「僕の愛の為に死ね。」   作:倉之助

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 IF 原作トリップ(吉野公平がいない世界)
 いずれ来る未来軸設定でお送りします(この未来になるとは言ってない)

今後のストーリーに対するネタバレがひどいですがまあ「こうなるかもしれない」というだけなので、パラレルワールド的な目で見てあげてください。

[注意]
 ・替くんが「吉野替」くんとして保護される。
 ・なんや感やあって認知されて、家族構成が「父(呪)、母、兄」になってる。
 ・原作トリップに理由は特にない
 ・トリップメンバーは夏五灰虎伏釘吉替
 ・吉野父呪霊乗っ取り背後霊(ガチ)ルート
 ・替くん保護されたばっかで、高専一年組しか顔合わせてないけど名前だけなら(五条悟二人目と言う恐怖とともに)呪術界に轟いてるとか、そんな感じ。


完全にふざけ倒しました。おまけ的な気持ちで呼んでください。
 


番外編:異世界トリップの巻

 「あの、すみません。」

 

 おずおずと、遠慮気味な小さな声が下から聞こえた。視線を下げる。キャスケットに色眼鏡をかけた少年が、俯き気味に立っている。

 

 「誰だお前」

 

 声をかける。意を決したように、小さな子どもはキャスケットとメガネを外して、真希を見上げた。

 

 「えっと、はじめまして禪院真希さん。

 僕が替です。これ見てわかると思うけど。

 あの、それで僕、お兄ちゃんとお父さん探してるんですけど……どこかで見ませんでしたか?」

 

 お父さん。

 

 強烈なパワーワードと、心当たり。子どもを抱えようとして触れた無限。

 「あわわ、切り忘れてた」と子どもが言って、ようやく触れられる。眼孔に嵌る六眼に「ひゅ」と息を呑んだ。どういうことだ。

 それでも、ひとつ確かなことがある。

 

 ・無下限呪術+六眼

 ・お父さん

 

 該当者なんざ一人しかいねぇ。

 

 ■■■

 

 「おいこらバカ目隠し!!!」

 

 ばん!!と開け放たれた一年の教室。珍しく授業をしていた生徒3人とその教師が目を丸くする。

 

 「おいコレどう言うことだ! 説明しろ!」

 「助けて悠仁くん!」

 「え、俺!?」

 

 そして、真希の腕の中にいる小さな人影にギョッと目を剥く虎杖。ぴょん! と緩んだ腕から脱走した子どもが椅子に座ってちょうどいい高さにある虎杖の腕に抱きついた。

 

  「この人やばいよ。お兄ちゃんとお父さん探してるって言ったら急に五条悟に対してキレたんだ。

 いつのまに僕、五条悟の息子になったの? やだよ、五条悟の息子とか。お父さんに殺されるよ、五条悟が。」

 「ごめん、どゆこと?」

 「は? コイツがお父さんじゃねーの?」

 「ちーがーうー!!」

 

 ぷくりと頬を膨らませ、声高高に叫ぶ。

 

 「僕はもう()()()()の五条替じゃないもん! 吉野替だもん!

 五条悟がパパとかヤダーーーー!!」

 「ちょっと落ち着きなさいよ。」

 

 なんか不穏なワードに眉を顰めた野薔薇がそう言った瞬間、さっき閉めた扉が「ガラリ」と開いた。

 

 「はー、疲れた。今日の任務ヤバかったな。」

 「予備校に回された任務の代打って時点で怪しかったじゃない。裏しか感じられないのよ。」

 「四級の任務で二級が出てくるのはまずいな。そろそろ本気で夏油先生クーデター起こすんじゃねえか?」

 「一回上は首全部据え変えた方が綺麗になると思う。」

 「いやーごめんね。でもすっごい助かった!」

 「いえ、僕と父さんが原因ですから。」

 

 五人組が話ながら教室に入ってくる。そして教室の中身を見て固まる。中にいる奴らも固まる。

 「ばん!!」と勢いよくしまった扉。

 

 「……え、何今の。」

 「幻覚?」

 

 扉の向こうでなんか聞こえる。困惑に満ちた5つの声。いや、なんでお前ら(そっち)がざわついてんの? 

