はじめまして、マッドカインと申します。
まずは、一話を開いてくれたことに感謝を。
至らない点が、あるとは思いますが、どうかよろしくお願いいたします。
一話 レミリア誕生+α
霧に包まれたどこともしれぬ、秘所の奥にて、人外たちを統べる王の居城が聳えている。
岩肌を切り抜き、外部から内部に至るまでを象徴たる血の赤によって染め上げた
その館の名を紅魔館。王が住まうに相応しく、外見に拠らず、内部の空間は、広大である。
そこに住まうは、吸血鬼の王。人々の畏怖と畏れを集め、夜の支配者、吸血鬼の頂点に君臨する絶対的な君主だ。
名をアリストス・スカーレットという。
彼の私室で今、彼は、一人の生まれたばかりの子を抱き、伴侶たるセレニア・スカーレットと共に、あやしていた。
妖魔の子であるが故に、既に外形はある程度、成長し、水色の髪色と、血のように紅い瞳をきらきらと輝かせ、父親たるアリストスへと、その小さな手を伸ばしている。人間と変わらないような見た目だが、背からちょこんと生えている2枚の翼が、妖から生まれたことを主張するように、小さく動いている。
「セレニアよ、子とはこのように愛しいものであるのだな。長きの苦闘ご苦労だった。」
感慨深げに、子をあやすアリストスは、常のカリスマ性を僅かに崩し、柔らかにセレニアを労わる。労りの言葉を掛けられたセレニアも穏やかに、言葉を紡ぐ。
「不思議ね、アリストス、出産の痛み、苦しみよりも、この子を産むことができた喜びの方が、今は勝っているわ。名前はもう決めているんだったわよね?」
「あぁ、この子の名前は、レミリアと名付ける。レミリア・スカーレット・・・それが新たな紅魔の主の名だ。」
厳かにそう宣言するアリストスを見上げるレミリアは、まだ朧げな自我のままに、己が父親たる彼に向けて、手を伸ばした。
▼時は進む▼
宙に打ち上げられた1枚のコインが、ゆっくりゆっくりと落下し、丸テーブルにぶつかりバウンドする。
表。
私の予想に反して、コインは表にもならず、また裏にもならず、直立し止まった。
「惜しいなぁ。」
彼女の冷静な声音に反して、背から生える蝙蝠の翼はバサバサとその不満が顕著に表れていた。
(あと1回で10回連続だったのに。)
能力の連続使用で、疲労感の残る頭を振り、ベッドに寝転がる。
私は、レミリア・スカーレット。紅魔館で生まれた吸血鬼。
お父様のアリストス・スカーレットは、吸血鬼の中で最も偉大な吸血鬼だと知られていて、私が最も尊敬する妖怪の一人だ(もう一人はお母様)。
生まれてから、だいたい3年。ある程度、魔力や妖力について、お父様から教わった。
妖力は、妖怪たちの力、存在の源、魔法を行使するために用いられるのが魔力であり、悪魔たちの故郷、魔界にはごまんと溢れているらしいが、この世界には、魔力が滞留している場所が、着々と減っているらしい。
その理由については、お父様から、教えてもらったけれど、長くなるので割愛しておこう。
つい先日、私の能力が判明した。
強大な力を持つ魔族には、独自に発達する能力が宿る。お父様なら、『血脈を看取る程度の能力』、お母様なら、『眼力を変える程度の能力』などなど、眠る才能とも呼べる能力は、持ち主が強大であればあるほど、ユニーク性のある能力に目覚めやすい。
自慢ではないけど、私は能力の名称を知覚する前から、ある程度無意識に能力を使用できていた。物心ついた時から、知覚できる他者の『糸』。
それらは、私が見ている間にも紡がれ続け、また分岐したりもしたし、少し見ないうちに全く違う織りになっていることもあった。
何故、私にそのようなものが見えるのか、お父様やお母様にも聞いてみたけど、二人は見えないと言われたので、能力が判明するまでは疑問だった。
『運命を操る程度の能力』、私が知覚した能力の名前である。
私が見ていたのは運命そのものであり、見るだけではなく操れる。今の私には、まだまだ分相応なくらいスケールの大きな能力だ。
一言で言えば、運命操作なのだが、そうはいってもその効力は複雑を極めるし、全体像は、少し練習しただけで把握できるものではない。
お父様は、召使の一人を実験体にしてみてはどうかと提案されたけど、さすがに抵抗感がある。
悪魔に属する吸血鬼なのは間違いないが、徒に人の運命を操りたいだなんて思わないし、それってほんとの外道がやることだと思うから、お父様は私の能力の向上を期待して、言ってくれたのだと思うけど、丁重にお断りさせてもらった。
代わりに、練習台として採用したのは、どこにでもあるような一枚のコイン。
コインの裏表の操作は、単純選択肢の連続なので、操りやすい。
操りやすいというのは、それだけ能力の練習をしやすい対象であると考えて、私は、このコインから、徐々に能力の影響範囲を広げていこう、という練習計画を立てた。
今の目標は、コインを10回連続表で出すことだ。さっきのは惜しかったけど、目標達成までは、そう遠い道のりではないだろう。
丸テーブルに直立するコインを眺める。能力の運命干渉と、本来の運命がせめぎ合い、どっちともつかない結果を出したコイン、それは何だか妥協されているような気がして、レミリアはそのことにふと面白くなって笑う。
「まるで、私が我儘言ったみたいじゃない。」
私の能力はまだわからないことだらけだ。もっと力を付けて成長すれば、より大きな影響を与えることができるようになるだろう。
運命に我儘を自在に通すには、まだまだ時間がかかるだろうけど、お父様に一人前の紅魔の主だって、認めてもらえるように頑張ろう。
誕生からちょっと成長した姿まで、です。
子どものころのレミリアの心象は殊勝だと思います。
レミリアにもこんな時期があったんだろうか、というイメージの下、書いてみました。
フランの登場?まだちょっと先です。