怪異症候群 怪異が創り出した怪物   作:まっちゃんのポテトMサイズ

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第八話 怒り

 

人気がしない道路を暫く駆けていると、神社がある事に気づいた。

僕はそれに不思議な気配を感じ、白虎の姿を解除し、その鳥居を潜る。

その瞬間、その気配が急激に大きくなり、不思議さを通り越し、不気味とまで感じるようになった。

そこには賽銭箱の前に立っている還暦を迎えたような歳の老人の男の姿があった。

その老人は僕を見るなり、笑みを浮かべて口を開いた。

 

「…こんな辺鄙な所に何か用かね?」

「…いえ。ただ目に入ったので寄ってみただけです」

「そうかい。何もないが、ゆっくりしていきなさい」

 

老人はそう言って溜息を吐き、空を仰いだ。

僕は首を横に振る。

 

「すみませんが、それはできません。僕は未だ用事が残ってますから」

 

そう言って鳥居を潜り、道路に出て、老人の視界に入らないところで自身の姿を白虎に変える。

そしてアスファルトを踏みしめ、道路を駆けようと地を蹴る。

その瞬間、遠くから姫野さんの悲鳴だと思われる声が正面から聞こえてきた。

一気に加速し、悲鳴が聞こえてきた場所に直ぐに駆けつけ、白虎の姿を解除する。

そこにはコンビニがあり、姫野さんは中にいるようだった。

僕は直ぐにその中に入り、腰が抜けたように床にへたり込んでいる姫野さんに近づく。

 

「…ここで何があったんですか?」

「さっきまでそこにいたおばさんに声をかけたんですけど、何度も声をかけても無視をするばかりで、それに由香が怒ったように声をかけたんです。そしたら、そのおばさんは急に怒りだして、由香の胸倉を掴んでここから出て行ってしまったんです」

 

僕はそれだけ聞いても姫野さんの言うおばさんとやらは狂っているのだと理解する事は出来た。

そのおばさんを対処するという面倒事が増えたと密かに溜息を吐く。

 

「…それで?

「私も止めようとしたんですけど、突き飛ばされて…」

 

姫野さんは胸の前で両手を組みながら顔を陰らせてそう言った。

 

「分かりました。取り敢えず、貴女はここで待機していてください。僕は神代さんを助けてきます」

 

僕は姫野さんを立ち上がらせ、コンビニを後にする。

そして、負の感情を地面に流し込み、この地域一帯に意識を裂く。

脳内に入ってくる膨大な情報量に眩暈がして、身体がふらつく。

そんな事はお構いなしに意識を裂き続ける。

すると、下着姿の神代さんとおばさんの姿がある小さな小屋の近くにある田んぼの景色が流れ込んできた。

直ぐに意識を裂くのを止め、自身に集中させる。

そして白虎の姿に変え、道路に亀裂が入る程に地を踏みしめ、地を蹴ってその景色の場所に向かう。

着いたと同時に神代さんはその田んぼに突き落とされ、泥だらけの姿になって居た。

僕は心のそこから沸々と何かが湧き上がってくるのを感じながら、奇妙な笑みを浮かべているおばさんに声をかける。

 

「…おい、アンタそいつに何してくれてるんだ」

「…アンタ誰だい。部外者がアタシらの問題に口出してくんな!!」

「部外者であろうと、アンタの仕出かした事は悪そのものだ。悪行を止めようとして何が悪い」

 

僕はそう言いながら、田んぼの中で尻餅をついている神代さんの腕を掴んで引っ張り出す。

神代さんの目には涙が浮かんでおり、僕は背後に神代さんを回らせておばさんと対峙する。

 

「そうかい。アンタはそいつの仲間って訳かい。…もういいや、アンタらは殺す事にした」

 

おばさんはそう言ってポケットからカッターナイフを取りだし、刃を出してその先端をこちらに向けた。

 

「…アンタに殺される程僕は弱くない」

 

僕は地を蹴り、おばさんの腹部に膝蹴りを叩き込む。

おばさんは吐血して数メートル吹っ飛んだが、フラフラしながら起き上がってこちらにカッターナイフを突き出しながら突撃してきた。

僕はそれを左の二の腕で受けながら、右手でおばさんの頭を掴み、地面に叩きつける。

するとおばさんは白眼を剥き、泡を吹いて気絶してしまった。

追い討ちをかけるべく右の拳を振り上げるが、その拳を神代さんが背後から両手で包んで止めた。

 

「…もう、大丈夫です」

「貴方がそう言うのなら、僕は辞めざるを得ませんね」

 

僕は拳を下ろし、負の感情で自分と同じサイズの手を創り出し、それで神代さんの頭を撫でる。

 

「辛かったでしょう。もう大丈夫ですよ」

 

神代さんは涙を流すのを堪えているのか、時々噎せていた。

 

「…ここには僕以外誰も居ませんし、僕も貴女の無く姿を見ません。だから、我慢せずに泣いても良いんですよ」

 

僕がそう言うと、神代さんは徐々に咽び泣き始めた。

僕は空を仰ぎながら、溜息を吐く。

突然、僕の背後に神代さんがもたれかかってきた。

僕は想定外の出来事に驚いたが、あれ程の辱めを受ければ、仕方のない事だと、そう思うようにした。

 

「…勘違いしないでくださいね。私は別に貴方に惚れたわけでもないですから」

 

彼女は僕の背中にもたれかかった事の照れ隠しのようにそう言った。

僕はそんな事を特段気にしてもいなかったので、「はい」とだけ言った。

 

日常編は必要か否か

  • 必要
  • 要らんわぁ!!
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