自分の好きなキャラを忍とメメのポジションに当て嵌めてみました。
約一名は名前を変えていますが、『黒執事』を知っている方ならすぐ分かる
と思います。
では、どうぞ。
人生何が起きる分からない。
まったくもって、同感だって僕は思う。
だって僕はそれを身をもって経験したんだから。
「………………ここ、何処?」
気が付いてみれば僕は見知らぬ場所で意識を失い、眠っていたらしい。
となると、地下道での出来事は全部夢?
でもそうなると今僕がいる場所の説明が付かないんだけど。
よし、とりあえず今置かれてる状況を説明しよう。
まず僕は計六つの会社なんかで見るような机を合わせて作られたような、
そんな即席ベッドと呼ぶにも適当過ぎるような代物の上に寝ていた。
埃っぽく何年も人が使っていないようなボロい部屋で、僕は気を失っている間に
何者かによって此処へ運び込まれた……らしい。断定はできないけど。
で、ふと自分の服を見てみた。
その瞬間、僕の背筋に悪寒が奔った。
だって、それが、あの蜘蛛に切り裂かれた部分のそれがあったから。
そして僕はポケットにしまっているアイフォンを手に取り時間を確かめてみた。
「七月三十日って……夏休みが七月二十五日から始まるから、あの日から五日も
経ったってこと!?」
うわ~やばっ。
両親と姉は海外出張とかでいないけど、3人の妹達は絶対心配してる。
とりあえず、早く帰え……
「気が付いたか。人を、いや魔を待たせておいて出てきたセリフがそれか?」
突然の声に僕は急速に後ろを振り返りながら情けない悲鳴を上げた。
俗に言うところの『ひィィっ』って具合で。
「き、君は、あ、あ、あの時の……」
「随分と震えているな、声が。まぁ一度死ぬなんて経験したらそれも仕方ないか」
ボロボロの背もたれがないタイプの丸い椅子に腰を降ろし、じっと見つめる一人の
男の娘を僕は知ってる。
あの時、正体不明の黒い不定形蜘蛛を相手に難なく勝ちゃったあの子だ。
「こ、ここは、君は一体……」
「誰と? 僕は『シエルアンダーブラック・アレストル・ファントムハイヴ』と
言うものだ。言っておくが僕は人間ではなく『悪魔』だ。だから、あまり不敬な
言動並び行動や態度は身を滅ぼすと思え」
あくま? アクマ? 悪魔?
あの宗教で出てくる超自然的存在な意味での悪魔って言いたいの?
………………うわぁぁ………この子色々な意味で痛いんですが。
「その顔だと信じられないか。なら証拠を見せてやる」
そう言ってシエルアンダー……すごい長いからシエルでいいよね。
シエルの両眼の瞳が鮮血のような真紅に染め上げられたんだ。
一瞬の内に。それこそ2秒さえ経たない速度で。
表現力に欠けた僕がどう言ってもどういった具合にとか風とか、そんなものは
正直なところ一切説明できないけど、確実に絶対にありえない現象が其処にあった。
ただ、それだけしか言えない。
「君が悪魔なのは分かった。でも、ますます分からなくなる。どうして僕を助ける
ような真似を? 悪魔って人を騙して魂を奪うようなものなんでしょ?」
「まぁ、悪魔にも個々に色々いるが、それが事実でないと断言はできないな」
そう言って、目の前の美しい男の娘の姿を形作る悪魔は妖艶な笑みを浮かべた。
「とりあえず、僕がお前を助けたのには理由が二つある。一つは僕の最高傑作である
ところの眷属を作る為、もう一つは大幅な規模で力を失ってしまった僕の代わりに、
4人の刺客を返り討ちにしてもらうことだ」
「……君、狙われてるの? てゆーか眷属って……」
「意味が分からないなら、これで確認させてやろう」
そう言ってシエルは何処にしまい込んでいたのか分からない一本のサーベルを何処から
ともなく取り出して、
それを僕の胸の中心辺りに思いっきり突き刺した。
って、ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
死ぬっ! 僕絶対に死んだああああああああーーーーーーーーーーーっっっっっっっ!!
「何やら見当外れに勘違いしている様子だが、よく見てみろ」
「へ? あ、あれ? 僕……生きてる? というより痛みが全然ないっ?!」
心底間抜けな声を出してしまった僕だけど、これに関してはしょうがないと思う。
だって、自分の胸が殺傷力バリバリの剣一本を胸に突き刺されたっていうにも関わらず、
僕は生存しているんだから。
こ、これじゃあ、まるで僕が人間でなくなったみたいじゃないか!
