怪異症候群 怪異が創り出した怪物 作:まっちゃんのポテトMサイズ
暫くすると、何故か聞き覚えのあるサイレンの音が聞こえて来た。
漸く来たのかと、僕は立ち上がり、姫野さんと金髪の少女に掛けていたコートを羽織る。
そうして、直ぐに窓から逃げようかと、近くの窓の縁に足をかけた時、激しい頭痛が僕の頭を襲った。
その直後、猛烈な倦怠感と吐き気に襲われ、僕は気を失ってしまった。
薄れゆく意識の中、視界に入ったのは、白髪の若い警官が僕の事を見て、驚いた表情だった。
_________________________________________
____________________________________
__________________________
__________________
________
再び目を覚ますと、僕は葉が生い茂っている、平野の中に立っていた。
辺りを見回してみても、何もない。
只々、同じ風景が続いているだけだった。
「ここは…」
ふと、先程まで無かった人影が何時の間にか現れている事に気が付き、それに近づく。
そこにいる人間ならば、ここがどういう場所なのかが分かるのかもしれない。
そう思い、目の前に立っている人間に声をかける。
大きな背中に不思議と見覚えがあったが、その人間はこちらに背を向けたまま、口を開いた。
「何かな?」
「此処はどこですか?ついさっきまでは、こんな所には居なかったのですが…」
彼は少し慌てた様子で、僕の背中の方を指さした。
「今すぐにあの方向に行くんだ。速く!!」
その時の顔は良く見えなかったが、とても、優しそうな顔をしていた。
僕は彼の言う通りに、直ぐに駆け出した。
ただ我武者羅に駆けた。
「…良かった。彼は、まだ生きられるのか」
遺澄の背中を見送りながら、男はそう言った。
その男は、溜息を吐き、地べたに座り込んだ。
そして、空を仰ぎ、「久しぶりに会えてよかったよ。俺が救った命は、すくすくと成長しているようだ」と言った。
_________________________________________
____________________________________
__________________________
__________________
________
目を覚ますと、僕はベッドの上に居た。
あの不思議な夢は一体何だったのだろうか。
思考を巡らすも、正確な答えは得られず、苦悶していた時、部屋の中に誰かが入ってきた。
僕は上体を起こし、その人物を睨みつけ、身構えた。
視界に映るのは白髪の若い警官。気絶する前に見た、あの警官だ。
僕はそうだと理解した瞬間、何故か、身構えるのを辞めた。
彼は、気まずそうに僕に声をかけた。
「久しぶり、ですね。黒田さん」
そう言われた瞬間、何故か、酷く懐かしい気分になったが、僕にはそれに見覚えが無かったため、それを無視して、口を開く。
「…ごめんなさい、人違いかと。僕は黒田と言う名前では無いですから」
僕はそう言って、ベッドから降りて、彼の横を通り、部屋の外に出ようとドアノブに手をかける。
その時、脳裏にあの新聞の記事が過った。
黒田怜という一人の警官が殉職した。
若し、彼の言う黒田さんがそれならば、僕を襲った急な吐き気の正体も分かるかもしれない。
あの新聞の記事を読んだと同時に起きたのだ。何らかの関係性があっても可笑しくは無い。
「…すみません。貴方の言う黒田さんは、黒田怜、であってますか?」
「…はい」
「ありがとうございます。…では、その黒田怜は、僕の事ですか?」
彼は口籠りながらも、コクリと頷いた。
では、今僕が動かしている身体は僕のものでは無い、黒田怜のモノという訳か。
魂の転送しかできなかったのか、将又、この世界に飛ばす際に何らかのアクシデントがあり、僕の肉体が無くなったのか、何方にせよ、僕にはどうでも良かった。
僕が気になったのは、これから先の事。
この世界での立ち位置だ。
「…では、どうするおつもりですか?僕は既に死んだ者。然も、貴方方の知っている、彼ではない」
黒田怜のようにふるまう事すら、今の僕には無理だ。
何せ、彼の生前の記録さえ残っていなければ、僕には警察官としての資質も無い。
友人関係ですら、僕は知らない。
「それはこちらで何とかします。…貴方の名前を聞いても良いですか?」
「僕は、怪月遺澄です」
「俺は氷室等です。…また、よろしくお願いします」
僕は差し出されたその左手を握る。
何故か、その光景に見覚えがあったが、恐らくこれは彼の記憶。
僕にとっては、関係の無いものだ。
「ええ。こちらこそ。…それと、敬語は不要ですよ。氷室さん」
僕はそう言って部屋の外に出る。
一瞬だけ映った氷室さんの若かった時の姿。
その姿に、黒田は憧憬を抱いていたのだと、そう思う。
彼の視点になった時、その感情が流れ込んできた。
只無垢な瞳でこちらを見つめる、彼はまるで正義の味方の様だった。
「…もう少しだけ、ここに居させてもらおう。その方が、僕にとっては都合が良い」
僕はそう言って自販機の隣に設置してあるベンチに腰を下ろした。
黒田。君はどうやって、肉体から魂を抜いた。
この肉体に一切の傷をつけずに、どうやった?
アンケートは31日に締めきらせていただきます
日常編は必要か否か
-
必要
-
要らんわぁ!!