読み同じじゃーんの精神で生まれた一作。
誰が悪いのかと言えば思いついてしまった俺の脳みそが一番悪い。
進撃の巨人の知識は大分うろ覚えなので間違ってたら感想欄でこっそり教えるんだゾ。
人は所属の中で生きるものだ。その高い社会性は他者の中でこそ生きる。
群れを成すのは、人類の本能のようなものだ。
では群れを成さず、独立独歩のままに放浪する私は、果たして人類なのだろうか。
腕は二本、指は五本、脚は二本、目は二つで口が一つ。
されど体を見下ろしてみれば、所々に緑の意匠が施された紫色の装甲。肩には『EVA1』なんて表記まである。
その表記にしたがって私はこの巨体を『エヴァ』と呼んでいる。
心根は人間のつもりだ。
しかし足元にいる少年少女と比べれば、人間的でないのもまた事実。
『~~~~~!』
『~~~!』
『~~~~~~~!』
彼らはよくわからない言語で某かを話し合って、否、怒鳴り合っている。
少なくとも私の知る言語でないことは確かだ。
いや、豆粒の様にしか見えぬ彼らの発声など、言語がわかっても聞き取れやしないか。
そう思って彼らの横を歩き去ろうとしたとき、巨大な落雷が私の視界を焼いた。
落雷が落ちた先を見下げると、人・・・?
人の様な形をした、しかしこれほど巨大な人間などいるのだろうか。それに皮膚らしい部位もない。
敢えて形容するなら、そう。
巨人だ。
◆◇◆◇
パラディ島の悪魔を殲滅することが俺たちの任務だ。
九つの巨人を継承した俺たちは控えめに言っても『エリート』だろう。細かい内輪の事情を省いた外向けとしては、だが。
悪魔どもを殲滅するのに考えた手法は、パラディ島に大量に生息する『無垢の巨人』を利用する事だ。
パラディ島の内情はある程度分かっている。
無垢の巨人は人間を積極的に捕食する人類の天敵。それに対抗するべく、巨大な壁で無垢の巨人から隔絶した鳥かごを建設して、その内側で生きているのだ。
であればその内側を滅ぼすのは簡単だ。
壁を破壊してやればいい。
壁の高さはおおよそ50m。
ベルトルトの『超大型巨人』が大体60mだから、蹴り一発で綻びにはなるだろう。
そこに俺の『鎧の巨人』によるぶちかましを叩き込めば十分な穴が開き、後はそこからなだれ込んだ無垢の巨人が内側を殲滅してくれる。
壁は三層あるらしいからそれだけでは無理だろうが、大量の難民が生まれれば悪魔どもが勝手に殺し合ってくれるだろうという算段もある。
その後俺たちも内側に入り込み、内側からの破壊を加速させる。
ここについては賛否両論だったが、無垢の巨人は俺たちにも攻撃してくる以上拠点は必要であるという事で、潜入することとなった。
そんな算段の全てを無に帰す存在を確認するまでは。
「なんだありゃあ・・・」
「壁内人類の秘密兵器?」
「そんな技術あると思うか?」
巨人、そう巨人だ。
しかし無垢の巨人と言うにはあまりにも異形で、九つの巨人と言うには記憶にない。
まずデカい。
無垢の巨人では最大級でも15mだが、明らかにその五倍はある。
超大型と比べても一回り大きい異常な巨体だし、そのくせ見た限りでは超大型よりはるかに機敏だ。
次に体表。
全体的に紫色だが、所々緑の意匠が散見される。
鎧の巨人の様な硬質化ではなく、もっと直接的に『巨人に鎧を着せました』とでも言わんばかりだ。そうして何の得があるのかは知らないが。
この作戦についているのは、後詰めの可能性を排除すれば、俺たちだけ。
そして俺たちに通達されていないのなら、あれは敵の可能性が高い。
あの手の込み様だ。かなりの決戦兵器であることは間違いないはず。
であれば最上の策は、見回した限り敵のいない今のうちにあれを破壊する事。
「ベルトルト! 巨人化してアレを壊せ!」
「でもライナー! いいのか!?」
「あれは恐らく敵の決戦兵器だ! お互いに増援が見込めない今の内に破壊した方が良い!」
「ライナー! 私とアンタでベルトルトのサポートを!」
ベルトルトがしり込みするが、マルセルを食われたんだ。
あまりリスキーな選択、つまり積極的敵対行動は避けたいのだろう。
それは俺も同感だ。
しかし壁の破壊を妨害される可能性を排除したいし、破壊後では集結して巨人の力を使い難い。
あの紫の巨人『だけ』に戦力を一気に投入するには、今しかないのだ。
アニもそれを理解している。
理解してサポートを買って出た。
作戦はこうだ。
まずベルトルトが巨人化する。
その際の落雷に紛れて俺とアニが巨人化。
敵が超大型に注目しているうちに左右から女型と鎧で攻撃。
体勢を崩したところに超大型が止めを刺す。
失われた進撃と顎の為に作っておいた陣営だ。
通達すれば、ベルトルトは決意を固めたようだった。
「行くぞ!」
ベルトルトの巨人化。
それに紛れての俺とアニの巨人化。
ここまでは作戦通り。
敵の視線は超大型に釘づけだ。
即座に左右へ飛び込んだ俺とアニ。
超大型を注視する敵の脚に対人技術を極めたアニの蹴りが突き刺さる。
・・・かに、思われた。
アニの蹴りは空中に押しとどまっていた。
まるで寸止めでもしたかのように。
臆病風に吹かれたか?