 ただひたすらに困惑。おまけに二つの声が追撃。

 

 「灰原、なんでここにいるんだ? 予備校に何かあったのか?」

 「そう言う傑もどうして一年の教室(ここ)にいるんだよ。お前二年の担任だろ。」

 

 がらら、再度開けられる扉。

 さー入った入ったと一年(と、謎のもう一人)の背中を押して教室に押し込む白髪目隠しが、教室の中を覗いて「は?」と首を捻った。

 もう一人の長髪も様子がおかしいメンバーが気になったのか教室を覗き込んで「は?」と同じ動作で首を傾げる。

 

 「「なにこれ、どう言う状況?」」

 

 そろった二つの声は、同じ言葉なのに恐ろしいほど温度差があった。

 

 

 ■■■

 

 「なるほど、つまりここは()()()()()()()()ってワケね。」

 「正確には、先輩が呪術師にならなかった世界でしょうか。」

 「うん、誤解が解けたところで私のコレ解いてくれない?」

 

 授業どころじゃなくなった。私が引っ捕まえていた悟の1/2スケールは吉野順平とか言うやつに「お兄ちゃん!」と駆け寄り抱きつくわ、虎杖(私たちの世界の方)は吉野とか言うやつ見て泣き出すわ、そんな虎杖(別世界の方)は困惑するわ……なんか言いずれぇな。こっちの世界の奴らは下の名前で、向こう世界の奴らを苗字で呼ぶか。

 

 話を聞くとなんともまあ、すごい世界だなと言うのが私の感想だ。

 まず、勢力図。身内で四つ巴してる上に、保守派と癒着してるとかいう外部勢力。

 なんだ、人造呪霊って。んなこと考えてやらかす奴がいるって言うのがあり得なさ過ぎてドン引きだわ。

 

 次、夏油傑の思想変わりすぎじゃねーの。

 口を開けば「愛」「愛」と繰り返すのがなんか気色悪くて渋い顔をする。

 どことなく憂太を幻視するのもなんかやだ。

 

 三つ目、吉野公平とか言う奴、ヤバくねぇか?

 一晩で呪術師112名殺害ってなんだ。五条本家皆殺し事件ってなんだ。御三家滅亡寸前に追い込むって他人事じゃないし、そりゃ納得の特級呪詛師だ。

 特級になれるほど強いやつが非術師の世界で埋もれてたのも、いつのまにか死んでたのも正直言ってもったいない。

 灰原(こっちの世界じゃとっくに死んでるらしい)とか言う男が「世の損失だ」と嘆くのも頷ける。

 

 最後。

 

 「()()()えぐいな。」

 「えぐいっていうか、殺したいよね。」

 

 灰原が爽やかにキレていた。さもありなん。

 敬愛する先輩とやらの遺体を勝手に使われて、その男が最も嫌悪した外道行為をしているのが許せないというのも、術式を悪用して呪霊をデザインして作り出すって言うのも「頭おかしい」としか言えない所業だ。

 夏油傑の肉体を狙って(*術式が目的)引き起こされたとかいう渋谷事変も被害状況が凄まじい。

 所々向こうの世界で起きたこととこちらの世界で起きたことは似ているし、「こちらの世界でも渋谷事変が起きるのかも知れない」と忠告されたが内容が壮大で甚大すぎるせいで現実味が薄い。

 

 「それよりも、僕は未だにこの世界の夏油さんがやらかした事の方が信じられないです。

 虐殺するなら呪術師の方じゃないですか?」

 「うっわ、傑やりそ〜。」

 「やめてくれ、無意味な虐殺はしないと決めているんだ。

 頭の悪い革命は私の主義に反する。」

 

  平然にいう灰原。その姿は普通にヤバイし、「やりそう」と思われてる夏油もヤバイ。

 「頭の悪い革命はしない」と夏油は言うが、ゆくゆくは全て殺すってことだろ。信用できねぇな。

 

 「どういうことですか五条さん!!」

 

 ばん!! と盛大な音を立てて扉が開かれる。これで本日3回目。すこしぼろっとしたスライドドアが切なく揺れる。

 

 「あ、七海だ。」

 「灰原、本当に……!?」

 「うお、ナナミン来ちゃったよ。」

 「なーなー灰原ぁ、コレどっちの七海?」

 「多分、この世界の七海じゃないですかね。

 僕たちの世界の七海は今も入院中だし、抜け出したとしても携帯持ってるはずなんで。」

 

