バカと明久と怪異死譚   作:イビルジョーカー

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何とかストックを溜めて、改めて投降することが出来ました(汗)

前作よりも良い具合に仕上げたと思います。


よしいゾンビ その壱

 

 

僕が周囲からバカと呼ばれるようになったのは、いつからなんだろ。

 

正直なところ、僕は自分がバカだとは思ってないし、勉強が出来ない=バカっていうのは

色々な意味で不自然で不合理だと思うんだ。

 

そんなわけで周囲にバカと認知されている僕は高校生になってから一度目の夏を迎えた。

 

長ったらしい終業式が終わって、先生から通信簿を受け取ると、いつもよくつるんで色々

やってた雄二達と別れを告げる。

 

それが意味するのはズバリ、明日から夏休み。

 

そう思うと僕のテンションは凄まじく熱い、どこまでも超絶ヒートアップな状態!!

 

もうアレだね、今なら学年トップになってもおかしくないほどの学力が発揮できそうだよ。

 

なんて……たぶん、そんな無駄にハイテンションだったからこそ、この後に待ち受ける展開

に至ったんだって常々後悔することになるんだ。

 

事が起きたのは、僕が内心上機嫌に学校帰りのハンバーガーでも食べようといつも通ってる

マクドナルドへ向かおうとした時だった。

 

時間は1時18分。僕が文月学園を出てから、軽く一時間は経過したことになる。

 

その間に僕が何をしていたのかというと気分転換、と家に帰りたくないからっていう、

そんな理由で適当に散歩してた。

 

いや……別に家族と仲が悪いとか、そういう複雑な家庭事情があるわけでもなく、ただ単純に

家に帰りたくなかっただけで別段深い意味は無いんだ。微塵も。

 

僕の家族構成は両親に僕、姉一人、妹三人っていう感じになってるんだけど、姉さんは留学で

いない。だから事実上は僕の家には両親と妹三人だけってことになってる。

 

家に帰ると多分妹たちが色々と騒いでるだろうし、そこに僕が「巻き込まれる形」で加わるっ

て可能性も否定できないんだ。

 

だから僕は時間を潰して、適当にマグドナルドで昼食を食べて、それでまた時間を潰して家に

帰るっていう、そんな選択肢を取ったわけなんだ。

 

とまぁ、そんな経緯で今僕はマクドナルドの近くの踏み切りの前まで来ていた。

 

ここを渡れば、マクドナルドはすぐそこにある。

 

丁度その時は電車が来る前だったから、踏み切りの閉鎖棒が降りて来て道を遮る頃合いだった。

 

ふと目の前を見てみると、そこに一人の女の子がいたんだ。

 

ふわっとした感じの桃色の波打つような長い髪に誰もが十中八九『可愛い』という美少女がいた。

 

僕は、その女の子を知ってた。

 

『姫路瑞希』。

 

それが彼女の名前。

 

昔、正確に言うと、小学生の頃からの知り合いで実際に会って喋ったことは2度くらいしか

ない。理由は彼女が才色兼備の優等生で、僕は世界の隅っこにでもいそうな底辺の劣等生。

 

つまり僕的には彼女は合わないんだ。根本的に。

 

このまま素通りしよう。彼女の方もどうせ僕なんか気に入らないだろうし、絶対その方がいい。

 

正直ヘタレなこと言うかもしれないけど、そもそも僕って実のところ異性との接し方ってやつが

分からないんだ。

 

女友達に島田美波ってやつがいるんだけど、美波は何て言うか……女の子らしさがあんまりない、

いや、美少女であることには違いなんだけど……まぁ簡単に言うなら「男勝り」なんだ。美波は。

 

だからこそ、異性でも普通に友達感覚で接することができるんだけど、姫路さんは違う。

 

女の子らしさが満面に出ていて、多分…今時にしては珍しい『天真爛漫で天然な女子』だと思う。

そんな性格と学年トップっていう組み合わせが良いらしくて、僕が通っている特殊な高校の「文月

学園」ではそれなりの有名人なんだ。

 

所詮、学年トップとは正反対の最底辺に位置する僕にとっては、やっぱり姫路さんは「高嶺の花」

に等しい。とまぁ、色々言ったけど「とにかく見て見ぬフリ」が一番だと僕は思ったわけで、何も

言わずこのまま一直線に歩いてマクドナルドへ向かうつもりでいた。

 

その筈だった。

 

姫路さんの胸元を見てしまったのが最大の原因だった。

 

何故なら今、姫路さんは学校帰りの途中なのか半袖の夏物制服を着用状態。

 

当然なことだけど、夏物の制服は普通の制服と違って薄い。

 

薄い。ということは、つまるところ水分を吸収してしまえば途端に透けて見えてしまうのがどうに

もできない運命なわけで……もうはっきりと言っちゃうけど! 汗で透け透け状態になってブラが

うっすら見えちゃう感じになってるんだよ!!

 

やばい。どうしても目があそこに行く!

 

どうしても!!

 

「あ、やばっ」

 

気付かれた。気付かれてしまった。

 

彼女は自分の今の状況と僕の存在に気付いてしまった。

 

やばい。すっごくやばい!!

 

どうしよう。どうしよう。どうしよう。

 

このままだと僕は……視姦の変質者扱いされるぅぅ!

 

僕と姫路さんの間を電車が風のように駆けて行く。

 

そして完全に通り過ぎ去った瞬間、僕は一気且つ一直線に全力疾走した。

 

このままいけば、姫路さんの横を通り過ぎる形でマクドナルドに行ける!

