「僕の愛の為に死ね。」   作:倉之助

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お久しぶりです
しばらく投稿してないなと思って最終更新見たら去年の12月で驚きを隠せない
大変お待たせしました



降下

 

 

 「俺と弟は一時期山の研究所に捕まってたことがある。一ヶ月だけだったけれど。」

 「誘拐監禁というやつですよ」

 

 何となく、先ほど終えた会話を思い出した。今回の事件について根掘り葉掘り聴取したアイツが知りうる限りの全てとやらを。

 

 

 【馬酔木の証言、または狂言】

 

 

 「スグル……ね」

 「アイツを知ってるんですか?」

 「は? あんたの()を殺したヤツのことをなんて私が知るわけないじゃん」

 「同じ名前の人を知ってるってだけ。関係ないから」

 「はは、態度悪くてごめんね」

 

 順平が「で、続きは?」と無言で先を促す。馬酔木は「特にありません」と言う。

 

 「アイツのせいで杏が死んだ。それに間違いはありません。それだけでいいでしょう?」

 「今回の被害者と同じ死に方って言ってたけど、スグルってやつの術式?」

 「ジュツシキ……多分、そうなんじゃないですか?

 アイツ、()()()()()()()()()()()()

 「スグルに親玉、ね……」

 「誘拐って、親は?」

 「言いくるめられました。ちょうど夏休みだったんです。

 まあ、僕らが研究所によく遊びに行ってたせいですけど。一ヶ月ほど研究所で過ごしてみないかって、僕がスグルに頼まれたのがきっかけでしたね」

 伸びっぱなしで子供の身長ほどになった野草を分け入り山を登る。先頭を歩く馬酔木の足取りに迷いはない。こちらを気にせず淡々と、前だけを向いて語る癖に彼の言葉は妙に耳に残る。

 

 「親も研究所がちゃんとしてると思ってたので。研究員たちも高学歴揃いだし、期待してたんじゃないですか? 

 幼少期に頭がいい人たちに囲まれて育てば高学歴を目指せるとかそんな感じで。思考誘導でもされてたのかもしれませんが」

 「まあ、そういう理由(わけ)で研究所で一夏を過ごすことになったのですが。僕らの期待は一日目で裏切られました。僕らはいきなり眠らされて個室に詰められたんですよ」

 「毎日毎日悪い夢みたいだった」

 「あの場所には、今も悲鳴と苦痛と嘆きしかない」

 

 突然、自然が途絶える。生命がみなぎる青々とした山から雑草すら一本も生えない不毛の大地へと。くっきりとわかる不自然さ。生と死の境界線。そのちょうど真ん中に、【それ】はあった。土埃で汚れた灰色の壁。元は白かったとわかるくすんだ箱。

 

 「ここですよ、()()くん」

 

 なぜか、僕を名指しして。何かを睨みつける馬酔木の表情。僕を通して何かを見ている。でも、僕は何もしなかった。何も言わなかった。

 馬酔木の妙な敵愾心(てきがいしん)を察していたけれど、それどころではなかったから。

 僕の心を塗りつぶす果てしない憎悪と嫌悪。汲めどもつきぬ憤怒の情。それだけで、理解する。研究所(ここ)は、僕のルーツに関与していると。

  「ああ、最悪だよクソッタレ。僕がトシノリ先生殺した場所じゃん」

 呪霊となった僕が囁く/吉野公平(父さん)が語りかける/馬酔木が語る。

 

 「「絶対に存在してはいけない、僕/俺のルーツ」」

 「ーーーはは」

 

 思わず笑う。奇遇だねと、そう言って。

 今日、僕は僕のルーツを知るのだと。父の憤怒を知るのだと。

 

 「奇遇だね、僕も同じことを考えてた」

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