 ほら、今もすごいですよ。なんて言ってスマホの画面を見せる灰原。電話は繋がらないのに1分ごとに入る着信に「帰ったらやばいなー」だけで済ませるこの男も大概イカれてる。

 

 「そっちのナナミンどうしたの?」

 

 悠仁が恐る恐ると手を挙げる。未だにぽこぽこポップアップが更新される脅威の鬼電スマートフォンに恐れをなしているようで、こっちの七海さんを見て戦いてる。

 

 「あー、こっちのは違うのか。僕たちの方の七海は灰原が目の前で死にかけたショックで過保護拗らせてんだよね。」

 「これもまた愛の呪いさ!」

 

 どやっと胸を張る理由がわからない。

 

 「面白いことがあると呼び出しれてみれば……。五条さん、コレはいったいどういうことですか?」

 「見てわかんない? 異世界交流(こーりゅー)って奴。

 こちら異世界の灰原と傑。革命家でやることやってるヤバイ奴ら。保守派皆殺しにしたいんだって。」

 「意味がわからない……っ!」

 

 混乱して項垂れる七海さんの背中を、灰原が「大丈夫?」と撫でる。お前が原因だろ。

 

 「異世界って、他にどんな違いあるの?」

 「うーん……、パッと言われてもわからないな。」

 「すぐ思いつくのは虎杖でしょ、こっちの虎杖一回死んでるから。」

 「それはこっちも死んでる。」

 「じゃあわかんないわよ。」

 「京都の人たちが悠仁と僕を殺そうとしたとか?」

 「吉野は違うが虎杖は命狙われてたぞ。」

 「あ、俺たちの方(こっち)*1は交流会の時、花御っていう特級呪霊が襲ってきた!」

 「僕たちの方にも来たよ。」

 「なんだ、同じじゃない。」

 

 一年生組の7人がわいわい話し合っている。

 「そんな大差ないわね」と野薔薇が言う。釘崎が「予備校と、夏油先生がいるかどうかくらいじゃない?」と肩をすくめる。

 替が「はいはいはい! 僕がお兄ちゃんと一緒に人造呪霊調伏しました! それからお父さんとお母さんの息子にしてもらいました!」と元気よく手を上げて、「そもそもこっちに(アンタ)がいないわよ」と野薔薇が突っ込む。

 

 「あとはこっちの世界じゃ未来の話でしょ。どうしようもないわよ。」

 「そうね、じゃあ私の片目が潰れた原因教えてくれない?」

 「真人っていうクソ呪霊に不意打ちでね。アンタも気をつけなさいよ。

 共鳴りは効くからガンガン使ってきなさい。」

 「ふぅん……参考程度にしとくわ、私。」

 「そもそもこっちで渋谷事変起こるのかな?

 あれ、脳みそ野郎が夏油センセーの体奪うためにやったやつじゃん?」

 「こっちの世界で夏油先生死んでるんだから、もう体乗っ取られてるんじゃないか?」

 「うっわ、それ最悪ね。」

 「替もいないし、五条先生が人造呪霊にされるとか?」

 「無理でしょ。」

 

 無理だな。

 

 「そーいや、こっちのメカ丸ってどんな立場?

 俺たちの世界だと替と縛り結んで革命派に入ったんだけど。」

 「メカ丸って、あのペッパー君?」

 「こっちでも花御の襲撃があったなら、与幸吉が内通者してるんだろうね。」

 「それ、どういうこと?」

 「僕らの世界の与幸吉は真人に無為転変してもらって五体満足になるために脳野郎と縛り結んでたの。

 まあ、治療したあとに殺すって真人が言ってるの知ってたからね、逃走に協力することを条件にお兄ちゃんを守るように縛りを結んだんだ。

 でもこっちの世界に僕がいないでしょ? なら、死ぬんじゃない?」

 「証拠は?」

 「この世界にあるわけないじゃん! 異世界人だよ僕!」

 

 ぷんすこ!と腕を組んで頬を膨らませた替。まんまるなほっぺをぷしゅっと潰そうとしたら 「やめろよ!」と無限を張ってまで抵抗された。

 

 「わかった。与幸吉のことも、ハロウィンのことも、一応警戒しておくよ。」

 「うっわ、こっちの僕なんか真面目じゃね?

