戦う守られるべき存在達   作:tubukko

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…何もなくても結局日は空く。
もう、2週間キャンペーンとか知らせなくてもいいかな。


開戦

「あぁ?お前が俺に何の用だ」

「いったい何をしているのか聞きたくてね」

 

嬉々の言葉にリリィが顔をしかめる。

今、2人がいるのは受付。

オクォロスのことなんて知らない人が任務を受けにきている。

いつも通りに賑わいを見せていたのだ。

 

「ここに来てるってことは任務を受けに来たってことだ。わざわざお前に手伝ってもらうような任務は受けていない」

「悪いけど頼れる筋からの情報なの。間違いないわ」

「……誰だ?」

「分かるの?美嘉っていうんだけど」

「あいつか…」

 

ため息をつく。

嫌な人を思い出したというより、あきらめた感じの顔をしている。

 

「知ってるの?」

「8歳までは同じアルツェで生活してたからな。あの頃から人の秘密を暴くのが大好きだったよ」

「じゃあ、情報は間違いないのね?」

「お前には関係ない」

「いいえ、大いにあるはずよ」

 

面倒なのに捉まったなと、頭を悩ませる。

周りは嬉々が自らリリィに話しかけているのを不思議そうに見ている。

 

「リリィさん、準備ができたようです」

 

受付の人が唐突にリリィに話しかける。

しかし、顔はリリィを見ておらずできる限り声は小さくされていた。

 

「悪いな、危険な綱を渡らせて」

「今回限りですからね?」

「ああ、貸し借りかこれでなしだ」

 

嬉々なんていないかのようにその場を去ろうとする。

しかし、嬉々だって黙っていない。

進行方向に立ちふさがる。

 

「邪魔」

「このまま引くと思う?」

「俺たちだけで何とかなる。それにお前に何かあると困るんだよ」

「?…………どういう意味よ?」

「こちらの事情だ」

 

全然取り合ってくれないリリィ。

しかし、嬉々は食い下がる。

リリィの後ろをついてくるのだ。

 

「目障りだ。さっさと消えろ」

「嫌、私はもう黙ってみてるのが嫌なの」

「知ったことかよ。お前は前線にいられると困るんだよ」

「前線?正兄と関係があるの?」

「………ともかく、お前にやることなんて―――」

 

「いいじゃない、戦力が増えて悪い話じゃないでしょ?」

 

嬉々の声ではない。

リリィは声を聞いただけで誰かわかったのか嫌そうな顔よりもひどい、忌々しそうな顔をする。

 

「美嘉か」

「面と向かって話すのは久しぶりね、リリィ。でもここで初めて見たとき雰囲気だけでわかったわ」

「俺もだよ。相変わらず、いい趣味してるみたいだな」

「それほどでも。それより聞いたわよ、武器庫から支給武器(アルマ)を持ち出すなんてなかなか面白そうなことするじゃない」

「なんですって!?」

「………」

 

当たっているのか、リリィは黙る。

 

「あなた、そんなことして何しようとしてるの?まさかクーデター!?」

「嬉々、こいつはそんな無謀なことしないわよ。何が理由でこんなことをしたのかまでは分からないけどね」

「…お前は昔から本当にたちの悪い知人だな」

「友人じゃないの?」

「お前の友人には一生なれる気がしないな。もちろんそれ以上も」

「そう、残念。でも私たちを仲間に入れることはしてくれるわよね?」

 

小さい頃から、知り合った仲だ。

長い間会わなかったとはいえ、2人はそれぞれの出方をなんとなく理解している。

それは2人に「変わり者」という共通点があったからだ。

同じ部分で変わっているわけではないが人が減ったこの時代、この世界からみて変わり者と言われる人は数少ない。

ただの中二病や、しゃべり方に特徴がある人は別に変わり者とは言われず個性と言われるようになった。

 

