仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ THE FIRST CROSS 作:大ちゃんネオ
『キィアアアアアッ!!』
歩道橋が四角形を描くように入り組んで開けた場所になっている交差点は赤いイモリを模したミラーモンスター・ゲルニュートの集団が恐れを掻き立てる鳴き声を上げながら破壊活動を行っていた。既に何台かの自動車は事故を起こして横転していたり、ビルが壊されて小火も見られた。
『キキィイイィアアアッ!!』
「こないで……だ、誰か――」
「やらせねえよ!」
そして、ゲルニュートの一匹がいままさに逃げ遅れた女性に襲い掛かろうとした寸前のことである。間一髪で間にあったムゲンは右手の人差し指にはめた指輪型のアーティファクトから十字架型のマルチウェポンのDブレイカーを召還する。
「おおりゃあ!!」
片刃の槍であるスピアモードへと変形したDブレイカーを生身で振り回して女性とゲルニュートの間に割り込むと横薙ぎの一閃で退ける。
無謀にも自分たちに反抗する人間の登場に信号や歩道橋の上にも我が物顔で蔓延っていたゲルニュートたちは一斉にムゲンに敵意を向けるとビリビリと大気を震わせるような音量で鳴き合って威嚇を始めた。
「メタローじゃない!? 何者なのか正体を聞きたいけど、お前ら日本は初めてかい?」
人語を話さずどちらかといえば獰猛な獣に近い様子の未知の存在であるゲルニュートたちに驚きながらもムゲンは女性に逃げるように促してから、指輪からデュオルドライバーを取り出す。
「ようこそ日本へ! 歓迎するけど、今すぐ帰れ」
皮肉たっぷりの宣戦布告を決めると脇にDドライバーを突き立て置くとドライバーを装着して、改めて敵を一瞥した。
見たところ忍者のような軽快な動きをする怪人が複数体。
ドライバーを装着したムゲンはベルトのメモリアホルダーから迷わず引き抜いた二枚のライダーメモリアを挿入する。
【スカイ×ゴースト! ユニゾンアップ!】
「変身――!!」
【エリアルファンタズマ! GO! GO! LET’S GO!!】
橙色の淡い光を放つ無数の目玉のような紋章が浮かび上がり、同時に黄緑の旋風を吹き荒ばせて、いまここに大空と幻霊を司る変幻自在の戦巧者が黒いパーカーを躍らせながら参上する。
『キイイイァッ!?』
『キィアアアアアッ!!』
ライトグリーンの肉体に胸には単眼を象った紋様ブレストクレストが刻まれた黒フードを纏う仮面の戦士。これはスカイライダーと仮面ライダーゴーストの力と姿を重ね結んだ形態。ユニゾンアップフォームの一つである。
その名も仮面ライダーデュオル・エリアルファンタズマ。
ムゲンが変身した姿を見たゲルニュートが次々に驚いたようなリアクションを取り、次の瞬間には興奮したように荒々しい叫びを上げた。
何体かの個体は背中の十字型の大型手裏剣を構えて殺意を漲らせている。
「おいおい、いつから俺はそんな人気者になったんだ? 照れるからよせやい!」
おどけて軽口を叩きつつも中国拳法のような構えを俊敏に構えたデュオル。その鋭い一瞬の動作の余波でデュオルの周囲には砂塵が舞う。
「わりいけど、マナーのなってないファンには厳しくいくぜ? 腹ぁ括れよ!!」
『キィアアアアアッ!!』
拳法家の動きを真似たデュオルの手招きを合図に五体のゲルニュートたちが一斉に飛び掛かってきた。二体が左右から手裏剣を投げつけて、残りの三体が掴みどころのない無軌道な動きで同時に襲撃をする。
予想外に連携が取れた集団戦法を披露するゲルニュートに面食らったデュオルだったが幽霊のように半透明になって攻撃や物質をすり抜ける透過能力で全てを回避してあべこべに相手の虚を突くと自分の後ろにいた一体の背後に回り込んで重いハイキックを打ち込む。
「まずはお前だ!」
よろけたゲルニュートAに勢い良く振り上げた掌底打ちを顎下に決めたデュオルは大きく仰け反った相手に鋭い突きの連打を繰り出す。そのまま自分のガラ空きになった背中に不意打ちを仕掛けようとしていたゲルニュートBの手首を荒っぽく掴むとカウンターの一本背負いで投げ飛ばして、目の前で悶えている仲間と正面衝突させる。
『キキキイイッ!!』
「クウッ……良い蹴りだ。けど、繋ぎが甘いぜ!!」
二体のゲルニュートを大きく消耗させたが残りの三体は怖気づくことなく手強い波状攻撃を仕掛けてくる。