 

そう確信した。

 

でもこういう時に限って失敗するのが吉井明久、即ち僕の随一の欠点だと言えるのかも。

 

焦って、焦りまくって、勢いのあまり軽く吹っ飛ぶように転んじゃったんだ。

 

しかもその先には姫路さん…………結果から言って僕の目論見は潰えてしまった。

 

でも最悪なのは目論見が潰えたことじゃない。あろうことか僕は姫路さんを押し倒すような

格好でブラがスケスケ状態のおっぱいに自分の顔を突っ込んでしまったことなんだ!!

 

あぁ……もう終わった。

 

僕の人生は「性犯罪者」という絶対に消せない汚点をつけて終わるんだ……。

 

「え、あ、あの~~大丈夫ですか?」

 

って、思ってたら何か様子が予想してたのと違う……というより何かおかしくない?

 

普通に考えて痴漢的行為も同然なことを今、現在進行形でされてるっていうのに何故

に彼女は僕に対して心配そうに声をかけるんだ?

 

おかしいって絶対。

 

「あ、いや、その……そっちこそ大丈夫?」

 

僕はとりあえずこのままの態勢は拙いって事で顔を胸から離して(すっごい名残惜しい

けど)立ち上がってみる。

 

そんでもって姫路さんに手を差し伸べて起きるよう促す。

 

対して姫路さんは何処か遠慮しがちな感じで、僕の手をとってくれた。

 

………………………………………………………………………そして続く、沈黙の間。

 

とりあえず、踏み切りのど真ん中にいるのはすっごく危ないからすぐ離れた。

 

「あの、その、何ていうか……ごめんっ!」

 

「い、いえ、気にしないで下さい吉井君。あ、あれはあくまで事故だったんですし」

 

まさか、こんな安物のエロゲみたいな結果になるなんて誰が予測できたんだろうか。

 

あれ?

 

っていうか……姫路さん今、僕の名前呼ばなかった? 幻聴?

 

「私はこれでも物事はちゃんと見極めてるつもりですよ、吉井君。吉井君がわざと

そうしたんじゃないってことくらいは分かりますよ」

 

うん。どうやら幻聴じゃないみたいだね。

 

「いや、何ていうか、個人的に言いたいことは色々あるんだけど、何で姫路さんは

僕の名前知ってるの?」

 

「何でって……すごい有名ですよ? 『文月学園一のバカ』だって」

 

「………」

 

この場で訂正したかった。僕は馬鹿なんじゃない!って。

 

でもよくよく考えてみれば、ついさっき同じ学園に通う女子生徒に対して視姦紛いな

ことをして、しかもその見事なおっぱいに自分の顔を突っ込んだこの僕が、どんな顔

をして弁解したらいいのか。

 

まったくもって思い浮かばないってのが正直悲しいな。

 

結局、犯罪紛いなバカを犯した僕に言い訳なんてできる余地はないってことなんだね。

 

「それを言うのなら、姫路さんだって有名人じゃないか。文月学園でも類を見ない秀才

だって先生が言ってたし」

 

「え?…………あの、できればそういうのはやめて下さい。その、そういう類の冗談は

あまり……」

 

あぁ~なるほど。

 

意外と『自分が天才だ』っていう自覚がないんだね、姫路さんは。

 

でも『自分は天才だぜ』とか『そこらの奴とは格ってやつが違うんだよ、格ってやつが!』

 

なんて。

 

こんな感じで自己顕示してくる性悪よりは断然マシだと思うけど。

 

ともかく、姫路さんが気を悪くしたんだったら素直に謝らないと。

 

「ごめん姫路さん。そんなつもりで言ったんじゃないんだ」

 

「あっ、いえ、そんな……」

 

な、なんか空気が重いな。

 

このままじゃいけないのは僕でも分かる。

 

だから今、僕の中で最大適用候補であるプランが二つほど上がっていた。

 

『プランA』/昼食に誘う(二人一緒にマクドナルドへ直行)

 

『プランB』/謝罪して何か埋め合わせするとか言ってその場を去る

 

この選択肢の内、実践するのは二つに一つ。

 

だとしたら………………………うん、プランBが妥当だ。

 

ぶっちゃけ一緒にマクドナルド行って食事するのって色々とプレッシャーになるだろう

し、あの姫路さんと一緒に食事するなんて僕と彼女の相性的に合致しないと思う。

 

だったら、ここはやっぱり『プランB』で行くのが正解だよねっ!

 

「本当にゴメン、姫路さん。この埋め合わせは必ずするから…っ!?」

 

さっそくプランBへの移行を決意した僕の手首辺りを掴み、にっこりと笑みを浮かべる

美少女こと姫路さん。何故か恐怖を感じるのは気のせいだろうか?

 

「今、埋め合わせして下さい」

 

「え? いや、すぐにでも行かないといけない用事が…」

 

「今、埋め合わせして下さい」

 

「だ、だから用事が…」

 

「今、埋め合わせして下さい」

 

「用事が…」

 

「今、埋め合わせして下さい」

 

「……何をすればいいでしょうか?」

 

折れた。

 

完膚なきまでに折れてしまった。

 

「何か食べ物を奢って下さい、それでチャラにしてあげます♪」

 

姫路さんはそう言って、笑顔を浮かべたままマクドナルドの方角を指した。

 

 







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