「僕の愛の為に死ね。」   作:倉之助

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バトル後半戦。
バトルシーンで流血描写や欠損描写があります。





だから僕は「愛」せない❷

 「夏油。僕は正直、五条よりお前の方が厄介だと思ってるよ。手数が無駄に多すぎる。

 例の術式抽出、やってるんだろ。」

 「ええ、まあ。」

 「五条と同じアルコール攻撃もお前ワクだから意味ないし、あーあ。」

 

 吉野先輩が愚痴る。「お前はあのクソどもと同類だ」と責められているようで、拳を握る。構わない、それも覚悟の上だ。

 自分でも罪悪感はあった。自分の新しい力が、とんでもない犠牲と外道の上に成り立っていることなど、自分が一番理解している。

 でもそんなことすらお見通しなのか、先輩は「すまない」と謝罪する。

 

 「いや、責めてるんじゃないんだ。お前のそれはお前自身の術式の一環だろう?

 発想をもらった場所はクソだが、利用できるものはどんどん使う精神、僕は好きだ。」

 

 ああ、そういうところは先輩らしい。呪詛師に堕ちても、そういうところは変わらないのかと拳を握る。

 そりゃそうだ、変わらない。たった一日でそこまで変わったら逆に怖い。わかっているけれど、わかっているからこそ受け入れ難い。

 

 「先輩、これも先輩の言う革命なんですか。」

 「そうだな。一番手っ取り早くて悪手な、頭の悪いやつのする革命だ。」

 「先輩の大嫌いなフランス革命と同じですね。」

 「そうか、そうだな。そうかもな。」

 

  けひ、と。引き笑う。悟の様子に注意しながら、私は先輩と対峙する。昏倒しているが、無限ははり続けている。

 これなら、先輩と派手に戦っても悟は無傷だ。

 

 「でも大丈夫だ、夏油。僕はそこまで愚かじゃない。

 フランス革命(アレ)は教育を受けてないノータリンの平民たちがお綺麗な理想だけ抱えて、その先なんて考えずに起こした突発的で衝動的で感情的な革命だ。

 自分たちの上に立つ奴ら全部殺し尽くして、その先どうするかなんて考えてないから失敗した。

 僕は頭が悪くない。フランス革命の二の舞にはしないさ。突発的で感情的だけど、ちゃんと計画的な革命さ。

 僕は殺す奴らは選んでる。高専の運営に関わってないくせに、権力に固執する老害どもを殺してる。

 ああいう奴らに限って発言力が強いんだ。ある程度のゴミ掃除は必要だろう?」

 「考えが足りませんよ。

 非術師出身の特級呪術師である先輩が叛逆を起こして、そのせいで他の非術師出身者の立場が悪くなるとか考えなかったんですか?」

 「そのためのお前だろうが、夏油傑。」

 

 どうして、そうなる。

 

 「お前も、僕と同じ非術師出身の特級呪術師だ。そして、そこでグースカ寝てギブアップ中の尊い(とーとい)五条家の御子息に変わって僕を倒したお前は、英雄になる。」

 「わざと負けるつもりですか?

 私にハリボテの英雄になれと?」

 「バカ言うなよ、戦うなら本気に決まってる。僕はお前に勝つつもりで勝負を挑んでる。

 それでも、負けるかもしれないと考えてしまう程度に、お前は最強なんだよ。」

 

 まるでジャンケンゲームだ。そう言って先輩は両手を広げた。ごろごろと蛤……蜃が地面を転がる。氷月が群体となって先輩の背後に集まって、織姫が悠然と宙を泳ぐ。

 

 「五条に勝てる俺は夏油に負けるかもしれなくて、夏油が勝てない五条は僕に負ける。」

 「決めつけはやめてくださいよ。

 私も悟は“最強”なので、勝負つかずに引き分けですよ。」

 「あっはっは!

 それをいうなら僕は無敵だ!

 そう簡単に負けてなんかやらないさ。勝負の布石は打ってある。」

 

 ニヤリと、邪悪に笑った。待ってましたと言うように、「ぎゃははは!」と下品な笑い声をあげる。

 

 「何のためにべらべら無駄話したと思ってんだバーカ!

