警察に──」

 

「晴人くん!そいつはメモリアンだ!僕を襲った奴だ!」

 

「え?」

 

頓珍漢な事を言う、モンドに老警官は怒りを見せる。

 

「何を言ってるんだね!」

 

「モンドさん?」

 

「メモリアンは人間に比べて体温が低い……。私のセンサーは誤魔化せないぞ!」

 

メガネの右レンズが光るのを見て、晴人は老警官を振り返る。

 

その老警官は不敵な笑みを浮かべていた。

 

「ほう、ワシがメモリアンだと見抜くとは……だが、これまでよ!」

 

警察官は怪人態、アント・メモリアンに姿を変えると、鋭い爪で晴人を狙った。

 

「危ないッ!ぐッ!」

 

モンドは咄嗟に晴人を庇い、肩に傷を負う。

 

「モンドさん!?こいつッ!」

 

「ぬおぉッ!なんだこれはッ!」

 

アント・メモリアンの顔に、テーブルにかけられていた布を被せ、視界を奪う。

 

その隙に、蹲るモンドの肩を抱いてバーの裏口へと進んでいった。

 

「また逃げるか、無駄な事を……」

 

布を破って床に叩きつけると、アント・メモリアンはゆっくりと歩みだした。

 

2人をじわじわと追い詰めるために……。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……ここでしばらく誤魔化せるかな?」

 

別の廃墟に辿り着くと、モンドの肩口にハンカチを巻き付ける。

 

「うッ!」

 

「モンドさん!?痛みますか?」

 

「大丈夫、ありがとう……」

 

そう言った直後、モンドは立ち上がり頭を下げる。

 

「すまない……君を巻き込んでしまって……」

「いえ、そんな……。あの時モンドさんが庇ってくれなかったら、僕は今頃……」

 

モンドはポケットの中にある物を握り、考える。

 

(彼に賭けてみるか?しかし、もしもダメだったら……)

 

その時、爆発音と共に壁が吹き飛ぶ。

 

壁に空いた穴から現れたのは……。

 

「次は無いぞ……」

 

牙をガチガチと鳴らすアント・メモリアンだった。

 

「モンドさん、逃げてください!」

 

晴人は立ち上がり、転がっていた鉄パイプを握ると、アント・メモリアンに向かって構える。

 

だが、その手は震えている。

 

今の彼は恐怖のあまり、立っているのもやっとなのだろう。

 

「晴人くん!危険だ!」

 

「メモリアンの存在を皆に伝えられるのは、モンドさんしかいないんです!逃げてください!」

 

「何故そこまでして……。君には本来関係ないはずだ!逃げたって私は恨まない!」

 

「こんな奴らの為に、誰が悲しむのを見たくないんですッ!」

 

「ッ!!」

 

身体は震えが止まらない。

だが、それでも晴人の両目はアント・メモリアンを睨み、彼の決意を表している。

 

(彼なら……発動できるかもしれない……)

 

「だから……お願いします!」

 

「その頼みは飲み込めないな……。晴人くん、これをッ!」

 

何かを決心したように顔を上げ、モンドはポケットから蒼く光る石を取り出す。

 

「それは?」

 

「君が適合者なら……きっと使える筈だ!」

 

そう言い、晴人に石投げ渡す。

 

「別れは済んだか!」

 

アント・メモリアンがこちらへ向かって走り出す。

 

(──なんだこれッ!手の中が、熱い……ッ!)

 

石を握った晴人の手に、火傷しそうになるほどの熱が宿った。

 

「叫ぶんだッ!君の、誰かを守りたいと思うその気持ちを、胸に強く思い描けッ!」

 

(僕の気持ち……。僕は……この怪物から皆を守りたいッ!父さん、母さん……そして──)

 

目を閉じると、大事な人達の顔が浮かんでくる。

 

家族や友達、定食屋のお客さん達。そして……大切な幼なじみの顔を。

 

(ミカちゃんがいるこの街を、必ず守るッ!)

 

「龍装!」

 

胸に浮かんだその言葉を叫んだ瞬間、蒼い光球が晴人を包み込む。

 

「なんだこいつは──ぐおおッ!?」

 

「成功した……起動したぞッ!」

 

「こ、これは……」

 

光球に触れたアント・メモリアンが、壁の向こうへと吹き飛ばされる。

光球が消えた時、晴人の姿は青き龍の戦士の姿へと変身していた。

 

「その姿は、青龍魂心・セイリュード!メモリアンを倒す力の1つだ!」

 

「セイリュード……」

 

全身を巡る激しい力に、晴人は拳を握ると、アント・メモリアンが吹き飛ばされた方へと向かって行った。

 

―――*―――

 

「何だ貴様はッ!何者だッ!」

 

壁を破壊し、廃墟の外で転がっていたアント・メモリアンは、立ち上がりながらセイリュードを睨む。

 

「青龍魂心・セイリュードッ!この街の皆は……僕が守るッ!」

 

「ほざけッ!姿が変わっただけで、小僧一人に何ができるッ!」

 

殴りかかってきたアント・メモリアンの拳を掴むと、逆にセイリュードが顔面へとストレートをくらわせる。

 

「がぁッ!?」

 

「はあッ!」

 

反撃の隙を与えず、セイリュードは一打ずつ、怒りを込めてアント・メモリアンを殴り続けた。

 

「ぐううッ……調子に乗るなぁぁぁ!」

 

アント・メモリアンは勢いよく突進をくらわせ、セイリュードを突き飛ばす。

 

「うっ!」

 

「ドロドロに溶かしてやるッ!」

 

