天才の試験型による青春物語   作:graphite

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愚か者と王様

 

 

「ねぇ、拓斗君。さっきの事も気になるけどさぁ.........その......今日ポイントって振り込まれた?」

 

坂柳の会話後、学校へ歩いているとそんなことを尋ねらる。事前に俺の考察を伝えてはいたがやはり戸惑いはあるようだ。

 

「振り込まれたじゃないか。めでたく0ptが」

 

「うぅ.........できれば当たってほしくない予想だったわ..........この後大丈夫かな?」

 

「恵には言ってある通り常識の範囲内........と言うのもアレだがクラスの女子相手とptのやり取りをしておいてくれ。恵がある程度人を助けたとなれば恵のクラスの立場も安定するし、何より恩が売れる」

 

恵には事前に俺の保有していた500万ptのうちの半分を譲渡してある。因みに賭けの後に手に入れた100万についてはまたの機会に話すとして..........ある程度恵にはクラスメイトにポイントを貸すように伝えてある。理由としては恵の立場を盤石にするための布石。ここであえて枯渇している風にして借り立てて、上下関係を作るのも確かに一つの手段ともいえるがこの時点で不用意に敵を作るメリットも必要性もない。なら、恩を売って味方を作り情報網を広げることが最善手だ。

 

「恩っていうより貸しだけどねソレ。でも本当にこんなにいいの?」

 

ptと言う形ではあるが確かに恵にポンっと250万も渡されても戸惑うのは必然だろう

 

「あぁ、問題ない。運動部からまだ巻き上げてないからあと500万は堅いし、毎月賭け試合をすればよくて200万はコンスタントに稼げる」

 

「なんだか社会の闇を見ている気分だわ........」

 

「言い得て妙だな.........まぁ、この学校自体がそんなもんだ。ここは社会の縮図なんだ...........外ならもっと賄賂なりなんなりが横行してる。用はここでしたたかさを学べってことだろうさ」

 

「それはまぁそうなんだろうけどさぁ........もう少し学生らしく楽しみたいなぁ........」

 

「すでに学生らしいことしてるじゃないか。恋人同士で手をつないで仲睦まじく登校するって、ね?」

 

「うぅ......./////そういうことストレートに言わないでよぅ........恥ずかしいいじゃない!もう!////」

 

慣れてきたようだったがまだそうでもないようだ。恵は偽物の関係だというのに直ぐにこうして恥ずかしがる辺り存外恵は純粋だ。

 

「にしても恵は恥ずかしがりだよな~」

 

「むっ............私は相手が拓斗君だから恥ずかしいのに」ボソッ

 

「ん?何か言ったか?」

 

「べっつに~ただ拓斗君はカッコイイなぁって言ったの」

 

恵は先の仕返しと言わんばかりに拓斗と同じことを言う。少しでも恥ずかしがればいいと肉を切らせて骨を断つ思いでそう言うが..........

 

「へぇ..........それは光栄だ」

 

拓斗はそう言うと悪戯を思いついたように笑みを浮かべると恵の耳元に顔を近づかせ........

 

「恵も世界一可愛いよ.........愛してる」

 

耳元でいきなりイケボでそう告げられ恵は瞬間頭が沸いたように熱くなり頬を真っ赤に染める

 

「たうわ!?////////////もうもうもう!!なんでそう言う事すらすらいえるのよ!!//////タラシ!唐変木!!バカぁ/////」

 

「恵が俺を揶揄おうなんて100年早いんだよ」

 

「むぐぐぅぅ~~~~」

 

満足そうにそう言う拓斗の顔を恵は真っ赤な顔でみて自分ばかり弄ばれている不公平さとその倍くらいの恥ずかしさ、そして嘘でも嬉しくなってしまっているのを嚙み締めつつ拓斗の手を握る力を強めるのであった

 

 

******************

 

 

教室に入ると俺達は席がバラバラなので別れる。だが、恵は顔が真っ赤のまま来ていたため仲のいい女子達に囲まれて大変そうだ(他人事)

 

そうこうしてながら、この間椎名に勧められた小説を読みながら教室の様子を窺う。

 

「なぁ?今日がpt振り込まれる日だよな?お前振り込まれてたか?」

 