違う、彼女がそんな奴でないことは良く知ってる。
であれば・・・あったのか。『何か』が。
思わず蹴りを止めてしまうような何かが。止めざるを得ない様な何かが。
まさか、座標か?
なら一刻も早く奪わなければならない。
その決意に後押しされて、俺は鎧の体で突進を敢行する。
が、駄目。
俺もだ。
俺の突進も、『何か』に阻まれて一定以上進まない。
そこに超大型の蹴りが敵に飛来する。
一挙手一投足が遅い超大型は、ずっと前から前蹴りを引き絞っていた。
二人の攻撃が終わった瞬間に到達するように。
超大型の体格から繰り出される超質量の前蹴り。
壁を容易く破壊できるであろうそれが敵に突き刺さる・・・ことは、やはりなかった。
俺やアニと同じ様に、何かに阻まれ敵に到達することはなかった。
その『何か』を、俺は見た。
六角形で橙色の波紋だ。
それが壁の様に宙に浮かんで、超大型の蹴りを防いでいた。
きっと同じようなものが、俺とアニにも展開されているのだろう。
超大型の蹴りを難なく防いだそれがある限り、俺たちにまともなダメージを通す手段はないことが分かった。
その紫の巨人が、ぎょろりとアニの方を向いた。
◆◇◆◇
嗚呼・・・今日は素晴らしい日だ。
『同類』に出会ったのだ。
そう、同類だ。
人の心を持ちながら明らかに人でない私が同類を見つけたのだ。
彼らも私と同じ様に、人の心を持ちながら、明らかに人でない状態に変化した。
間違いない。
彼らは私の先達だ。
私はこのエヴァの体を制御する術を持たない。
しかし彼らはどうだ?
普段は人でありながら、いざ同類に会うやエヴァに戻り、私に抱擁や歩み寄りを見せてくれた。
普段人な所為か、エヴァに戻ったときの縮尺が違う故に蹴りやタックルの様になっていたが、ATフィールドによって実害はなかったのだから言及の必要もあるまい。
もしも彼らに学ぶことが出来れば・・・私も、人に戻れるやもしれない。
普段は人となり、危機が迫ればエヴァとなって窮地を脱するような生活が出来るかもしれない。
私からだ。
まずは私から歩み寄る。
既に相手のエヴァに先手を取られたが、こっちからも歩み寄って人化の術を学びたい。
とくれば、まず口説くべきは女性だ。
男と言うのは基本女の尻に敷かれるものだろうから、彼女を口説き落とせれば他二人もなあなあで従ってくれるかもしれない。
人化の術を学べれば、彼らの言葉を覚えて本当の仲間になれるかもしれない。
そういう訳で私は女性の形をしたエヴァに向き直り、ボディランゲージとして手を差し出した。
◆◇◆◇
やられた。
鎧の外装を纏う俺や巨体のベルトルトと比べるとアニの耐久力はずば抜けて低い。
一対多なら頭数を減らすのは定石。そしてアニを狙うのは最善手だ。
よくわからん波紋の所為で攻撃できないし、左右に分かれたせいで身代わりも間に合わない。
ゆっくりと伸ばされる右腕が、まるで見せ槍のようだ。
アニも警戒してかバックステップで距離を取る。
紫の巨人はアニに向かって手を差し伸べた状態で静止し、それ以上のアクションを見せない。
距離を取ったアニ。
体勢を整えたベルトルト。
最大限近い位置にいる俺。
そしてアニに手を伸ばすだけの紫の巨人。
お互いに決め手がない現状が膠着状態を作った。
多分あの波紋は強力な防御を実現する一方で、紫の巨人からも攻撃できない状態を作ってしまうのではないだろうか。
そうだとすればこの現状にも納得がいく。
俺たちの攻撃は十分致命傷足りうるはずだ。
そうでなければわざわざ防御する必要がない。
波紋の防壁を解いた瞬間に攻撃されるのを警戒しているのだろう。
あの手を差し伸べる体勢は『構え』で、きっと俺たちが隙を見せれば波紋の防壁を解き、アニに攻撃するつもりだ。
一方で俺たちはその波紋の防壁が解かれるのを待つことになる。
鎧と女型はともかく、ベルトルトの超大型は経戦能力に乏しい。
あの防壁に費やすエネルギーがどれほどかは不明だが、何の躊躇いもなく出し続けるという事はかなり長持ちするのだろう。
この仮定に基づくなら、ベルトルトが力尽きた瞬間攻撃してくる可能性もある。
いや、あるいは元から超大型の持久力の無さを知っていて、その上での持久戦?
