仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ THE FIRST CROSS   作:大ちゃんネオ

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名に背負いしもの

「あーさっぱりしたー!」

 

 タオルを濡れた頭の上に乗せ、気持ち良さげなムゲンが扉を開けた。今日のHamelnは普段とは違い客の入りが良く、みんな大忙し。

 キッチンを預かったムゲンは今日の疲れをさっぱり洗い流した。              

 部屋はHamelnの二階。居住スペースの物置部屋を簡単に片付けこの部屋に埋もれていたベッドを二つ使えるようにしたのだ。

 

「あ、おかえりなさい」

「ああ。燐君も温くならないうちに風呂入った方がいいぞ。……って、なに読んでるんだ?」

 

 濡れた髪を拭きながら、部屋の左側のベッドに腰掛け燐と向き合う。

 厚さはないが大判の本を燐は読んでいたようだったので気になり訊ねた。

 

「この世界で放送されたライダー。仮面ライダー龍騎の……超全集? 章太郎君から借りて読んでたんです」

 

 真剣な面持ちだったであろう顔を崩してムゲンに説明する。

 どうしても燐にとって気になることだったのだ。

 この、仮面ライダー龍騎という仮面ライダーは。

 

「龍騎は僕と……。僕の世界のライダーと同じなんです。ライダーというシステム、モンスター。そして……。最後の一人になるまでライダー同士殺し合うということまでも」

「……昼間、簡単には燐君の世界について聞いたけど、もう少し詳しく教えてくれないか? いや、話すのがキツイっていうならいいんだけど……」 

 

 部屋は静まり返る。

 重い空気が支配する。

 ムゲンは失敗したかと軽く頭を掻いた。

 

「……俺の世界って、俺しかライダーがいないんだ」

「え……」

「仲間はいるよ、大事な仲間が。作戦考えてくれたりする親友と色々フォローしてくれる親友。あとは別の世界から来た魔術師にバイト先のすっげぇ濃いオカマの店長。みんな大切な仲間だ」

 

 彼の脳裏には友であり、仲間である人達の姿があった。

 彼等がいたから自分は戦えるのだと強く、そう思っている。

 

「けど、仮面ライダーの仲間はいないんだ。力はお借りしてる立場だけど、自分以外のライダーと会うのは初めてでさ。だから、色々話してみたかった。同じ仮面ライダーとして」

「同じ、仮面ライダーとして……」

 

 その言葉が何か引っ掛かったのか燐は俯く。

 何か思うところがあるようだった。

 だが、それも一瞬のこと。

 

「……叶えたい願いのために、少女が纏う仮面。それが、僕の世界の仮面ライダーです」

「願いのために殺し合っているんだろう? 燐君はどうしてそんな女ばっかの戦いなんかに……」 

「そう、ですね。始まりはただ死にたくない。ただそれだけの思いでした」

 

 今でも鮮明に思い出せる。

 闇の中に現れた純白のカードデッキ。

 これが自身の生命を繋ぐためのものであり、そして……。

 

「誰かを守る力……。人を、守りたいと。そう突き動かされて、戦ってきました。モンスターからも、ライダー同士の戦いからも」

 

 だが、時に囁くのだ。

 戦えと。

 剣を振るえと。

 ライダーを切り裂けと。  

 戦いたがる己が本能のようなものが、自分に命じてくる。

 

「……ムゲンさんや他の世界のライダーみたいなものじゃないんです。僕達の世界の、仮面ライダーって」

 

 そう言いながら、ムゲンに微笑みかける。

 だが、その笑顔はどこか力ないものであった。

 

「……そうかもしれないけど、燐君は違うんだろ? 今日だって誰かを守るために戦ったじゃないか。だから、燐君もれっきとした()()()()()()さ」

「仮面ライダー、か……。難しいですね、仮面ライダーって」

「そうだな。多分、俺達が思っている以上に重いものなんだと思う。仮面ライダーってやつは。けどまあ、自分が信じる仮面ライダーをやってくしかないんだろうな。俺も含めて」

 

 自分自身にも言い聞かせるように、仮面ライダーという名の重さを実感する。

 これまでそこまで考えたことはなかったが、自分と同じ仮面ライダーである人物との出会いが、今回のようなことを考えさせるに至った。

 

「そういや、風呂だったな。引き止めちまって悪かった」

「いえ。お風呂から上がったらまた話しましょう。僕も話したいことがあったので」

「話したいこと?」

「バンブーメタローのことです。今日一日ずっとあいつの攻略法を考えていたんですがムゲンさんも交えて考えようと思って」

 

 それを聞いてムゲンはぎょっとした。

 今日一日というと働いてる最中も考えていたことになるが今日は客も多く入ったし、何より燐は接客業どころかバイトもしたことがないため色々と慣れず、大変だろうと思っていたのだが。