「お前も振り込まれてなかったのか?俺も昨日と変わってなくてトラブルかなんかか?」

 

クラスの者達はある一定数の者を除いて事態を把握できていない様子だ。どうせ先生がHRで答え合わせでもしてくれるだろうからこれからの阿鼻叫喚の絵図を想像するのは難しくない。

 

「おはよう拓斗」

 

「おはよう清隆」

 

すると後ろの席の清隆が登校してきた。

 

「なぁ、拓斗。ptは振りこまれてたか?」

 

「いや0ptも増えてない」

 

「そうか..........だとするとあの時のお前の推測からして俺達の評価は0ptってことか」

 

「だろうな.........今日は荒れるぞきっと」

 

「違いない」

 

やはりと言うべきか清隆はこれと言って何も感じていない様子だ。あそこの実態は軽くしか調べがつかなかったが完成形とはこうなのかと思うと悲しくなるものだ。最も俺と言う存在が彼を作りだしたわけだが......

 

漠然とそう考えていると、担任の茶柱先生が教室に入る。すると生徒の一人が早速ptの件について尋ねる

 

「佐江ちゃんせんせーpt振り込まれてないんですけど?」

 

「............取り合えずお前ら席につけ。話はそれからだ」

 

そう尋ねてきた生徒をまるで哀れなものを見るように視線を向けると騒いでる生徒らにそう告げる。先生の纏う雰囲気がいつもとは違い、流石の彼ら彼女らも大人しく席に着くと説明を始める。

 

「先に言っておくが今月分のptは既に振り込まれている。何ら問題なく、な」

 

その言葉にクラスの者達は一層怪訝そうな顔になる。

 

「で、でも......実際振り込まれたないよなぁ?」

 

「あぁ」「うん」「そうだよね?」

 

ガヤガヤと騒然としている中俺は内心嗤っていた

 

何せあまりにも滑稽で救いようがないなとすら思えてしまったからだ。ここまで言われればある程度は察しが付くだろうに........

 

「ははは、成程ねぇティーチャー。理解できたよ、この謎解きが」

 

すると高円寺.............あぁ、高円寺と言う生徒は清隆を除けばかなりの異色を放つ生徒の一人で態度こそ今のように朗らかに笑いながら机に足をのせたりと問題はあるが能力は折り紙付き。この一か月見てきた限りで言えば底知れないということがわかる

 

「ほら?君から答え合わせをしたらどうだい?綾池ボーイ?」

 

何故俺にとは思うが..........高円寺はもしかしたら俺がどういう奴なのか勘づいているのかもしれない。

 

「俺達に1ptも振り込まれてないのさ........言い方を変えれば0ptが振り込まれたともいえるが」(まぁ、気が付かれたところでってのが正直なところだ.........)

 

クラスメイトはこれでも理解できていない様子なのでさらに説明を加える

 

「先生はさ、初日に一言たりとも『毎月10万振り込まれる』なんて言ってない。言ったのは『毎月1日に振り込まれる』それだけだろ?つまりは支給されるポイントは変動するってことだよ」

 

漸くそこで事の次第を生徒たちは気が付き始める。俺はその様子を観察してこのクラスの地力を図っていると...........

 

「綾池の説明通り........だが、お前らは本当に.......愚かだな」

 

先生がよく響く..........いや、冷たく浸透するようなどこか不思議なトーンでそう告げる。するとクラスはそれにのまれたかのように静まり返る。

 

「遅刻欠席、合わせて98回。授業中の私語、携帯を触った回数391回...........ひと月で随分とやらかしたものだ」

 

やはりちゃんと監視カメラで確認されていたようだ。それもここまではっきりと明確に数値として出せるくらいにだ

 

「この学校はクラスの成績、評価が毎月のpt支給に反映される。査定の結果、お前らは入学当初持っていた10万ptをすべて吐き出したのだ............要するにお前らに支給されたptは0ptだ」

 

そう、はなからおかしいと気が付かないこと自体既にこのクラスのレベルの低さを露呈しているだ。それこそそこに疑問を持ったとすれば俺、清隆.........あとは高円寺とあの俺を値踏みしてきた女子生徒、ギリギリの所で堀北が頭の端にあったというレベルだろうか?

