---監視ルーム---
モニター画面の前では、監視役のピエロがタバコを一服して一息ついていた。
今、モニター画面には何も映っていない。
歩美がゲーム部屋に入った所で、モニター画面の電源がスリープ状態になっていた。
「さて、俺ハしばらく仮眠させてもらおうカ」
欠伸をしてピエロが伸びをする。
どうやらあまり睡眠を取れていないらしく、眠そうな様子だ。
「歩美ちゃんの様子は気になるが、今俺ハ眠くてタマラナイ。しばらく寝サセテもらおウ。……まあ、ゲーム部屋ニハ仲間のピエロがイルから任セテ問題ナイナ」
彼は机に突っ伏して仮眠を取り始める。
モニター画面を一時切ったのは画面の光で明るいと寝にくいからだ。
仮眠程度なのでおそらく20分~1時間は眠るつもりだろうか。
もし歩美がそれより早くゲーム部屋から出てくれば監視の目がなくなる事になるが、それはあり得ないと彼はわかっていた。
彼女があの部屋を出るのには確実に1時間以上は要する。
ゲーム対決の要旨を彼は知っているのだ。そして、万が一自分が仮眠を終える前に彼女が部屋を出たとしても、あの部屋にいるピエロが監視を続行してくれる。
なので今彼は安心して仮眠を取る事が出来ていた。
「Zzz………」
程なくして彼は寝息を立てて眠り始めた。
部屋を暗くしたためかすぐに眠りにつく事が出来たようだ。
「……どうやら寝ちゃったようね、あの男」
「ああ、俺達を人質に取ってるってのに呑気なもんだぜ」
眠りこけたピエロ男を尻目に奥では哀とコナンが小声で会話を交わす。
彼らは犯人の目を盗んでしっかりと起きていた。ただし光彦はぐっすりと眠っているが。
「ねえ、あなたの必殺道具で何とかならないの」
「俺もそうしてえんだけどよ。両手をしっかり後ろ手に縛られちまってるし、足はスリッパだ。キック力増強シューズはコテージに上がった時に脱いできちまった」
「……まったく、名探偵さんも形無しね」
「悪い。あの男が寝てる内に何とか抜け出せればいいんだが……」
今は幸いピエロの目はない。逃げるなら今の内なのだが、ピエロはしっかりと子供達が逃げれないように対策済みであった。
「それにしても、モニター画面が切られてるんじゃ吉田さんの様子がわからないわね」
「ああ。歩美ちゃんは今奴らに問題を解かされてるみてえだが。意図はわからねえが、歩美が問題を全てクリア出来れば俺達を解放するっていう話みてえだな」
「吉田さんだけで大丈夫かしら。心配だわ」
「俺も助けに行きてえ。何とかこの環境から抜け出ねえとな」
2人はピエロと1人で相対する歩美の身を案じつつ、束縛から脱出する方法を模索していた。
---コテージ●階ゲーム部屋---
あれから8分が経過。
ピエロと歩美の2人はお互いに上手くクレーンを操作してぬいぐるみゲットを積み重ねていった。
歩美は慎重に、だが正確にクレーンをぬいぐるみの真上に移動させる。
そしてその丁寧さのおかげでぬいぐるみを取りこぼす事はなく、着実に1つずつ獲得を決めていく。
一方のピエロも、歩美のプレイを眺めつつ自分のクレーン操作を正確無比に遂行。
歩美のゲットに数秒遅れてしっかりゲットを決めて、獲得数は離されずにすぐに追いついていた。
現在二人のぬいぐるみ獲得数は4対4の同点。
残り時間はあと2分。
歩美は着実にキャッチを成功させていくものの、ピエロに点数でぴたりと後ろにつかれてはらはらしていた。
もし1つでもミスすれば逆転される恐れがある。ワンテンポ遅れてはいるがあちらもミスをしないからだ。
爪に品を取りづらくする調整がされていない分、クレーンを正しく品の真上に持っていければミスはほぼ0に出来る。
お互いに慎重に正確に操作をしている故に、ここまでミスはなくゲームは進行していた。
(ミスしたらピエロさんに逆転されちゃう……。でも、このまま行けば抜かれる事はないから大丈夫!)