 よもや、そんなことを考えている余裕があったとは。

 戦っている時も薄々思っていたが、この御剣燐という少年はこちらが思っているよりも可愛げはないのかもしれない。

 こと、戦いという事柄においては自分以上の()()があるような気がした。

 

 

 

 

 

「ふぅ~いい湯でした~」

 

 今日一日の疲れを洗い流してきた燐が部屋に戻ると中にはムゲンの他にもう一人。章太郎の姿もあった。

 

「よし、燐も戻ってきたし早速やるか。作戦会議。なんと今回は優秀なアドバイザー付きだぜ」

「アドバイザー?」

「そう。生粋の仮面ライダー好きの章太郎君の力を借りて、バンブーメタローの対策を練ろうってわけだ。章太郎君なら、こういう強敵が現れた時、偉大なる先輩達がどうしたのかも知ってるしな」

 

 任せてよ!

 そう言うかのように胸を張る章太郎。

 確かに、色々な視点からの考察というものは大事だ。自分では思い付かないようなことも、他者なら思い付くかもしれない。

 

「それじゃあ、まずはバンブーメタローの能力について簡単におさらい。高い再生能力、打撃が効かない、電気も効かない、竹槍を自在に生成、高い近接戦闘技能、そして戦いの中で成長していく」

「奴は純粋に強い。が、それに拍車をかけるように個々の能力が作用する」

「そして、それぞれの能力がしっかりと噛み合っています。簡単に奴を倒しきることは出来ず長期戦に。そうすると……」

「あいつ自身が成長してきてこちらを上回ると……。やはり、厄介な奴だ」

 

 バンブーメタローの研究を行うが、改めてバンブーメタローが何敵だということを思い知らされる。

 短期決戦が望ましいが、それが出来ない。

 どこにも活路を見出だせない。

 

「燐君はあいつとの戦い方を考えていたんだろう? まずそれを聞かせてくれないか?」

「そうですね。……バンブーメタローは打撃には強いようですが斬撃に対してはそんなことはありませんでした。なので、ムゲンさんにあいつの動きを止めてもらって、そこをずばっと……」

 

 シンプルな作戦。

 これぐらい分かりやすいのがいいだろうとは思う。

 だが、果たしてそんな簡単に上手くいくのだろうか?

 

「奴は鍛え直すと言っていました。モンスターを倒すことで腕を上げてきた……。今こうしている間にも奴は……」

「鍛えて更に腕を上げているってわけか……」

 

 果たして、次に奴と邂逅した時に自分達は太刀打ち出来るのだろうかと二人の脳内に嫌な考えが浮かぶ。

 

「だったら兄ちゃん達も特訓すればいいんだよ」

「俺達が?」

「うん。昭和ライダーに多いけど、特訓して強敵に打ち勝ったんだ」

「昭和ライダー……」

 

 なんで昭和?

 そんな疑問が浮かぶが今はそんなことよりもだ。

 

「まあ、特訓は強くなるためにはするわな……」

「で、その昭和? ライダーはどんな特訓をしたの?」

 

 燐がそう訊ねると章太郎は待ってましたと言わんばかりに笑顔を浮かべ、「ちょっと待ってて!」と一目散に部屋から出ていった。

 ドタバタと大きな足音が響く。

 戻ってきた章太郎の手にはスマホが握られていた。

 慣れた手つきで動画サイトを開いて再生したのは……。

 

『昭和ライダー特訓集』

 

 ~視聴中~

 

「お、おう……」

「特訓……。特訓?」

「いやこれリンチだろ」

「えぇ……」

 

 二人は見た。 

 偉大なる先達の恐ろしき特訓を。

 

「……やるしか、ないのか?」

「効果あるのかちょっと疑問あるけど……」

「いいからやる!!!」

「「は、はい……」」

 

 こうして、意外とスパルタな章太郎の手により二人は特訓をする運びとなったのだが……。

 

「おーい章太郎。宿題は終わったのか?」

「げっ」

「なんだぁ? 宿題終わってなかったのか~?」

「宿題は終わらせなきゃだよね?」

 

 章太郎は宿題を終わらせるために家に居残り。

 そうして二人は……。

 

 近場の廃工場。

 変身した二人が向かい合っていた。

 

「特訓って言ってもまあ出来ることって言ったらまあ……」

「組手しか、ないですよね」

 

 スラッシュバイザーを構えるツルギ。

 拳を握りしめ、身体中に漲る力を感じるデュオル。

 

「行くぜッ!」

「ッ!!!」

 

 同時に駆け出す二人。

 二人の特訓は、夜明けまで続いた────。

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