 

どちらにせよこのクラスは────

 

「入学式の時にも言ったがこの学校は生徒の実力を測るといった。入学したお前らの評価をptでいう所10万だったわけだが...............お前らの現時点での評価は0。つまり屑と言う事だ」

 

そう、だからⅮクラス...........つまり最底辺のクラスと言う事だ

 

すると先生は以下の事をホワイトボードに書き記した

 

各クラスのクラスポイント

Aクラス 940cp

Bクラス 650cp

Cクラス 490cp

Dクラス 0cp

 

「これがSシステム。リアルタイムで生徒達を査定し、数値化する..........みろ。お前たちは自分たちが最低の不良品である事を証明した」

 

「しかし逆に関心もした。一か月で0ptにしたのはお前らが初めてだ」

 

おや、そこまでとは想定外.........でもないか

 

「先生!せめてpt増減の詳細な理由を教えてください!」

 

「実社会と同じだ..........人事考課、詳細な査定方法は教えられない」

 

(何ptで教えてくれるんだろねソレ?)

 

教えられないのは当然だろう............だが、先生の入学式の言葉からしてその閲覧の許可、或いは権利を買うことは可能だろう。まぁ、もっとも知ったところでと言うところはある。

 

「さて、これは各クラスのクラスポイントだ。入学時点では各クラスに1,000cpずつ与えられていた。お前らはこのすべてを吐き出したわけだ」

 

ふむ.........1,000cpで10万ptってことは1cpあたり100ptか。

 

そしてこれを増やす方法は恐らく.........

 

「増やす方法はあるんですか?」

 

「あるぞ。結果としてお前らがCクラス以上のcpになればお前らがCに昇格、ⅭがDに降格........直近で言えば中間テスト。成績次第では最大100cpが加算される」

 

そうテスト..........もっと言えばその他の学校行事なんかもそうだろう。掲示板ですでにある程度の事は知っている。教師によってはクラスの取れ高次第では追加でもらえるとも聞く。

 

だが、正直言って増えるかどうかは微妙だ。既に会長から中間用にあるものを買っている。それは恵にも伝えてあるし、それを使った恵の恩の押し売りについても考えてある。

 

「だが.......これを見ろ。この間の抜き打ちテストの結果だ。そろいもそろって屑みたいな点数だ」

 

そう言って先生は持ってきていた紙を広げ掲示する。そこに記されていた各生徒の点数は程いものだった。あのレベルなら普通に授業なりを受けていれば平均60以上は取れるだろうにウチのクラスの平均は40ちょいだ。確かに策はある...........だが、根本的な問題の解決にはならない。基礎学力が欠けたこのクラスではどこかでほころびが出る

 

恵に関しては点数は.........まぁ、お世辞にも高くはないがこれならある程度教えれば問題なく平均以上は取れるレベルにはできる。その気になれば学年上位レベルに仕込むことも不可能ではない。

 

「次回以降..........赤点をとったものは即退学とする。今回の場合なら七人は退学していたぞ」

 

(赤点のラインは会長には聞かなかったけど.........この言い回しからしてただ点数で決めてるっていうよりも何か基準があると考えたほうがいいな...........)

 

もしも決まった点数での明確なラインがあるならこの学校の仕組みからしてた小なり点数に触れる。今の発言からして人数しか言わなかったことから平均以下だとかの何らかのほかの基準があるのだろう

 

だが、拓斗にとっては赤点など取るわけもないし恵もそうなる事はほぼないと言い切れる。だから赤点についての興味はほぼない。興味があるのは〝退学者〟が出ることによっておこる何らかのペナルティだ

 

(まず間違いなく退学者が出ることのペナルティはあるだろうけど...........せっかくの機会だし知っておきたくはあるな)

 

会長に情報なりを買えばすぐにわかるだろうが実際に見極めるのも一興だろうと拓斗は考える。

 

七人の名前を流し見してこの七人のうち誰ならその捨て駒に相応しいか考える。きっとそれは普通の考えではないのだろう。だが、俺からすればこれは唯のゲームみたいなもの........俺の関心がある事以外はどうでもいい。

 

