仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ THE FIRST CROSS 作:大ちゃんネオ
「さあ、ヤろうじゃないか」
怪人態へと姿を変えたツムカリ。
人型となった龍のような姿に朱色の武者鎧を纏っているかのようである。
両の肩当て、籠手に胸と背。
そして腰に差した小太刀の拵えは龍の顔を模しており、ツムカリの頭部と合わせて八つの龍が妖しげな気を発していた。
ツムカリという名も相まって、八岐大蛇を連想させる。
ツムカリは自身の牙のひとつである背負っていた野太刀を抜き、その長大な刃を向けた。
「坊やも構えな。それぐらいは待ってやるよ」
言われなくとも、ツルギは己が愛刀である太刀『リュウノタチ』を召喚し構える。
こと剣技においては右に出るものはいないとされるツルギではあるが、ツムカリと向かい合ってピリピリとした緊張感に包まれていた。
直感で感じる強さ。
ハイ・メタローというメタローの中でも上位に君臨するものの一柱。
そんな敵を目の前にして、自分の死というものすら見えたほどだ。
だが、それでも怯えない、竦まない。
何故なら、自分は……。
「
自分に改めて言い聞かせる。
そう、この身は人類を守護する剣。仮面ライダー。
仮面ライダーが敵を前にして怖気づくなど、許されない。
「いいね。仮面のせいで見えないがきっといい面構えをしてるんだろう。そういう奴は嫌いじゃない。……行くぞ」
ボンッと音が鳴る。
周囲の竹が揺れる。
砲弾のようにツルギに迫ったツムカリは野太刀を横薙ぎにして振るう。
だが、ツルギには見えていた。
バックステップでツムカリの間合の外へ出る。
空を切る野太刀。
生え並ぶ竹達が一斉に斬り倒された。
これで奴の切れ味、威力は分かったとツルギは脳内でツムカリとの戦い方を構築していく。
「今のを避けるのは大したものだ。大体はあれで片付いちまうからな」
「……あなたって」
「なんだ?」
「あなたって、結構お喋りなんですね」
「は……? ッ!?」
ツムカリは久しく感じていなかった死というものの臭いを嗅ぎとった。
いつの間にか眼前に迫っていたツルギ。
そして先程自身が出した技と違わぬ、ただ真っ直ぐに首を斬り落としにかかっていた。
刃と刃のぶつかり合う音。
野太刀での防御が間に合った。
そのまま鍔競り合いに持ち込み、二人は互いの顔を睨み付ける。
正に間一髪。
死を直前にまで感じたツムカリは、内心で歓喜していた。よもや、ここまでの腕を持つ者がいたとは。
バンブーメタローが執着したのも分かる。
久方ぶりの死合だ、これは。
血肉が、湧き踊る────!
「お喋りだと、言ったな。久しぶりに楽しくってつい饒舌になっちまった。だが、お前やわたしのような奴は刃に言の葉を乗せるのが流儀だよなぁ!」
鍔競り合いを押し勝ったのはツムカリ。
弾かれたツルギは追撃に注意する。しかし既にツムカリは迫っていた。
次は上段からの一閃。
直撃を食らえば、薪のように割られてしまうだろう。
「ぐっ!!!」
太刀で受け止める。
だが、パワーではやはり向こうの方が上。
膝をつかされ、このまま押し切るつもりなのだろう。
────ほんの一瞬のことであった。
「ガアッ!?」
ツムカリの胴が切り裂かれた。
火花を上げ、後退るツムカリ。
ツルギの左手には、逆手にもったスラッシュバイザーが握られていた。
ほんの一瞬である。
ほんの一瞬、太刀の刃を支えていた左手を離し、スラッシュバイザーを抜刀したツルギはツムカリの胴を切り裂いたのだ。
「腰の得物……。こちらも抜こうか」
腰に差していた小太刀を抜くツムカリ。
共に二刀となった二人。
分かりやすく脅威なのは野太刀。
あの小太刀は防御用であるだろうと踏んだツルギはツムカリに向かって斬り込む。
野太刀の斬をスラッシュバイザーで受け流し、右手の太刀で狙うは首。
だが、小太刀がそれを阻む。
小太刀を滑らせ攻撃に転じるツムカリ。
激しい攻撃の連続。
攻撃の鋭さが増し、ツルギは防戦一方となる。
「こっちが真打……!」
「ご名答!」
胸部をバツ字に切り裂かれる。
これ以上はやらせまいと太刀を振るうが全て空振り。
ツムカリは竹林の闇の中へと消えていった。
バンブーメタローを倒したことで徐々に竹林は消滅していってはいるが未だに生い茂る竹達は周囲に暗闇を作り出している。