 なんか傑みたいでキショいんだけど……。」

 「悟も大概私の真似っ子してるんだから同じだろ。」

 「はーー?

 違いますしー、僕、別に傑の真似っ子してないから!

 そういう傑も公平の真似してんだろ!」

 「してるさ。先輩は私の憧れだからね。」

 

 そんな、五条と夏油のじゃれあいのような戯れを、悟が無表情で見ていた。無感動ではなかった。なんというか、オーラでわかる。無くしたものを羨ましがるような、苛立ち。

 

 「そっちの僕は、なよっちいね。傑傑ってガキかよ。」

 「は? 

 なに、喧嘩売ってんの?」

 「こら悟、最初に煽ったのはお前なんだからやり返されても仕方ないだろ。

 すまなかったね、悟。」

 「……別に。」

 

 別にって態度じゃない。どうしたんだ悟は。不機嫌すぎて教え子にまで遠巻きにされてるけどいいのかそれで。

 

 「しかし、こちらの私の行動には納得できるものがあるけれど、私が善良な非術師まで殺したと言うのには来るものがあるな。

 殺処分の対象だ。

 善良な非術師はその善良さに翳りを見せることなく、守り、慈しみ、美しい人生を歩むべきというのに。」

 「夏油先生の思想には共感しますが、あんまりやりすぎると呪術規定違反になりますよ。」

 「無駄だよ恵。こいつ、バレなきゃいいって精神だから。」

 

 こっちの世界の恵がなんか動揺してた。思想被ったか?

 あいつの信条は【不平等に人を救う】だけど、善人救済願望あるしな。

 ………異世界夏油の愛情理論に毒されたらどうすっかな。

 

 「そもそも、十年前にやらかしてますし!」

 「いや、何したんだよそっちの傑。」

 「色々やらかしてますよ夏油先生は。

 呪術規定の裏をついて術式使わないで村一つ病院送りにしたり、術式使わなければただの傷害罪だとか養子や生徒に教え込んだり、そんでたびたびクズと猿が粛清(半殺しに)されたり。

 派閥の活動資金のために副業でカルトな振興宗教立ち上げて金持ちからぼったくってますよ。

 最近だと吉野公平の肉体使ってた脳にキレて渋谷駅壊しました。

 お陰で東京の交通網が死滅しましたよ。」

 「それのどこが悪いんだ?」

 「こう言うやつなんだよ。」

 

 なんか異世界大変そうだな。私は心からそう思った。

 

 

 ■■■

 

 

 「でもできれば早く帰りたいな。私たちがいない間になにが起きるのかが心配だ。」

 「一日ぐらいならどうとでもなるけど、長く開けたら保守派が動くだろうね。

 予備校に手を出すかもしれないし、心配だ。」

 『あー、わり。多分僕の所為だ。』

 

 今まで沈黙を貫いていた順平の影が、口を挟む。……いや、影ってなんだ影って。恵じゃねーんだぞ。

 

 「どういうこと、お父さん。」

 『術式の実験のために軽く呪霊つくったんだが、そいつの制御にしくじったっぽくて。さっきまで原因究明してたとこ。」

 

 夏油に頼まれて瞬間移動できる奴を作ってたんだよな。と。

 順平の影がペラペラ喋って、『メンゴ』と手を合わせた。

 

 「お前が原因じゃねーか。」

 「コレは流石に冤罪だろう。」

 「まあまあ。

 それでお父さん、どうやれば帰れるの?」

 『大丈夫だよ順平、その呪霊殺せばサクッと帰還だ。

 そして原因はここにいる。』

 「さすが、仕事早いね。」

 「もう、帰るのか……。」

 「七海……。」

 

 切なそうに目を伏せる七海。そんな七海を見て灰原は……

 

 「どうしましょう夏油さん、五条さん!

 こっちの七海なんか可愛くないですか!?」

 「大の男に可愛いとは思わねーわ。」

 「しかもアラサー。」

 「最近のナナミン、過保護がパワーアップしてたからなー、反動?」

 「灰原さん、疲れてるんすよ。」

 「そんな!?」

 「それじゃ、そっちの俺も頑張れよ!」

 

 虎杖が件の呪霊をさくっと祓う。跡形もなく消えた8人。「夢か?」と顔を見合わせたが、どうやら夢ではないらしい。

 最後まで荒らしのような連中だった。

*1
原作軸





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