(候補としては須藤、山内、池だな..........まぁ、須藤は運動はそこそこできるみたいだしまだ使い道はありそうだな。それにあれくらい暴れん坊のほうがトラブルでも起こしてその他の詳細なペナルティについても把握がしやすいしそう言う意味では泳がせとくのも悪くない.........となると池か山内だが...........まぁ、二人とも切るのもそれはそれで面白いかもしれないな)

 

「それからもう一つ付け加えておこう。国の管理下にあるこの学校は高い進学率と就職率を誇っている。それは周知の事実だ。恐らくこのクラスのほとんどの者も、目標とする進学先、就職先を持っていることだろう」

 

それは当然だろう。この学校は全国でも屈指の進学、就職率。ここさえ卒業できれば難関大学だろうとどんな進路もすんなり叶うという噂すらある。正直拓斗からすればそんなものはどうでもいいことだが普通の人間ならばそれに惹かれるだろう

 

(てか、どうせそれもAクラスオンリーの特典だろ?国が管理してるとはいえ進学で来た奴ら全員にとかありえないだろうし)

 

そう、この社会甘い噂には裏があるというもの。馬鹿正直に信じるとすればそれは相当なアホか頭お花畑のおバカさんだろう........ってどっちも同じか

 

「........が、世の中そんなに甘くはない。お前らみたいな低レベルの人間がどこにでも進学、就職できると思ったか?」

 

「つまり........希望の進学、就職先が叶う恩恵を受けるためにはCクラス以上に上がる必要がある........そう言う事ですか?」

 

洋介が尋ねるがとことん甘い........先生も言っただろうに。世の中甘くない、と

 

「それも誤りだ平田。この学校に将来の望みを叶えてもらいたければ、Aクラスに上がるしか方法はない。それ以外にこの学校は何一つ将来を保証することはないだろう」

 

「そ、そんな.......聞いてないですよそんな話!滅茶苦茶だ!」

 

すると高円寺にも劣らない小テストの成績を誇る幸村と言う生徒が大声を上げる

 

それにつられ数名の生徒達も口々に「聞いてない」「滅茶苦茶」だの声を上げる。拓斗からすれば馬鹿らしいの一言でその光景を内心で一蹴し、冷ややかな目でこの局面を見守る

 

「浮かれていた気分は払しょくされたようだな。お前らのおかれた状況の過酷さを理解できたのならこの長ったるいHRにも意味があったかもな。中間テストまで後三週間、まぁじっくりと熟考し、退学を回避してくれ。お前らが赤点を取らずに乗り切れる方法はあると確信している。できることなら、実力者に相応しい振舞を以って挑んでくれ」

 

すると少し強めに茶柱先生は扉を閉め立ち去っていくのであった

 

 

*************************

 

 

その後、洋介がどうにかクラスでの協力を仰ぐも須藤がそれを固辞したことにより、クラス内では不穏な空気となる

 

(まぁ、アレは洋介も悪手だな。須藤みたいな奴は素直に聞くタイプじゃない。それこそエサなりが必要だ.............)

 

堀北は堀北でどうやら幸村と同じで.......いや、それ以上に自分がDなのが納得できないように見える。どこからどう見ても堀北は現状じゃAには確実になれないというのに哀れなことだ

 

恵は俺があげたptで女子達数人に物を買う形でptを渡している。これである程度は恵の力関係も上になってくれれば情報が得やすい。清隆は相変わらずだが特にこの喧騒をどうにかしようとする様子は見えない。

 

「拓斗君........君ならどうにかする方法を思いついたりしない、かな?」

 

するとクラスメイト一人一人に話し合いをしようと声をかけて回る洋介がこちらに来た。

 

クラスの何人かも俺が生徒会と言うこともあるからかこっちの方を注視してくる

 

「........現状じゃあどうにもならないな。まぁ、でも先生の言葉を一言一句かみ砕いていけばなんかわかることもあるんじゃないか?」

 

「.......そっか。わかった。今日の放課後何人かで話し合いをしようと思ってるけどそれはどうする?」

 

どうやら放課後にも話し合いがあるようだが、正直クラスなんてどうなろうと知ったこっちゃないので適当に理由づけて断る

 

「悪いが無理だ。今日はちょっと外せない用事がある」

 

「そっか.........また参加できると気でいいから参加してね」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

