黒スーツの男=檮杌の登場から2週間が経っても晴人はあの出来事が脳裏に浮かび授業中も時折聞けないでいた。
「寺野……おい、寺野!」
「はっ、はい!」
英語の教師に呼び掛けられ、思わず返事が大きくなってしまう。
「おいおい……今は体育の時間じゃないぞ」
「すいません」
謝る晴人に英語の教師は言葉を続ける。
「アレか?好きな子の妄想してたのか?若いねぇ」
この教師、時折、こんな笑えないがジョークを言うのであった。
生徒も落ち度があるからと我慢するしか無くて、泣き寝入りするしかないのである。
(酷い……ハルくんは……ハルくんは!)
事情を知ってる美風は立ち上がる。
「先生!」
振り向く英語の教師は美風に標的を定めた。
「何だ……大羽?もしかしてお前……」
「ッ!」
「あ、何も言わないからな。大丈夫だぞ……そうかそうか」
察したかのような態度をとる英語の教師、美風は下を向いて唇を噛み締めるしか無かった。
(悔しい……こんなのが教師だなんて……)
空気が支配する中、1人の男子生徒が立ち上がり、ドアに手をかけようとする。
「おい!御雲!」
「え?」
前髪を上げた髪と瞳の色が金色の男子生徒、御雲龍也はドアに手をやりつつ後ろを振り向く。
「何のつもりだ?ひょっとして……妙な気分になったのか?」
「違いますよ?先生の話を聞いてから……寒気がしたもので」
そう言い、保健室へと後にすると他の生徒達は声をあげる。
「御雲の奴やるなぁ」
「俺達も嫌だったもんな、あの教師の」
「だな」
「以外とやるよね。アイツも」
「うんうん」
「お前ら!授業中だぞ!静かにしろ!」
教師の怒号で静まると授業を再開した。
(御雲くんか……後でお礼言わないと)
(アイツ……少し心配だヨ)
席に着いた晴人はそう思いながらノートを取る。
その一方で、ある女子生徒は龍也の事を気にかけていた。
―――*―――
職員室、龍也は教師から注意を受け後にした。
「まったく!教師に逆らうとはな!」
「どうしたんです?」
授業を終え、資料を取りに来た玄斗が尋ねる。
「亀沢先生……お宅の御雲はとんでも無い奴でね。教師をバカにする!まったく!親の顔が見たいですよ!」
「そうですか。これとなく言っときますよ」
「これとなく……アンタねぇ!」
英語の教師は立ち上がり玄斗を睨む。
「そもそも、生徒をからかって笑いする、そちらに問題があるのでは?」
「なっ!こっちは年上だぞ!?」
支離滅裂な反論も予鈴で打ち消される。
「とにかく……その担任の前で教え子の悪口を言われて黙っているほどお人好しでは無いので」
頭を下げて、玄斗は次の授業先の教室へと向かった。
教室では、晴人が龍也に近付いた
「さっきはありがとう……御雲くん」
「別に……あいつが気に食わないだけだし」
「僕だけじゃなく大羽さんも助けてくれたから……」
「それでも、良くないヨ!」
「り、李さん!?」
割ってはいる明倫に龍也は戸惑う。
「名前で良いヨ……そんな事より、あんな事したら龍也が大変な事になるヨ……アタシそれが心配だネ。」
「大丈夫だよ……心配しなくても良いから…… 」
「でもッ!」
納得のいかない明倫は龍也に近寄る。
「近いから……ね?」
そう言われて我に返った明倫は後ろに1歩下がった。
「ごめんネ」
「わかってくれたなら良いよ」
(危なかった、李さんがアップで来るから焦ったよ……)
顔を赤くしてそう考える龍也に明倫は首を傾げていると、予鈴が鳴る。
「予鈴がなったから、寺野と李さん……戻ったら?」
そう言われて晴人達は席に戻るのであった。
―――*―――
授業が終わり、晴人は下校しようとしていた。
「ハルくん……」
美風が声をかけようとするが……。
「休憩終わり!後半行くよ!」
「ハイ!!」
テニス部の先輩の声で美風は晴人の事を心配しつつグランドに戻る。
(明日、さりげなく聞いてみよ……このままじゃ、ハルくん押し潰されちゃうよ)
そう思いながら、美風は部活の方へ集中する事にした。
―――*―――
(ダメだな……僕は。気持ちを切り替えないと!)
