「ん」
楽郎くんがぶっきらぼうな声で私に何かを手渡してくる。
「楽郎君、これはなんだい?」
「バレンタインのお返し」
それは予想していた通りの答えだ。なにせ今日はホワイトデー。しかも、お互いに予定を空けることができたので、私のお家でゆっくり水入らずのデート。これで何も渡してこなかったら、このバカには手痛いお灸を据えていたところだ。
とはいえ、愛想がないにも限度がなかろうか。この恋人殿が内なる羞恥心に対抗して平常心を保とうとすると、ひどく無愛想になることは既に承知している。が、せっかくのホワイトデーなのだ。もう少し甘さを振りまいてくれても罰は当たらないだろうに。
今日はせっかくの
「恥ずかしいのは分かるけどもうちょっと心を込めてほしいなー」
「は?
「第一人称がゲーミングモードなんだけど」
「あー……、悪かったよ。どうも永遠に何かを渡すってなると、闇取引ロールの方が馴染むんだよな」
「ゲームと現実を一緒にしないでもらえますー??」
日頃の行いがここで悪影響を及ぼしたようだ。少しは我が身の振り方を見直したほうがいいのかもしれない。けど、それは今じゃなくてもいい。
「じゃあ恋人への贈り物を雑に済ませようとした楽郎君には罰として、とびっきり甘い渡し方をしてもらおうかな!」
「……ホワイトデーの準備が無駄になっちまったな」
「秒で諦めないで!? ほら、ネバーギブアップ!」
私の彼氏が、ぐむむと頭を悩ませる。正直に告白すれば、普段はクソゲーしか刺さってない頭をこうやって私のために回してくれるだけでも頬がぐにっと緩みそうになる。
「ほらほらー、純情ボーイらっくんには荷が重かったかなー。放っておくとオートでハードルが上がってくよー」
ただ、その感情を表に出すのは
「付け加えておくと、君が自宅のキッチンで、慣れないお菓子作りに奮闘していたことは把握済みだよ。その包みの中のチョコレートを、一体どんな演出で渡してくれるのかお姉さん楽しみだなー」
んふふ、楽郎君が伏せていた
――ふむ、プレゼントの包装を解いて? 蓋を開けて? ココアパウダーがまぶされたチョコレートトリュフを手に取って? うん?
「あー……、楽郎君。そんなに顔を近づけてどうしたんだい?」
「まぁ、なんだ。ちょっとやそっとじゃお気に召してくれなさそうなんでな」
そういうや否や、彼は手に取ったトリュフを口に咥え、――待って待って待って!?
「んー!んんー!!」
トリュフが唇に押し付けられる。ちょびっと突然の事態に気が動転して対処が間に合わない。しかも間合いも詰められている。これは如何ともしがたい。
せめてもの抵抗をと、唇を固く閉じていたけど、トリュフが無理やり押し込められて、あ、これ舌――。
5秒、10秒と口撃を受けたのちに、ようやく解放される。顔が熱い。灰色の脳細胞が茹ってるような気がする。
「とびっきり甘くしたつもりだけど、これで満足か。永遠?」
糖分過多で倒れそうだよ。