碇シンジ育成計画byほむら   作:凡用ヒト型キュウベエ

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「ほむら奇跡の大脱出」ルートか、「魔法少年イカリ☆シンジ」ルートで行くか迷いましたが、前者にしました。

後、今回の話でかなりの独自解釈が入っています。

・・・ひょっとすると、作者の知識不足でオリジナル設定になっている可能性もあります。

人によっては拒否反応が出るかもしれませんが、どうかご了承ください。




タナトス編 七話

---ベークライトの切り出しは、急務であった。

 

フロアを丸ごと固めた為、それより下層にいる職員が閉じ込められたからである。

 

この作戦は、まさに乾坤一擲の大博打であった。これに失敗すれば、司令部は対象の追跡が行えなくなるか、対象と共に狭い空間に閉じ込められることになったのだから。

 

異能の力こそあれ、一人の少女をベークライトで生き埋めにする非人道極まる作戦に、司令部のメンバーは顔を蒼くした。リツコや冬月ですら難色を示した程だ。

 

それを顔色一つ変えずに実行に移した指揮官、葛城ミサトはベークライトで固まったほむらを眺める。

 

初号機の格納・修理に使徒の死体の回収、情報統制に使徒迎撃体制の整備・強化。

 

本来の業務がつつがなく進行し、ようやく彼女について着手できるようになったのは、作戦から五日後の事だった。

 

サードチルドレン、碇シンジは無事退院し、現在は保護責任者であるミサトの家で居候している。

 

当初はジオ・フロント内の寮で生活する予定であったが、今は暁美ほむらという得体の知れない存在がいる。

 

少なくとも現段階では、ジオ・フロントで生活させるよりも地上で住民に紛れ込ませる方が安全だと、上層部が判断したのだ。

 

同じ理由で、レイも現状そのままとなっている。

 

「保安部が泣きそうな顔で喜んでいたわ、ようやくここの警備から開放されるって。」

 

傍らのリツコが言う。

 

今回の戦闘によって、全保安部員のおよそ半数が病院送りとなっていた。そのせいでジオ・フロントと地上の病院はパンク寸前となっているのだから笑えない。

 

さらにその穴埋めをするべく、銃器訓練の経験がある職員が休日返上・持ち回りで警備をする末期具合である。

 

ネルフ内に潜むスパイ達は大喜びしていることだろう。

 

「そう。それで、この子について何か分かったの?」

 

「彼女の周囲に散らばっていた遺留品の分析結果なら、報告書の通りよ。・・・遺体を解剖する許可が出るなら、もっと詳しいことが分かると思うのだけれど。」

 

生物学的に、彼女は未知の宝庫である。

 

超人的な身体能力に頭部と心臓を潰されても死なない不死性、極め付けに推論ながら『時間停止』が可能な生命体を前に、リツコのみならずマッド気質な一部の職員達が、彼女の解剖を熱烈に要求しているのだった。

 

「馬鹿なこと言わないでよ。生命活動が停止して五日経ってるのに何の腐乱も起きてないのよ?また動き出す可能性がある以上、許可できないわ。」

 

「まぁ、そうなるわよね、残念だわ。松代でゆっくり地道に調査するとしましょう。」

 

当然ながら彼女の遺体は、ここから離れた場所、ネルフ第二試験場の松代で隔離する手筈になっていた。

 

設備は本部に劣るが、まぁ、やむを得ないとリツコは諦める。

 

ミサトは、通路の端に纏められた遺留品に目をやった。

 

彼女の周囲には銃器、弾薬箱、学生鞄、シンジの手荷物等が乱雑に散らばっていた。

 

恐らくパニックを起こしながら、どうにかしようと荷物を漁った結果であろう。

 

遺留物から判明した彼女の身元は、謎に満ちたものだった。

 

暁美ほむら、年齢は14歳。

 

見滝原市に在住し、見滝原中学校に通っている中学生。

 

これが、どうにか削り出した彼女の学生鞄の中身から推察できる人物像なのだが、見滝原という市は存在しない。見滝原中学校も同様だ。

 

身分証自体の質は非常に良いが、身元を隠す偽情報としては余りにお粗末過ぎる。

 

そして今まで彼女が取り出した銃器、ロケット砲にショットガン、傍らに落ちていた重機関銃等、明らかに普通の中学生が持つ物ではない。

 

さらに謎なのが、彼女の着ていた制服だ。冬服だったのである。

 

セカンドインパクト以降、地軸がずれたことにより四季が消失。世界は常夏へと変貌した。

 

当然冬服の制服などあるわけがない。だが、彼女は冬服を着ていたのだ。

 

冬服で固まった少女を改めて見遣る。

 

戦闘時と服装が変わっており、一切の腐乱が起こらなかった為、当初は偽者ではないかと思われた。

 

しかしスキャナーとMAGIによる調査の結果、中身が人間と同じ骨・脂質・たんぱく質で構成されていることが判明。

 

さらに五日経ってもシンジの周りに動きが無いことから、本物であると断定せざるをえなかった。

 

この少女は、結局何者だったのだろうか。

 

最後に切り出され、目の前で削られていく体操着の入っていそうなバッグを見つつ、ミサトは思う。

 

まぁ、考えても仕方が無い。彼女はサードチルドレンを連れ去ろうとした人類の敵であり、司令部を壊滅させたテロリストである事実は揺ぎ無いのだから。

 

そう結論付け、一緒に中身を確認しようとバッグに近づき・・・バッグが、破裂した。

 

(---爆発物!?)