そう誓った時、セイリュウブレスが光り出す。
「メモリアン!」
足早に現場へ向かう。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「強き者の記憶ならと思ったが期待はずれだな」
警察官に触手を突き刺し、消滅させたカウボーイ風の男がその場を立ち去ろうとした時に晴人が駆け付けた。
「メモリアンか。なら倒す……それだけだ!!」
「獲物か」
晴人を狙って右手から触手が迫る。
「龍装!」
間一髪入れず、セイリュードになるとセイリューバーで触手を斬る。
「俺を楽しまさせるがいい!!」
男はバイソンの怪人、【バイソン・メモリアン】に姿を変えた。
「ッ!!」
長柄のハンマーでセイリュードを潰さんと振り上げる。
「当たるか!」
後ろに下がり避け、バイソン・メモリアン目掛けてセイリューバーで斬り裂くが強靭な左腕で防がれる。
「その程度か……!」
右腕でセイリューバーを掴みあげるとセイリュードを投げ回され、壁に叩きつけられる。
「これで終わりだと思うなよ!」
腰を低くして角をセイリュードに向けて突進を仕掛けた。
「まだ!こんな所で!!」
すぐに立ち上がり飛び上がり回避して、回し蹴りをバイソン・メモリアンの頭部に決めるとその隙を見逃さずにセイリューバーで斬り裂く。
「無駄だと言っている!」
バイソン・メモリアンは裏拳でセイリュードを怯ませると槌で狙う。
「ッ!」
腕で防ぐも足場を崩されたセイリュードにバイソン・メモリアンは頭を掴み地面に叩き付ける。
「終わったな。強き者では無いが……」
(嘘だろ……!?そんな……)
動けなくなったセイリュードに対して、触手を出して消滅させようとした時矢が突き刺さり、バイソン・メモリアンは振り向く。
「メモリアンは倒す……誰であろうとも!」
シューザーアロウをバイソン・メモリアンに狙いを定めたシューザックが現れる。
「2人目か……貴様もだ!」
バイソン・メモリアンは槌を下から振るもシューザックはシューザーアロウのメモリを3に変えて弓を引くと矢が拡散してバイソン・メモリアンの身体中に刺さる。
「グォッ!?」
「まだ終わりじゃない……」
シューザーアロウの弦で斬り、その返しにもう一撃入れる。
「図に乗るな!」
「おっと!」
槌でシューザックを狙うも、シューザーアロウで防ぐが余波で足元がぐらつく。
スキありと言わんばかりにバイソン・メモリアンは右腕の拳でシューザックの腹部を殴り左足の蹴りで叩き落とす。
「これで終わりだ!!」
(マリ姉……ごめん)
バイソン・メモリアンは槌の一撃でシューザックを押しつぶそうとした時、背中に3発のレーザーが命中した。
「余計な事をするなッ!」
「これ以上誰も死なせたくない……だから……立ち上がらないといけないんだ!」
膝をついてセイリューバー・銃モードを握り締めるセイリュードの姿と言葉にシューザックは一瞬だが動きを止める。
「お前……ッ!?」
「隙ありだな……!」
バイソン・メモリアンの振りおりした槌はシューザックを狙うが……。
「させるか!」
立ち上がったセイリュードからのセイリューバーの一撃を背中に受けて攻撃は外れる。
「油断してるのはお前の方だ!!」
シューザックは弦の刃で横一線、バイソン・メモリアンを斬り裂く。
「ぐおぉぉ!!」
防げなかったその一撃はバイソン・メモリアンを怯ませる。
「人間風情がぁ!!」
槌を振り回し、距離を作る。
「うわぁ!」
「くっ!」
それは狙いを定めていない攻撃だと一目でわかった。
だが、地面に窪みをつけるその衝撃はセイリュードとシューザックはダメージを受けてしまう。
「オラァ!」
バイソン・メモリアンは角を生かしたタックルを隙が出来たセイリュードにくらわせ吹き飛ばす。
「グハァ……」
その一撃で龍装が解除されて晴人は気絶してしまう。
勢いは止まらず、今度はシューザックにタックルを仕掛けるが、そうはさせまいと矢を放つ。
「効かないんだよなぁ!!」
槌で矢を払おうとするが矢は槌に当たらず、弧を描いてバイソン・メモリアンの背中に当たる。
