4月の中旬頃。俺は生徒会の仕事として、運動部の視察に来ていた。やはり生徒会の権力の届く範囲は広く、部費に関しても生徒会の判断に一任されている。とは言ってもどこかに肩入れなんかしたりすれば信頼は地に落ち、不況を買う。その為会長に現状の部活の成績なんかの資料を貰い、実際に直接見てくるよう言い渡された。本来会計の仕事ではあるが、基本的に最後に了承して、職員に提出するのは会長または副会長職でもあるためその二つの役職の人間が知らなくてはならないことなので来ている次第だ。
(取り合えず今日は野球部、陸上部は見れた。まぁ、学生レベルで考えれば低くはないが、県大会中~上位レベルってとこか?.............後は、サッカー部見て今日は一旦切り上げるか)
その気になれば情報精査くらいならすぐ終わるだろう。だが、部活の総数はそこそこ多くもあり、適当な情報で自身の首を絞めるような結果にならないようおざなりなやり方はできない。時間をかけても丁寧いやって行くべきだ
資料を準備し、部活の顧問に挨拶へ向かっている途中.......
「あれ?拓斗?」
「ん?洋介か。そう言えばサッカー部だったな」
「そうだよ..........拓斗は.......そっか、生徒会の仕事だね?サッカー部に何か用かな?」
部室近くに来ると、複数人の部員だと思われる生徒たちが休憩を取っていた。その中に同じクラスの洋介もおり声をかけられる。
「あぁ、部費の予算を組むときとかに備えて視察だ」
洋介に顧問は今はなせるかなどを聞いていると..........
「平田ー!誰と話してんだ?」
すると後ろから恐らく同学年と思われる生徒が洋介に話しかける。
「彼はクラスメイトで生徒会の仕事で来た綾池拓斗君だよ」
「おぉ!って、ことは一年なのに生徒会長にスカウトされたっていう..........あっ、俺はBクラスの柴田楓だ!よろしくな綾池!」
明るく、活発な彼の自己紹介に「よろしく柴田」と返す。Bクラス..........生徒会の情報と噂なんかだと平和主義的なクラスで総じてDクラスの上位互換と言えるが、その分崩すのは容易い印象を受ける。最も、今のところはその予定はないが..........
「洋介。顧問の先生はいるか?いないなら部長とか予算関係に詳しい人がいると助かるんだが」
「それなら顧問は部室にいると思うよ」
「助かる。それじゃあ俺は───」
部室の位置は把握している。俺が移動を開始しようとすると一人の男子生徒が声をかけてきた
「ん?もしかして綾池か?」
「南雲先輩..........こんにちわ。どうしたんですか?」
生徒会副会長の南雲雅。同じ役職として顔合わせして以来あまり関わる事はなかったが、この人のことは秘かに調べている。というのも会長から噂の真相を聞き、もしも敵対するようなことがあれば叩き潰すためにも情報がほしいからだ。
とは言え現状ではこの人がどうしようがなんら関係ない............だが、もし自身に対して、或いは楽しいと思った時間を害するのであれば容赦なくねじ伏せる
「気分転換に運動でもしようと思ってな。ほら、俺元サッカー部だったしな。綾池の方は..........アレか?生徒会の部費とかの為の視察か?」
「えぇ、そうですよ」
「成程なぁ...............あっ、そうだ、お前サッカーできるか?」
「?えぇ、まあ人並みには」
「そうか........なら折角だし、交流を深める為に勝負しないか?」
「勝負、ですか?」
「あぁ。俺達って顔合わせしてからそんな付き合いないだろ?どうせならここいらでお互いを知るのも悪くない」
要は俺のことを測りたいのだろう。この人は何かと会長に対して対抗心があるように思える...........いや、対抗心と言うかちょっかいを出したがる餓鬼の様にも思える。だからか、自身に構うでなくわざわざ一年生............しかもDクラスの俺を生徒会に推薦したことに敵対心、或いは懐疑心を抱いているのだろう
「異論はないですけど...........ルールはどうするんですか?」
「そうだな............一対一の三本勝負。ハーフラインからスタートして多くゴールを決めたほうが勝ち。キーパーもつけるとして、止められても勝負は三回きりでどうだ?」
「無難ですね...........最初の始め方はどうするんですか?」
「そうだな............まぁ、適当にじゃんけんでいいだろう。勝った方がボールをもってスタートして、その後はシュートが決められた方、止められたならそのシュートを打ってないほうからにすればいい」
「わかりました」
「よし、じゃあ折角だし賭けもしようぜ」