「な、なんだよこれっ!? 僕に一体何をしたんだ!!」
「簡潔に言うとお前はもう人間ではない。お前は僕の手で蘇生したと同時に
『ハーフゾンビ』という、今までに類を見ないであろう新種の怪異として、
誕生したということだ。お前が意識奪う前に僕はちゃんと言ったぞ?
『是非を問わず助けてやった報酬を貰う』とな」
ようこそ、闇夜の世界へ。
そう続けるシエルに僕は最大限の感情を声に乗せてシエルに叩き付けた。
「ふざけるな! 人を化け物にしておいて……こんな横暴!」
「落ち着け人間、いや半死人間。確かにお前は人間ではなくなったが、もう一つの理由を
何とかすれば晴れて人間に戻れるぞ?」
「へ?」
あまりに意外な言葉に、僕は一瞬だけど呆けちゃったらしく間抜けな声を上げた。
リザードショット。
ナイフリッパー。
ストーリー。
マッドアクション。
以上がシエルの命を狙う4人の刺客の名前らしい。
てゆーか、もろ人名じゃないよね……これ。
「話を纏めると。つまり君は今、わけあって本来の力が発揮できなくて、その
わけっていうのが今言った4人の怪異退治を専門にしてるハンターに力を奪わ
れて、おまけに心臓まで盗まれた、ってことでいいのかな?」
「ああ。その通りだ。情けないことにあのハンター共の罠にかかって僕の力……
お前達人間が言うところの『魔力』が奪われたんだ。おまけにその魔力を二度と
生成できないよう心臓まで奪い取られて、本当に散々だ」
イラつきを隠そうともせず、舌打ちを鳴らしながら忌々しそうに言葉を吐き捨てる
シエルに僕は恐る恐る、気になったことを質問してみた。
「あ、あのさ。その罠って……どういう風に?」
「実に美味そうなパフェとケーキが目の前にあって、それに釣られてたら身動きを
封じられた挙句、4人同時のフルボッコを受けた」
………………………………………………………………この子、本当に悪魔なの?
いや、絶対違うでしょ。
というより、個人的観点からして甘いものに釣られる罠に嵌められる悪魔なんて、
悪魔に対する人の既存的なイメージを容赦なく壊しているようなもんだよ?!
「壊すも何も、僕にとって甘いものは何物にも代え難い至高の一品なんだぞ」
心を読まれた?!
くっ! そこはどうやら腐っても無駄に悪魔らしい、無駄に。
「話を戻すが、そんなわけで心臓が奪われた今、僕は急激に弱体化している。現在
進行形でな。このまま行けば最悪死なないにしても、お前を襲ったあの蜘蛛の怪異
にすら劣ってしまう」
「…心底悪い状況なのは解ったよ。で、弱体化した自分の代わりに4人のハンター
を返り討ちにできる実力を持つ手足を作るために僕を利用したんだね?」
「利用は利用だが、ちゃんと報酬は払ったぞ? あの時、お前は自分の死を認めず
怪異相手に中々気骨のある精神を見せたじゃないか」
あれが、あの行動が、生きることを放棄した人間の成せるものなのか?
そう続けて言うシエルは。
シエルの妖艶で魅惑的な笑みは。
まさしく『悪魔』を思わせるに相応しいものだった。
「違うだろう。だから僕はお前を選んだ。ようは興味を持ったんだよ。だから本当
なら100%ありえないことだが、死ぬ運命だったお前の未来を変えてやったんだ」
少しは感謝の態度を見せたらどうだ?