焦燥しつつも、歩美は己を落ち着ける。
今僅かではあるがリードしているのは自分なのだ。
このままのペースを崩さなければ、最悪でも引き分けで終われる。
向こうがミスってくれればそれでこちらの勝ちだ。
歩美は焦ってミスする事だけは注意して、正確に最後のクレーンを動かしていく。
ウイイーン
ウイイーン
ウイイーン
ガチャリ
爪が開いてぬいぐるみが落下する。
その先には搬入口があった。
品が穴から外れる事はなく、しっかりその穴の中へと吸い込まれていく。
正確な操作により彼女はノーミスでまた1つぬいぐるみを獲得した。
「や、やったぁ!」
「くク、流石ダネ」
見事5つ目の品をゲットした彼女にピエロが称賛を送る。
脇目で歩美のプレイを見つつ、彼もまた最後のクレーンを操作していた。
「ボクに追われるプレッシャーの中、ミスらズ決メテ見せるトハ」
彼からすれば歩美がノーミスで5つも成功させるのは正直予想外であった。
途中で焦って1、2回は失敗するだろうと思っていたからだ。
ところが予想に反して彼女は焦りの中でも慎重に正確にクレーンを操作し、ポイントを積み重ねた。
今彼女がリードしている状態なのはその着実さの証だ。
「キミはトテモ素晴らシイ。ーーダガ」
ピエロの口元がニヤリと三日月に曲がる。
不気味な笑みが仮面の下から漏れ出た。
「その着実さはイササカ慎重スギタネ」
「え……?」
意味深なピエロの言葉に歩美は不安を抱く。
眼前では最後のクレーンが爪を開いていた。
そしてゆっくりと降下を開始していく。
その先には当然ぬいぐるみがあるが、これまでとは少しクレーンの位置が違っていた。
ぬいぐるみ1つの真上、ではなかったのだ。
ぬいぐるみがいくつも固まっている密集地帯にクレーンは降下していく。
いくつもの熊のぬいぐるみが密集するポイントに入ると、爪がゆっくりと折り畳まれた。
「あ、、、!」
歩美の目が驚きに見開かれる。
閉じられた爪には2つのぬいぐるみが収まっていたからだ。
密集地帯に少々強引に突っ込んだ事で、爪の中には圧縮されるように品が刈り取られている。
これはいわゆるダブル取りというやつだ。
「ふ、2つ一辺に……!」
初めてそんなテクを披露され、歩美が驚く。
まさかそんなやり方で複数獲得出来るなんて思わなかったのだ。
「クク、切り札は最後まで取ってオクモノダヨ、歩美クン」
楽しげな助言が仮面の下から届けられる。
道化師のその言葉を聞きながら、呆然と彼女は最後のクレーンの戻りを見つめた。
もしやとぬいぐるみが途中でこぼれ落ちる事を期待したが、そんな事はなく。
搬入口の中に2つのぬいぐるみが見事に落とされたのだった。
「そ、そんな……!」
歩美が絶望顔で声を漏らした。
まさかの2つゲットでピエロに2点が追加。
この結果合計数で追い抜かれてしまった。
「サ、調度時間ダネ」
「……!」
歩美が次のプレイを始める時間はもう残っていない。
刻限である10分がきっかりと過ぎていた。
「これにて第1ゲーム終了ダ。獲得結果は歩美クンが5個。ボクが6個。ボクの勝ちダヨ」
無情にも最終結果が通達される。
最後の最後にピエロにダブル取りされたため、彼女はポイントで逆転されてしまった。
「く、くう……!」
「残念ダッタネ。デモキミがここまでやるとは正直予想外ダッタ」
勝利したピエロは歩美の悔しそうな顔を楽しげに見つめる。
「最後に複数取りをする予定はナカッタノサ。ダガ歩美クンがノーミスで終えたカラ、勝つには手を選んでイラレナクテネ」
「ふ、2つ一辺に取るなんてズルいんだもん……!」
歩美は悔しげに、だが半分言い訳のように言う。
でも彼女自身がよくわかっていた。何もピエロがイカサマをしたわけではなく、単純に上手くクレーンゲームをプレイしたのだと。
ゲームに関しては素人に近い彼女としては、そのプレイテクに関してズルいと感じるのも当然ではあった。