「…お前は構わないんだが、嬉々がな」

「なんで私はダメなのよ!」

「………実力はどれくらいだ?」

「ロスである正兄の遺伝子からできたプロトよ。そこそこの実力はあるわ」

「だけど俺はお前の噂を聞いたことがない。強いなら噂ぐらい流れるだろ?」

「そ、それは私が正兄と同じで面倒くさがり屋だから任務をこなす数が少ないからで…」

「……」

「……」

 

無言の10秒間。

リリィは悩む。

そして大きくため息をつく。

 

「分かったよ、どうせ何言っても付いてくるだろうしな」

「ようやく分かってくれたようね」

「黙ってついてこい。案内してやる」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

『正影さん、電波は届いてますか?』

「完璧だ。雑音1つないのが気持ち悪いくらいにな」

『しっかり生きて帰れるようサポートします。死体は受け入れませんので』

「…それは頑張らないといけないな」

 

地下都市と呼ばれる場所に正影は立っている。

中は存外明るかった。

いや、奥は暗いのだが正影が歩いたところからどんどん明るくなっていく。

 

「ォォォォォォォオオオ……」

「!」

 

奥のほうから雄たけびが聞こえた。

オクォロスの声なんてまともに聞いたことなんてないがここで聞こえたのだから間違いないだろう。

つい緊張してしまう。

別に自分が死ぬかもしれないことに関してはなんとも思ってない。

だが、これはこれからの世界の動きにかかわると言っても過言ではないのだ。

世界が駄目になってしまえば嬉々たちも苦労する。

それは困る。

死後、上から見ることができるのであれば幸せそうな顔を見たい。

 

「じゃあリム、最後の指示を頼む」

『たった今、死体は受け入れないって言ったばかりじゃないですか』

「よく考えたら俺が死ぬときは死体なんて残らないと思ったからな」

『僕はもう御免です。自分が担当した人を絶対死なせたくありません。せっかく収入もupしたんですから正影さんには死なれると困ります』

「どのくらいだ?」

『ざっと2倍ほど』

「…おぉ」

 

オペレーターもお願いされた回数、生存させて任務を受けた人を帰らせた回数などでもらえる収入が変わってくる。

それを踏まえても2倍とは大したものだ。

正影が受ける任務の難易度が影響したのだろう。

 

『出口を閉めました。これで次開けるときは正影さんが勝った時のみになります。あ、もう少し進むと左に曲がるところがあるのでお願いします』

「ああ、わかった」

『…そこを曲がればすぐ見えると思います』

「…そうか」

 

腰に掛けているE-23に手をかける。

正影の役目はこれをオクォロスの口の中に入れること。

これさえできれば失敗しても死のうが生きてようがどっちでもいいのだ。

本当に危険と呼ばれるほど危ない爆弾が入っているのかと心配になるほど軽い。

強度は確かにあるのだがどういう仕組みなのかと分かるわけもないのに解体してみたくなる。

 

「なぁ、どこを曲がればいいんだ?」

 

オクォロスが通れるというだけあってとてつもなく大きな廊下だったところから、さらに開けた広場のようなところにたどり着く。

柱が並んでいて、ここにたくさんの人がテントでも張っていたのか?と想像する。

 

『広いですからね、左の壁に沿って歩けば……………』

「どうした?」

『ちょ、ちょ、ちょ、嘘でしょ!?』

 

焦ったせいか、いつもとは違う口調が出る。

 

何が起きたのかは訊く必要がなかった。

 

「オオ…ォォオオオオォ!」

 

さっきよりも大きな声と同時に地響きが鳴る。

近づいてきているのは間違いない。

さっきよりも今、確実に近づいている。

 

『正影さん、とりあえずどこかに隠れてください!』

「どうせやりあうなら不意打ちしたほうがいいってか?」

『当り前です、まず相手の硬さを確かめたりしてからじゃないと!』

「確かめたって意味はない。あるのは俺の刀だけだ、ここは初めに一太刀入れるんじゃなくて…」

 

オクォロスの蠢く音がする廊下から、見えないように柱に隠れる。

 

