自分もSSを読むときは、積極的に感想を投稿しようと思います。
「繋がらないや・・・」
少年碇シンジは途方にくれていた。
長年音信不通であった父からの手紙(そう表現するのもおこがましいものではあったが)を
受け取り、父の下に向かうべくモノレールに乗っていたところ、急に緊急事態宣言が発令、緊急停止したのである。
本来ならそのまま最寄のシェルターに行かなければならないのだが、ここで問題なのが相手への連絡だ。
彼は大した金銭など持っておらずモノレールも動かないとなれば、元いた家に帰ることも出来ない。
故に迎えに来るとあった葛城ミサトなる人物に連絡を試みたのだが、案の定回線がパンクしているのか繋がらないのだった。
シンジはやむを得ずシェルターへ行こうと踵を返し・・・すぐ後ろで黒髪の少女が無言無表情で自分を見つめていることに気づき、ギョッとした。
(え?誰だろうこの子?さっきまで誰もいなかったよね?)
他の乗客はとっくにシェルターに避難しており、周囲はゴーストタウン状態で物音といえば危険を告げるアナウンスと蝉の声ぐらいだ。
にもかかわらず、シンジは彼女の存在に全く気づくことが出来なかった。
「えっと・・・電話なら繋がらないよ。回線がパンクしてるみたいだ。」
「そう・・・」
彼女の返答は素っ気無かった。変わらずの無表情と整った顔も相まって、シンジはどうにも威圧的な印象を感じる。
「・・・こ、このままじゃ危ないから、近くのシェルターに避難----」
「暁美ほむらよ、貴方は?」
今度は割り込むように自己紹介をされた。口下手な子なのだろうか。
「碇シンジだけど・・・もしかして、葛城さんの代わりの人?」
「違うわ」
シンジの問いを否定した少女はじっと彼を見つめている。正直かなり怖い。
遠くから聞こえるアナウンス、暑い日差しを喜ぶ蝉の声。
二人の間には、ただそれだけが流れていた。
当初の計画通り、彼女は渚カヲルと協力して『ワルプルギスの夜』を討伐。まどかも魔法少女にならずに1ヶ月を乗り越える事に成功した。
自分が長年追い続けてきた理想通りとはいかずとも、最低限の条件を遂に達成したのである。
そして契約通り、今度は渚カヲルの計画に協力することになったわけだが、
「これで約束は果たされた。今度は君が僕を助ける番だね。魔法少女の生きる糧、欲望の果実はあの悪夢から出てきたそれだけで十分だろう?さぁ行こうか」
文字通り『ワルプルギスの夜』を瞬殺した直後、突然謎空間に転移させられ、さらに謎の棺桶へとボッシュートされたのである。
・・・コンビを組んですぐに分かったことだが、この男は碇シンジという人間以外は本当に興味が無いようだった。薄いのではなく、無いのだ。
碇シンジへの異常なまでの執着が無ければ、ほむらはキュウベエと彼の間に何の違いも見出せなかっただろう。表現するなら『バグったキュウベエ』と言った所か。
実際のところ、ほむらはカヲルに騙されることになっても、まどかに被害が及ばなければそれでいいと考えていた。自身がどん詰まりに陥っていた自覚はあったし、状況的に彼の誘いを拒絶することは危険だった。
昔の自分ならまどかと新しい生活を送ることを夢見ただろうが・・・今はもう、出来そうに無かったのも理由の一つである。
それはそれとして、これはあんまりではなかろうか。見知らぬ街のアスファルトの上でのた打ち回りつつほむらは思う。
あの野郎今度会ったらRPGを撃ち込んでやると心に誓う。恐らく傷一つ付かないだろうが。
顔を上げると、やや離れた場所に少年の背中が見えた。周囲に彼以外の人影は無いことから、彼が件の少年だとあたりをつける。
(私の役目は、渚君が彼を幸せにする手助けをすること・・・まぁ、彼が来るまで身辺警護をしていれば大丈夫でしょう)
特に彼から要望された事柄は無い。確認しても意味不明の単語を交えて『彼の幸せを守って欲しい(要約)』の一辺倒だったので、途中から確認することをやめていた。
要するに碇シンジを彼に引き渡すまでの間、姿を隠しつつ外的な脅威から守ればいい。ほむらはそう結論付ける。
幸い『ワルプルギスの夜』対策で集めた武器がほぼ手付かずで残っているので、それに関しては全く問題が無い。
例え軍隊相手であろうが真正面から蹴散らせるだろう、ほむらは成功を確信する。
ワルプルギス級の脅威が来れば別だが、その時は彼を(無理矢理)連れて逃げればいいし、そもそもそんな脅威がいるのなら渚カヲルが自身より弱い存在に依頼などする筈が無い。
そこまで考えて、ほむらは周囲の状況を確認する。
周囲に人が全くおらず、近くの駅からは緊急事態宣言のアナウンスが鳴り響いている。
そんな状況下で一人、公衆電話に篭っている護衛対象。
んん?
