仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ THE FIRST CROSS   作:大ちゃんネオ

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二人の仮面ライダー

 バンブーメタローを取り逃がし、立ち尽くす二人。

 戦場だった街は静かに、炎の音だけが仄かに響いていた。

 

「……はあ。逃げられちまったな。なあ、あんたはこの世界のライダーか?」

 

 沈黙を破ったのはデュオルの方。

 話やライダーメモリアでは自分以外の仮面ライダーの存在を知ってはいたがこうして対面するのは初めてのこと。

 この世界のライダーなのかと訊ねているが、先程ホビーショップで見かけたライダーの玩具のこともあり自分と同じようにこの世界に迷いこんでしまった可能性もある。可能性は半々だろう。

 

「いえ、僕はこことは違う世界から来たんです。……その口振りからすると、貴方も?」

「ああ、俺も気が付いたらこの世界に来ちまったんだ。なんとか帰る方法を探してたらこれだ」

 

 一面を見渡す。

 瓦礫、炎、破壊の痕跡達。

 人々が暮らす街は、恐怖に脅かされた。

 そしてそれはバンブーメタローが健在な今も続いている。

 

「お兄ちゃん!」

 

 瓦礫をなんとか避けながら章太郎が二人のもとへ駆け寄ってきた。

 

「章太郎君! 大丈夫? 怪我とかしてない?」

「うん、大丈夫。ねえ、あのライダーは! 仲間?」

 

 デュオルを指差し仲間かと訊ねる。

 仲間……でいいのだろうかと少し考えるが、それは杞憂だった。

 

「よぉ。君は仮面ライダー好きなのか?」

「うん! けどこんなライダー知らないや」

「そうかそうか。俺は仮面ライダーデュオル。先輩の力を借りて戦ってるライダーだ」

 

 ライダーメモリアを取り出し章太郎に見せてあげるとライダーファンである彼は大いに喜んだ。

 

「君の名前は?」

「藤堂章太郎!」

「章太郎か。章太郎はこの世界の人間でいいのか?」

「うん。燐兄ちゃんお世話してあげてるんだ」

「お世話って……」

 

 まだ数十分しか関わりはないというのに……と燐は内心そう思わずにはいられなかった。

 

「……そういえば、僕はまだ名乗ってなかったですね。僕は仮面ライダーツルギ。御剣燐です」

 

 自己紹介して変身を解除する。

 仮面に隠していた素顔は、まだ少年らしさが残りつつも、強い意志を感じさせる瞳をしている。

 

「じゃあ、改めて仮面ライダーデュオル。双連寺ムゲンだ。ライダー同士よろしくな」

 

 変身を解除しながら握手しようと手を差し出したムゲンであったが、燐と章太郎は顔をひきつらせていた。

 なんなら燐は章太郎を自分の方に引き寄せ庇うようにまでしたのだ。

 理由はただひとつ。

 仮面を脱いだその顔は狼を思わせるような美男子ぶりではあるが、街中とはミスマッチなキャンプにでも行っていたかのような装備。

 そして腰にぶら下げた刃物五種類がムゲンを危険人物たらしめていた。

 

「お、おい……。俺は危ない奴じゃないって」

「いや流石にその格好じゃ説得力がないっていうか……」

「なんでだよ! 一緒に戦ったろう!?」 

 

 そんな感じで自身の安全性を保証しようと説得を試みる。

 あれやこれやと話していると、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。

 

「やっべ。警察はまずいな……」

 

 何の気なしに発したこの一言。

 この一言がいけなかった。

 

「やっぱり危ない人じゃないですかー!」

 

 こうして余計に誤解が加速してしまい、二人の仮面ライダーの初顔合わせは誤解から始まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 異世界に行く宛なんてない二人は喫茶店Hamelnに戻り、互いの世界のことやこの世界に来た経緯などを教えあった。

 

「世界自体は似てるし歴史も同じ。仮面ライダーに関わるところで違うって感じだな」

「まさか並行世界なんてものが存在するなんて思ってもみませんでした……」

「俺はクーさんから並行世界のことを聞いてたからそこまでパニックにはならなかったけど、何も知らずにいきなり並行世界に来たらまあ驚くよな普通」

 

 かくいう自分も最初は流石に戸惑ったがと付け足してアイスコーヒーを口に運ぶ。

 苦味が口の中に広がり、味わっていると章太郎が二人の会話に入り込んできた。

 暇をもて余していたのだ。

 

「ムゲン兄ちゃんの話だとさ、公衆電話でこっちの世界に来ちゃったんでしょ?」

「ああ。いつの間にか公衆電話があって、電話に出たら助けて、仮面ライダーって言われて気が付いたら」

「助けて、仮面ライダー……」

「誰が言ったのかは分からない。だけど、あの声は必死に助けを求めている声だった」 

 

 あの時の声を思い出す。

 あれは、懸命に助けを求める声だったと確かに言えることだと再確認。

 

