碇シンジ育成計画byほむら   作:凡用ヒト型キュウベエ

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途中、取り乱したりもしましたが、投稿は続けようと思います。

これも皆さんの暖かい感想・評価のおかげです。本当に励みになりました。

感謝しかありません。


今回は前編・後編に分かれた構成になっています。後編はもう少々お待ち下さい。

後編は、1週間以内に公開します。紛らわしい書き方をしました。申し訳ありません


タナトス編 十話 前編

シンジにとって、暁美ほむらという少女は奇妙奇天烈な存在であった。

 

いや、そんな生ぬるい表現では済まないだろう、頭を撃ち抜かれた後に平然と復活したのだから。

 

それどころか、彼女のせいで更なる地獄へと叩き込まれたと言っていい。

 

それでも、彼女のことを信じようと思ったのは、彼女が自分に謝ったからだ。

 

ネルフの人達は、自分に感謝も謝りもしなかった。『貴方は他人に誇れることをしたんだ』と言いはしても、

 

『乗ってくれてありがとう』、『無理矢理戦わせてすまない』とは、決して言わなかった。

 

不満はあったが、怒りは無い。自分の人生とは、常にそういうものだったからだ。

 

先生一家の顔色を伺って、押し掛けてくるマスコミに謝り続け、バッシングが家に来る度、捨てられぬ様必死に媚を売る。

 

自分が家事を得意とするのもそういうことだ。自分は常に謝る側で、感謝する側で、自分が謝られたり、感謝されるなど願いこそすれ、そう感じたことは一度も無い。

 

 

 

『あの時の私は、自分のことしか考えてなかった。貴方の意思を無視して、物の様に扱っていたわ。・・・貴方も辛かった筈なのに、そのことを考えてなかったの。・・・本当に、ごめんなさい。』

 

 

 

---そう、だから、あの言葉は衝撃的だった。

 

ネルフで大暴れして、今も尚行方知れずで活動を続けている圧倒的強者の彼女が、誰よりも弱い自分に対して頭を垂れている。

 

貴方のことを考えていなかった、貴方だって辛かったろうに、と。

 

シンジが心を開くのはあっという間だった。人に傷付けられる事を恐れ、一方で人との繋がりを求めていた彼は、たった一つの謝罪で陥落したのだ。

 

シンジはお腹の空かせた彼女を食事に誘う事にした。

 

媚ではなく、純粋な親切心によって誰かに食事を作るのは、シンジにとって初めての事である。

 

彼女はそれを美味しそうに食べてくれた。表情こそ引いたが、泣きながら自分の作った料理を食べてくれるのは、本当に嬉しかったのだ。

 

 

 

 

----だから、目の前で泣き崩れている彼女を見ているのが辛かった。

 

シンジは受話器越しに必死でミサトに訴える。

 

「待ってくださいミサトさん!彼女は敵じゃありません、僕の護衛だったんです!ただ、僕を守ろうとしただけなんです!」

 

傍から見たら滑稽なことだろう。少し謝られて、喜ばれただけであっさり彼女を味方だと思い込んだのだから。

 

どう見ても、浅はかな女に騙された馬鹿な男にしか写らないかもしれない。

 

案の定、ミサトの返答は冷酷なものだった。

 

「シンジ君、あの子に何を言われたかは知らないけど、貴方は騙されているわ。」

 

「え?」

 

「彼女は人間じゃなくて、今彼女が身に着けている宝石か指輪が彼女の本体なの。貴方が女の子だと思っている部分はただの見せ掛け、擬態なのよ。」

 

「・・・え?」

 

今、ミサトは何と言った?

 

「生物学的に生き物が他種族に擬態する理由は、天敵から逃れる為か、獲物を油断させる為なの。今回は間違いなく後者よ。いや、そもそも生物かどうかも怪しいわね。ロボットの方がまだ納得できるわ。」

 

「・・・そんな、そんな馬鹿なことあるはずがありません!止めて下さい!!」

 

彼女がロボット?ありえない。だって、彼女は泣いているじゃないか。

 

それもただ泣いているのではない。自らの無力さを呪い、聞いたことも無い誰かに謝り続けている彼女が、ロボット?