「悪イネ。ボクも勝負ダカラつい本気にナッテシマッタヨ」
「く……!」
「ところデ。ボクが勝ったカラ、わかってイルネ?」
ピエロが仮面から怪しい眼光を光らせた。
もし歩美が負けたらどうなる事になっていたか。
「ッ!」
「約束はチャンと守ってモラウ」
腰かけていた椅子からピエロがすくりと立ち上がった。
最初のルール説明を思い出した歩美は、思わず肩を跳ねさせる。
直立したピエロは歩美から見てかなり身長が高い。
大人なのだから当然だが、彼女からするとかなりの威圧感があった。
「ひ、ヒ…!」
淡い悲鳴を漏らして彼女は後退した。
目の前のピエロはさっきの朗らかな様子から一辺、危険な空気を纏っている。
これからされる事を想起し、彼女は恐怖に絶望した。
だが逃げる事はしない。
罰ゲームはルールなのだ。
破ればコナンや哀達がどうされるかわからない。
罰ゲームを受けるのは怖いが、被害を受けるのは自分だけだ。
ちゃんと逃げずに受ければコナン達が危害を加えられる事はないだろう。
そう彼女は覚悟を決めた。
だが、まだ少女の彼女に落ち着いて対処しろというのは酷な話である。
完全に動転した歩美はもはや恐怖で失神しそうになっていた。
次の瞬間、歩美の身体が宙に浮く。
「キャア!?」
ピエロの大きな腕が彼女の腰を抱いて抱え上げていた。
子供の彼女は大人の男であるピエロにとっては米俵程度のもので、軽々持ち上げられてしまう。
そして、そのままピエロは歩いていき、椅子にどかりと腰かけた。そして膝の上に歩美を乗せる。
「サテ、覚悟はイイカナ?」
「ヒ……!」
覚悟は済ませたつもりだが、完全に恐怖が勝ってしまい、彼女の顔は恐れおののいている。
その絶望顔の歩美に、ピエロは不気味に笑った。
そして容赦なく手が振り下ろされる。
パ ア ン !
圧力のある一撃が彼女の臀部を襲った。
その威力に歩美の身体が振動して反り返る。
「ぴぃ!」
衝撃で彼女は裏返った声を上げた。
殴打された痛みでお尻に痺れが走る。
しかし休む間は与えられず、続けざまに手が振り下ろされる。
バ ン !
バ ン !
バ ァ ン !
連続の平打ちが臀部を襲い、彼女はまるで電気ショックを受けたかのように衝撃を食らう。
ピエロの一撃は重く、殴打の毎に彼女の身体は反り返った。
さらに彼の平手打ちは続く。
パ ア ン !
パ ア ン !
パ ア ン !
「ピイ!」
歩美の口から変な悲鳴が漏れ出た。
衝撃と恐怖のあまりもはやろれつが回らなくなっていた。
【挿絵提供:長さ斗@有償リク募集中様】
ピエロはそんな彼女を見て不気味に笑う。
歩美が身体を反り返らせる度に彼を優越が満たしていく。
(くく、キミへのスパンキングは楽シイネ)
愉悦に興じて道化師は享楽を感じた。
ミニスカートごしに彼女の可愛い小尻を打つ行為はそれだけで楽シイ。
しかし華奢な少女の臀部に平手打ちするのだ。当然、大人の男にそんな事をされれば彼女の身体は無事では済まないだろう。骨にヒビ、最悪骨盤が折れてしまう事も考えられる。
だがピエロはちゃんと手加減を加えていた。
"通常のそれ"よりも4割程度の力に抑えて彼は殴打を行っている。
なので歩美が臀部に危険な怪我を負う事はなかった。
だがもちろんそれでダメージがないわけではない。
パ ア ン !
「あう!」
パ ア ン !
「あう!」
彼女が短く裏返った声を漏らす度にお尻には痛みと痺れが蓄積されていく。
一発一発の平手打ちは彼女からすれば重く、恐ろしい。
だがピエロからすればこれはかなり手加減しているレベルだ。
もし本気で殴打していれば彼女の意識は3、4発で持っていかれていただろう。そして臀部の骨は砕けていたはずだ。
痛みと痺れ程度で済んでいるのはまだマシと言えた。
もちろん歩美からすれば余裕など全くないが。
それから約5分の間、彼女へのスパンキング罰ゲームは続けられた。