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「お兄ちゃん、帰ったよ」
サクラは鈴原家の玄関を開け、兄の名を呼ぶ。
廊下を走る足音が聞こえ、この家の家主は玄関へと向かう。
帰ってきた同い年で年下の親友であるシンジを見つけ、
「シンジ、生きとったか」
トウジは抱き着き再開を喜ぶ。
「ありがとう、トウジ」
トウジに思い切り抱き着かれ、身動きのできないシンジ。
トウジとシンジは同い年であるが、体の成長には14年の差がある。大の大人に抱き着かれるのは、中学生の体は辛い。
「お兄ちゃん、シンジさん痛がってる」
されるがままのシンジを見かねたサクラが手助けに入る。
「すまんな、シンジ。ヴィレに付いていったと聞いたときは、また辛い想いするじゃないか、心配だったんや」
「ありがとう、トウジ」
「おうおう、五体満足で帰ってきてくれて、ほんま嬉しいで。式波も人間に戻ったいう話クレディト経由でf聞いた。なんの心配もせず村へ入ってこれる。ええこっちゃ」
喜ぶトウジをみて、思わずシンジは笑顔を浮かべ、アスカは少し面倒くさそうな顔を見せ、サクラはやれやれな表情を見せている中、
「碇君」
レイは状況が飲み込めてないのか、シンジの制服の袖を少し引っ張る。
「綾波、えっと、トウジだよ。中学でクラスが一緒で僕とよく一緒にいた」
「鈴原君…」
レイはきょとんとした表情を見せる。レイは初号機で14年という年月を過ごしていたが、LCLの中に溶けていたため肉体の変化は髪が伸びた程度の物だった。
ヴィレの船舶で旧ネルフ職員と話すことで14年という時間を感じてはいたが、同級生が大人になっているというのは頭で理解していても衝撃的な内容であった。
「えっと、綾波で合ってるか」
トウジは以前、綾波でないアヤナミ通称そっくりさんを預かっていたこともあり、質問を行う。
「ええ、私は綾波レイ」
「そうか、そうか、わしらと一緒に学校に通っとった綾波か。昔のクラスメイトが生きとるのはええことや」
トウジは安堵の声と共に懐かしむように声を出す。
「僕もまたみんなと会えて本当に良かったよ」
「シンジ、おまえが帰ってくると聞いて準備したんだ」
「えっ、何を」
「式波も人間になってシンジも帰ってくる。夜はパァーットやるで」
トウジは手を叩き、大きく広げる。
「いいの、トウジ。世界だって元に戻ったばかりなのに」
コア化された世界は元に戻りはしたが、食糧事情はすぐには変わらない。
「シンジ、そんな心配せんでええ。せっかくみんなが集まるんや。そんな時は景気よくやらんといかんのや」
7
「これより第3新東京市立第壱中学校2年A組の同窓会や。みんなカンパーイ」
トウジが音戸を取り、乾杯の挨拶をする。それに続いてみなも「カンパーイ」と声を出す。
鈴原家の居間には、シンジ、レイ、アスカ、トウジ、ケンスケ、ヒカリ、ツバメがいる。
ヒカリの父やサクラは折角の再開を邪魔しては悪いと二人とも村の知り合いの元へ行っている。
「本当に綾波さんなんだよね。昔と全然変わってない」
「ええ」
レイはヒカリの言葉に頷きを入れる。
「あなたのそっくりさんもこの村に住んでいたのよ。娘にも懐いていてのよ」
ヒカリはツバメを抱っこしてレイに近づける。
レイは人差し指を伸ばすとツバメは小さな手ぎゅっと握る。
「教えてほしいの…別の私はどんなだった?」
「そっくりさんのこと。綾波さんはどうして知りたいと思ったの?」
「別の私が何を思って生きていたか知りたいの…」
「綾波さんは綾波さんよ。そっくりさんとは違うわ」
アヤナミレイは綾波レイでないことを気にしていたが、綾波レイでないことを受け入れ、自分を模索した。
そのため、レイが過度にアヤナミレイに対して意識することはあまり良いことでないとヒカリは考えた。
「私はもう一人の私ではない…。替わりに生きるのも出来ない。別の私の思いは別の私の物だから。でも、知りたい。感じたい」
「わかった。少しずつ教えてあげる。そのためにも早く村に慣れていかないとね」
「ありがとう」
ヒカリとレイが話を横で聞くシンジはヒカリがレイをレイとして受け入れてくれたことにうれしさを覚えていた。
「シンジ、綾波ばかり見てどうしたんや」
トウジはシンジに近づき肩を組む。
「いやーなんていうか」言葉が詰まるシンジにアスカが、
「愛しのレイちゃんに夢中なんじゃないの」といじわるそうに言葉をかける。
「シンジは綾波に惚れとるんか」
「そうなの...碇君」
トウジの言葉にレイが反応する。
「いや...もうちょっと待ってほしいんだ」
恥ずかしくなったのか、顔を背けた。
同窓会は楽しく続き、トウジは仰向けに眠ってしまい、ヒカリはやれやれいう感じでトウジに毛布を掛ける。
「トウジ、眠っちゃったな、碇」
ケンスケはトウジよりも酒に強いらしく、全然酔っている感じはしない。
「うん、そうだね」
「碇はこれからどうすんだ。綾波が来てほしいから来たっていっていたけど、それは綾波が願ったことでお前が願ったことではないだろ」
「それなんだけど、ケンスケ。ひとつお願いがあるんだけど」
「碇が俺なんかにお願い?叶えられることならいいんだけど」
突然のシンジから言葉にケンスケは首をかしげる。
「実は…」
シンジは帰る中で見つけた最初のやりたいことをケンスケに話した。