 

「私達は、何があっても貴方を失うわけにはいかないの!だからお願いシンジ君、早く彼女から離れて!このままじゃ遮蔽物越しに撃つことも出来ない!!」

 

ミサトの声は、明らかに冷静さを失っていた。

 

不意打ちに失敗し、完全に後が無くなったので無理も無い。

 

ミサト達は、対象が頭部あるいは盾に被弾して能力が一時的に使えなくなっている可能性に賭け、速攻で動きを封じなければならないのだ。

 

現に今までの会話も、かなりの早口でまくし立てるように喋っている。

 

(駄目だ、このままじゃ暁美さんが殺されちゃう・・・ミサトさんを落ち着かせないと)

 

だが、どうやって?取り囲んでいる保安部は全員完全武装だ。説得しようにも下手に動けば蜂の巣である。

 

(いや、そもそもどうやって説得すんのさ!?)

 

ほむらを助けるには、彼女が自分の護衛として来た事を証明しなければならない。だがそれをどう説明する?

 

シンジが頭を悩ませていると、ゆっくりとした動きでほむらが立ち上がる。その瞳は狂気を帯びていた。

 

「暁美さん逃げて!さっき僕と一緒に逃げようって言ったなら、一人で逃げられるでしょう!?戦ったら殺されちゃうよ!!」

 

ロケット砲を何処からともなく取り出した彼女に慄きつつ、シンジは説得を諦め、彼女を逃がすことに考えを変える。

 

「いいわよ別に。どうせ私には、行く所も帰る場所も無い。ついでに言うなら、死に場所を探してた様なものだから、丁度いいわ。」

 

だというのに、コレである。彼女には逃げる気が無い様だ。つまり、説得するしかない。

 

(そんなの無理だよ・・・出来っこないよ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それに私は・・・もう、何も出来ない自分からは逃げたくないの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(逃げちゃ・・・ダメだ)

 

そうだ、自分は何を逃げている?ここで逃げて、何が残る?

 

自分に残された選択肢は二つだけだ。

 

 

 

彼女を見捨てて、『捨て駒として死ね』という父の願いに健気に応えて死ぬか、

 

彼女を助ける為に、全てを賭けて死ぬかの二つしかない。

 

 

 

要するに、どっちを、選んでも、死ぬのだ。

 

 

 

(逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃ・・・・・・ダメだ!!!!)

 

「ご飯ありがとう。あんなおいしい食事、久しぶりに食べたわ・・・それじゃ」

 

そう言って背を向ける彼女を捕まえる。

 

決心は固まった。どう説得するかも、彼女の武器を見て思い付いた。

 

彼女に質問を重ね・・・それを確信へと変える。

 

(問題は、彼女が敵じゃないと証明することだ)

 

そればかりは、出たとこ勝負にならざるを得ない。シンジはほむらに告げる。

 

「暁美さん。僕を守って」

 

 

自らの願いを告げる。

 

 

「僕を、助けて」

 

 

自らの願望を吐露する。

 

 

「僕を----信じて」

 

 

どうか自分に、君を助ける勇気をくれと、そう---告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジは、ほむらの肩を抱いて、庇うようにベランダへ出た。

 

周囲は壮観だった。道路には一定感覚で装甲車がこちらに砲口を向けており、向かいのマンションのベランダには、多数の狙撃手が見て取れた。

 

シンジが見た時にはVTOLの姿もあったが、見当たらない。

 

「シンジ君!?一体何を考えているの!?」

 

発狂寸前のミサトの声が、スピーカーフォンに切り替えた受話器から聞こえてくる。

 

「ミサトさん!何度でも言います!彼女は敵じゃありません!僕の護衛なんです!!」

 

狙撃手は狙い通り撃ってこない。自分が庇うように前に出ているからだろう。

 