柳の木のような柔軟な拳捌きで耐え忍ぶデュオルだったが死角からゲルニュートCが大ジャンプからの踵落としを浴びせてくる。直撃寸前で交差した腕で受け止めるが攻撃の重さで堪らず膝をつくもデュオルは不敵に笑って相手の脚を掴むとそのまま全身を捻ってドラゴンスクリューで切り返す。
『ア゛アアアア!?』
「トオッ! ハッ、タアアッ!!」
ゲルニュートCが地面を転がりのたうち回っている間にデュオルはDブレイカーを掴むと風車のように回転させながら残るミラーモンスターたちに斬り掛かる。
大振りの袈裟切りでゲルニュートDを一閃して怯ませるとデュオルは自身も独楽のように回転しながら最後に残ったゲルニュートEに迫る。
『キィアアアアアッ!!』
槍を水平に構えて巨大な回転鋸のような凄みで迫るデュオルを何度か手裏剣で攻撃するがその度に弾かれて、気圧されるゲルニュートだったが一見難攻不落に見えるデュオルの動きの中で僅かに背中が隙だらけになる瞬間を見出すと勇み足で手裏剣を振り上げて踏み込んだ。
「いらっしゃいませ! ダアアア!!」
けれど、その致命的な隙はデュオルが作った誘いだった。
敵が背中を狙って大振りで踏み込んだのと同時にDブレイカーを手放すとブレイクダンスのような回転開脚蹴りを浴びせてゲルニュートEを連蹴りして吹き飛ばした。
「見た目の割にしぶとい……なら、纏めて掃除だな!」
多勢に無勢という不利な状況でも素早さと剛拳柔拳自由自在なトリッキーな格闘術に長けた形態であるエリアルファンタズマの特性もありデュオルはゲルニュートの集団相手に優勢に戦いを進める。だが、速い反面パワーに欠ける姿でもあるため、怪人たちはまだまだ余裕のある様子で歩道橋などを忍者のように飛び回って陣形を整え始めていた。
「セイリィィィング・ジャンプ!!」
攻撃は最大の防御とばかりに一気に勝負を仕掛けたのはデュオルの方だった。
胸の紋章を輝かせ、すかさ眼前で交差した両手を勢い良く振り下ろして大地を蹴った。
ファイヤーパターンが施された黒パーカーの裾がロングコートのように延伸。デュオルの体は重力を無視して、浮遊した。デュオルはスカイライダーから受け継いだ能力の一部を再現して大空へと飛翔したのだ。
「お前らのためだけの大嵐だ! 耐えれるもんなら耐えてみな!!」
デュオルは猛然と飛行速度を急加速してゲルニュートたちの周囲を円を描いて超高速で旋回を始めた。
黄緑の軌跡が螺旋を走らせ続けているとやがて、風が唸り雲が裂けていく。
ゲルニュートたちが危険を感じて退却を考え出した頃には既に彼らはデュオルが発生させた暴風の結界の中に閉じ込められていた。
『ギァアアアアア!?』
やがて、翠の嵐の中で荒れ狂う突風に踏み止まれなくなった五体のゲルニュートたちは吹き飛ばされてそれぞれの体をぶつけ合い、ボロボロになりながら竜巻の内側で縦一列に並ぶように風に拘束されていた。そして、これこそがデュオルの狙いであった。
「群がる連中はこの手に限る! いくぜ!!」
超旋回による竜巻の生成を止めて、大空高く上昇したデュオルは綺麗に一列に並んで宙を浮くゲルニュートたちを見定めると全力全霊の力を込めて一直線に急降下して蹴りの姿勢を取った。
「大旋風!スカァアアアアアイ――キックッ!!」
天上より投擲された槍の一刺しの如きデュオルの強烈無比な一撃が五体の怪人を纏めて貫通したのだ。
ゲルニュートは五連発の爆炎に変わり果てて、摩天楼の狭間に散った。
「一丁あがりだ。それにしても、まるで厄日みたいなことになってきたな」
正体不明の怪人たちを撃破して地上に着地したデュオルは変身を解いてゲルニュートたちに荒らされた街の様子を見渡した。これがメタロー相手ならばすぐに世界の修正力によって、何もなかったことにリセットされるのだがその気配は一向に見られない。つまりはまだ終わりではないのだろう。
「また爆発!? しかも、近いな」
何か手掛かりになるものでも落ちていないかと戦場跡をムゲンが調べていると再びどこかで爆発が起こり、ビリビリと大気が震えた。災いの元凶、その本命はどうやらここではなかったようだ。
「騒がしいもんだな。ま、俺もぐだぐだと長引くのは好きじゃないからありがたい!」
一対多数の戦いの疲れをまるで見せずにムゲンは先程投げ捨てたDブレイカーを拾って肩に担ぐと金色の双眸を爛々と輝かせて、次なる戦いが待つ場所へと駆けていった。
生身の少年が十字架型の槍を携えて意気揚々と疾走する姿はさながら恐れを知らない狂戦士のようではあったが当のムゲンは気にすることなく、自分の知る東京とは異なるもう一つの東京の街の向こうへと消えていった。