第2話にも関わらず文字数が一万近くに達する程の長文となっております。
お時間とお足元に注意し、閲覧なさってください。
最近の技術の進歩は素晴らしい。
ドーム上部に取り付けられた大型の掲示板、ガンダムシリーズのコスチュームをし、談笑をする沢山の人たち。
電子世界への扉をくぐり、その光景を目にして彼が最初に抱いた感想はそれだった。
シーサイドベース、総合受付所。
そこは〈ガンプラバトル・ネクサスオンライン〉へとログインしたプレイヤーが初めて足を地につける場所だ。
ガンプラバトル・ネクサスオンライン 通称『GBN』
電脳世界「ディメンション」内で、ガンプラバトルを中心とした様々なイベントに参加できる、世界規模の最新ネットワークゲームだ。
詳細は知らないが、どうやら最近アップデートが来たらしい。
窓の外に目を向けると、そこには広大な街や景色が広がり、ガンダムシリーズに登場するMSが滑空していた。
本当にこの世界へ来れたんだ…
そう感動に浸っている彼に
「おーい、こっちこっち!」
人込みの奥から手を振り、こちらへと駆けてくる人物が一人。
野戦服のような地球連邦軍のジャケットを着こんだ彼の名前は『イチジョウ・ノボル』
ガンダムシリーズとGBNという存在を教えてくれた友人だ。
そんなノボルに『ヒイラギ・ハルト』は「おぅ!」と答えると彼の元へ駆け寄った。
「おぉぉいノボル!!GBNってすごいな!さっきも外でMSが飛んでいたし、俺もあれに乗れるのか?!」
「あぁそうだぜハルト。まぁ色々言いたいことはあると思うがとりあえず…」
ノボルはポケットからクラッカー(注:ザクの投擲兵器ではない方)を取り出すと
「GBNデビューおめでとう!」
パァン!と火薬と紙吹雪がさく裂した。
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「それにしてもその恰好とてもいいな。たしか”08小隊”に出てくるシロー・アマダとかが着ているやつだっけ?」
初めてのガンプラバトルのためのミッションを受けるため、施設内にあるミッションカウンターへと二人は歩を進める。
「そうそう。これ手に入れるまで時間かかったんだよなぁ。そういうお前は結構ラフな格好だな。」
視線を下に落とすと、黒のシャツの上にうすい蓬色のコート、デニムパンツに茶のブーツと、俺がログインした際のキャラ設定でセッティングした服装が再現されていた。
「あぁ、選べる種類は少なかったけどこれが今できる最大限のコーディネートだぜ」
そうこう話しているうちに俺たちはミッションカウンターへと到着した。
二年も前からGBNをプレイしているノボルに教えてもらい、俺は「チュートリアルバトル」とやらを受注した。
そのまま格納庫へと向かい、自分の機体と武装の確認をするように言われる。
俺はMSハンガーの中からこの日のために作ったガンプラを探し出すと、その姿を見上げた。
肩部に取り付けられたスナイパーライフル。
機体各所に装備されているシールドビットに、背面のバーニアには左右に1挺ずつ新型ピストルが懸架されている。
両腰部には新しくホルスターが設置され、中には取り回しに優れるピストルが収められていた。
『ケルディムガンダム コンプリートサーガ』
それがこの機体の名前だ。
一見すると、ただケルディムガンダムを灰色に塗装しただけに見えるが、状況によって多種多様な銃を扱い、どんな状況にも対応するというコンセプトで制作された機体だ。
今回ハルトは初めてMSに乗るため、武装のほとんどを外し最もシンプルな状態でGBNに持ってきた。
よってこれが本来の姿ではないのだ。
確認を終えたハルトが機体に乗り込むと、足場が動きカタパルトデッキへと自動的に移動が始まった。
「おぉい、ハルトォ」
突如コックピット内に小窓が表示され、そこにノボルの顔が表示される。
ノボルの背景とそこから聞こえる音からして、彼は先に出撃したらしい。
「しっかりカメラで録画しといてやるから、パァァっと決めちまいなパァァっと!」
「あぁ、言われなくてもやるさ。ずっと楽しみにしていたからな。」
機体がデッキへと運ばれ、足元が射出台に固定される。
光の破線が出口へと延び、上部に設置されたランプが青に変わった。
ハルトはこれまで見てきたガンダム作品の登場人物かの如く、高揚と叫んだ。
「ヒイラギ・ハルト、ケルディムガンダム コンプリートサーガ。出ます!!」