更に、口から勢いよく蟻酸を吐き出し、セイリュードのアーマーからは火花が散った。

 

 

「ぐああああッ!」

 

「晴人くん!」

 

「このくらい……平気です!」

 

受ける攻撃をものともせず、セイリュードは立ち上がる。

 

「それに……僕はこいつを許せない!だから、絶対に負けないッ!」

 

渾身のアッパーをくらわせ、アント・メモリアンを殴り飛ばす。

 

「舐めるなぁ!小僧!」

 

アント・メモリアンも負けじと鉤詰を振り下ろして応戦する。

爪と拳が何度もぶつかり合い、火花が散る。

 

やがて、何度目かの打ち合いの後に、セイリュードはアント・メモリアンの爪を弾きながら後退する。

 

 

「晴人くん!足に力を溜めるんだ!奴を倒す技がある!」

 

「はいッ!」

 

そう言われ、両足に力を入れる。

 

「ハァァァァァァァァ……」

 

「させるか!」

 

アント・メモリアンはそれを妨害するべく、何度も蟻酸を吐きつけるも、セイリュードはそれをものともしない。

全神経を集中し、その攻撃に耐えていた。

 

「ハッ!」

 

そしてセイリュードは、月を背に飛び上がる。

空中で身を捻ると、セイリュードは両足蹴りの構えを取った。

 

「ブルードフィニッシュッ!!」

 

両足蹴りから放たれる青龍のオーラが、アント・メモリアンの身体を貫く。

 

「ぐわああああああああッ!おのれ……セイリュードぉぉぉぉぉッ!」

 

セイリュードが着地した瞬間、アント・メモリアンは断末魔の叫びを上げながら爆散した。

 

「勝った……。これが、セイリュードの力……」

 

メモリアンという怪物を倒してしまったその力に、晴人は先程とは違う震えを感じていた。

 

「そうだ。そして……君が、セイリュードだ」

 

「僕が……」

 

次の瞬間、青い閃光と共に晴人の姿が元に戻る。

 

「晴人くん……君に頼みがある。私の代わりに、奴らと戦う覚悟はあるか?」

 

モンドは真剣な面持ちで、晴人を見つめる。

 

「奴らからこの星を守れるのは、君しかいないんだ」

 

モンドの言葉に、晴人はしばらく考え込み……そして、モンドの目を真っ直ぐに見て答えた。

 

「戦います!僕の手で、大切な人達が守れるのなら……」

 

「厳しい戦いになるかもしれない」

 

「それでも、僕は逃げない。やらせてください!」

 

「……わかった。では改めてよろしく、晴人くん」

 

これが、晴人とモンドの出会い。

この地球を守るヒーローが生まれた瞬間だった。

 

 

―――*―――

 

 

 

「そうだったんですか……」

 

美風は二人の話に聞き入っていた。

 

「セイリュードのシステムは、それぞれの分野に特化した四つのスーツから、最も相性が良い人間を適合者に選ぶ。そして、それを起動できるのは、他者の痛みを理解できる心を持った人間のみだ。晴人くんの大切な人達を思う気持ちが、セイリュードを惹き付けたんだろうね」

 

「やっぱり、ハルくんは優しいね」

 

晴人をチラッと見ると、晴人は照れ臭そうに頬を掻いた。

 

2人のやり取りを見てモンドは微笑む。

 

(でも、その優しさが彼を苦しめなければいいのだが……。そうならないよう、僕らが支えてあげないとね)

 

その時、壁にかけられた時計が鳴る。時刻は既に七時を指していた。

 

「ミカちゃん、今日はもう遅いから送ってくよ」

 

「うん、ありがとう」

 

晴人と美風が立ち上がり、部屋を後にしようとした時、モンドが声をかける。

 

「そうだ。晴人くん、セイリュウストーンを僕に渡してくれないか?」

 

「え?」

 

「落としたりしたら困るだろ?僕に考えがある」

 

「わかりました。お願いします」

 

晴人はモンドに石を渡すと、部屋を後にした。

 

 

―――*―――

 

 

美風の家までは2、3分もかからない。

 

美風は今日の出来事を、頭の中で振り返っていた。

 

(今日は色々あったな……。メモリアンとか、セイリュードとか、普通じゃあり得ないことがいっぱい……。でも、これだけは言えるよね。私がハルくんを応援する。それだけは、私にもできることだから──)

 

「……ちゃん?ミカちゃん?」

 

「ッ!ひゃい!」

 

突然声をかけられ、つい声が裏返ってしまう。

 

「着いたよ」

 

「え?あ、うん」

 

「じゃあ、またね」

 

「うん、また明日!」

 

笑顔で返事を返す美風に、晴人も同じく笑顔で応える。

 

「待って!ハルくん!」

 

「どうしたの?」

 

呼び止められ、晴人は美風の方を振り返る。

 

「ハルくん……何か力になれる事があるなら、私、何でもするから!」

 

「ありがとう、ミカちゃん。でも、僕は君を守る為に戦うんだ。絶対、無茶はしないから」

 

美風を思う晴人は、小指を立てて美風に向ける。

 

「うん!」

 

美風もそれに応え、自分の小指を絡めた。

 

「指切りげんまん……嘘ついたら」

「針千本飲ます?」

「飲めるかな?」

「真に受けないでよ」

 

美風がクスッと笑うと、晴人も笑う。

 

そして晴人は手を振って、今度こそ自分の家へと戻っていくのであった。

 

それが『恋』である事を、二人はまだ知らない。

 

そしてこれが、全ての始まりでもある事を……。




セイリュードを紹介すると言いましたが、時間がある限り、登場人物などまとめて紹介します
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