ホーンテッドコテージ   作:プレイズ

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第2話

1つ星、というワードに元太が疑問を浮かべた。

「なあなあ、1つ星ってすげーのか?」

「まあ3つ星や2つ星に比べたら大した事ないから、そこまで言うほどのもんじゃないさ」

「いやいや凄いですよ。権威あるミシュランの星を獲得する事自体が凄い事ですからね」

謙遜する慎吾に対して光彦が否定して評価した。

「ええ、ミシュランから星を1つ獲得するだけでも店にとってはとても大きなお墨付きになるといっていいわ。小嶋君も大飯喰らいならそのくらいの知識は知っておくべきね」

「うぐ、食いもんの事は好きなのに知らなかったぜ……」

「はは、子供なんだから当然だ。でも、君達はなかなか物知りなんだな」

見た所小4くらいなのに意外な事を知っている子供達に、慎吾が不思議がる。

「へへ、俺達少年探偵団なんだぜ」

「え?少年……探偵団……?」

「うん!私達、どんな謎でも解いちゃうんだよ」

「これまでも数々の事件を解決してきたんです」

さっと決めポーズを決める元太、歩美、光彦。それを後ろからクールな笑みで見るコナンと灰原。

「これはこれは、なかなか可愛い探偵さん達だな」

「ほっほっほ!これは面白いお子さん達じゃわい」

少年探偵団の宣言に2人の表情が柔和に緩んだ。

 

挨拶代わりに、探偵団達は老夫妻に早速自分たちの自己紹介を始めた。

「俺は探偵団を束ねる頼れるリーダーの小嶋元太だぜ」

「私はキュートな女探偵吉田歩美よ」

「知性を駆使する円谷光彦です」

「同じく知性を駆使する灰原哀」

「えっ、は、灰原さん」

「ああ、ごめんなさい被っちゃったわね。じゃあミステリアスな女灰原哀とでも言っておこうかしら?」

「見た目は子供、頭脳は大人。俺は江戸川コナン、探偵さ」

ひとしきり自己紹介をした子供達に、親子は目を丸くする。

「へえ、皆それぞれ特色があるんだな」

「やはり面白い子達じゃな」

「俺達も自己紹介しておこうか。改めて紹介すると俺は松永慎吾。元料理人で今はコテージの管理人として働いている」

「鷲は慎吾の父、松永茂雄じゃ。同じくこのコテージで管理人として働いておる」

コテージの2人が自己紹介を済ませ、後から出遅れたとばかりに博士が口を開いた。

「やれやれ最後になってしまったわい…。私はこの子達の引率役をしている阿笠博士です。こう見えて発明家なんです」

「なのに毎回車を故障させてるのはどうしてなのかしら」

「うっ……め、面目ない」

哀にめざとく指摘され、博士はばつが悪そうに頬をかいた。

 

それから探偵団達はお爺さん、もとい茂雄さんに中へ通され、ひとまずコテージのリビングで一休みする事になった。

慎吾がお茶を入れてきてくれたので、皆で飲んで一息つく。

「ありがとうお兄さん。お茶美味しいっ」

「そうかい、まあごゆっくりしておゆき」

お茶を飲んで礼を言う歩美に慎吾が微笑んではにかんだ。

「いやあ、すみませんな。急に大人数でおしかけてしまって」

「気にしないでください。俺達はここでコテージを経営してますが、ファミリー層の来客は珍しくありませんし、むしろ歓迎ですよ」

「もちろん今回は非常時ですからお金などいただきませんから、そこはご心配無用ですじゃ」

「有り難いお話です。車が動かなくなってしまって困っておったから、渡りに船でしたよ」

博士は松永親子へ両手を合わせて感謝する。

「ちょうど今はお客さんもいなくて全室空室だから、しばらくこの施設を好きに使ってもらって構いませんよ」

「夕食は慎吾が作りますから、どうぞお食べになっていってください」

「助かるわね。なら博士が車を再起動させるまでの間はここでゆっくりくつろげそうかしら」

お茶を口に運びつつ哀はソファに身を委ねる。

さっきまでガス欠のごたごたで慌ただしかった分、ようやく一息ついたといえる。

 

そんなこんなで皆が落ち着いた所で、光彦が周囲を見渡して言った。

「ここ、結構広いですね。普通の一軒家と比べて部屋の広さにゆとりがあるというか」

「このコテージは敷地を大きく取った3階建てじゃ。田舎だから土地には余裕があるでな」

貸別荘はへんぴな場所に建っているものの田舎なので土地代は安かったらしい。

そのため大胆な建築をする事が出来たようで、この建物は一般的なコテージと比べて規模が大きい。

「こんな山奥のど田舎にある割に建築のクオリティーは高そうなんだよなここ」

「どうやらよくあるコテージとはひと味違う雰囲気の建物のようね」

「はい、ノスタルジックでありながらどこか不思議な感じがありますよね」

「建てる際に内装にはこだわったからな。だからここには色々な部屋があるんだ」

「面白そう、歩美見てみたい!」

「ほっほ、お嬢さんは興味津々かの。後でゆっくりと見て回るといい。きっと退屈はしないはずじゃ」

部屋を見て回りたがっている歩美に茂雄が微笑ましそうに笑って言った。

「ねえ、そういえばさっき息子さんが2人いるって言ってたけど、もう1人の息子さんはどこにいるの?」

気になったようにコナンが茂雄に訊いた。

「ああ、もう1人の息子は今は奥の部屋で経理の作業をしていての。今は忙しくて顔を出す暇がないようじゃ」

「ふうん、そっか」

 