どんどん大きくなる地響きと雄たけび。

いや、雄たけびと言うよりは悲鳴のほうが正しいのかもしれない。

オクォロスは基本、地面の中で生活をするのだ。

自分の生活空間に戻れない。

確かに苦痛かもしれない。

だが、正影にはそんなの関係ない。

 

そして時は来る。

 

オクォロスの姿はばっちりとらえていた。

正影が歩いた時と同じように何かに反応するレーダーがあるのかオクォロスが通った道に光が点灯する。

正直見たくはなかった。

体中に眼球がついていてそれぞれが動いているのだ。

気持ち悪いとしか言いようがない。

地面に擦りつけられている眼球が何故潰れないのか知りたいとは思ったが。

 

口が通路から顔を出す。

バカみたいに大きい口。

これほど的が大きいとE-23を投げて入れるのは簡単もいいところだ。

柱の陰から飛び出て口の中めがけてE-23を投げる。

E-23は思った通りの軌道を描き口の中へと消えていった。

 

しかし、オクォロスの目の前に出たことで存在がばれる。

自分の思うように行動ができないオクォロスの機嫌は悪かった。

 

「オオオオオオオォォ!」

 

まさに雄叫びと言える大声が地下都市に響き渡る。

正影は刀を創り出す。

 

「さぁ、リベンジマッチといこうか」

 

正影が構えた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「始まったみたいね」

 

明季がヘリの中で報告を受け、呟いた。

一応近くに鎌を持ってきてはいるが、あくまで非常時のみにしか使う予定はない。

ヘリの中で報告を受けたといったがそのヘリは飛んではいない。

正影を降ろした、地下都市の入り口近くで止まっている。

E-23が爆発してしまえば自分も巻き込まれてしまう。

 

外では恭二がガードの役目をしている。

しかし、その姿はどこか頼りない。

 

「…別にいいのよ、緊張しなくても。敵を見つけたら今回は私が出るから」

「いえ、隊長の手を煩わせる必要はありません。それに緊張だって…」

「それじゃ、今どこか頼りないのは彼女を感じられないからかしら?」

「……頼りないですか?」

「とてもね」

 

どこか、言われても仕方ないと思っていたのか顔を俯ける。

明季に「頼りない」なんて言われたのはいつ以来だろう。

 

「でも俺、初めて見ました。2人を受け入れる容量を持つ人間なんて」

「私もよ。AはともかくBでは初めて見たわ。ほんと、うちは宝の宝庫ね」

「でも…、遅いですね」

「そう?こんなもんだと思うわよ。まぁ、あんまり遅いと来ても意味ないけど」

 

2人はある人を待っていた。

これが予想通りなら正影を失わずに済む。

それなら試す価値は大いにある。

 

「…フフ」

「どうかしました?」

「いや、正影を失いたくないと思っている自分がいると思うとなんか笑えてきて。これが恋ってやつかしら?」

「でしたらいいペアじゃないですか。最強の女性と男性のペア、俺は応援しますよ」

「あなたにも似たような感情を向けてるつもりよ?」

「…でしたら恋じゃなく仲間意識じゃないですか?」

「仲間?」

「隊長の冗談を受け止めるのは俺と正影さんぐらいですから。それに正影さんにいたっては敬語すら使ってませんし」

「一理あるかもしれないわね」

 

ともかく、正影がいなくなると明季が残念に思うのは間違いないのだ。

恭二も同じなのだが。

 

「じゃ、正影が帰ってきたら1つ冗談をかましてあげようかしら」

「どんな冗談です?」

「好きって言った後、キスってのはどうかしら?」

「……それは俺の許容範囲すら超えています」




嬉々
正影の遺伝子からできた妹。
正影のクローンを作る過程で「できるんじゃね?」と突如考案された。
遺伝子は同じなのに、どういうわけか性格が正影と違って明るく天真爛漫。
正影と同じく刀を使う。
蓮のメディアトールになっているのは好きとかそういうのはなく、友達だったし強くなれるというのなら頼まれて断る理由なんてなかったから。
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