「燐兄ちゃんはあの竹の怪人を追ってきたんだよね」

「うん。そうじゃないと別の世界に来るなんて無理だからね」

「……もしかしてその助けてっていうのはさ、その竹の怪人がこの世界に来たから助けてくれって意味なんじゃないかな? なんて、そんなわけないかぁ」

 

 思わぬ仮説が章太郎の口から飛び出た。

 普通ならばあり得ないような話であるが、異常な現状を踏まえれば『あり得ない』なんてことはない。

 そしてその異常に立ち向かう者である仮面ライダーが二人。

 そんなわけないと言った章太郎の言葉を二人は否定しなかった。

 

「メタローがこの世界に来ちまったから絶賛メタロー退治の専門家として大忙しな俺が呼ばれたってわけか……」

「世界からの救難信号……。並行世界とかあるならあり得ないなんてことはないかなぁ」 

「世界からの救難信号ってのはいいな。呼ばれたのは俺だけかもしれないが、頼もしい剣が来てくれたから大丈夫さ」

「一人で戦うより二人で戦う方がいいですから。一緒に戦いましょう!」 

 

 改めて、共闘の決意を固めたムゲンと燐。

 この世界の命運は、仮面の闘士と剣士の二人に託された────。

 

「こんちはっと……。あれ、マスターは?」

 

 突如、来店した中年の男性。

 彼はここの常連客である。

 

「おじさんなら腰を痛めちゃってもう駄目だって」

「あらま。おやっさん腰やっちゃったの。参ったなぁ俺はコーヒーを飲む時はここって決めてるのに」

 

 章太郎が対応するが、この客はなかなかのこだわり派でコーヒーといえばHamelnと決めている。

 どうしても、この今、コーヒーが飲みたいと思いやって来たがそういうわけじゃ仕方ないと店を出ようとした。

 しかし、店の奥から腰を押さえてよろよろと権兵衛が出てきて客を引き止めたのだ。

 

「この程度で休んでられないんだようちは……痛た……」

「駄目だよおじさん休んでなきゃ!」

「たかがぎっくりご……しッ!?」

「おじさん!」

 

 やはり腰が痛むようでこれでは店を回すどころの話ではない。

 

「……よし、燐君。俺達でこの店を回そう」

「え」

 

 ムゲンの急な申し出に困惑する燐。

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔とはこのことかとムゲンは内心思った。

 

「けど僕、喫茶店の仕事なんて……」

「キッチンは俺がやるから燐君はホールに立ってくれればいい。元気な挨拶と明るい笑顔があれば出来る出来る。それに燐君顔がいいから客受けもいいだろ」

 

 燐は自分のことをあまりパッとしない顔立ちだと思っているが他人からの顔の評価は悪くない。

 曰く、「母性本能くすぐられる」とのことだ。

 

「それじゃあおやっさん、俺達が動くからおやっさんはコーヒーだけ淹れてくれればいいからさ」

「そうは言ってもなぁ……」

「いいってことですよ。それはそれとして相談なんですが……」

「なんだね相談とは」

「いや、実は我々行く宛のない身でして……。一日でもいいので泊めてもらえたりしませんかね? その分働きますから。な、燐君!」

 

 ムゲンの作戦。名付けて『一宿一飯の恩作戦』が決行された。

 まずは第一段階。

 そもそもの前提としてここの主である権兵衛を説得しなければならない。

 普通ならばそう簡単にはいかない交渉であるが、ムゲンには勝算があった。

 

「そう言われても簡単にはなぁ」

「おじさん、燐兄ちゃんとムゲン兄ちゃん泊めてあげようよ! この世界に来て行くところがなくてかわいそうだよ!」

 

 ムゲンの策略はこれだった。

 章太郎の存在が作戦の要。

 仮面ライダー好きの章太郎ならば味方になってくれるだろうという計算である。

 

「家は狭いし……」 

「俺と燐君は相部屋でいいですから!」

「は、はい! ふ、二人で一緒に仲良く寝ますから!」

「えっ。ま、まあいいや……。とにかくどんな部屋でもいいのでお願いします! このとおり!」

「おじさん!」

「……仕方ない。物置になってる部屋で雑魚寝になるけどいいな?」 

 

 仕方ないといった感じで、ムゲン達の願いは受諾された。

 

「よっしゃ! ありがとうおやっさん!」

「ありがとうございますおやっさん!」 

「なんだいなんだいそんなおやっさんおやっさんって……。おやっさんってのは、常連さんだけに許された呼び名でなぁ」

「お客様ご注文お決まりでしょうか?」 

「コーヒーとサンドイッチね」

「コーヒーとサンドイッチですね。コーヒーとサンドイッチ入りましたー!」

「はいよ!」

「お、おい! 勝手に始めるなよ……。まったく最近の若いのは……」

 

 権兵衛の呟きは誰の耳にも届かず、渋々とコーヒーを淹れる用意を始める。

 普段とは違って、騒がしい店内。

 だが、楽しそうにしている章太郎を見ると、たまにはこういうのも悪くないかと思い、小さく微笑んだ。

 

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