 泣き言言うだけだと思ってたならおめでたい脳みそだ。ノーテンキなお花畑野郎は帰って呑気にねんねしな。

 夏油、お前は五条より攻略難易度は高いけどそれだけなんだぜ!

 天才の僕にかかれば、まだ作用機序が判明していない毒薬を生み出すことだって可能なんだよ!」

 「薬科学者にでもなればいいんじゃないですかね。高専卒業後は裏口で薬科大でも受ければよかったのに。」

 「家庭第一だっつってんだろ。」

 「耳タコなので知ってます。」

 

 先輩を睨め付けながら、私も一体の呪霊を召喚する。蛇の呪霊。そいつは、召喚されて早々、私の腕に噛み付く。

 

 「は?

 調伏できてねーの、そいつ。」

 「さあ?」

 

 くすりと、おもわず笑う。邪悪極まりない表情は、どちらが正義でどちらが悪だかわからない。

 いいや、ちがう。どちらも悪だ。毒を以て毒を制する。呪術師なんてそんなものだ。

 

 「それじゃあ、私もお返しに。

 この呪霊はだいぶ前に調伏したやつで、基本的に攻撃には向かない。

 等級としては四級程度。なんで今、こんなのを呼んだと思います、先輩。」

 「はっはーん、術式開示か。いいぜ、聞いてやるよ。」

 

 それはどうも、なんて言って笑ってみせる。残念だけど、先輩。その余裕は間違いだ。

 

 「こいつができるのは毒の霧を吐くだけだ。

 毒は一種類じゃない。ありとあらゆる毒を吐き出す。先輩の術式と似てますね。

 でも、もう一つ特性がある。」

 「ふぅん、どんな?」

 「中和と解析です。

 血を舐めることでありとあらゆる毒を解析し、牙から分泌される分泌液はありとあらゆる毒を中和する。つまり、名付けるならば解毒呪霊。

 長々とご静聴ありがとうございます、お陰で先輩渾身の毒、解毒できましたよ。」

 「はあ!?」

 

 唐突に余裕を崩された驚愕。私は「はっ」と鼻で笑ってやった。余裕ぶって術式開示なんてさせるからそうなるんだ。あなたは、少し私を舐めすぎだ。

 

 「先輩の『蜃』を見てから似たようなやつ探して、ようやく見つけたやつですよ。

 まあ、蜃と違って残穢の吸収ができないんですが、ね?」

 「僕対策としてはこれ以上ないってことか。

 ………っ、はーーーーっ!!」

 

 盛大なため息。片手で顔全体を覆って、指の隙間から私を睨んでた。

 

 「ご都合主義みたいな呪霊出してくんなよ。」

 「それ、先輩に言われたくないですね。」

 「ったくよー。どこから見つけてくるんだ、そんなイロモノ呪霊。ほんと、相性最悪だ。」

 「私もそう思いますよ。」

 

 じゃんけんゲーム、上等だ。私は先輩に勝だねばならない。先輩を殺さねばならない。これが私の「愛」なのだ。

 今の先輩は私の愛した先輩ではない。私は、私の記憶の中で生きる昨日までの先輩を愛してる。

 だから、コイツは殺す。

 

 「ま、毒がダメなら物理だな。

 さあ、僕の一番弟子。体術勝負と行こうか。」

 「お手柔らかにお願いします。」

 「無理!」

 

 先輩が、突っ込んでくる。真っ直ぐ、愚直にどストレート。しかし速度が早すぎる。不意打ちに一瞬避けるのが遅れて、腹に一撃、重いのを食らった。

 

 「夏油、覚えてるだろう!

 僕の呪力は=毒だ!」

 「知ってますよ、拳に呪力を纏わせてぶん殴る。初歩中の初歩ですよね、とっくに対策済みです!」

 「そーかそーか!」

 

 それを警戒して、体表を呪力で覆ってある。いくら解毒呪霊がいるとはいえ、そっちを先に祓われたら詰みだ。なるべく表に出すのは避けたい。

 今の先輩は確実にそれを狙っていた。先輩の血液以外では解毒できないと言う「絶対のアドバンテージ」を奪われたのだから、それから潰しにかかるのは基本だろう。卑怯なんかではない、戦略だ。

 

 「じゃ、素直に物理で殺してやるよ。

 織姫、形態変化。」

 「なんですかそれ、そんなことできたんですか?」

 「素直に手の内を明かすわけないだろう?」

 「いや、わりと明かしてましたよ。喧嘩の仲裁とかで。」

 「はは! 