その後、博士はすぐにお爺さんから車を借りて、補給用の燃料を取りに近くのガソリンスタンドへ向かう事になった。

そしてその後はコテージに戻った後でビートルにガソリンを給油して、ガス欠した車をまた使えるようにするという流れである。

博士が外に出ている間、子供達はこのコテージでしばし待つ事になる。

「では茂雄さん、しばらくお車をお借りします。私が戻ってくるまですみませんが子供達をよろしくお願いします」

「ええ、任せてください。まあ鷲らにとっては久方ぶりのお客様ですからな。子供さん達が飽きないように出来る限りおもてなしさせていただきますよ」

ほっほっほ、と楽し気に笑んで茂雄さんは博士を見送った。

 

ちなみに博士が向かったガソリンスタンドは、最寄りといっても10分20分くらいで行ける距離ではない。

ここは山あいの入り組んだ道になっており、運転には慎重を来し速度を落としての徐行運転が求められた。

それに周辺は人がほとんど通りかからない閑散としている田舎で、一番近くのガソリンスタンドでも片道1時間以上かかるくらいには離れている。なので博士が戻ってくるまでコナン達は2時間以上はここで待たなければならない。

「まあ待つのはおっくうだけどよ。その代わりにこんな旨え飯が食えるんなら待つ甲斐があるってもんだよな!」

「元太君は相変わらず食べ物に目がないですね。でも美味しいのは僕も同感です!さすが1つ星レストランのシェフが作った料理ですねこれは」

「うん、歩美も美味しすぎてほっぺた落ちちゃいそう!」

慎吾の作った料理を振る舞われた探偵団達は、その肩書きに恥じない味わいに喜んでいた。

彼は流石1つ星レストランの元シェフというだけあり、かなり美味な料理を作ってくる。

「いやしかし単純にうめーな。つい箸がすすんじまうぜ」

「確かにこれはなかなかね。これだけの物を作れるなら十分にまだ現役のシェフとしてやっていけそうなくらいよ」

「ふふ、ありがとう。そう言ってもらえると作った甲斐があるよ」

子供達の声に慎吾は照れくさそうにはにかんだ。

「まあ、今の俺には都会のせわしないシェフよりもこういうのどかな所でひっそりとやってくのが合ってるのさ」

「ここは貸しコテージですけど、慎吾さんは普段料理を作るサービスをしているんですか?」

「普通ならお客様がセルフで作るものだけど、このコテージでは俺が作ってお出しする形を取っている。元料理人の経験が活かせると思ってね」

「慎吾さんって現役を引退した後、ここに来て長いの?」

光彦に続いてコナンが気になったように訊いた。

「いや、まだ半年程度かな」

「こんなへんぴな所だとお客さんほとんど来ないんじゃない?」

「まあ場所が場所だから訪問客は多いとは言えないね。だけど富裕層の方々からは隠れた貸別荘として人気があるんだ。定期的に予約をしていただいてる」

「ここって料金はどれくらいなんですか?」

今度は再度光彦が慎吾に尋ねた。

彼はかいつまんで金額を話したが、その額は一般の貸別荘の相場よりかなり高めのものだった。

「随分強気な価格設定に感じるけど……それでも経営は成り立ってるのよね?」

「ああ。有り難いことに贔屓にしてくれてる上客様が何組かいる。おかげで訪問者数は少なくてもやっていけてるんだ」

「こんな旨え飯が作れるんだからよ、高え金払ってでも来たい奴がいるのもわかるぜ!」

「小嶋君は食べ物以外の感想はないのかしら?まあ確かに料理の味は確かだし誇張じゃないと私も思うけど」

ため息をついて元太に呆れつつも、納得もして哀は頷いた。

「でもこのコテージは料理だけじゃなく、慎吾さんが言ってたように内装も凝ってるわね。手の行き届いた部屋のつくりも常連がつく理由なのかもしれないわ」

「うん、このお部屋すっごく綺麗。こんな素敵なコテージなら歩美暮らしてみたいかも」

「ほっほ、そう評価してもらえると鷲らとしても嬉しいわい。食べ終わったら後で各部屋を見回ってみるといいじゃろう。趣向を凝らした部屋がたくさんあるからの」


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