ORZ 作:秘密研究所のコンピューター
ゲームと言うモノがある。それこそ、原始的なモノからハイテクノロジーなモノまで。その中でも、特にテレビゲーム……更に言えばネットワークを使った通称ネトゲー。その中の冒険物の多人数参加型の物をMMORPGと言うが、この手の物は買い切りのゲームと違い配信している環境からか……とにかく新しいデータコンテンツを放り込んで来る。新しい装備や新しい土地、更に新しい魔法から職業に種族。そう言った物は"、基本的に後から出るモノほどインフレーションを起こしているから大概高性能である。"初期のモノと比べて……モチロン、初期のモノも修正などを加えられはするのだが。
だが、ゲームの人気に限りが出て来れば巻き返そうと、かつてはボスだった種族や選べなかった物まで使えるようになって来る……"中には、もう先が見えているゲームでそんな仕様の者を出すのか??!!"と言う存在まであるのだ。
そして……そんなユグドラシルに新たに降り立った、新参プレイヤーは……そんな誰もが選ぶコトを絶対にしないであろう新・異形種を選んだ、選んでしまった。
「これで、今月のナザリックの維持費の分の稼ぎは終わった……」
黒いローブのフードから見える顔は髑髏、ナザリック大墳墓を拠点とする異形種集団のギルド:アインズ・ウール・ゴウンそのギルドマスターであるモモンガ、それが彼の名であった。毎月自らの支配する拠点はそれなりの額を納めなければそこの使用権利を失ってしまう……故に彼は常に金策をし続けていた、かつてならそれも所属メンバー全員でやり……1日とかからず集められたものだったが、今やギルド:アインズ・ウール・ゴウンは彼一人しか毎日ログインをしたりしない。加えて、他はと言えばログインしてもほんの数分でログアウトする者が数名居るだけであり……実質他の者は当てに出来なかった。そんな彼、モモンガは昔を懐かしみ、メンバーとの出会いを思い出しながら遠い先の空を見ていた……と、そんな折に少ない人数ながらもプレイヤーの怒声が聞こえて来た。
今のプレイヤーがかなり少なくなったユグドラシルにて何事かと、モモンガは姿消しの魔法を唱えてから聞こえて来た方の場に向かってみると……そこには異形種を相手に3人がかりで囲んで簡単にキルしないように蹴る、剣で突き刺すと言うことをしている場面が目に飛び込んで来た。それは、かつての自分を重ねるにはあまりにも似過ぎた場面だった……モモンガはその時にたっち・みーさんに助けられて、今のギルドへと入ったのだ。と、思考している場合ではないと思い直し、先ずは異形種に攻撃を加えている人族の動きを魔法を使って拘束し止めて離れた場に転移させた後にでもまとめて一気に吹き飛ばすことにしようとしたモモンガだったが……事態は思わぬ方向に舵を切ったのだった。
それまですき放題にやられていた異形種、多分後ろ姿の羽のような形状からしてコキュートスや武人建御雷さんと同じく昆虫戦士系の異形種なのだろうと思ったプレイヤーが突然素早く動き、1人の人族を後ろから3本指の手と同じく3本指の足を使ってガッチリとホールド……拘束した――と思った次の瞬間人族の胸に向って何かが突き立てられた。ソレは、猛烈な勢いでナニカを吸い込んでいっている……と、その人族は装備していた鎧や手にしていた剣を地面に撒き散らし残して消えたのだ。
「――」
驚きから絶句し、止まっていたモモンガだったがさっきまでやられていた異形種の方は動きを止められている次の人族に1人目と同じように腕と脚で拘束すると再び胸に向けて突き刺した……ソレは角度が変わって判明した、その異形種の尻尾である。先端は注射器の針のように尖っている……モモンガは成る程と内心頷いた。シャルティエのスポイトランサーのようなものなのかな、アレで失われたHPを回復させるのか。このモモンガの考えは間違いではないのだが、この異形種にとってはもっと意味のあることなのだ。二人目も鎧やマントを地面に撒き散らして消え……それを見た3人目が喚き散らすが、そんなことは聞こえないとばかりに3人目も拘束からの尻尾を突き刺して吸い上げ――数秒後、辺りは静寂に包まれた……。
「……――」
異形種が屈めていた身体を起こして、モモンガを見た。見たことがまるでないタイプの長身の異形種……それがモモンガの第一に思ったことだ。そして……どうしようかと思った。何故ならここ最近他のプレイヤーと、やり取りや交流などしていなかったからだ。こうなると何を話せばいいのか分からなくなる……が、考えているモモンガをよそに見なれない異形種は踵を変えして森の中へ入っていこうとする。
「あ、ま、待って!」
思わず呼び止めてしまったモモンガ。呼び止められた彼はモモンガを見て来る……その目には何やら懐疑的なものが宿っていた。それはそうだろうとモモンガは思う、彼がその変わり種の異形種をプレイヤーキャラクターに選んだ理由は分からない。分からないが……きっと、ユグドラシルに降り立ってからろくなめにあって来ていないコトは明白である。ユグドラシル内では、人族プレイヤーは異形種プレイヤーを狩るコトに罪の意識を持たず、むしろそれを嬉々としてやっているコトは疑いようがない事実だ。
だから、異形種をプレイヤーキャラクターにしている人は大概心に傷を負い、"懐疑的な立場"になっているひとが多い……と言うか多過ぎる。だからだろうか、待たせ過ぎて思考の海にとらわれていたモモンガを無視して立ち去ろうとした彼に慌てて疑問と言うべきか、目的が何かを口にしてしまった。
「君の目的は?」
コレにたいして再び止まり、モモンガを見て……ユックリと口を開くと彼はこう言った。
「"20000人……人族を吸収すること"」
やけに良い声でそう言うと、今度こそ彼は森の奥へ向けて走り去って行ってしまった。
「20000人って……20000回、ああして吸い取るのか…………」
モモンガとて、自身のアバターを育てるためにかなり面倒な条件の儀式もしている……が、彼のソレは自分のよりもキツイとしか思えない条件だ。
「何にしても――人族専門のPK、プレイヤーキラーを20000人やらないとクラスアップ? が出来ないとか……難儀な異形種を選んじゃったものだな――」
コレが、彼とモモンガの始めての邂逅だった。
つづく。
感想、評価、お気に入り登録、よろしくお願いします。