クソッ!
情報が少なすぎる!
◆◇◆◇
手を差し伸べたのに、警戒される様に距離を取られてしまった。
どういうことなのだろう。
あの歩み寄りは欺瞞だったとでもいうのだろうか。
否、それであるならキックの領域になってしまう程踏み込むわけがない。
そのキックで敵対関係なったら欺瞞の歩み寄りをする意味がないのだから。
私に足りないものはなんだ・・・?
待てよ。
そもそも彼女には『握手』という文化が無いのかもしれない。
そうだ、同類に会えて浮かれていた。ここは元より別の世界。国が違えば世界が違うように感じられた経験もあるし、本当に世界が違うとなればいよいよ次元が違うのかもしれない。
それに、だ。
歩み寄ると言ったのは私ではないか。
そんな私がまだまだ隠した伏せ札を持っていては彼らも歩み寄り難かろう。
自分ができる最大限を彼らに見せ、手の内をすべて明かした方が彼らとしても警戒の必要が無くなるし、そうすれば彼らに私がいかにエヴァとして未熟であるかわかるはず。
エヴァの体をどの程度知っているのかは彼らに教えておいた方が、人化の術も教えてもらいやすかろう。
私は伸ばした手を引っ込めて、自らの最大限を彼らに露出することにした。
◆◇◆◇
紫の巨人はこちらがどう動くか決めかねている内に次の一手を考え付いたらしく、アニに伸ばした手を下ろした。
そうしてしばらく俯いたかと思うと、いきなり顔を跳ね上げ。
『ウオオオオオオオオオオオ!!』
狼の遠吠えのような声で、絶叫した。
紫の巨人の全身にある緑の意匠が赤色に変わり、口がガバリと開かれる。
目は爛々と朱に染まり、その頭上に光の輪が生まれる。
突如として起きた突風が、俺とアニを吹き飛ばした。
ベルトルトはその質量故に耐えきったようだ。
紫の巨人はそのまま浮かび上がり、飛行船らしい機構など一切ないのに、容易く空中浮遊した。
ゆっくりとベルトルトの反対側に向き直った直後。
朱に染まった紫の巨人の両目が閃き、視線の先にあった巨大樹の森が爆発によって消し飛んだ。
特徴的な十字状の爆炎を、俺は一生忘れないだろう。
紫の巨人はまたもゆっくりと、俺たちの動向など毛ほどの興味もないと言わんばかりにゆっくりと、アニに視線を向けた。
ここからでもアニの体がびくりと跳ねたことが手に取る様に分かった。
そりゃそうだ、超大型の爆発でもなきゃあの規模の巨大樹の森を消し飛ばすなんてできない。
鎧の硬質化装甲だって突破できるだろうに、そんなものを女型に向けては一撃で爆死する事不可避だろう。
勿論あれが単に仕込まれた爆弾で、目の発光は起爆の合図、そう解釈もできるだろう。
しかしここいる俺たち、少なくとも俺は、あの爆発はこの紫の巨人の仕業であると確信していた。
おまけに空を飛んでいるとくれば、女型の徒手空拳じゃ手も足も出ない。
まあ、ジークさんがいたとしても波紋の防壁で弾かれて終わりだろうが。
そうだ、波紋の防壁。
あれはなんだったんだ?
あれを出してる間は攻撃できないんじゃないのか?
攻撃できるなら・・・あの時、奴は何故攻撃してこなかった?
そもそも、あの爆撃だって俺たちに向ければいいじゃないか。
勿論あれがこいつの仕業であると仮定した上での話だが、どうしてわざわざ示威行為の様に使った?
戦いたくない?
