今回はセイリュードと出会います。
そして、新キャラも登場
美風に付き纏ったストーカーを退けてから1週間後の土曜日、晴人は両親とモンドと共に朝食についていた。
「葵さんの味噌汁は本当に美味しいですよ」
「ありがとう。モンドさん」
「しかし……最初来た時は大丈夫かと思ったけどよく働いてくれてホントに助かるよ」
モンドの背中をバシンっと音を立てて叩く。
「あなた!ごめんなさいね。モンドさん」
「いえ……源二さんが喜んで下さるならその……」
「こうして賑やかなのも
「そうね……ホントに懐かしいわ」
「晴人くん……時雨って言うのは?」
「僕の姉です……今は大学二年生で一人暮らしをしてるんです」
「ほう」
「そうだ……晴人、時雨に米持ってやってくれないか?あいつ米炊きぐらいは出来るからな」
「ついでに煮物も渡して貰えるかしら?」
「わかった」
そう言い朝食を食べ終える晴人はリュックサックに米袋とタッパーを入れて、時雨のいるアパートへ向かう事にした。
―――*―――
「確か……姉さんのアパートは……」
「ハルくん?どうしたのその荷物」
「ミカちゃん」
事情を説明した晴人に美風は……。
「私も良いかな?時雨さんに会いたいか
ら……迷惑かな?」
「そんな事無いよ。姉さんも会いたがってるよだから……行こう」
「ハルくん。そうだね!私も来たら、きっとビックリするね」
晴人は笑顔で答え、美風もそれに答えた。
―――*―――
「ここだな……姉さん?」
ドアをノックすると部屋の住人はドアを開ける。
「だれ?あっ!ハルくん……おっきくなったね」
「ね、姉さん!?」
茶色のハーフアップの女性……寺野時雨は、幼い子供を撫でるかのような仕草をとる。
当の晴人は恥ずかしさのあまり顔が赤くなり、何も出来ずにいた。
「アハハ……変わってないですね。時雨さん」
「あなたは美風ちゃん!!それ以上に久しぶり!」
対象を晴人から美風に移り、同じ仕草で撫でる。
「おっきくなって。その金髪も更に綺麗になって……懐かしいなぁ」
「あの……入っても良いかな?」
「あ!ごめんね……さっ入って」
我に返った時雨は2人を部屋に招き入れた。
「ごめんね、2人とも恥ずかしかったよね?」
「気にしてないよ姉さん」
「私もです」
「ありがとう。これ、美味しいから食べてね」
紅茶と焼きたてのいい匂いがするお茶菓子を置いて感謝の言葉を述べる、時雨の好意を受け取りお茶菓子に手をつける2人。
「この手作りのマドレーヌ……今まで食べた中で美味しいです」
「だよね!みんなそう言ってくれんだぁ」
「え……スゴいですよ。お店で売れますよ!」
「姉さんはお菓子作りだけは得意だもんね」
「もう!ハルくん酷いよぉ〜」
姉を揶揄う晴人にそれで膨れてしまった時雨。
(この2人は仲良いのは変わらないなぁ。)
美風は紅茶を飲みそう思い、カップをコースターに置く。
「そんな事を言うならハルくんのは没収!」
食べようとしていたマドレーヌを一口で食べる時雨。
(そういえば、時雨さんがハルくんって言ってたから、わたしもそう呼んでいたんだよね……)
「ごめん!姉さん……ホントにごめん」
「謝ったから許してあげる」
そんなやり取りが終わる時、セイリュウブレスが光る。
「どうしたの?それ?綺麗なブレスレットだね」
「姉さん……ごめん!急用思い出した……」
左人差し指で頭をかいて立ち上がる晴人。
「は、ハルくん?」
勢いよく扉を開けて外に出た晴人、そこにいるのは時雨と美風だけであった。
「ミカちゃん……何かあったの?」
「え?」
「ハルくん……晴人が嘘をつく時って左の人差し指で頭をよくかくの。ねぇ?何があったの?」
「時雨さん……」
見せたことの無い顔をする時雨、だが、セイリュード、メモリアンの事を言ってしまえば彼女も狙われる事になる。
(もしそうなったら……ハルくんの抱えるモノが増えて……そうなったら)
だから言えなかった。美風には、その沈黙は長く感じるほどに……。
―――*―――
「モンドさん!奴はここに?」
『あぁ、監視カメラに映っていたよ……そこを曲がったら見えるはずだ……急ぐんだ!人が狙われてる!!』
「わかりました!(この前とより一層、メモリアンの反応が鋭くなってきている……)」
モンドの指示通りに動くと、目の前には触手が突き刺さろうとしていた男性が見えた。
「危ない!!」
男性に覆い被さる様に押し倒して、触手を避ける。
「き、君は!?」
「良かった。無事で……逃げてください!」
なんの事か分からずに混乱していてたが危機感を感じた男性はその場を後にした。
「来たな……セイリュード!!」
「幹部の部下だな。セイリュードの名前を知ってるのか」
「意味は分かるな……!!」
男は鹿の怪人態、ディアー・メモリアンに姿になると七支刀で晴人に斬り掛かる。
「ッ!」
自身を真っ二つにしようとする一太刀を回避するが、今度は横一閃が入ろうとしていた。
「龍装!」
セイリュードになり、七支刀を腕で防ぎ、退け、その直後に蹴りを入れ距離を置く。
「フフフ……そうでは無いとな……」
(やっぱりあの海老のメモリアンと同じく強い……!)