「賭けですか?」
「あぁ、そうだ。今回の勝負でお前が勝ったら...........そうだな100万pt譲渡しよう。その代わりお前が負けた場合は............まぁ、流石に後輩に大きくたかるのはかわいそうだし一週間昼飯奢ってくれ」
「そして引き分けなら何もない............そんな感じですか?」
「あぁ、どうだ?掛けの方はお前の判断に任せるぜ」
この人は恐らく勝っても負けてもどちらでもいいと考えている。何なら経験者である自身が負けるとは微塵も思ってないのだろう。
とは言え、ptが貰えるのならばこちらとしては勝っておこうと思う。別にここで負けてもどうでもいいし、あえて負けるという世渡の術もある。だが、やはり
「いいですよ。面白しろそうですしね」
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「それじゃ好きなタイミングで始めてくれ」
じゃんけんの結果、拓斗が最初ボールを持った状態から始める事になった。南雲は約5m程度の間合いに立つと拓斗がドリブルを始めるのを待つ
「じゃあ行きます」
拓斗は一先ず無難にゴール目掛けて直進する。どちらにせよコート半分も使っているので広すぎる為余計に左右に動いても簡単に回り籠めるし、無駄が多すぎる。
距離を詰めていくと南雲も自分から前に出て奪いに来た
「さてお手並み拝見させてもらおうか」
そう言うとやはり元部員なだけありこちらのキープするボール捌きを的確に読み取り、無駄なく進路を阻みつつ奪い取ろうと伺っている。とは言え実力はやはり高校生レベル。
(のろい...........)
こちらが初心者と思って油断があるのだろうがにしても拓斗からすれば動きのキレが鈍すぎる。
「中々やるじゃん。これなら俺も少し本気出してよさそうだ」
「それは怖いのでぬかせてもらいまよ」
南雲は拓斗のキープを見てただの初心者と言う認識を改めたようだがもう遅い。
拓斗はアウトで外にボールを動かすと南雲は瞬時に奪いに反応を示した。完全にこちらのミスだと思っていいるのだろうが甘い。
(股が隙だらけだな)
そのままインサイドで内側へ切り返し南雲の股を抜く
「股抜きエラシコ!?」
拓斗の使ったのは股抜きエラシコと言われるものでアウトで外側へのタッチとインサイドでの内側へ切り込むタッチの二度で敵を欺くドリブル。当然ただの初心者が使う技じゃない。
そのまま拓斗は一気に加速したドリブルでゴールへ直進。南雲は驚愕のあまりすぐに動けず遅れて再度奪いに戻るが当然間に合わず.............
「フッ!」
鋭く利き足である右を振り抜き、弾丸の如くボールはゴール左上............キーパーが横っ飛びから伸びた手が届くよりも早く通過しネットに突き刺さる。
「............人並みって嘘じゃねぇか」
「嘘じゃないですよ?中学帰宅部ですしサッカーは習ったことないですし」
南雲の呆れたような表情の裏にどこか苛立ちな様なものを感じたが、どうでもいいので軽くあしらう。勿論、習ったことがないのは嘘だ。施設でこれも仕込まれたものの一つだ。嘘じゃないのは帰宅部な事と人並み(プロレベル)な事だ。
話はほどほどにキーパーの人からボールを受け取った南雲先輩は初期位置に戻り、拓斗も先程の南雲と同じような間合いで構えた。
「どうやら本気でやって大丈夫そうだな」
「帰宅部相手に大人げないですよ」
「うっせぇ。帰宅部がエラシコなんてできてたまるか」
軽いやり取りの後、先と同様南雲もドリブルで直進してくる。
(シザース、か)
ハサミの様なフォームでフェイントを加えるドリブル技の一つ。簡単な動作で扱うことができ、且つ非常にポピュラーなドリブル技の一つだ。
ただし...........
(おっっそ。しかも、わかりやす)
簡単とはいえ、世界でも使われる技術の一つ。つまりそれだけ実用性がある技術ではあるが南雲のレベルでは拓斗にはフェイントにならない。しかも体も動いており方向がバレバレだ。
「いただきます」
「な!?」
勿論、相手が普通の高校生ならそれなりに効果があっただろう。今回は拓斗が相手という一点において同情すべきだろう。
「面白い技ですね。自分も真似させてもらいますよ」
拓斗は敢えてそのままボールを奪ってゴールとは逆方向に少し進むと、すぐさま切り替えして南雲と同様にシザースで迫る。
(超速シザース!?はやっ)
先のそれとはまるで速さの違うシザースに南雲は驚いた表情になるもすぐさま冷静になり拓斗がどっちから抜きに来るか見極めに入る。
とは言え結果は見え見えだ.........
(右に見せかけて........左!)