 凪さんを守るためなら、僕はいつだって全力()()()さ!」

 

 先輩が呼び出したリュウグウノツカイが、「形態変化」の一言で金色の刀身の大太刀へと形を変えた。いつだったか織姫は物理攻撃向きとは言っていた。だけど、式神「を」けしかけるんじゃなくて式神「が」武器に変わるなんて思うか、と言うことだ。

 どうやってそんなことを可能にしてるんだ。普通はありえない。そもそも先輩の術式は「呪力を毒に変える」と言うのが基本であり、実体を持った毒というのが先輩の式神だ、構築術式じゃない。

 

 「(ならば、何か仕掛けがあるはずだ。)」

 

 先輩の大太刀での攻撃を、一年ほど前に入手した武器庫呪霊の中に入っていた呪具の数々で対抗する。

 これは名前は知らないが、なんかの打刀だ。等級として一級か二級の呪具だろう。

 至近距離で受けて、式神武器化の謎に気づく。

 

 「……鉱物毒か!」

 「大、正、解!!」

 

 打ち合った時に生じた火花と、強烈なニンニク臭。これはおそらく硫砒鉄鉱。愚者の金だ。刀身の金色で気づくべきだったか。

 

 「洒落にならないですね、先輩……!」

 「そう言いながら瞬時に呪力で鼻と口元覆ってるのが流石だな。

 敵としては小憎たらしいけれど、師匠としては嬉しいところだ。」

 「弟子として喜んでおきますよ。」

 

 キュ、と。靴が音を鳴らす。睨み合う。夏の生ぬるい風を頬に感じながら、息を飲む。

 

 「それで、どうしようか?」

 

 小首を傾げる。空気は緊迫したまま、張り詰めている。私も先輩も呪力を練り上げて敵対している。

 いつも稽古していた場所で先輩と死闘を繰り広げることになるとは、昨日までなら想像すらしなかった。

 

 「僕はお前の師匠だ。確かに最近実力が拮抗気味だけど、お前の癖は知り尽くしるよ?」

 「そう言う先輩だって、私にバトルスタイル知り尽くされてるじゃないですか。」

 「うんうん、せいぜい頑張れよ?」

 「はい、()()()()()()()()()()よ。」

 

 【ぱちん。 】

 

 瞬きを一つ。次に目を開いた時、先輩は目前に迫っていた。

 私はあえてかがみ込み、刀の柄で思い切り先輩の鳩尾を殴りつけた。

 

  「今の、わざとか?

 引っかかったな。」

 「それはどうも。」

 

 ぺ、と血反吐を吐いて、手の甲で口を拭う。

 

 「先輩、どうして呪詛師なんかに堕ちたんですか。」

 「ははは、お前だってきっとわかるよ。敬愛に裏切られて、最愛を失った時。愛は裏返って憎悪になるんだ。」

 「そうですね。だから私は今、先輩を憎んでいる。」

 

 敬愛(センパイ)に裏切られて、最愛(さとる)を害されて。憎しみと義務感と残った愛が、殺意に変わって発露している。

 

 「なあ、夏油。僕の何がダメだったのだろうか。愛に生きると言う僕の生き方は間違っていたのだろうか。」

 「知りませんよ。でも、私は先輩の生き方に救われましたよ。」

 

 武器庫呪霊から特級呪具・游雲を取り出して殴りかかる。術式が付与されていないがゆえに、使用者の膂力に威力が左右される三節棍で、先輩の頭部を狙う。

 しゃがみこんで下に避け、バネを使って懐に飛び込む先輩。

 

 「(それを狙っていた……!!)」

 

 姿を消して隠れていた呪霊が、口を大きく開けて現れる。驚愕して目を見開いたが、次の瞬間には笑った。()()()口に飛び込み、そして呪霊の体内で術式を使ったのだろう。毒に侵された二級呪霊はどす黒い斑点を体に浮かべて、破裂する。