腰からセイリューバーを抜き、大きく一歩踏み出すと、ディアー・メモリアンは七支刀でセイリュードの一太刀を防ぐ。
「なっ!?」
「ッ!」
間髪を入れずに七支刀の袈裟斬りの一撃がセイリュードを吹き飛ばす。
「グッ……ハァ……ハァ」
斬るより鈍器のようなその一撃にセイリュードは息をするので精一杯でまともに立てずにいた。
「おいおい……もう終わりか?」
ディアー・メモリアンに近付いた坊主頭に剃り込みを入れた男がそう訪ねる。
「あぁ、大した事ないな……アレぐらいでコレだもんな」
「でも用心に越したことはないな……やるぞ」
ディアー・メモリアンの問い掛けに
「おう!」
ハイエナの怪人態、ハイエナ・メモリアンに姿を変え、コンバットナイフ型の武器を逆手に持ちセイリュードに襲いかかる。
「なら……俺もやらせてもらおう」
ディアー・メモリアンも七支刀を構え、同じく襲いかかる。
(踏ん張るんだ……ここで倒れても、コイツらだけは僕が倒す!!)
心にブーストをかけ、立ち上がるとまずは振り下ろしたコンバットナイフを左手で防ぐ 。
「お?まずまずだな」
ハイエナ・メモリアンはその度胸に感心を覚える。
「だが!それを砕くのが俺らのやり方だ!!」
右の方から七支刀が来るのをセイリューバーで防ぐ。
「甘いんだよ!!」
ハイエナ・メモリアンのキックがセイリュードの腹部に当たると体勢が崩れる。
「グッ!」
「ハァ!」
好機と見たディアー・メモリアンは左肩のタックルで再びセイリュードを再び吹き飛ばした。
「俺達が弱いもの虐めしてるみてーじゃねぇか」
「気にするな。それもこれで終わる……」
相方の言葉に呆れつつ、ディアー・メモリアンはセイリュードに近付くと首筋に七支刀を当てる。
(立てよ!立つんだ!立ってこの攻撃を対処するんだ!寺野晴人!!)
そう心に問い掛けるが体は言う事を聞いてはくれなかった。
「呆気ないが……!!」
振り下ろす直後矢がディアー・メモリアンに突き刺さると火花を散らし撃った方を振り向く。
「誰だ!」
「メモリアンが2体か……仇かどうかは戦えば分かる!」
現れたのシューザーアロウを手にしたシューザックが次の矢をハイエナ・メモリアンに向けていた。
「アレは……いや!今はチャンスだッ!」
即座に立ち上がり、セイリューバーを振り上げるもディアー・メモリアンは七支刀で防ぐ。
―――*―――
「おいおい。もう1人いるなんて聞いちゃいないぜ……!!」
隙を作るかのようにコンバットナイフを投げ、シューザックの懐に入り込むが……。
「……!」
そうはさせまいと、シューザックはシューザーアロウを刃にしてハイエナ・メモリアンに袈裟斬りを入れるもギリギリで回避された。
「あ、危ねぇな……!!」
それも束の間、シューザーアロウの矢がハイエナ・メモリアンに突き刺さり怯むと、シューザックは腰を低くして、蹴りあげて一直線に走る。
「ッ!」
瞬時に近付いた、シューザックは飛び上がり、回し蹴りを顔面に当てると、着地をする前に弦を引いて矢を放つ。
「グハッ!」
スキを与えぬ攻撃にハイエナ・メモリアンは直撃を受け、膝を着いてしまう。
「このッ……!」
立とうとすると目の前にはシューザックが近付いている事に気付く。
「お前達メモリアンは皆殺しだッ!」
無慈悲と言える矢の連射にハイエナ・メモリアンは動けずにいた。
(くっ……あの状況で形勢を立て直されたか……!)
