東方曲戯録   作:Sanc.マッドカイン

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花粉症がやばい。

投稿不定期でごめんなさい。


七話 闇より変わる運命ノ狂い

 ルーミアは、人食い妖怪であることは周知の事実であるが、それなりに選り好みくらいはする。

 

 落ちているものは食べないとかね。だって、腐っていることがほとんどだし、基本的にまずい。

 

 

 野垂れ死んだりしている人間なんて、死んでも食べたくない。

 

 

 

人食い妖怪だからって、目についた人間は死体ですら食べるっていうのは、偏見に基づいた風評被害みたいなもの。

 

私を倒そうと試みた人間はそういう罠を敷いておびき寄せようとしたことだってあるから、つまるところ、私は何でも食べるっていう偏見が真実みたいに言われているのは、

少し傷つく。

 

傷つくと言うか、ムカつく。

 

 

 

あぁ、でも人間の話なんて割とどうでもいい。

走馬灯じゃあるまいし、死ぬ予定は、私が死にたいと思う予定がないので当分ない。

 

 

 

予定の邪魔をしてくる吸血鬼ならいるけどね。

 

 

 

 

「あはは、久しぶり~」

真横から、大砲のように奇襲を仕掛けてきたレミリアの攻撃をそんな挨拶を返しながら、ルーミアは、軽く掲げた左腕で受けた。同時にルーミアの左腕から吹き出す闇は、レミリアの爪撃と拮抗する。

 

 

気配を隠すのが上手くなったのは、成長の証、握るグングニルも以前と比べ込められた妖力の質が濃くなり、能力の影響をより忠実に反映できるようになっている。

 

 

「よく反応できたわね!けど、私達の勝ちは予定調和よ!」

 

 

能力の成長とともに、態度も大きくなって生意気にもなった。

 

妖力だけ見れば、大妖怪と呼ばれるには十分なんだけど、まぁ、一言で言うならムカつく。

 

 

 

「んなわけあるかっ!やらせるか!」

毒づくルーミアが、闇の出力を上げ、レミリアを強引に弾き飛ばそうとする。

 

しかも相手は、彼女だけではない。

 

当然のように、背後からアリストスが出現し、レミリアと同時に前後からの爪撃をかましてくる。

 

その攻撃も右腕から闇を放出して防ぎ、さらに出力を上げ、今度は、全方位に向けて放出する。

 

 

回避優先のアリストスに対して、レミリアは貪欲に、唯一のカバー範囲外である上空を取って、

さらなる攻勢を仕掛けてきた。

 

突き出されたグングニルを首の皮一枚で回避できたのは運が良かった。

 

 

躱されたことを察するレミリアの反応も早い。勢い余ってぶつかる前に翼を羽ばたかせて、空に逃げようとするその腕を、

 

「逃がすか。」

 

ぐいっと、手を突き出して、掴んで引き寄せる。

 

「ぁあああ!?」

途端に、レミリアが悲鳴を上げ、ルーミアの手から逃れようとするが、より強く腕をそれこそ腕ごと握りつぶさんばかりに、握り込んで、右に左に振り回す。

 

 

ルーミアの手からは、しゅうしゅうと黒い瘴気が溢れ出ており、酸のように、レミリアの腕を焼いていた。

 

 

アリストスがレミリアを救出しようと接近するが、そんな動きは背後を見ずともルーミアには予測できる。予測どころか、捕捉すらできる。

 

足元の影から横一閃に奔る切断力を持った闇製カッター、一本だけでなく、ルーミアの影から何本も何本も生成され放たれる。

 

 

最短の回避ルートを作ろうにも鉄条網のように張り巡らされていては、避けきれず、アリストスは魔法による防壁を作らねばならず、足止めさせられ、その間、レミリアを地面に叩きつけて反動で浮き上がった身体をそのまま蹴り飛ばす。

 

 

彼女は、投げ出される最中で、握ったままのグングニルを投げてきたが、それは少し首を傾けただけで回避できた。

 

この娘、戦う度に、勝利に貪欲になっていくなぁ。

 

 

闇のカッターを抜けてきたアリストスに、振り向きざまに自らを闇を球体状に覆って攻撃を防ぐ。アリストスは、武器を使わず、基本的に手足や鋭い爪を用いた格闘戦主体の吸血鬼だ。

 

いくら膂力が優れた吸血鬼でも、防御性を重視した闇の障壁を破るには至らない。せいぜいが表面を傷つけるのが関の山だろう。このまま反撃の一撃を与えて、今日こそ2人仲良くぶち殺してやる。

 

 

 

だが、次に目撃したのは、紙細工だと言わんばかりに、障壁を貫いてきたグングニルの穂先だった。

 

「んなっ!」

ルーミアの障壁を一撃で貫き通したアリストスの手に握られていたのは、先程レミリアが投擲したグングニルだった。

 

障壁は、一つ穴を開ければ、その強度は格段に下がる。

 

結界と同じ原理であるため、調和を乱され、綻んでしまうから。

 

そうなれば、アリストスでも、素手で引き裂くことができるようになる。

 

 

 

放棄した武器の再利用、初めから示し合わせていたのか、それとも即席の連携なのか、いずれにしても完全に予想を裏切られた。

 

闇の障壁は、アリストスでは打ち破れない、だが、ルーミアに傷をつけるという運命を付与されたグングニルならば、防御を固めてもそれ以上の威力で打ち破られる。

 

