仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ THE FIRST CROSS 作:大ちゃんネオ
バンブーメタローの発するオーラによって教室の中は妖しげな光に覆われていた。
そんな中に立つ純白の騎士、ツルギはよく目立っていた。
「ぜあぁぁぁッ!!!!!」
裂帛と共に斬りかかるツルギ。
白刃は確かにバンブーメタローの身体を捉え、暗闇に火花が浮かんだ。
『ぬるいぞ小童』
「そんなッ!?」
先の一刀は、数度打ち合いようやく掴んだ好機を完全にものとした瞬間に放った最高の一撃であった。
あれで、倒れぬものはいない。
それほどの一撃。
それを食らって、涼しい顔をしているとは……。
『次はこちらの番とさせてもらう。ぬおぉぉッ!!!』
「ッ!!!」
再び放たれる神域の刺突。
いけない。
これは、もろにもらってしまう────!
「スペリオルライダーパァァァァァンチッ!!!!!!」
叫びと同時に壁が破壊され、デュオルが勢いそのままにバンブーメタローの左頬を殴り付けた。
『ぬっ!?』
「竹人形、再会嬉しいぜ。今日で決着つけてやるぜ。おらぁッ!!! マイティナックルッ!!!」
左の拳が、バンブーメタローのレバーを抉る。
人間ならば確実にノックダウンするだろう一撃でも、バンブーメタローは意に介さない。
「ッ!?」
『打撃は効かぬと何度言ったら分かるのだぁぁぁぁ!!!!!』
振るわれた槍に反応出来ずデュオルは吹き飛び、机の山に埋もれた。
痛みに呻く。
だが、そんなことをしている暇はない。
一刻も早く、バンブーメタローを倒さなければならないのだ。
動け、動けと自身の身体に命じる。
『我等が同胞の仇、討たせてもらうぞデュオル!』
これを好機とバンブーメタローが迫る。
しかし、この場にいるライダーは一人ではない。
二人の間に割って入ったツルギがバンブーメタローにこれでもかと斬りかかる。
反撃の隙すら与えないと、太刀とスラッシュバイザーの二刀を巧みに操る。
『まだ歯応えが残っていたか!』
「ッ! オオオオッ!!!!!」
「俺もいるぜぇぇぇぇ!!!!!!」
怒涛の波状攻撃。
剣戟、拳。
二つの嵐が吹き荒れる。
ツルギは切り裂き、デュオルは殴る。
ここにきてようやく、ライダー達の方に波が来たかと思われた。
……それでも、今のバンブーメタローには及ばない。
『ハアァァァァァッ!!!!!!』
破ることなど容易いはずのない二人の連続攻撃のほんの少しの隙をつき、バンブーメタローは反撃の手を一手。そう、たった一手打ったのだ。
薙ぎ払う。
ただ、それだけの攻撃。
それだけで、充分なのだ。
力で圧倒するものに、小難しい技など必要ないのだ。
二人の苦痛な叫びが響く。
窓を破り、二人は校舎の三階から地面に叩きつけられた。
体育館はドラグスラッシャーのおかげかゲルニュート達の襲撃もなくなり安全地帯となっていた。
圧倒的なまでにゲルニュートとはモンスターとしての格が違うドラグスラッシャー。そこにいるだけでゲルニュートの侵入を阻止しているのだ。
強者の風格を放ち、ゲルニュートからも人間からも畏れられていたドラグスラッシャーであったがここであるものを感知し、警戒の態勢へと入った。
「……どうしたんだドラグスラッシャー?」
章太郎が恐る恐る訊ねる。
ドラグスラッシャーは低く唸るのみ。
そして、唯一の安全地帯は侵された。
壁を突き破ったものが二つ、床に転がった。
最初はゲルニュートかと誰もが思ったが、煙が晴れ、その姿が露になると誰もが目を疑った。
床に転がっていたのは、傷だらけの仮面ライダー達……。
「燐兄ちゃん! ムゲン兄ちゃん!」
「来るな!!!」
その怒声はムゲンが今出せる最大限の、最後の声であった。
肺が裂けそうになるほどの痛みを伴い、仮面の下は血が溜まっている。
『ほう? まだそれだけの声を発する元気が残っていたか。それとも、空元気か』
「けっ……。空元気も元気は元気さ……」
ムゲンの得意な軽口も、今はただの独り言。
そして燐もまた、仮面の下の瞳にはまだ光があった。
敵を睨み付け、例え刺し違えようとも敵を倒すという必殺の覚悟が目に宿っていた。
だが、身体がそれに追い付かない。
刺し違えることすら不可能だと、身体が言っていた。
『諦めよ、仮面ライダー。そもそもお前達は何故戦う。ここはお前達の世界とは違うだろう。なにをそんな必死に守る。血を分けた家族も、友もいないこの世界で死に果ててもいいのか? 孤独に、無様に、惨めに、哀れに。名声を与えられることもなく、誉れもなく、この数ある世界のうちのひとつに過ぎない世界を守りきれずに消えてもいいと言うのか』