風を切る音。身体全体にかかる圧力。
次の瞬間、ハルトは架空の空へと飛び出していた。
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「これが君にとっての初陣となる。大丈夫なのか?」
「うん!何回もシミュレートやったし、私は…」
「違う。君の心配をしているんじゃない。僕が不安なのはミッションプランと敵に引き金を引けるかどうかだ。」
「…たしかに、いつもと違って今日は人が乗ってるし、すごい怖いけど…でも、できるよ。私、みんなと一緒にいたいから。」
「ならいい。あくまでも計画を歪めるんじゃないぞ。エイミー・リターナー。」
「うん…!じゃあ行くね!おいで、ハロ!」
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「すごい…!本当に飛んでる…!」
「ばっちり撮れたぜぇ。後でお前の携帯に送っとくな。」
と、ハルトが乗るケルディムの元へ、並行してくる機体があった。
ライトグリーンで塗装された本体に所々に入っている赤が目立ち、胴体下にはビームライフルが懸架されている。
バック・ウェポン・システムから生える翼が左右に展開され、遠くから見ると戦闘機のようなシルエットをしていた。
『リビルド・ガンダム・ゼータ』
通称「リ・ビズィ」。 それがノボルが駆る機体だ。
「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」に登場する「リ・ガズィ」をベースとしており、彼なりの改良が加えられている。
特に注目すべきなのはバック・ウェポン・システム(B.W.S.)であり、大口径のビームキャノンの他に、オリジナルの武装としてミサイルポッドや小型バルカン砲、機雷などの実弾兵装が取り付けられていた。
前に彼が言っていたのだが、リ・ビズィがMS形態になった際には上空で待機し、周囲を把握するマルチセンサーの役割や、敵機へと砲撃、爆撃をするサブフライトシステムを兼ねた支援機にもなるらしい。
そんなリ・ビズィは現在、ウェイブライダーと呼ばれる形態になっており、ハルトの真横をぴったりと飛行していた。
「このバトルは出現する敵を三体倒せばクリアになるんだ。誰もがやってる簡単なバトルだから、そう緊張しなくてもいいさ。」
「してないよ。それ以上にわくわくしてるさ。」
すると、正面に半透明の巨大なドーム状のものが見えてきた。
どうやらあそこが戦闘エリアらしい。
ケルディムガンダム コンプリートサーガとリ・ビズィは加速をつけるとドームの中へと飛び込んだ。
正面に『MISSION START』と表示され、目標である〈リーオーNPD〉が三体出現する。
リーオーは新機動戦記ガンダムWで登場した量産型MS。
今回はそれをAI—Non Player Diver—が操作する無人機を倒すのが目標らしい。
「それじゃあ、俺は上空で見とくから、頑張れよ!」
リ・ビズィが離脱するのを見送ると、俺は肩から主武装であるGNスナイパーライフルⅡを装備し、敵へと構えた。
目前にスコープが表示され、先にいるリーオーNPDの顔がはっきりと映る。
カーソルを顔の真ん中へと持っていき、射撃トリガーに指をかける。
「コンプリートサーガ、目標を狙い撃つ!!」
機動戦士ガンダム00に登場する〈ロックオン・ストラトス〉というキャラを意識し、俺は引き金を引いた。
銃口からピンク色のビームが射出され、それはドーバーガンを装備したリーオーNPDの顔面を貫いた。
空中で機体が爆散する。
「やった、当たった!」
「ナイスショット!ほら、残りは二体だ!片づけちまいな!」
カーソルをもう一体のリーオーNPDへと向け、ロックオン。
画面の中で灰色のその機体は、身体をくの字に曲げて爆発した。
「残り一機!」
最後の敵へトドメを刺そうとスコープをのぞき込む。
しかしそこには画面いっぱいに灰色が表示されていた。
二体を狙撃している間に近づかれたらしい。
リーオーNPDが手にするマシンガンの銃口が光る。
「!!」
俺は操縦レバーやブーストを駆使してこちらへ飛んでくる猛攻を躱す。
機体の各所に弾丸が命中するが、それほど大したダメージ量ではない。
接近された機体には、スナイパーライフルみたいな銃身が長い武装は非常に相性が悪い。
よって俺は、自機の背面に手を伸ばすとそこに伸びているグリップを握り、副兵装であるGNピストルⅡを敵機へと向けた。