と、口には出していないけど、そう思ってるのが気高い雰囲気と傲慢過ぎるくらいの
態度で嫌と言うほど解るよ。
「……色々と解らないことが多すぎだけど、とりあえず君は僕の命の恩人…なんだよね?」
「ああ、違いない」
さも当然だ、とばかりにシエルはそう答えた。
「で、実際のところどうする? このまま『ハーフゾンビ』として生きるか、あるいは今
一度人としての生を取り戻す為に奮闘するか、選択肢は二つに一つだ」
「…………僕は、僕はこのまま化け物として生きていく気は更々ないよ。絶対に人間に
戻ってやる!」
僕だって、僕自身にとって大切な家族や友達がいて、とてもかけがえのないものが沢山
あるんだ。正直もう非現実的なことの連続でどうにかなってしまいそうだけど、この僕
に化け物として生きていくような覚悟と根性は微塵だってありはしない。
だったら。
後腐れなくこの悪魔に恩を返して、それで人間に戻る為に努力を惜しまず、最後の最後
まで足掻いて見せるさ。
「ほう。やはり中々気骨な所があるじゃないか。大抵の人間なら正気を失くして狂うと
いうのに……まっ、その方が色々面倒がなくて助かる」
いや、文面ではあたかも僕が素晴らしい人間性に溢れた人格者的に表現しているけど、
実際は違う。
もう、この時点で精神がどうにかなって狂いそうだよ。
「あれ?」
と、ここであることに気付いた。
僕があの蜘蛛の化け物に襲われてシエルに助けられた際、その時のシエルの一人称は
確か『我輩』だった筈だけど。
「そう言えばシエルって何で一人称が『僕』なの? あの時は確か『我輩』じゃ
なかったっけ?」
「………」
「ど、どうしたの?」
至って普通に質問したつもりなのに、シエルは怪訝な表情で僕を見るんだ。
何かおかしなことでも言ったのかな…いや、質問自体はおかしくない筈だと思うけど。
「……お前は僕を『シエル』というのか」
「え? な、名前? いやだって、フルネームで呼ぶの言い辛いし」
「まぁいい。この程度の不敬は大目に見てやるさ」
「不敬って……」
どうにもよく分からないなぁ。
シエルって呼ぶのがそんなに変なこと?
「さて。話が纏まったなら、後は行動に移すだけだ」
……………僕のさっきの質問は聞き流すつもりらしいね。
シエルはそう言いながら、僕に人差し指を向けて宣言した。
「お前、囮になれ」
相変わらずの傲慢な口調と態度を存分に醸し出しながら。
囮になれ。
その宣言通り僕はシエルを狙う4人のハンターを誘き出す為、住宅街辺りを
適当に散策していた。
シエル曰く『お前自体の気配を察知して奴等が仕掛けて来る』らしい。
つまり僕がこうやって適当に歩いているだけで人外としての気配、つまり存在性
と呼ばれる力の一種が放出され続け、その力を4人のハンターが察知できるから
必ず現れるという。
しかも、僕の存在性は生みの親と言えるシエルの存在性とほぼ合致してるらしい
から、疑うこともなくやって来るらしい。
ハンター達は常に4人一緒じゃなく、別々で行動してるらしいから最初の一人か
、もしくは二人程度を目安に勝負して打ち負かす。
それで援軍が来ない内に連戦を避ける為、その場から急いで撤退する。
それがシエル考えた策なんだけど、どうにも勝てる自信がない。
だって。
いくら人外の存在になって強くなったからって、何処に勝てる要因が?
相手はシエルみたいな悪魔や妖怪変化の類を狩ることを専門にしているプロの
ハンターでシエル曰く『非常に優秀で失敗などしない』っていう、お墨付き。
そんな連中を相手にして僕は勝てるのか?
でも、それでもやらないと、僕は人間には戻れない。
シエルは言った。
『お前を元の人間に戻すには奴等に奪われた心臓を取り戻して、魔力を回復させる
必要がある。お前をハーフゾンビにするのに心臓を奪われ、大幅に魔力を失った
あの状態で更に魔力を使い消費したんだ。心臓がない限り僕は永遠に魔力を回復
できないどころか、このままでは存在性も失って何れ消滅してしまう』
つまり、この言葉が嘘偽りなく本当に真実なら一刻も早くシエルの心臓を取り戻す
必要がある。
だから、だからこそ僕はシエルに協力した。
もっと正確に言えば『協力せざる得なかった』だけど。
時刻は11時38分。当然ながら街は静寂の闇に包まれて、人の気配なんてまるでない。
ちなみに家族については『急で悪いけど、夏休みを利用して一人旅がしたいんだ』っていう
感じのメールを3人の妹たちに送った。
姉さんと両親は海外にいるから別段する必要はないと思う。
妹たちの返事はそれぞれ…
『何があったかは知らないけど、深入りされたくないだろうから敢えて何も言わないよ』
『お兄ちゃん、できるだけ早く帰って来てね?』
『あっそ。まぁ兄貴のことだから心配はいらねぇよな』
以上。
まず一番目が次女の『吉井月美(つきみ)』。
続いて二番目が四女の『吉井呉埼(くれさき)』。
最後が三女こと『吉井晶子(あきこ)』。
何ていうか……うん、やっぱ僕の妹達だな。
大体内容くらいは予想が付いてた。
でも最後の晶子、もうちょっと自分の兄について心配すべきじゃないのかな?