 

しかもグングニルを振るうアリストスの技量は、これまで武器を使ってこなかった者とはとても思えないほどに、的確だった。こちらの動きを熟知し、未来が見えているかのように。

 

「あぁ、もうウザい!その能力!!」

 

 

ルーミアが吐き捨てたのは、アリストスについてではなく、レミリアの方で、他者に渡ってもその効力を持続させることができる能力の練度に対してだ。

 

グングニルの一閃が、脇腹の辺りを切り裂き、傷口から血が吹き出す。

 

さすがに、無視できないダメージを受けてしまったルーミアが、闇の球体に包み込まれ、常套の撤退を試みる。

 

「逃げるのね、けど無駄よ。貴女のあがき続ける時間がまた伸びるだけだから。」

彼女の姿が完全に包まれる直前、レミリアは、そんな言葉を聞こえるか定かではない声量で、呟いた。

 

 

 

 

―少女逃走中―

「はぁ、はぁ、ヒヤッとした、あと疲れた。」

戦闘場所から、かなり、と測れる場所まで逃走してきたルーミアは、柄にもなく、死の淵から逃れた、という安心感を覚えて、地面に大の字に寝っ転がった。

 

根城にしている場所はいくつもあるが、立ち上がる気力すら湧いてこず、応急処置で傷口を塞いだ闇を払うと、鋭い傷口が顕になる。とりあえず、血は止まったが、自然治癒でも結構な時間がかかりそうだ。

 

 

 

戦い、戦い、殺し合う。エンカウントしたならば、ともあれ、こちらの動き、レミリア言うところの運命操作の能力と、ベテラン大妖怪のアリストスと何度も額を突き合わせていれば、不利になるのは、毎度毎度単身で戦うルーミアの方になるわけで。

 

 

遠からず、敗北する、という未来も、全否定できるものでもなくなってしまった。

単身で戦ったなら、まだ勝ち目はあるのに。

 

いつかは、私も全面降伏しなきゃ、か。

 

あいつらに、両手を上げて降伏するの、想像したら、すっごく腹立つなぁ。

 

その前に、殺されてしまいそうだけど。降伏前提で考えるのは、流石に虫が良すぎるか、レミリアはともかくとして、アリストスは、そんな甘い温情をかけてくれるとは到底思えないし。

 

・・・運命操作能力とか眉唾ものだと思ってたけど、ここまで追い詰められることが増えたら、

あながち馬鹿にできるものでもなかったじゃん。

 

過去の私をぶん殴りたい。こうなることが分かってたら、初見の時に殺しとくべきだった。

 

そんな後悔が浮かんでくるくらい、彼女は追い詰められていた。

 

 

 

(さっきの気になるな。)

程良く、疲労も抜けてきたところで、ルーミアは、レミリアの言葉を思い出していた。

まるで、自身の運命を支配しているかのような、狩猟の追い込みをしているかのような余裕を感じさせる物言いが、彼女の意識に引っかかったのだった。

 

 

『運命を操る程度の能力』において、対象になるのは、個人の肉体や精神ではなく、対象の運命に適応されるものということで、そもそも対策の仕様があるかというところに疑問が生じるが、少なくとも闇で姿を眩まそうが、次元の違う空間にでも逃げない限り、彼女の能力を以て、放たれた攻撃は正確に、私を追撃してくる。

 

勿論、レミリアが有する妖力の限りではあるが、初めて出会った時と比べて、格段に妖力が増えているので、能力の連続使用は、問題ないのだろう。

 

 

レミリアの運命操作は、私個人がどう行動しても避けられない運命を持ってくるのか、そこは疑問だ。

 

単純に実力の差が縮まり、相性不利の関係を背負うようになったからというのもある。

 

だって、単純計算したら、大妖怪2人を相手取る大妖怪1人の構図ってどう見ても数が少ないほうが不利だし、以て避けられない運命だったのかもしれない。

 

 

が、どうにも何か絡繰りがあるような感じだ。

 

 

 

大したことのない負け惜しみか?傍から見れば、負け惜しみの1つだって言いたくなる気持ちもわからなくはないが、レミリアの能力には、まだ上があると、ルーミアには思えてならなかった。

 

 

だが、その言葉に関する考察は打ち切られる。

 

ガサガサと、草を踏み分ける音がして、気配がこちらにやってくる。

すぐに、ルーミアは、起き上がり、いつでも攻撃できるような態勢を取りながら、その何者かを迎えた。

 

 

 

草むらをかき分けて、顔を覗かせるのは、少女だった。

 

 

金色の髪とねじ曲がった枝を思わせる翼には果実のように下がる宝石がある。

 

 

 

そして紛うことなき、彼らと同じ匂い。

 

 

 

その年端もいかない少女は吸血鬼だった。

 

 

 

敵意はなく、不思議そうな様子でルーミアを見ていた。

 

 

 

「何をしてるの?」

それが、少女の第一声。

 

後々、ルーミアは、この出会いをこう思い返し、レミリアをそう嘲笑った。

 

 

私の運命は、ここで永久的に変わったよ、彼女が望んだ運命かともかくとしてね。

 

 

まさしくそれは、紡いだ糸を違えた運命の巡り合わせだったに違いない。

 

 

 

 




展開が右往左往することに恐怖する今日このごろです。
さっさと、進めていきたいです。やる気出せ、作者。
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