威力は低いものの、取り回しと連射性に優れる。
「やぁぁぁぁ!」
射撃トリガーを引きっぱなしにし、射線上の敵へ必死に反撃する。
やがて最後のリーオーNPDは身体に無数の風穴を開け、その身を空へと散らした。
「Battle end」という電子音と共に『MISSION COMPLETE』と文字が表示される。
「おぉぉぉ!やったじゃんハルト!カッコよかったぜ!」
「ありがとう!俺結構操縦いけるかもしれな…」
と、レーダーに新たな点が現れ、ハルトはそちらへと注目した。
動きからして、こっちへ高速で接近して来ている機体があるらしい。
それはノボルのレーダーにも表示されていたらしく
「なんだあれは?」
「待って、確認してみる。」
ケルディムを地面に着地させ、頭部に搭載されているガンカメラを起動する。
その正体は、
「なんだあれ…?ガンダムデュナメス…?」
それは、ハルトが搭乗するガンプラ、ケルディムガンダムの前身機、ガンダムデュナメスの改造機だった。
機体が近づいてくるにつれ、その詳細が明らかになる。
機体の頭上に背面から延びたビーム砲が二門並び、右側に機体全長にも達しそうな細身の三角柱が三本、左側に機体がそちらへ傾くか不安になる程の大型のコンテナがそれぞれアームの先に取り付けられていた。
脚部はスキー板のようなもの-アヴァランチエクシアのダッシュユニットだろうか…?-に乗っており、一見すると小型のGNアーマーTYPE-Dを装備しているような感じだ。
他のプレイヤーかな?
そんなのどかな考えを、≪CAUTION≫と鳴る警報がかき消した。
「避けろハルト!!ロックオンされてるぞ!!」
同時にデュナメスの改造機のガンカメラが露出し、右腕に装着されている三角柱が電流を纏う。
刹那、ケルディムの右後方で大地が爆砕し、激しい土煙が舞った。
「?!」
地面がはるか後方まで抉れていた。
デュナメスの改造機の右腕に取り付けられていたのは、ただの柱でも装飾でもなかった。
弾丸の誘導、加速を行い撃ち出すための給電レール。
「まさか、レールガン…?」
「相手は何やってるんだ?!こっちは初心者がいるんだぞ?!」
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「ハロ、誤差修正お願い。」
『リョウカイ!リョウカイ!』
残り9発…そんなに無駄撃ちはできないね…
私は〈ガンダムマトリエル〉の右アームに装備された"GNレールガン"の弾数を横目で確認すると、情報を手に入れるために敵機へ焦点を合わせた。
…太陽炉搭載型の狙撃機体…ケルディムガンダムか。
間違いなく戦闘を継続させるうえで、こいつは厄介となるだろう。
なら、真っ先に撃墜するのみ!
左アームに取り付けられているミサイルコンテナのハッチがスライドし、その中身が露わとなる。
「マトリエル、目標を破壊します!」
『ホウゲキ開始!ホウゲキ開始!』
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デュナメスの改造機から無数のミサイルが射出され、それは雨のようにこちらへ襲い掛かった。
俺はGNスナイパーライフルⅡの銃身を折りたたむと、連射性能に優れた三連バルカンモードと呼ばれる形態に変形させ、左手に握るGNピストルⅡと併用しミサイルの迎撃にあたった。
リ・ビズィもビームキャノンやバルカンを使い、自機の軸線状に存在するミサイルを撃ち落として行く。
ノボルのおかげもあり短時間で可能な限り迎撃したが、それでもミサイルの数は圧倒的だった。
地上で回避するのが難しいと判断した俺は、回避しながら迎え撃つために空中へと飛ぶ。
と、そこで俺は気づいた。
このミサイル群は”俺を狙っていない”。
直接当てに来ているのではなく、自分の周囲にばら撒いているのだ。
それはまるで、自機をその中にできた空間に固定させるかのように…
「!!」
防御のために取り付けられた全てのGNシールドビットを密集させたが、もう遅かった。
レールガンの砲門が光り、閃光が放たれる。
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激しい爆発を確認したエイミーは左アームのミサイルコンテナを破棄すると、加速を開始した。
残るはもう一機のモビルスーツ。機動力が高そうだけど、このマトリエルの相手じゃない!