悪魔の囁き。
そんな言葉にムゲンは惑わされた。
この世界にはカナタ、ハルカ、クー、シスター、ユノ……。自分にとって大切な人達はいない。
数ある世界のひとつぐらい、奴等にくれてやったって、いいのではないか。
血の巡らない脳味噌がそんな腑抜けたことを囁いてくる。
バンブーメタローの攻撃が再び二人を襲う。
これまでの攻撃の中では威力は弱いもの。
それでも、二人の変身は解けてしまう。
それほどまでに、二人のダメージは深刻だった。
二人はボロボロだった。
『余興に見せてやろう。お前達が守ろうとしていたものが壊される瞬間を』
やめろ。
やめろ、やめろ。
やめろ、やめろ、やめろ……。
やめて、くれ……。
バンブーメタローの掌の上に紫色の炎が浮かぶ。
あれが、放たれてしまえば……。
『……まだ、立ち上がるか』
立ち上がっていた、仲間が。
御剣燐が。
今にも、手折られてしまいそうなのに。
自分と同じように怪我を負っているのに。
「……たとえ、どれだけ刃を
戦友の言葉に叩き起こされた。
さっきまでの自分は何を考えていたのだ。
自分を殴ってやりたい気分だ。
だが、それは痛いので辞めよう。
そんなことよりももっと痛いことをしなければならない。
……立ち上がるということを。
「……さっきは散々言ってくれたな。友もいない世界を守るためになんで戦うのかとか言ったか? お前の目は節穴か。友ならそこにいんだよ、たった一日の長い付き合いのな」
振り向き、微笑みかける。
章太郎もそれに応え、笑顔を向けた。
「あと、隣にいる人畜無害な顔して本当は俺よりもおっかない戦友もいるしな」
「そんな人どこにいるんですか?」
「ふっ……。ボチボチ始めるか。当然いけるよな?」
「もちろん。あれだけの啖呵、切ったんですから」
『ええい! なにをごちゃごちゃと!』
バンブーメタローが炎を放つ。
しかし、それはドラグスラッシャーの斬撃によりかき消され、それを皮切りにドラグスラッシャーがバンブーメタローに迫った。
バンブーメタローに噛み付き、空へと飛び立ったドラグスラッシャー。
自分達もドラグスラッシャーに続くぞと意気込む二人。
体力は当の昔に果てた。
ならば、今この身体を動かすものは気力というもの。
気力充分。
ならばあとは勝つのみ。
『助けて! 仮面ライダー!』
ふと、世界を越える時に聞こえた声がした。
助けてと、叫んでいる。
二人は心の中で待っていろ、すぐに助けると応じる。
だが、何か様子がおかしいことにすぐに気付いた。
ずっと同じ言葉を繰り返しているが、徐々に声が遠ざかっていく。
『助けて! 仮面ライダー!』
『助……! ……ライダー!』
『………! ………………!』
『……れ! …………ダー!』
『……ん……れ! 仮面……ダー!』
「頑張れ! 仮面ライダー!!!」
その時、世界の声と章太郎の声が重なった。
助けてと、救いを求める叫びが自分を応援するものへと変化した。
そうして、その言葉は人々に伝播していく。
「頑張れ! 仮面ライダー!」
「負けるな! 仮面ライダー!」
「絶対に勝って!!! 仮面ライダー!!!」
「応援してるぞ! 仮面ライダー!!!」
悲鳴に覆われていた世界は、声援によって覆された。
二人にとって、泣いてしまいそうなほどの勇気になる力……。
「すごい、ですね……」
「ああ……。それにしても、重たいものを背負っちまったな俺達。
「
「ああ。ここで負けたらこんなすげえもの築き上げた偉大な
ドラグスラッシャーをかわし、地上へと降り立ったバンブーメタローはその光景に我が目を疑った。
先程まで、恐怖と絶望に支配されていた世界に希望が咲き誇っていた。
『これは一体なんなのだ……!?』
一人置き去りのバンブーメタローを鼻で笑うムゲン。
二人はそれぞれの力を手にもう一度、バンブーメタローに立ち向かう。
燐は左手に持った純白のカードデッキを突き出し、変身ベルト『Vバックル』を出現させる。
ムゲンは『デュオルドライバー』を装着し、両端に備え付けられた二つのグリップを引き、カードスロットに『ライダーメモリア』を装填。
【1号!×クウガ! ユニゾンアップ!】
突き出したカードデッキを一度、腰まで引きカードデッキに右手を添える。
そして刀を抜き放つかの如く、腕を回し構える。
武術の型のように大きくゆっくりと円を描くように腕を回し、両腕を広げていく。
「「変身────!!!」」
同時に叫んだその言葉は、邪悪を打ち破るためのもの。
二人の仮面ライダーが今こそ悪を蹴散らさんと、再び立ち上がった。