 

ありえない、事前に念入りにスキャンしたのだ。だからこそシンジの荷物も彼の下へ返却した。

 

慌てて荷物を開けた職員へ駆け寄り、状態を確認する。彼は防護服を着込んでいた為、意識もはっきりしていて、目立った怪我も見受けられない。

 

ミサトは安堵する。

 

 

 

 

 

 

 

 

----視界の端に、『二人目』の暁美ほむらの姿を捉えるまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・は!!??」

 

ありえない事態に、ミサトの思考が停止する。

 

必死の形相をした『二人目』は、そのまま腕の盾を操作。『一人目』の身体と共に、姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ほむらは賭けに勝利した。

 

ベークライトに下半身を固められる中、自身のソウルジェムとグリーフシードをバッグに入れ、離れた場所へ放り投げたのだ。

 

それだけでは怪しまれるので、とにかく思いつくものを投げまくってカムフラージュにする。

 

もしネルフが、ほむらの固められた通路を閉鎖していたら。

 

荷物が警戒され、放置されたら。

 

あと一日でも、切り出すのが遅れていれば。

 

ほむらは間違いなく死んでいただろう。

 

バッグを開けた瞬間、魔力量度外視で身体を再構成。時間を停止し、周囲の機材でオリジナルの肉体を救出し、逃走したのである。

 

ほむらは賭けに勝った。が、そこに喜びなど欠片も無い。その時、ほむらの心を支配していたのは『恐怖』のみであった。

 

渚カヲルとの約束、碇シンジへの謝罪、何ならまどかのことすら忘れて、ほむらは逃げる。

 

逃げて、逃げて、逃げて、逃げて。

 

気が付くと、第三新東京市から離れた、峠にある無人のパーキングエリアで倒れ込んでいた。

 

「・・・ヴォェェェッ!」

 

近くの排水溝に胃の中身をぶちまける。

 

(生きてる・・・生きてる!!)

 

涙を流して、ほむらは歓喜した。

 

歓喜して・・・すぐに頭は冷えていく。

 

(もう駄目よ・・・お仕舞いよ)

 

恐怖に屈したほむらは脆かった。

 

強がりでクールな上っ面の自分は粉々に砕け、気弱で内向的な自分が顔を出す。

 

認識が甘かった。内心で戦いを、殺し合いのことを理解していたつもりだったが、とんでもない。

 

あそこまで残酷なことをしてくるなんて、考えてもみなかった。

 

戻ればまた、同じ目に遭わされると考えただけで、ほむらは吐き気が振り返してくる。

 

(このまま砂時計が落ち切るのを待ちましょう。やり直さないと)

 

何でもいい、何処でもいいから隠れて逃げ切ろう、時間を巻き戻し、全てをやり直そうと決断する。

 

ほむらは砂時計に目を遣り、

 

 

 

 

 

 

・・・今さらになって、砂が動いていないことに気が付いた。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ぇ?・・・ぇ?何で?どうしてよ!!!?」

 

ほむらは再び吐き気を催してきた。何度も砂時計を叩くが、一滴の砂も落ちはしない。

 

 

 

・・・突然だが、暁美ほむらの能力とは何だろうか。

 

『時間逆行』?そうかもしれない。だが、正確には違う。

 

魔法を発動した時間から、丁度一ヶ月前の『平行世界へ移動する』能力というのが正しい。

 

そして、彼女が別の並行世界へ移動するには条件が存在する。ほむらが認識している条件は、

 

 

①魔法を発動してから一ヶ月が経過すること(砂時計が落ち切ること)

 

②移動先の世界は、魔法を発動した丁度一ヶ月前の世界であること

 

 

の二つである。

 

しかし、これらには一つの前提条件が存在する。

 

それは、『移動先の世界に、暁美ほむらの同位体が生存していること』だ。

 

この三つの条件を満たしている世界にのみ、ほむらは移動することができる。

 

では、今回はどうだろうか。ほむらは渚カヲルという規格外の存在によって、この世界にやって来た。

 

この世界に、暁美ほむらの同位体は生存しているだろうか・・・否だ。

 

ほむらは本来、とても病弱な少女であった。幼い頃から入退院と手術を繰り返す幼少期を過ごしてきた。

 

そんな彼女が、セカンドインパクト直後の荒廃した世界で、満足な治療を受けられる筈も無い。

 

この世界の彼女の同位体は、幼い頃にとっくに死んでいたのである。

 

つまりほむらは、本来の条件を満たしていないのに、渚カヲルの手で無理矢理、世界移動をさせられたことになる。

 

これにより、砂時計がエラーを起こし、機能を停止したのだ。

 

・・・幸運だったのは、砂が残っている段階でエラーを起こしたことであろう。

 

『世界移動』の機能と『時間停止』の機能は、能力の関係上、本来はスタンドアローンで機能している。

 

これによって、事実上制限の無い時間停止が、バグ的に可能になった。

 

 

 

 

----つまり、こういうことである。

 

 

 

 

ほむらは、やり直すことが、出来ない。




・・・一つだけ宣言します。

私は、ただ、暗いだけのストーリーは、大嫌いです。


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