「そんなの嘘に決まっているでしょう!彼女が何をしたのか忘れたの!?ネルフの作戦を妨害して!貴方を絶体絶命の窮地に追いやって!ネルフ本部と保安部を半壊させて!!人類を滅亡させ掛けたのよ!!?」

 

「じゃあ何で今この時まで、彼女は逃げてないんですか!?おかしいじゃないですか!!!」

 

その言葉によって冷静になったのか、会話が一瞬途切れる。

 

「・・・頭部か盾か、そのいずれかを破損して、逃げることが不可能になっているんでしょう?だから貴方を洗脳して、時間を稼いでいる。違う?ほむらちゃん。」

 

「っ・・・ミサトさん!そもそも貴女は、彼女が護衛じゃないって言うなら、何をしに来たか分かってるって言うんですか!?」

 

「知る必要はないわ、結果が全てよ。何処かの諜報員か、テロリストか・・・ひょっとしたら、私達の予想もつかない目的を持っているかもね。」

 

「諜報員・・・」

 

シンジは必死に頭を回転させ、言葉を紡ぐ。

 

「それは・・・ありえないと、思います。」

 

「・・・・・・何故かしら?この状況で下手なこと言ったら承知しないわよ?」

 

本気の声色だった。正真正銘の恫喝に心底恐怖しつつ、シンジは続ける。

 

「それは・・・彼女が、僕をエヴァに乗せることを妨害したからです。」

 

「それは作戦を妨害する為でしょう?」

 

「いいから聞いて下さい!思い出してください、あの段階で、僕がエヴァを確実に動かせると知っている人が、あの場にいましたか!?」

 

シンジは思い出す。ケイジに辿り着く前、ミサトとリツコが成功確立0.0000何パーセントだか言う内容の話をしていた事を。

 

「彼女が諜報員だって言うなら、まずは僕がエヴァを確実に動かせるかどうか、確認をしなければならなかった筈です。現にリツコさんだって、動かせる可能性がある、としか言っていませんでした。なのに彼女はそれをする前に、僕らの前に姿を現しました!これは諜報員としては絶対にありえません!!」

 

「テロリストにしたってそうです!彼女が作戦を妨害したいなら、ネルフ本部を半壊させる必要なんて無いんです!あの場で僕を撃ち殺すか、大怪我させれば良かったんです!!」

 

「・・・彼女は未知のテクノロジーを多く保有しているわ。それによって貴方がエヴァを動かせる確証が有ったとしたら?それ以外に、私達の知らない目的があったとしたら?」

 

ミサトの声色は完全に冷静になり、答え合わせを求めるように、シンジに問い掛ける。

 

「それなら、ケイジまで待つ必要はありません。僕と街中で会った段階で、僕を誘拐すればいいんです。エヴァのパイロットじゃなくて、僕を誘拐すること自体が目的だったというなら、僕を発見した時か、N2爆雷で吹き飛んだどさくさに紛れれば良かったんです。」

 

「これらのことを考えると、どう考えても彼女の行動は諜報員としても、破壊工作員としても、それ以外の目的でも、何一つ得をしないんです!僕の護衛以外に、彼女の行動は説明がつきません!!」

 

沈黙が、流れた。確かに、説得力のある話だったからだ。

 

 

 

そもそもネルフ側には、先程まで死体になっていた彼女の動機を確認する必要が無かった。

 

当然の結果である。

 

 

 

「・・・話は、分かったわ。それで?ここまでやっておいて、ごめんなさいで済むなんて考えてはいないでしょう?」

 

そうだ、ネルフはもう後へは退けない。組織には、面子というものがある。

 

ネルフが国連軍よりも上位の権限を持つ組織である為、ここで下手に手を引くわけには行かなかった。

 

「・・・提案が、あります。」

 

「・・・聞きましょう。」

 

シンジは、賭けに出る。

 

「彼女を、僕と一緒に、使徒と戦わせてください。」




もう少々、お待ち下さい。
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