比較的静か...........と言うよりも沈んだ雰囲気の中授業は4限まで終え、昼休み。ここ最近は恵と二人、または清隆や偶に会長や書記の橘先輩らと食べることもあった

 

今日は恵はクラスの女子達と、清隆も堀北と食べるらしく特に一緒に食べる奴がいないので一人で学食に向かおうと廊下に出ると声をかけられる

 

「おい。お前が綾池拓斗か?」

 

後ろを振り返ると割とガタイのいい野性味のある男子生徒とその隣には物凄く申し訳なさそうにする椎名がいた。椎名の顔色を窺うまでもなく要件に関しては予想はついてるし、正直来るとしたらそろそろだと思っていたタイミングだったため椎名の隣の男子生徒の登場には大して驚きもない。

 

「.........成程、ね。お前が〝あの〟龍園か?」

 

「ほぅ、俺の事知ってるなら話が早い。一緒に飯食わねぇか?話がある」

 

「いいぞ。そろそろ来ると思ってたし、お前には興味がある」

 

「そろそろねぇ.......まぁ、いい行くぞ」

 

俺は龍園の後ろをついていくと椎名に話しかけられる

 

「その.......綾池君.........なんといえばいいのかわからないんですが.........その........」

 

「............気にしなくても大丈夫だ椎名。用件もある程度見当はついてるし、元々想定内の事態でしかない」

 

「え?」

 

「まぁ、任せとけ。悪いようにはしないさ」

 

そうして奇妙な三人組は食堂へ向かうのであった

 

 

 

 

 

食堂につき龍園に案内された席に着くと軽く周囲を窺う

 

(あそこの黒人にガラの悪そうな男子生徒とあそこの小柄な女子生徒。全員龍園の部下だな............警戒してるのがバレバレだ)

 

龍園は事前に俺達が据わってる席を自身の部下で囲っているようだった。恐らく万が一に備えているかあるいは...........

 

「自己紹介はいらないよな?生徒会副会長の綾池拓斗」

 

「あぁ。必要ないぞCクラスの暴君(キング)、龍園翔」

 

「くっくくく...........お前はDの癖にキレるらしい。まぁ、用件は単純(シンプル)だ。ひよりともう関わるな」

 

「ッ!」

 

椎名が息を呑むのがわかる。正直その反応はいささか予想外だが、それ以外の龍園の接触理由やタイミングなんかは拓斗からすれば想定内の出来事だ。

 

Cクラスの噂を耳にしたときから椎名と関わり続ければこの暴君はしゃしゃり出てくるだろうことは容易に想像できた。龍園は暴力による恐怖でクラスをまとめ上げているとまだ一か月もたたないというのに噂になるほどだ。まぁ、先にBクラスにちょっかいを出したから広まったのだろう

 

「お前もわかってるだろうがひよりはクラス間の戦争には興味はない。別にそれに関してひよりにとがめる気はない」

 

「なら!私はクラスの情報を売るつもりなんてありません!私は綾池君と関われないのは嫌です!私は綾池君とお話をして一緒に過ごす時間が好きなんです!だから.........!」

 

椎名はらしくなく必死な様子で龍園に訴えかける。椎名がそう思っていてくれたとは知らなかったのと、ストレートに告げるのが意外でやや驚く

 

「ひよりがそんな顔するとはなぁ........だが、それは聞けねぇ。話す内容関係なしに俺の部下が他クラスと接してるのが問題なんだよ」

 

「外聞が悪いってところだろ?」

 

そう、龍園の考えは龍園の支配体制において確かに正しい。クラス内をいかに恐怖で支配していても結果がついてこなければそれは容易くひっくり返るし、疑心暗鬼にも陥るだろう。

 

「正解だ。くっくく......まぁ、そうだな。お前がクラスを裏切る.........或いは生徒会の後ろ盾をしてくれるってんなら考えてやるよ」

 

「まぁ、想像通りの内容だな。独裁者の思考はわかりやすい」

 

「そうかよ........でもお前はクラスの奴らに興味はないだろ?他人が泣こうが喚こうが心底どうでもいいって奴の目をしていやがる」

 

思ったよりは観察眼があるらしい。わかってはいたが単純に暴力頼りのお山の大将気取りと言うわけではないらしい。

 