相方のピンチと同時に、ディアー・メモリアンもまた、セイリューバーの一撃を受けそうになるのを七支刀で止める。
だが、力が増したのか払えずの状態が先程から続いていた。
「こいつ!何処に力があるんだ!?」
「お前達がいる限り……お前達が人の命を奪うなら!僕は何度でも立ち上がる!そして!勝ってみせるッ!」
更に力を入れ、七支刀で支えれなくなり、ディアー・メモリアンは構えが解かれるのを見た、セイリュードはセイリューバーで斬りかかるが、角で抑えられる。
「なッ!?」
「少しは出来るな……だが、それまでだ!!」
セイリューバーを弾き隙をつくると、ディアー・メモリアンはタックルを仕掛ける。
(ミカちゃん……ごめん。そして姉さん……)
その一撃にセイリュードは【死】を感じていた。
「……」
「……」
美風と時雨の間に沈黙は流れる。
いまだ十数分しか経っていないのに関わらずに……。
「ハルくん、遅いね……ミカちゃん何かあったか知らない?」
「え?あの……」
(セイリュードの事を話しても信じてくれない……ううん。もし信じてくれても時雨さんが巻き込まれる事も考えると……余計言えないよ)
美風が悩み言えずにいる中、時雨は一瞬、目を閉じて口を開いた。
「分からないならいいの。ごめんね、何か追い詰めたみたいで」
「そんな事無いです!でも……」
「でも?」
「何れはその……」
「分かった。その時になったら話して……ね?」
「はい」
「喉乾いたでしょ?お茶……飲む?」
「え、えぇ……お願いします」
時雨は立ち上がりお湯を沸かすためにキッチンに向かった。
(どんな事でも私は驚かないよ。それが間違ってたら止めるし、正しいのなら支えたい。そう考えるのがお姉ちゃんだもの……そうだよね?晴人)
強く、そう決心する時雨であった。
―――*―――
「な、何!?」
「死ぬ訳にはいかないんだ……僕が守りたいのは数え切れない……だから!今出来る事をするんだ!!」
(そうだ!もし僕が倒れたら……姉さんが巻き込まれる!僕と同じく変身したもう1人はどう動くか分からないからッ!)
両手で角を抑え踵に力を入れて勢いを殺す。
「くだらない……」
ディアー・メモリアンは振り払うように角を振り、セイリュードを払い除けた。
「このッ!」
だが、セイリュードは体勢を立て直す。
姉を守りたいその強い一念を込めた渾身のストレートをディアー・メモリアンの顔面に叩き込む。
「ウッ!」
「まだまだ!!」
怯んだのを見て、蹴りを入れようとするがディアー・メモリアンは七支刀で防ぐ。
(コイツ……人間の分際で……!)