そう判断し、それに合わせた動きをする。しかし──────
(見え見えだよ)
拓斗はそれも読んだうえで嘲笑うかの様に華麗なルーレットスピンで抜き去る。
(ルーレットスピンだと!?)
余りにも滑らかで高速な拓斗のルーレットだがこの技はおおよそ三段階の工程に分けて考えることができ、一段階目で足裏によるストップとコントロール、二段階目で逆足で引いてボールの方向を変えながら回転、三段階目でボールと共に相手の横を抜けるといった風に分解できる。これをいかに高速かつ滑らかに出来るかが肝となる。勿論これもエラシコ同様初心者の扱うような技ではない。
(クソっ........こうなったら!)
南雲はこのままでは負けが決まるとファール覚悟で拓斗の服を掴もうと腕を伸ばす。ただ、拓斗もそれは当然予見しておりどうするべきか一瞬考える。
(ファールとれるなら儲けもんだけど...........汚れるのはなぁ)
ファールになれば恐らく何かこっちの利になる条件が提案されるだろう。その時点でまず勝ちは確定だが、そうまでする必要があるかと言えば当然──────
(汚れんのは勘弁だな)
(防がれた!?)
伸びてきた手を軽くいなして服を掴まれるのを阻止するとそのままシュート態勢に入った。
(まだ30mはあるぞコイツ!?)
普通に拓斗が素人と思えないとはいえ約30m級のミドルシュートを打てるとは思えず驚愕に支配される南雲。しかし、同時に不可能なわけがないと勘が告げてもいた。
(これで俺の二本先取...........終わりかな)
利き足を振り抜いて放たれたボールは噴かしたような上を狙いすぎな軌道だった
南雲もキーパーを務めた部員もミスキック............或いは掴まれるのを焦って無理矢理撃ったのだろうという考えが頭をよぎった。
しかし、そんなわけもなく──────
(!?急激に落ちながら外へ逃げていく.......だと!?)
一定の高さまで行ったボールは突如その軌道を急激に変え、沈みながら外へそれるという異次元の軌道を描き始めた。当然キーパーは反応できず右下隅へとボールは吸い込まれ、突き刺さる。
(
そして、この時点で三本中二本拓斗が先取。つまりこの時点で勝負は決まった。
「はぁ...........お前の勝ちだよくそ」
「ありがとうございます南雲先輩」
「ったく........最後のと言いなんでお前が無名なのか意味わからん」
「そんなに褒めても何も出ませんよ」
南雲先輩の表情を伺うと呆れ半分、疑心半分といたような感じだろうか。とは言え久しぶりにサッカーをしたが案外うまくできた方だろう。
「約束通りptください先輩」
「はぁ.........わかってるよ」
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「──────とまぁ、三本勝負で二本先取してきたわけ」
時は戻り、Bクラスリーダーである一之瀬と清隆両名と共に職員室に向かう道中に二週間前のそんな一幕を軽く説明していた。
「南雲先輩確かサッカー部の元部員だよね?」
「そうだな」
一之瀬の確認にあっけらかんと肯定する拓斗
「経験者相手にストレート勝ちか」
清隆の方は相変わらず感情の伺えない表情で感想を呟く
「綾池君ってホントに凄い人なんだね」
「まさか。少し運動が得意な何処にでもいる普通の高校生さ。さて、それより早く職員室行こう。お互い用事を早く済ませたほうがいいだろ?」
そうして三人は職員室へ再び足を向けるのであった
超お久な更新申し訳ないです!これを書き始めたのは何とびっくり1年前...........色々あったとはいえサボりすぎて本当に申し訳ないです!ただ、お待たせしてしまいましたがこの話を書くうえでよかった点が一個だけあります。恐らく読んでてわかると思いますが拓斗のサッカー勝負はかなりと言うか全部ブルーロックを意識しております。自分はスポーツは野球をしていたので野球ならある程度すぐに手を付けられたのですがサッカーは授業でしかやったことないので中々アイディアが浮かばなかったりしていました。サッカー漫画やアニメはイナイレやDays辺りは見てましたが、片方は参考にならないし、片方はしばらく読んでなく内容を忘れていたので今アツいブルーロックのおかげで書き進められました。サッカーのルールや動きなどは詳しく把握してないので誤りがあるかもしれませんが温かい目で見守っていただけると幸いです。
正直今書いている中で一番思い付きで書いてるシリーズだったりするので今後もかなりスローペースだったり、変な部分もあるかと思いますが気長に付き合っていただければ幸いです。また沢山の評価やコメント、お気に入り登録していただいておりとても嬉しく思っています!本当にありがとうございます!!これからもどうかよろしくお願いします!