 

 「ああ、愛していたんだけどなぁ。信頼していたんだよ。だけど、あの人も所詮御三家の人間だったってことだろう。」

 

 スイッチが入った。そう思った。先輩は術式を応用して身体能力を上げることができる。赤血操術を文献で知っていた鴨川先生に発想をもらい、形にしたと言う術式の応用。

 ああ、本当に。呪毒操術は汎用性が高い。

 

 「僕に革命を教えたのは先生だった。先生じゃしがらみが邪魔でうまくやりきれなかったから、僕が引き継ぐんだって考えてた。」

 

 ドーピング中は視野狭窄になる。足止めのために私は仮想怨霊・衝立狸*1を呼び出し、無理矢理進行を妨げる。

 急加速からの急停止。ただでさえドーピングで枷が外れてる先輩の体が無茶苦茶な動きで悲鳴をあげる。

 その明確な隙を狙い、遊雲で急所を殴る。内臓破裂を狙った連続攻撃。

 衝立狸の足止め効果が切れた瞬間、先輩は後ろに飛びのき攻撃の手から逃げた。当然、追いかけ追撃する。

 血反吐を吐いた……と思われたが、吐き出したのは真っ赤な【氷月】

 「あれはやばい」と本能が警告音を鳴らして、咄嗟に召喚した礒撫(イソナデ)*2に全て丸呑みさせる。一級呪霊だと言うのに、即死だった。

 

 「トシノリ先生が好きだった。お父さんってこんな感じかなって、ずっと思ってたし、心の中では「お父さん」と呼んでいた。」

 

 体勢を立て直した先輩が氷月の軍隊を突撃させた。氷月の隙間から織姫が目視する。

 ……氷月の群れはブラフで、本命は織姫による物理攻撃か。

 

 「(地上にいては分が悪いな。)」

 

 私は呪霊に乗って「上」に逃げる。地上の先輩を狙撃する。卑怯だなんて言わせるものか。地上はさながら地獄だ。

 私の無差別な攻撃でグラウンドは核兵器でも使ったような有様に成り果てている。それでも、先輩に致命傷を与えられていない。

 さすがは特級。避け切れない時だけ織姫や氷月の軍団を盾にして、被害を最小限にとどめながら回避を続ける。

 

 「僕の敵は呪詛師や呪霊だけじゃなくて、背中を預けるべき味方だって敵だった。

 凪さんと順平を二人、マンションに住まわせるなんて怖くてできない。

 かと言って高専に住まわせるのも怖いよ。敵が自由に侵入可能な場所じゃ、守れるものも守れない。」

 

 上空からの砲撃に追加して、一級を同時に三体突撃させた。これなら、流石の先輩も避け切れないだろう。

 ゆえに、さらに追い討ちをかける。

 私は呪霊の影に紛れて飛び降り、先輩の背後をとった。

 呪霊に注意をひかれ、隙だらけの背中に一閃。

 刃は、()()()

 

 「(私が今斬り殺したのは……っ!)」

 

 蜃が作り出した幻!!!

 

 「まさか、裏切られるなんて思わなかったんだ。」

 

 ドン!と背中に衝撃を感じる。腹から、硫砒鉄鉱の刀身が伸びていた。

 ……やられた。さっき見えた織姫は形態変化の(この)為だったか。

  げぽ、と。血を吐く。ぼとぼとと、真っ赤な血が地面を濡らす。

 

「そんなこと、考えることすらしてなかった。

 罵れよ、僕は盲目になっていた。先生なら絶対安心だって、根拠もなく考えてた。」

 

 内臓をかき混ぜるように剣を動かして、引き抜く。私は耐えきれずたたらを踏む。今度は私が隙だらけになる。

 だけど先輩と違うのは、私が本体であることだ。

 

 「というか、上層部ってなんなんだよ。どいつもこいつもバカばっかり。

 腐ったみかんのバーゲンセールとはとても的確な喩えだ。

 あの任務以来、ずっとさ、殺したいっと思ってた。ゴミをピックアップして、疑われない程度にじわじわ暗殺してた。

 あいつらみんなジジイだからさ、立て続けに死んでも疑われないんだよね。」

 