「こそばゆい攻撃を!」
ものともせずに突き進むバイソン・メモリアンにシューザックはシューザーアロウをしまう。
「諦めたか……楽にしてやる!」
「フレイムスマッシュ!!」
高く飛び上がりバイソン・メモリアンを狙うが槌で防がれる。
「俺が油断したと思ったのか……!?」
その目の前には殺気を込めてシューザーアロウを構えるシューザックが立っていた。
「ッ!」
それを危険と見なしたバイソン・メモリアンは再びタックルを仕掛けようとする。
だが、シューザックはまだ矢を放っていなかった。
「何をしたいか分からないが!」
重戦車と言えるそのバイソン・メモリアンの突撃が迫ってくる。
「近付いた……そこだ!!」
至近距離の体勢を取ったシューザックはバイソン・メモリアンの顔面にシューザーアロウを向け、矢を放つ
「!?」
上半身を逸らして回避するバイソン・メモリアンは直ぐに体勢を整える。
その直後、シューザックは弦の刃でバイソン・メモリアンの顔を斬り裂くと同時に、シューザーアロウでバイソン・メモリアンの腹部を矢で撃ち抜いた。
「がァァァ!!」
一矢報いようと、槌でシューザックのボディに一撃を入れようとする。
「当たらないって……!!」
バイソン・メモリアンは槌を捨て、頭の角を使いシューザックにタックルを仕掛け地面に伏させた。
「くっ……」
立ち上がろうとした時、限界が来たのか朱装が解除され膝を着く。
「まだやれる……俺がメモリアンを倒さないと」
意地を見せようと立ち上がろうとするが既に限界が来ていた。
「痛み分けか……」
バイソン・メモリアンもまた、人間の姿に戻っており、晴人と翔真を倒せない程のダメージを受け、フラフラとした足で撤退した。
―――*―――
「メモリアンは……!?」
目を覚ました晴人が立ち上がろうとすると翔真が立っている。
「大丈夫みたいだな……さっきの礼を言いたいだけだ。勘違いするな」
その言葉を背にして翔真はその場から立ち去る。
(あの人の目的は……いやそれより完膚なきまでに負けちゃったな……)
「ダメじゃないか……」
言い聞かせるように呟く晴人の目には涙が浮かんでいた……。
―――*―――
「ぐっ……」
翔真も痛みは引いていたが、今になって感じてきており、塀を支えにして佇んでいると誰かが近づいてくる事に気付く。
「お兄さん……大丈夫?」
振り向くと、そこには若草のような緑色をしたショートヘアの少女が翔真を不安そうな目で見てくる。
「大丈夫だ……心配ない」
翔真はそう言い立ち上がりゆっくりではあるが、歩き出した。
「あ、行っちゃった」
「翠!」
「あ、お母さん」
白髪のショートヘアの女性が翠の目線に合わせながら言う。
「ダメよ翠。最近は物騒だってお父さんも言っていたじゃない」
「お母さん……ごめんなさい」
「うん!じゃあ帰ろっか」
母親は手を差し出し、翠はその手を握り締めると家路に向かった。
―――*―――
家に戻った晴人は自分の部屋に閉じこもっていた。
(僕が弱いからおじさんは殺された。今日だってメモリアンを倒せなかった……僕にもっと力があれば……全てを塗り替えすドス黒いのだっていい。力があれば!)
自分でもわかるようなマイナスな感情を抱く抱く中、ノックの音が聞こえてくる。
「僕だ、モンドだ。開けてくれないかな?」
「はい」
そう言われ、晴人はドアを開ける。
「良いかな」
「あ、はい」
「この前から君の様子がおかしい……そして、今日もだ……強くなりたいかい?」
「!?」
「その顔は図星だね……」
「僕は弱い……だから強くなりたい!ミカちゃんやみんなを守れる為の力が欲しいんです!」
その言葉にモンドは目を閉じて、一瞬考えると直ぐに目を見開く。
「わかった……僕の部屋に来てくれ」
「はい」
モンドは自身の部屋のドアノブに手をかける。
【体温確認、指紋認証、解除シマス】
「え?モンドさん。それは?」
「とりあえず、入って見ればわかるよ」
ドアを開け、その光景に晴人は呟いた。
「こ、これは!?」