After シン・エヴァンゲリオン   作:ヨコダケハンサム

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第弐話 選択

4

 

 シンジが目を覚まして数日が経った。

 病室には、レイが訪ねていた。

 

「綾波はさ、これからどうするの?」

 

 シンジはこれからの事を決めかねていた。

 第三村での生活には慣れてきていたが、シンジが眠っていた14年間の間に何が在ったのか分からないことが多くあった。

 同じように14年間初号機の中にいたレイはこの世界についてまだ知らないことが多い。

 だからこそ、レイが考えていることをシンジは知りたかった。

 

「私は…別の私が住んでいた第三村に行ってみたい…

 私じゃない私は、あの場所を気に入っていたと聞いた…

 それを見てみたい」

 

「綾波はすごいね。僕はまだ何をしたいのか決まっていないんだ」

 

「碇君にも来てほしい、第三村に」

 

 シンジはレイの言葉に驚き、口が半開きになる。

 

「綾波は僕に来てほしいの?」

 

「ええ、碇君は以前にも第三村に居た。だから教えてほしいの」

 

「でも、アスカやサクラさんも村に行くから村の事なら二人の方がずっと詳しいよ」

 シンジは以前第三村にいたが、期間はあまり長くない。

 今回の下船でアスカはケンスケの元へ戻り、サクラはヴィレの医官だったことを活かしトウジの診療所を手伝うことになっていた。

 二人はシンジよりも長く、住んでいて村についてはずっと詳しい。

 

「碇君はまだどうするのか、わからない。だから来てほしいの。

 碇君と一緒に居たい。これが私の気持ち」

 

 レイの告白にシンジは第三村で過ごしたアヤナミを思い出す。

 自分に好きといった人。自分の目の前で亡くなった人。

 アヤナミだけど、綾波じゃない人。

 

「綾波はもしかして、もう一人の真似をして言った訳じゃないよね」

 

「別の私は碇君に何て言ったの?」

 

「え...えっと」

 綾波と同じ顔をしたアヤナミに好きって言われたことを綾波に言ってよいかシンジは迷った。

 あの時言われた好きが人として好きか、男として好きかアヤナミに尋ねることが出来ないまま、彼女は逝ってしまった。

 

アヤナミの想いを綾波に伝えていいのかわからなかった。

 

「碇君…教えてほしいの。私は別の私は違う。でも、別の私がどんな風に生きて何を感じていたのか…知りたいと思っている」

 

「あの時のアヤナミは落ち込んでいる僕に、好きって言ってくれたんだ」

 レイの言葉にシンジは応えた。いなくなってしまった自分の想いを知ろうとする綾波レイにアヤナミレイの伝える。

 

「別の私は…伝えたのね。碇君が好きって」

 

 レイの口から好きと聞こえたため、シンジは取り繕うように、

「でも、あれは僕を異性として見てるとかじゃなくて、みんなが僕に優しい理由を聞いたときに答えたのであって…」

 

 しどろもどろになりながら、好きと言われた状況を話すシンジにレイは、

「私は碇君といるとポカポカする…多分、別の私も同じように感じていたと思う…

 私は碇君とポカポカしたい。碇君にもポカポカしてほしい。だから、一緒に来てほしい」

 

シンジは少しうつむき考えて、レイの真摯な願いに応える。

「うん、わかった。一緒に帰ろう」

 

 

 

5

 

 

 シンジが自分の行く先を決めて数日が経った。

 

 船舶は港へ着き、シンジ、レイ、アスカ、マリ、カヲルは浜辺に居た。

 

 マリにパイロットの諸君は浜辺に集合と呼び出されたのだ。

 赤かった海と時とは違い、潮の匂いがする。シンジにとっては加持に誘われて見学した日本海洋生態系保存機構で感じた匂いだった。

 

「コネ眼鏡、あたし達パイロット連中をこんな所に呼び出して何企んでるの」

 

「姫、あたしに対して信頼ないの?」

 

「戦いおいては、あんたのことを信頼はしていたわ。けどね、その他のことは、ぜーんぜーん」

 

「あちゃー、一番付き合い長いはずの姫から辛辣なお言葉。あたしはみんなで取り戻した世界をみんなで見たいと思ったのよ。船を降りたらこう集まることも難しいでしょうから」

 

 マリの言葉にシンジは、「マリさんは、これからどうされるんですか」

 

「あたしはこれから世界の復興のお手伝いさ。世界はコア化から戻ったけれど、放置されていて使えないものも多い。だからそれらを直す。それが大人の役目さ」

 楽しそうにマリは自分がこれからやろうとしている展望を語っていく。

 

 

「使途やエヴァが無くなっても、すぐに元通りにはなりませんよね」

 シンジはマリが語る未来に希望を感じると共に、生きていくことを難しさを思い出す。

 第三村でトウジと話した時、落ち着く前はお天道様に顔向けできないこともたくさんやった語っていた。

 何をやったかは聞きはしなかったが、村の食糧事情を思い出せば当初は明日生きることで精一杯だったのだろう。

 

 難しい顔をするシンジにカヲルは、

「難しい顔をしないでシンジ君、これから今よりずっと良くなるよ」と励ましの言葉をかける。

 

「ありがとうカヲル君。カヲル君はこれからどうするの?」

 

「僕もこれからの復興を手助けしようと思ってる。ネルフやゼーレにいたから彼らが隠し持っていた食料や資源について知っていることも多い。その情報を提供しようと思う。だからシンジ君、君とは一旦はお別れだ」

 

「また、会えるよね」

 

「もちろんさ、ヴィレに情報を提供した後は、シンジ君に一番に会いに行くよ」

 

「ありがとう、カヲル君」

 

 男二人の語らいを終えるのを見てアスカが、

「あたしとバカシンジとレイが第三村、コネ眼鏡らがヴィレに残る。元パイロットの内三人が同じ場所にいるんだから、すぐ会えるわよ。それにレイも大胆ね。このバカに一緒に来てほしいなんて」

 

 アスカの言葉にレイはみんなからそっぽを向いて歩きだす。恥ずかしかったのだろう。

 

 レイの態度にアスカは悦を入ったのか、次の標的にシンジを選び、

「シンちゃん、愛しのレイがご機嫌斜めよ。なんか言ってやんなさいよ」

 

 シンジはアスカの言葉に恥ずかしさを覚えつつも一人先を歩くレイを追いかけ、手を握る。

 突然握られた手にレイ驚き、

「碇君の手、暖かい」と呟く。

 

レイの言葉にシンジの体が熱くなる。

 

「碇君は私といるとポカポカする?」

 

 シンジの体はさらに熱くなり、熱を帯びていくのを感じた。

 

 綾波の事は嫌いではない。綾波のいうポカポカが綾波が求めているポカポカであるのか、今のシンジには答えが出せないでいた。

 

 答えることのできないシンジに助け船がくる。

「ワンコ君、顔真っ赤。レイちゃんもそこまでにしてあげなよ。ワンコ君、すごく困っているから」

 

「わかった。碇君、いつか答えてね」

 

 レイはみんなの元に歩いていき、シンジは一人残される。

 

「ちゃんと、考えないと」

 

 シンジは青い海と青い空の境界である水平線を見つめた。

 

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