そして、ツルギは全方向を警戒する。
先程から右、後方、左、前方とツムカリの気配を察知するがツムカリは未だにあちこちを移動して襲いかかる気配はない。
恐らく、必要以上に集中させて集中力が途切れた瞬間に襲いかかるのだろうと推察したツルギ。
「なら……」
太刀を振るう。
次の瞬間、周囲の竹が切り落とされる。
日の光が、闇を照らした。
「へぇ。だが、そいつは失策だ」
未だ姿を見せないツムカリの声が響く、そして風を切る音も。
次の瞬間、ツルギの背に切り裂かれたかのような痛みが走った。
(なんだ!? 斬られてはいないというのに、どうして……)
「グッ!?」
続いて左腕、右足に強烈な痛みが走る。
何故、どうしてと疑問は尽きない。
恐らくツムカリの特異な能力ではあるのだろうが、からくりが分からない。
斬られていないのに、斬られたかのような痛み。
とにかく、突っ立っているのは危険だと動き回ることにした。
邪魔な竹を斬り落として駆ける。
背後にツムカリの殺気を背負いながら。
「ハハッ! 鬼ごっこで遊ぶのかい? そら、捕まえた」
「くっ……!?」
再び、背中に走る痛み。
逃げても駄目だ。
ツムカリの気配を感じる背後を向く。
尋常でないほどの邪が目の前に立ちはだかっているようだ。
「逃げるのはもう止めかい?」
「……」
「そうだな。その感じはもう立ってるのもやっとと見た」
余裕ある佇まいで竹林の影の中から現れたツムカリはだらりと小太刀の切先を向けた。
この戦いを自身の勝利という結果で終わらせるつもりである。
目の前にいるのは手負いの獲物。
狩るのは、容易い。
「フッ……!」
踏み込みからの野太刀による上段。
絶大な破壊力を秘めているそれはこの戦いで最大の脅威と見えた。
だが、ツルギの目は違う脅威を捉えていた。
(どうして、地面に斬った跡が……? そういうことか……!)
まだ仮説ではあるが、ツルギはその仮説に賭けた。
野太刀の攻撃、これは冷静に回避する。
そして迫る弐の太刀を弾いた。
「ッ!? へえ、まさか気付くとはね」
「もっと早く気付くべきだった。あなたの失策という言葉と、地面にあった跡。あなたが斬っていたのは
「やはり勘がいい、正解だ。我が秘剣・影宿りは影を斬り、その痛みを影の主に与える技。見破るとは、つくづく面白い。殺すのが惜しいほどだ」
野太刀を地面に突き刺し、小太刀一本を構えるツムカリ。
これまでで一番の殺気────!
「もう小細工はしない。さぁ、魔人の剣をご覧ぜよ」
迫る刃。
あらゆる方向からツムカリの斬撃が襲う。
素早い剣閃に防御も間に合わず、ツルギは全身を切り裂かれていく。
「ぐうぅぅ……!」
あまりのダメージに膝をつく。
もはや、防御することも出来なくなり太刀を手離してしまった。
「自分の得物を手離すとは……。もういい、死ね」
真正面から一直線に飛び掛かるツムカリ。
相手に死を贈るための刃となり、ツルギの首を堕とすため迫る────。
「なっ!?」
だが、ツムカリはツルギの目を見てしまった。
緑光に煌めく、諦めてなどいなかったツルギの、仮面の下の燐の瞳……!
そして、ツムカリは悟ったのだ。
(誘われた!? それに、あの構えは……!)
あれはそう、居合である。
手離したと思った太刀を即座に掴みツルギは神速の一閃を放つ────!
そして、竜が吼えた。
「がぁぁぁぁぁ!?!?」
加速していた分咄嗟に避けることは出来ず、更に威力の乗った斬撃をまともに食らったツムカリは吹き飛び、地面を転げた。
ダメージの影響で怪人態を維持出来ず、ツムカリは人間態に戻る。
「くっ……。やはり、やるね。次も楽しみにしとくよ」
「待て! くっ……」
背後の光のゲートに身を投げるツムカリ。
追いかけようとするが、これまでの戦闘のダメージの影響で追い付くことが出来なかった。
「さらばだツルギ。このツムカリ、確かに覚えたよ」
光の中へと消えていったツムカリはそう言い残してこの世界を去った。
邪な気配が完全に消えたことを察知してから、ツルギは太刀を杖にして膝をつく。
「もっと、強くならないと……」
新たなる強敵の登場に更なる力を求めるツルギ。
そのためには、ここで膝をついている場合ではない。
力強く立ち上がるツルギに、陽の光が輝いた。