ディアー・メモリアンがそう考える瞬間、セイリューバー・銃モードで腹部を撃ち抜く。
好きを見せまいと放った銃撃で七支刀を破壊した。
「ガハァ……」
煙が立ち上がるとディアー・メモリアンは膝を着くのを見たセイリュードは両足に、力を入れる。
「させるかッ!」
全体重をかけたディアー・メモリアンの突進はセイリュードの身体スレスレで空中に飛ぶ形で避けられる。
「ブルードフィニッシュ!!」
両足に龍の顎が形成されると、そのままディアー・メモリアンの身体を貫いた。
「同胞を葬るだけは……ある……なっ……」
その言葉を残し、ディアー・メモリアンは消滅した。
「はぁはぁ……うっ……はぁはぁ」
緊張の糸が解かれ、セイリュードは膝を着く。
(そういえば、あの赤い戦士は……)
―――*―――
「ウッ……アァ……クソがァ」
満身創痍のハイエナ・メモリアンにシューザックは冷酷に問い掛ける。
「3月10日……お前は何をした?」
「は?何を言いやがる!?」
「俺の家族を奪ったのかと言ってるんだよ!!」
「ハッ!知るかよ!だったら送ってやるよ!お前の家族の所になぁッ!」
隙ありと言わんばかりに攻撃を仕掛けようとするが、それよりも早く、シューザーアロウの矢が深々と突き刺さる。
「ガァ……ハッ……!?」
「お前も違うか……だが、メモリアンは全て滅べ……バーニングアロウ!!」
朱雀の型をした炎を纏った矢はハイエナ・メモリアンを貫くと燃え盛り、消滅した。
「また違ったか……」
「あ、あの!?」
「ん?お前その姿は?」
メモリアンの事で気付かなかったシューザックは声を掛けたセイリュードの方を向く。
「その見た目は朱雀……?あのっ!」
「悪いな……俺はここで」
「待ってください!」
足早に去ろうとするシューザックを引き留めようとするセイリュードだが、それを無視してその場を後にした。
「モンドさんに聞こう……分かるかもしれない。でも今は……」
そう言い、バックルに手をやり龍装を解除して時雨のいるアパートへと向かう。
―――*―――
「おやおや……まさか2人目も出てくるとは……策を打たないとですね」
黒スーツの男は電柱の上から見下ろしながらそう呟く。
「朱雀の戦士……もしかすると……張ってみる価値はありますね」
そう言うと、消えるようにその場を後にした。
―――*―――
「ハルくん」
一人歩く晴人の元に美風が声を掛けて振り返る。
「ミカちゃん……」
「無事だったんだね。よかった。はい、リュック」
リュックサックを渡され、晴人は片方の肩にかける。
「うん、ありがとう……」
「あのね……時雨さんがハルくんの事を聞かれたんだ」
美風の言葉に晴人は焦る。
「それで」
「時雨さんはその時が来たらって良いって」
「そうか姉さんがそんな事を……ミカちゃん」
「えっ、何?」
真剣な眼差しをする晴人に美風は息を呑む。
「メモリアンの戦いは僕が思ったより激しくなる。そうなったら、ミカちゃん……僕の事は放って……」
「その先はダメ……」
続きを言おうとする晴人に美風は自身の唇に指を手に当てる。
「わたしはついて行く……貴方の支えになりたい。だからその先は言わないで。お願い」
夕陽に照らされたその顔はあの日とは違い強く、優しく見え、晴人は安堵の笑みを浮かべた。
「ミカちゃん……ありがとう」
「帰ろう。ハルくん」
2人は家路に向かうと歩みだして行った。
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「俺以外にもこの力のようなのを使う奴がいたとはな……だが、そんなのは関係ない……」
翔真も同じく帰路へ向かおうとしている中、シニヨンヘアでチャイナドレス姿の少女からチラシを受け取っていた。
(中華料理【口福】か、値段も手軽だな……いや何を考えてるんだ!俺は……俺に休息はいらない)
そう言い、チラシをポケットに入れてアパートへと向かう。
「後ちょっと……頑張るヨ!」
チャイナドレス姿の少女……明倫は気合いを入れてチラシ配りに励み出した。
―――*―――
家に着くと晴人はすぐ様、モンドの部屋に来ていた。
「モンドさん……」
「晴人くんか、言いたい事は分かる……朱雀の力の事だろ?」
「はい……」
作業を止めたモンドは保護メガネを外し、朱雀のシステムの説明をした。
「朱雀の力は炎……そして、主に遠距離の戦い方を得意としている。セイリュードの後に作られたヤツで、残り2つを作ろうとしていた所を奴らに襲われて……」
「そうだったんですか。その力をあの人が……」
「そのようだね。青龍同様、ブレスレットにしたいが難しそうだね」
「それと彼は仇と言ってました……」
「仇……だが、それだけなら力は得ることは出来ない筈だ。恐らく君と同じく誰かを守りたいと言う力で適合者となったのだろうね」
「そうだったんですか……きっと、いつかは協力してくれる筈だよな。モンドさん、ありがとうございました」
頭を下げ、部屋を後にする晴人。
(その仇で無理をして無ければ良いのだが、朱雀のシステムは諸刃の剣……それが作動しないのを祈るばかりだ……)
モンドはタブレットに映されたシューザックのデータを見てそう呟くのであった……。