ほむらは駆け出した。避難訓練したことないのか、とか、初っ端からふざけるなよお前とか思いながら護衛対象、碇シンジのすぐ後ろにたどり着く。
この危機意識の無い男を先程からアナウンスされているシェルターへ連れて行こうとして
(・・・シェルターですって?)
ここが何処なのか、さっぱり分からない自分に気が付いた。
シェルターである。ほむらの常識ではこういう時は避難所に行くものなのに、シェルターというてんで縁の無い存在が出てきた。
ここは一体何処なのだろう、いや、そもそもこの世界に見滝原市はあるのだろうか。
私は何処へ帰ればいい?
気付いてしまうと洪水の様に心配事が沸いて出てきた。そんな自分を余所に、碇シンジがこちらを向く。
彼は自分を見てギョッとした後、困ったような表情を浮かべた。
「えっと・・・電話なら繋がらないよ?回線がパンクしたみたいだ」
「そう」
つい、刺々しい言葉になってしまった。このままではいけない、自分は彼を護衛するのだからしっかりしなくては、と自らを叱咤する。
渚カヲルは約束を守った。だから彼への引継ぎが済めば、元の世界へと帰れる、そうに決まっている。
そう自分を納得させて、シェルターへの誘導を試みるほむらであったが・・・
(そういえば彼は碇シンジなのかしら、確認をしていなかったわ)
このまま人違いでシェルターへ連れて行った後、本物が残っていて死亡したなどという事態は避けたい。
「・・・こ、このままじゃ危ないから、近くのシェルターに避難「暁美ほむらよ、貴方は?」」
あ、まずい失敗した。
ほむらは確信した。刺々しい返答の後にこれだ。現に彼の顔は困り果て、気まずい雰囲気が流れている。
(思い出すわ・・・初ループの時のまどかもこんな顔をしていたわね)
現実逃避をキメつつ、現状を打開する言葉を捜すべく過去の経験を振り返って気付く。
(あれ?もしかして私、男の子とまともに話したことが・・・無い?)
馬鹿な、そんなはずはないと必死に記憶を探るが何一つ出てこなかった。
何なら男女問わずに会話をした相手をカウントするほうが早いという残酷な真実が露呈してくる。
渚カヲル?会話のキャッチボールにすらなっていないが?
「碇シンジだけど・・・もしかして、葛城さんの代わりの人?」
「違うわ」
(ああああああああああああああ!!!)
結局どう話していいか分からず、気付けば取り付く島も無いような返答を叩き付けていた。
(憎い!!自分の口が憎い!!)
振り返れば、他の魔法少女達の説得を諦めた辺りから、ただでさえ低かった語彙力が地に落ちていた気がする。
だがそれでも多少は話せるつもりでいたのだ。まどかや美樹さやか、巴マミに佐倉杏子らを相手取った時位の会話は出来ると思っていたのだ。
・・・本人は気付いていないが、他の魔法少女達との会話は、ほむら自身がループによって、彼女達の人となりをある程度知っていたことで成り立っていた。
その代償を、この時初めて支払うことになったのである。
次回予告
ほむら(今回)「なんかよく分からないけど、カヲル来るまで時間稼げば大丈夫だろう、武器もたくさんあるし達成条件簡単だし勝ったな、風呂入ってくる」
(次回)「ドウシテ・・・(電話ネコ並感)」