怪異症候群 怪異が創り出した怪物   作:まっちゃんのポテトMサイズ

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第五話 恩人

 

暫くすると、何故か聞き覚えのあるサイレンの音が聞こえて来た。

漸く来たのかと、僕は立ち上がり、姫野さんと金髪の少女に掛けていたコートを羽織る。

そうして、直ぐに窓から逃げようかと、近くの窓の縁に足をかけた時、激しい頭痛が僕の頭を襲った。

その直後、猛烈な倦怠感と吐き気に襲われ、僕は気を失ってしまった。

薄れゆく意識の中、視界に入ったのは、白髪の若い警官が僕の事を見て、驚いた表情だった。

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再び目を覚ますと、僕は葉が生い茂っている、平野の中に立っていた。

辺りを見回してみても、何もない。

只々、同じ風景が続いているだけだった。

 

「ここは…」

 

ふと、先程まで無かった人影が何時の間にか現れている事に気が付き、それに近づく。

そこにいる人間ならば、ここがどういう場所なのかが分かるのかもしれない。

そう思い、目の前に立っている人間に声をかける。

大きな背中に不思議と見覚えがあったが、その人間はこちらに背を向けたまま、口を開いた。

 

「何かな?」

「此処はどこですか?ついさっきまでは、こんな所には居なかったのですが…」

 

彼は少し慌てた様子で、僕の背中の方を指さした。

 

「今すぐにあの方向に行くんだ。速く!!」

 

その時の顔は良く見えなかったが、とても、優しそうな顔をしていた。

僕は彼の言う通りに、直ぐに駆け出した。

ただ我武者羅に駆けた。

 

「…良かった。彼は、まだ生きられるのか」

 

遺澄の背中を見送りながら、男はそう言った。

その男は、溜息を吐き、地べたに座り込んだ。

そして、空を仰ぎ、「久しぶりに会えてよかったよ。俺が救った命は、すくすくと成長しているようだ」と言った。

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目を覚ますと、僕はベッドの上に居た。

あの不思議な夢は一体何だったのだろうか。

思考を巡らすも、正確な答えは得られず、苦悶していた時、部屋の中に誰かが入ってきた。

僕は上体を起こし、その人物を睨みつけ、身構えた。

視界に映るのは白髪の若い警官。気絶する前に見た、あの警官だ。

僕はそうだと理解した瞬間、何故か、身構えるのを辞めた。

彼は、気まずそうに僕に声をかけた。

 

「久しぶり、ですね。黒田さん」

 

そう言われた瞬間、何故か、酷く懐かしい気分になったが、僕にはそれに見覚えが無かったため、それを無視して、口を開く。

 

「…ごめんなさい、人違いかと。僕は黒田と言う名前では無いですから」

 

僕はそう言って、ベッドから降りて、彼の横を通り、部屋の外に出ようとドアノブに手をかける。

その時、脳裏にあの新聞の記事が過った。

黒田怜という一人の警官が殉職した。

若し、彼の言う黒田さんがそれならば、僕を襲った急な吐き気の正体も分かるかもしれない。

あの新聞の記事を読んだと同時に起きたのだ。何らかの関係性があっても可笑しくは無い。

 

「…すみません。貴方の言う黒田さんは、黒田怜、であってますか?」

「…はい」

「ありがとうございます。…では、その黒田怜は、僕の事ですか?」

 

彼は口籠りながらも、コクリと頷いた。

では、今僕が動かしている身体は僕のものでは無い、黒田怜のモノという訳か。

魂の転送しかできなかったのか、将又、この世界に飛ばす際に何らかのアクシデントがあり、僕の肉体が無くなったのか、何方にせよ、僕にはどうでも良かった。

僕が気になったのは、これから先の事。

この世界での立ち位置だ。

 

「…では、どうするおつもりですか?僕は既に死んだ者。然も、貴方方の知っている、彼ではない」

 

黒田怜のようにふるまう事すら、今の僕には無理だ。

何せ、彼の生前の記録さえ残っていなければ、僕には警察官としての資質も無い。

友人関係ですら、僕は知らない。

 

「それはこちらで何とかします。…貴方の名前を聞いても良いですか?」

「僕は、怪月遺澄です」

「俺は氷室等です。…また、よろしくお願いします」

 

僕は差し出されたその左手を握る。

何故か、その光景に見覚えがあったが、恐らくこれは彼の記憶。

僕にとっては、関係の無いものだ。

 

「ええ。こちらこそ。…それと、敬語は不要ですよ。氷室さん」

 

僕はそう言って部屋の外に出る。

一瞬だけ映った氷室さんの若かった時の姿。

その姿に、黒田は憧憬を抱いていたのだと、そう思う。

彼の視点になった時、その感情が流れ込んできた。

只無垢な瞳でこちらを見つめる、彼はまるで正義の味方の様だった。

 

「…もう少しだけ、ここに居させてもらおう。その方が、僕にとっては都合が良い」

 

僕はそう言って自販機の隣に設置してあるベンチに腰を下ろした。

黒田。君はどうやって、肉体から魂を抜いた。

この肉体に一切の傷をつけずに、どうやった?

 

 




アンケートは31日に締めきらせていただきます

日常編は必要か否か

  • 必要
  • 要らんわぁ!!
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