なら浮遊能力で逃げればいいだけの話だ。
敵対している存在にあんな風に見せる必要などないはずだ。
では、まさか・・・。
敵対して、いないとでもいうのか?
あの爆撃や飛行能力は単なる見せ札で、『自分はこれぐらいのことが出来る』という軍事的圧力をかけたうえでの交渉を望んでいる?
そうだ、それなら最初にアニに手を伸ばしたのも握手であるとすれば納得できる。
奴はあの時点で既に交渉に入るつもりだった。
しかし攻撃と警戒されたためにそれを中断。
自身の軍事力を見せつけ、交渉のテーブルに着く以外の選択肢を奪うと同時に軍事的圧力をかける。
それなら最初好きに攻撃されていたのは『俺たちに対抗手段などない』と分からせるための儀式。
ここまでの過程が正しいなら・・・奴は、もう一度アニに向かって手を伸ばすだろう。
俺の網膜には予想通りに奴がアニに手を伸ばす光景が映し出されていた。
◆◇◆◇
これが俺の全力全開だッ!
と言う風なテンションで擬似シン化第1覚醒形態まで見せたわけだが、それでも女性型エヴァはまるでおびえたように握手に応じる気配がない。
一応の確認としてもう一度握手の手を差し伸べたわけだが、これでも応じない当たり握手の文化はやっぱりないのだろう。
彼らは人化という私にできないことを習得している。
ならば彼らもシン化は可能だと思ったのだが・・・違うのだろうか。
思えば人とエヴァではあまりにも能力に差がありすぎる。
そう考えると、彼らは『エヴァの能力を圧縮する』術に長けていて、私は『エヴァの能力を引き出す』術に長けているのかもしれない。
レベルアップの途上ではなく、そもそもの方向性が違うということだ。
もしそうなら、お互いにエヴァのコントロール能力を教え合うことができ、双方の利益になるのではないだろうか。
元々一方的に教えを乞うのも筋が通らないと思っていたので、この仮説は渡りに船やもしれない。
私が少しウキウキし始めた所で、視界が真っ白な煙に覆われた。
◆◇◆◇
この大量の蒸気・・・ベルトルトか!
ベルトルトめ、アニの危険に焦ったな。
しかしこれは悪い手ではないかもしれない。
現状俺たちに紫の巨人を倒すすべはない。
奴との交渉でどんな無理難題を吹っ掛けられるか分かったもんじゃないのだから、交渉自体をおじゃんにできればなんとか逃げれるかもしれない。
交渉を持ちかけるという事は、あちらも俺たちに利用価値を見出しているという事。あの爆撃を気軽に叩き込んでくる可能性は低い。
・・・ここまでの理論武装が希望的観測に基づいている上、自分でも無理がある話だとは分かっちゃいるが、そうとでも思ってないとやってられん。
鎧の頑強性を活かして蒸気の中を突っ切り、女型の巨人からアニを回収。
超大型が一際大きく蒸気をバラまいたところで、離脱、というより落下してきたベルトルトを回収。
二人を口の中に入れ、なりふり構わず全力疾走。
スタミナの配分なんて微塵も考えちゃいないが、今はとにかく距離が欲しい。
あの爆撃を使うなら、稼いだ距離にどの程度の意味があるかも怪しいが。
手近な巨大樹の森に逃げ込んだが、紫の巨人は追ってこなかった。
◆◇◆◇
逃げられてしまった。
何かおかしな事でも・・・あったな。
彼らは『エヴァの力を圧縮する』ことに長けているが、『エヴァの力を引き出す』ことは出来ない。
そもそもエヴァの力がどれほどのものであるかも知らないのだろう。
彼らからすれば私は愉快犯的に森を消し飛ばした狂人である。
その上自分たちでは到底対処できない力であるとも思ったのだろう。
愉快犯的に圧倒的な力を振るう存在。
そりゃあ逃げたくもなるさ。
私でも逃げたい。
何かに導かれて、違う世界まで来てしまった。
正確な年月こそ知らないが、とても長い間エヴァの体で過ごして、初めて遭遇するカルチャーショックである。
あるいは、周囲にいる全裸の連中の方が私に近いのだろうか。あまりそう思いたくはないが。
ようやく見つけた同類。久々のナンパの結果は振られて終わり。
何とも鬱な話だが、事実は事実。
そう受け入れて、私はまた独立独歩のままに歩みを再開した。
あ、擬似シン化第1覚醒形態解くの忘れてた。
エヴァの知識はあるけど進撃の知識はない主人公。
長い間生きてるせいで色々ふわふわしている主人公。
何があろうと絶対に人にはなれない主人公。