ふと、ここで僕は、自分が住宅街を抜けて自分がよく通る大通りの十字路の中心まで
来ていたことに気付いた。
そして前方に誰かがいた。
思わず息を止めかねないほど凄まじい殺気を放ちながら、そこにいたんだ。
それは……蜥蜴だった。
ちょっとしたSF映画かなんかに出て来そうな、蜥蜴人間。
頭が丸々蜥蜴で体が人間をベースにしていて、皮膚は爬虫類特有の鱗で覆われてる。
体色は赤茶色で、その両手には右手にショットガン、左手にマシンガンっていう二丁
拳銃スタイルと黒いジェケットを羽織った格好の状態で立っていたんだ。
やばい!
殺気に襲われた恐怖でそう思って、すぐにその場から逃げようとしたけど無駄だった。
前方にいる蜥蜴人間以外に右方、左方、後方に三つの人影がいたからだ。
しかもその三つが蜥蜴人間と同等の殺気を放ちながら僕を取り囲んでいた。
この時、僕はシエルの策の致命的なミスに気が付いた。
そもそも、四人のハンターが同時に到着しないなんて道理はない。
少し時間差はあるからもしれないけど、同時に4人全員が集結した場合、どうするんだ?
シエルの策はあくまでも一人か二人が前提のもので、人数的にハーフゾンビである僕が
何とかできることを想定したものだけど、4人をいっぺんに相手をするのは想定外だ。
下手すれば、このまま狩られる!
この後に起こる最悪な結末のイメージビジョンが僕の思考へと浸透している中でふと、
蜥蜴人間は怪訝な声を上げてギロリと僕を睨んだ。
「あぁ? おいおい何だよこいつ。全然ファントムハイヴじゃねえよ、おい。何で
こいつの存在性があいつと同じもんなんだよ?」
「ふむ。視察で分析する限り、この少年は人間であると同時に半分だけ怪異…ゾンビだ」
僕のいる位置から後方に立っていた白衣を着て、髪をポニーテールにした男の人が眼鏡を
くいっと上げながら淡々と言ってのけた。
……うわ、すごいイケメンだ。女の人と見間違うくらいに。
「シャッハハ! マジかよおい。つまりこいつは『ダンピール』みたいに半分人間で
半分吸血鬼っぽい奴ってことかよ。シシっ、イイ受けだ!」
「正確に言えば、あの少年はゾンビですがね」
今度は右方にいる誰かが蜥蜴人間の言葉に訂正を加えた。
よく見てみると、赤と青、あと黒の色をしたチャイナドレスを身に纏った女の人だ。
髪は緑色の長髪のストレートヘアーで、その肌は死人のように白くてまるで体温を
感じさせないような、そんな雰囲気がする。
「シエルアンダーブラック・アレイストル・ファントムハイヴ…我々の追っている
獲物が往生際悪く足掻いた結果として自分の手足となる使い魔的眷族を生んだもの
とすれば、何故こいつの存在性がシエルアンダーブラック・アレイストル・ファン
トムハイヴと同じものなのか、道理がつくっすね」
左方にいたのは、黒いレインコートを着てフードを被った、更に黒いガスマスクを
顔に被った声音からして女性。
しかも、たぶんだけど自分と同じくらいの年齢だと思う。
「なるほど。正論だな」
白衣の男がまたくいっと眼鏡を上げて僕を見定めるような目で見てくる。
「……つーことは、アレか? この半死体野郎にち~っと手荒い方法で尋問すれば
、オーケーってことなのかよ」
蜥蜴人間の手に持っていたショットガンがジャコンッ、っていう感じにリロードの
音がして、どこかさっき以上の殺意と敵意を発揮させたように見える………いや、
こいつマジで……僕を殺る気だ!
「そうなるな」
「同じくっす」
「その方が我々の性に合っていますね」
残り三人も、あの蜥蜴人間と同じように殺意と敵意を倍増させる。
いや……もう何ていうか、詰んだも同然だ!
成す術なんてない! あるとすれば徹底的に逃げるしかない!!