「そうだな。ぶっちゃけ他人なんてどうなろと知ったこっちゃない.........まぁ、裏切るのは後が面倒だから却下だな。生徒会の後ろ盾もしてやらない」

 

「くくくく.......とことん乾いた野郎だなぁ.........じゃあひよりとは関わらないってことでいいんだな?」

 

ニヤニヤとあくどい笑みを浮かべる龍園。椎名に関してはもう今にも泣きそうな表情を浮かべている。

 

だが、龍園のその要求に対しての答えは端から決まっている

 

 

 

 

「馬鹿か?俺は一言も〝椎名を他人〟とは言ってないし、はっきり言うがお前の要求は端から飲むつもりはない」

 

「..........何?」

「え..........?」

 

何故か椎名までもが鳩が豆鉄砲を喰らったようになるが構わず続ける

 

「俺としても椎名と過ごす時間は悪くない。そしてそれを害されるのは正直疎ましくすらある」

 

恵とはまた違ったタイプの椎名は拓斗からすれば少々不思議な存在だ。椎名とは出会ってからまだそこまで関わりが長い訳でもなければ数回通話したり食事を共にしたレベルだ。だが、恵と同じように椎名との時間は確かに〝退屈〟じゃない。

 

いや──

 

(あぁ、今ならわかる。恵との時間、椎名との時間は.........〝楽しい〟)

 

龍園介入自体は想定内だが、実際にそうなるとまた新たな発見がある。それによって確かに二人との時間は他者とは何か違う.........〝楽しい〟のだと拓斗は改めて認識する

 

坂柳とのやり取りで感じた楽しめそうというのはゲーム的な要素が多分にあるが二人はそれとは別にそう感じる。

 

だからこそ。拓斗の答えは──

 

「さて、と言うわけで龍園.........契約を結ぼうじゃないか」

 

自身が〝楽しい〟と感じた時間を守るための手を打つ

 

拓斗は事前に準備していた端末内の文章ファイルを龍園に見せる。口頭で説明するのは億劫だったので事前に用意を済ませておいたのだ

 

 

 

 

契約書

 

綾池拓斗(以下「甲」とする)と龍園翔(以下「乙」とする)は以下の通りの契約を締結する

 

1.甲は乙に50万ptを贈与する

 

2.1の条件が満たされた場合、乙及び椎名ひより(いか「丙」とする)を除くCクラス生徒は丙の人間関係に干渉することを禁じる

 

3.2の条件が破られた場合、1回目は違反者が甲に5万pt支払い、2回目は違反者は一週間の停学処分とし乙は甲に5万pt支払い、3回目以降は違反者を退学処分とする。

 

Dクラス綾池拓斗

 

Cクラス龍園翔

 

 

「こうなることを読んでいたのか?」

 

「言ったろ?想定内だと........お前の行動は端から全部想定内だ」

 

最初からこの契約を結ばせる気でいた。クラスを裏切るのはメリットよりもデメリットが勝ってるし、生徒会の後ろ盾を使うのはできるだけ温存しておきたい手だ。割けるリソースを考慮しつつもう一つの目的として、停学と退学のペナルティなどそれに伴う現象を知っておきたかった。会長ならば知っているだろうが無償で教えてくれるほど甘い人じゃない。ならば実際に誰かを貶めるほうがずっと性に合っている。

 

「そうかよ.......だが、今月0ptのDクラスのお前が50万も払えるのか?」

 

一見疑わしい目で見てくるが龍園は恐らく俺が払えないとは思っていないだろう。恐らくは50万からさらに吹っ掛けられるか見極めようとしていると言ったところか............

