病院の一室で暁美ほむらは目を覚ました。
すぐさまベッド脇の引き出しからノートを取り出し、今回経験した特徴的な出来事や、過去に入手した武器の場所などをまとめていく。
其処にはこれといった感情の機微は感じられず、彼女にとってごく当たり前の日常動作であることを示していた。
時間帯は早朝であり、ひっそりとした静寂の中、ノートにシャーペンを走らせる音だけが部屋に響く。
(今回の時間軸では、全体の動きを変える出来事は特に無かった。けれど・・・)
彼女を救うための最終段階『ワルプルギスの夜』を撃破することは叶わなかった。
(やはり戦力が足りない)
原因は単純な戦力不足・火力不足であった。
彼女自身も重々承知している課題であり、これを補うべくあらゆる手段を用いて武器を集めていたが、最強の魔女を沈めることは叶わなかったのである。
(仲間を集める・・・駄目ね、それで何度失敗したことか)
手を止めることなく、彼女は過去に思いを馳せる。
『魔法少女の真実』を知ってしまい暴走する者、周囲の人間関係によって勝手に死亡する者、
彼女達を安定した戦力として数えるのはあまりに心もとなく、安定した戦力もいるにはいるが、とても足り得る状況ではなかった。
(どうにか私一人で・・・でも想定外の事態に対してはどうする?)
戦力不足に関しては、より強力な武器を集めればどうとでもできると、彼女は思考を切り替える。
しかしほむら一人ではどうしても人手が足りなかった。通常とは異なる存在が介入してきた場合、自分はそれの対応ができずに失敗してしまう。
一体どうすればいい、と思考を巡らせていると
「勉強熱心なんだね」
視線を窓際にやると、見知らぬ少年が立っていた。
白い肌に銀がかった髪色をした少年は窓から差し込む街明かりに照らされ、その絶世的に整った顔立ちもあいまって、芸術的な光景を作り出していた。
「・・・どなたでしょうか。こんな時間に無断で入ってきて、人を呼びますよ?」
「随分な言い様だね?どっちかといえば君が僕を呼んだようなものだろうに」
動揺する心を必死に抑えつつ平静を装ってほむらは問い掛ける。
かなり危険な状況である。彼女はあらかじめ武器を用意していないと戦うことができない。
さらにはループ直後にイレギュラーが接触してくるなど、完全に想定外の事態だ。
「呼んだ覚えなどないのですが」
「そうだろうね。ただ、大いなる時間を幾度となく歪め続けてきたのは君じゃないか」
ほむらは心臓を鷲掴みにされた思いだった。目の前にいる『男』は、この世の誰にも知りえる筈のない情報を事も無げに叩き付けてきたのだ。
「貴方は誰?一体何の目的でやってきたの?」
ほむらは恐怖した。見るからに魔法少女ではない、全く未知の存在が自身の行いを把握していた事実に対して。
果物ナイフの入っている引き出しに目をやりつつ、いっそこのまま病院から脱走してしまおうかと思考を巡らせ、
「そんな顔しないでおくれよ。僕は君と協力し合いたいだけなんだ。人手が必要なんだろう?」
予想外の、それでいて怪し気な取引を持ち掛けてきた。
「僕はカヲル、渚カヲル。君と同じように僕には幸せにしたい人がいる。でも何度やっても上手くいかなかったんだ。君もそうなんだろう?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「どうして駄目だったのか考えるんだけど、よく分からなかった。だから思ったんだ、リリンの力を利用すればいいんじゃないか、ってさ。リリンは群体で生きる道を選び、知恵の実によって高度な考えを生み出すからね。」
理解不能な単語を交えながら少年、カヲルは続ける。
「君達の言い方で言えばそうだね・・・僕と契約して、大切な人を幸せにしないかい?」
正直言ってカヲル君にここまで考えが至るかっていうと疑問ですが、こうしないと
話が進まないので、どうかご容赦を
この後、エヴァ世界に一気に話が飛びます