「くっ!」
僕は咄嗟の行動で十字路の中心から離脱して近くにあった百貨店の屋上に飛び移る。
内心、自分の跳躍力の凄さに驚いたけど今は全然そんな状況じゃない。
屋上から屋上へと飛び越えて、そのままその場を逃げようとする僕を4人のハンター
は当然ながら見逃すなんて真似はしなかった。
「シャッハッハッハッハッ! 最高にイイ受けだ。笑いが止まらなねぇなァ!」
「何が面白っすか。この変人蜥蜴は」
「貴方の意見に同意します。『リザードショット』は少し言動を慎むべきです」
「口論は後にしろ。今は、あのハーフゾンビの捕獲が最優先事項だ」
4人は談笑(?)しながらも確実に僕を追って来ていた。
まずい。
このままだとすぐに距離の差を縮められて捕まる!
そう思った僕は更にスピードを上げた。
こうでもしないと、あいつ等から逃げ切れる自信がまるでない!!
「スピードが上がったっすね。どうしますか? この距離だと……わちきのナイフ
による投擲は無駄に終わるっす」
「ふむ。『ナイフリッパー』の投擲は無理か。私や『ストーリー』に遠距離型の
攻撃技能は持ち合わせていない。となれば……」
「テメェはいちいち回りくどいんだよ、『マッドアクション』。この中でイイ具合
に優れた遠距離攻撃が出来る奴は、俺だけだろうが」
そんな会話を聞いて、僕は思わず後ろを振り返る。
その視線の先には、大体で20mくらいの距離から片手でショットガンを構える
蜥蜴人間の姿があった。
「まずっ!」
「遅ぇよ、馬鹿が」
バアァァン!
そんな発砲音と一緒に僕の右腕が吹っ飛んだ。
鮮血を撒き散らしながら、僕の腕は蒸発するように消え失せてしまったんだ。
本当なら腕を吹き飛ばされてもあの時みたいに痛みなんて無い筈なのに……
何で痛みを感じるんだ!?
あの蜘蛛の化け物にやられた時みたいな、凄い激痛ってわけじゃないけど、
痛いものは痛い!
「ぐあァっ!」
苦悶の声を上げて、僕はそのまま前方にあった大橋へと転がり込むようにして落ちた。
くっ……やっぱり痛い。
「ふむ。やはり半分とは言え生きているに等しい状態。普通のゾンビと違って痛みを
感じるようだな。うん、メモしよう」
白衣の男は懐からメモ帳とペンを取り出してスラスラと書いてみせる。
その間にも他の三人が僕へとじりじりと距離を詰めていく。
「とりあえず腕を吹っ飛ばしてみたが……おいおい。すげー再生能力だな」
その言葉に反応してか、ふと僕は自分の吹っ飛ばされた筈の僕の右腕は何事もなかった
かのようにあった。
これが、僕の、ハーフゾンビとしての再生能力なのか?
「よかった。これなら遠慮なく、どう拷問しても大丈夫そうですね」
「だな。んじゃっ、もう一回どっかの部位を吹っ飛ばしてみるか?」
そう言って再びショットガンを僕に向ける蜥蜴人間。
もう……ダメだ。
どうあっても4人同時を相手に出来るほどの力量は僕にはない。
ハーフゾンビはシエル曰く『シエル自身に次ぐ実力を秘めている』らしいけど、僕には
戦闘経験ってやつがまるで無い。敵をどうやって倒すのか、どういう手法で負かすのか
なんて……解るわけないじゃないか!
「今度は左腕だ。半死体野郎」
蜥蜴人間はショットガンの引き金を引き、また発砲した。
僕は思わず目を瞑った。
来るべき衝撃と痛みに耐える為に!
「ははっ」
ふと、そんな笑い声が聞こえた。
それにいつまで経っても衝撃は愚か痛みさえ全然来なかったんだ。
不思議に思った僕は、恐る恐る目を開いた。
よく見ると僕の前に誰かが立っていて手を前へ翳していた。しかも驚くべきことにその手
の先で弾丸は宙に止まっていた。まるでビデオの一時停止みたいな、そんな感じで。
「やれやれ……人が良い気分で散歩してたら、随分と面倒な場面に遭遇しちゃったよ」
僕の前に立つ誰かは……多分、既に20代後半になってる筈なのに中学生が着るような
半袖のシャツと黒いズボンを着た『美青年』っていうぐらいに結構なイケメン的風貌。
髪は少しボサついた、そんな感じの短い銀髪。
明らかに………うん、『100%』という数字を付けてもいいくらいに変な人だった。
「どうも初めまして皆さん。『渚カヲル』っていう者なんですけど、ここらで僕の顔に
免じて引き下がってはくれませんかねぇ?」
まるで人を小馬鹿にしたような、そんな口調で四人のハンターたちへ宣言した。
感想待ってます!