 

「問題ない。何らこの条件で呑むというなら一つ特典を付けてもいい」

 

「..........なんだ?言ってみろ」

 

「抜き打ちテスト.............Cクラスも受けただろ?違和感を覚えなかったか?」

 

「違和感...........やけに、難しい問題が混じっていたな?..........あぁ、そう言う事か.........」

 

「察しがよくて助かる。中間の過去問をつけてやる。勿論五科目分だ..........どうだ?」

 

過去問はうちのクラス救済用兼恵の立場をさらに上げるための手段だ。そしてそれに加え、他者との取引材料としても考慮していた。事前に会長から抜き打ち分と期末までも含めて10万で購入しておいた。

 

確かに50万からさらに吹っ掛けられても払えることには払えるだろう。だが、ptの消費は最小気にとどめておきたい。

 

「信憑性は?」

 

龍園にそう問われたので俺は一旦端末を操作して別の画像を見せる

 

「これは抜き打ちテストの過去問だ。これを見れば信憑性もわかるだろ?」

 

龍園はそれを真剣に見る。直ぐにわかる事だろうが過去問との誤差はわずかにもない。

 

「成程.........いいだろう。テストの過去問とその条件でその契約を結んでやる」

 

「それはよかった。契約の締結は明日の朝職員室でAかBの担任に証人とさせてもらう。無理だったら生徒会長に頼むが問題ないか?」

 

「それでいい。お互い慎重にすべきだからなぁ?」

 

あくどい笑みを浮かべると龍園は立ち上がる

 

「なんだ?一緒に飯食ってかないのか?それとも驕ってくれるわけ?」

 

「ふざけんな、誰が驕るかよ..........ひよりがお前と二人になりたそうだから空気を読んでやろうと思ってな?........くくくく........」

 

どうやら何か勘違いしているらしいが..........まぁ、あ些末事だろう。

 

「あとでひよりから俺の連絡先聞いておけ。これから必要になるだろうしな」

 

「そうかよ」

 

まぁ、確かに後々必ずいるだろうし龍園も駒として使える日が来るかもしれないので無駄にはならないだろう。

 

「お前は坂柳の前に料理してやる。その余裕な面を盛大に歪めてやるさ」

 

獰猛な笑みを浮かべそう宣言してくるが〝今のまま〟の龍園なんぞ相手にならないため適当に返す

 

「できるとは微塵も思わないが.......まぁ、待ってるわ」

 

怒るかと思ったが、案外あっさり立ち去っていくのを眺めると、囲っていた龍園の部下たちも立ち去っていく。

 

「さて、これでゆっくり昼食が.........「綾池君!」........おっと!って、椎名どうした?急に抱き着いてきて........」

 

龍園が立ち去ったので少し時間が奪われたが昼食にしようと提案しようとするや否や椎名がいきなりこちらへ飛び込んで抱き着いてきた

 

「.........怖かったんです。綾池君が........他人なんてどうでもいいって........私の事も他人だって.........どうでもいいなんて思われてたらって.........凄く、凄く怖くて.......グスッ........」

 

この反応は想定外だ。確かに、俺は椎名との時間を楽しいと感じてはいたが..........ここまで椎名がなついてくれていたのは完全に想定できなかった。

 

拓斗は正直心理面に関しては自身があったのだが椎名のそれを読み切れなかったことにまだまだだと感じつつ答える

 

「そ、それは悪かったな..........俺はちゃんと椎名の事は全くの他人だなんて思ってないから安心してくれ」

 

「はい!これからもよろしくお願いしますね拓斗君!」

 

瞳を涙でわずかに濡らしながら花のような笑みを向ける椎名に少し困惑を覚えながら答える

 

「あぁ、よろしくな椎名....「ひよりです」..........よろしくひより」

 

にっこりと笑いながら何故か名前呼びを強制されることになるのだが、何となく悪い気はしなかった

 

だが──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?拓斗君?彼女を放っておいて何してるのかな?かな?」

 

「...........」

 

 

どうやらまだこの件は後ろから怒りの波動を放つ彼女()の逆鱗を収めるまで収束はしないようだ

 

 

 

そのことを拓斗曰、「久しく死の恐怖を覚えた」と後に語り継ぐのであった

 

 

 

 







取り合えず今回はここまでです。Dクラス絶望&天然娘ひよりちゃんとCクラスの王様龍園のお話でした。漸くよう実らしく物語が動きつつあり、その分どうやって書いていこうか悩まされますw

まだ、サブヒロインのうちの一之瀬が出せていませんが次回くらいには出せる予定です。色々とやりたいことが混濁して更新スピードはのろまですがちゃんと書き進めるつもりでいますのでこれからもよろしくよろしくお願いします。

長くなりましたが、今回もここまで読んでくださりありがとうございます!お気に入り登録、コメント、評価をしてくださりありがとうございます!


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