 右腕が切り落とされる。

 左腕は織姫に食われた。

 地面に落ちた腕は、先輩が遠くに放り投げて【5メートルぐらい遠くに】飛ばされた。私はそれを()()()()()()見送った。

 パニックになるなと、興奮しすぎるな、血を流しすぎるな、と自分に言い聞かせる。

 大丈夫、大丈夫。

 

 ーーーーーー()()()()()()()()()()だ。

 

 「でも、そういうのもやめた。僕は、憎しみのままに殺すと決めたよ。」

 

 両足に激痛。氷月が足を覆い尽くしていた。しゅうしゅうと肉が溶けるひどい匂いと、蒸気が上がる。

 先輩はそれを悠然として見ていた。

 

 「僕の勝ちだよ。」

 

 先輩が刀を構えて笑っていた。そうだろうと、私も笑った。

 私の右腕は切り落とされ、左腕は織姫に食いちぎられた。

 両足は氷月の毒に食われて抉れ、骨が露出しもう立てない。

 完全に、【詰み】である。ギリギリのところで生きている。棺桶に片足突っ込んでるとは、今のような状態のことを言うのだろう。

 

 「何か、言い残すことはあるかい?」

 「……じゃあ、最後に一つ。」

 

 喋る事すらギリギリの状態。霞む視界。血の匂いを強烈に感じながら、血の味を舌に乗せて最後の呪いを仕上げる。

 

 「吉野先輩。私はあなたに戦い方を教えてもらいました。

 先輩はいつも私たちをボコボコにして「後輩を実力でねじ伏せるのが楽しい」とかいうゲスでゴミなクズ野郎でした。

 いつも食堂でボコられては、悟と二人で「いつかマジで殺す」と言って闇討ち方法を考えたりしたものです。」

 「ん? なんでめっちゃ悪口言われてんの僕?」

 

 言い残すの本当にそれでいいの? なんて先輩は言う。私はそのまま話し続ける。

 

 「先輩はいつも卑怯だった。私たちの手の内をわざと曝け出させた後に、後出しでボコってくるクソ野郎でした。

 私のことを「手数が多い」と言いましたが、私からしたら先輩の方が手数が多かった。

 そして、先輩にボコられ続けた二年間。私は嫌ってほど思い知ったんですよ。

 ーーーーー世の中、卑怯な奴ほど強い。」

 「うん、そうだね。だから夏油は僕に負けた。」

 「はは!」

 

 思わず、笑う。ああ、よかった、()()()()()()()()()()。【私の勝ち】だ。

 

 「後出しの権利は先輩だけじゃない。

 私と長々と対面して語り合った。それだけで術式“解放”の条件は整っている。」

 

 

 呪霊操術極の番・抽出術式、『逆夢』

 

 

 夢と現実をひっくり返す術式。この術式に「印」は必要ない。()()()()()()()()()()()()()()ことで、対象を夢という領域に引き摺り込む。

 「夢」の領域で自分に起きた事象は、術式を解放することで「現実」に反転する。【死ぬこと】以外ならば、どんな事象も反転する。

 術式の発動条件は「十秒間その場にとどめること」で、領域に引き摺り込むトリガーとなる事象は瞬きをすること。

 術式を解放し、事象の反転を行う際も同じ条件が必要となる。

 その名の通り、【逆夢】だ。夢で見たことが現実では反対になる。トリッキーがゆえに使い所が難しい。

 つまり、この領域の中で手足を切り落とされた私がこれを「現実」に反転させると………。

 

 

 

 

 「っはー。

 だるまにされたら、僕は何もできないなぁ。」

 

 

 

 先輩は、手足を失いだるまになる。

 これが私の新しい力。呪霊操術(わたし)の極意。

 

 「私の勝ちです、吉野先輩。」

*1
大きな衝立となって足止めをする呪霊。徳島土着の妖怪が呪霊となったもの。

*2
鯨ぐらい巨大なサメ型の呪霊。尾鰭には細かい針がおろし金のようについている。

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