巡航しながら敵機を探す。なかなか見つからない。
と、爆煙からピンク色の光線が、右のGNキャノンの上部を掠めた。
「なんと…」
煙が徐々に晴れてゆく。
その中から身体のあちこちを灰で黒くさせた、ケルディムが姿を現した。
「どうして…?撃墜したんじゃないの…?」
『ハズシタ!ハズシタ!』
「うるさいハロ。次は当てるよ」
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「ハァっ…ハァっ…!」
GBNという仮想空間でも、アバターの発汗等の生理現象は再現されるらしい。
窮地を逃れた俺は呼吸を整え、額から伝う冷や汗を拭う。
危なかった…
密集させたシールドビットと、命中する前にノボルが分離したB.W.S.を割り込ませていなければ、こうして五体満足には居られなかっただろう。
「ノボル、大丈夫?」
「あぁ、分離しただけだから大したダメージはないぜ。しかし、何なんだアイツは?たかが二機に攻撃が過剰すぎるぞ?!」
「うん、俺たちも無理に相手をする必要はないと思う。早く逃げよう。」
「でも絶対あのレールガンで撤退している俺たちの背中をズドンだぜ。さっきの様な攻撃をする奴が、そう簡単には逃がすとは思わねぇよ。」
背を向けたらそこを撃たれ、かといってこのまま交戦をつづけてもジリ貧になるだけだ。
どうしたものか…
唸りながら敵を睨みつける。
自身の武装を確認すると、幸いレールガンの被害を逃れたGNシールドビットが四基残っていた。
「…ねぇノボル。いま思いついたんだけど…もしかしたらあのレールガンを破壊できるかもしれない。」
「本当か?でもそれはアイツとやりあう事を言ってるんだぜ。できるのか?」
「あぁ。けど、それにはノボルの協力が必要なんだ。嫌ならこのまま逃げるけど、どうする?」
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「GNレールガンの弾数は残り8、か…」
もう一機の方も確認できた。
どうやらオプションパーツを分離して提供した事で、ヤツのシールドビットと合わせ二重の盾としてあのケルディムは生き残ったらしい。
けど、そのせいでもう一機の青い方は高速移動の手段を失ったようだ。
そうなれば、もはやただの的にしか過ぎない。
カーソルを持って行き、青い機体をレティクルの中央に合わせる。
そこでその機体は動きを見せた。
両腕部から四発、真っ赤なグレネードを発射。
しかし、それは自身とは関係ない、明後日の方向へと飛んで行く。
「何?パニックになってるの?」
と、ピンク色のビームがグレネードを貫いた。
そちらへ目を動かすと、ケルディムガンダムが腰部の拳銃を抜き的確にグレネード弾を狙い撃つ姿があった。
爆発が起こり、煙幕が発生する。
カーソル内に捉えていた青い機体も煙に阻まれ、視界の全てが白に染まる。
「目くらましねぇ…視界がゼロでもレーダーを見れば…?!」
そこには、自機を現す点以外が存在しなかった。
自身の周りに展開されている円以外、レーダー全体に暗い靄がかかっている。
『ジャミングサレタ!ジャミングサレタ!』
「…なかなかやるじゃん。」
このまま真下から撃たれたら癪だ。
高度を下げ、周囲の警戒を強める。
この煙幕に便乗してここから逃げ去るのか、あるいはこちらを倒そうと何かしらの策を講じているのか。
何はともあれ、この煙幕から抜け出すのが一番の良策であることに変わりない。
バーニアからGN粒子を放出し、加速。
その勢いのまま煙幕の中から飛び出し、機体を旋回させる。
レーダーもある程度視界を取り戻した。しかし煙幕がかかっている所は表示されず、全てを把握できたわけではない。
「…さて、いつ来るかな?…もしかしてもう逃げた?」
途端、≪CAUTION≫と警報が鳴り、煙幕の中からビームが飛び出した。
しかしそれは命中せず、マトリエルの頭上を通り過ぎる。
アハッ、それじゃあただ自分の位置を晒しただけじゃない。
ビームが飛んできた方にGNレールガンを向ける。
「さようならっ」
鋼鉄の弾丸が音速の域で発射され、目の前の煙が一瞬で晴れる。
しかし、そこに居たのはあのガンダムタイプではなかった。
もう一機居た青いヤツ。しかしその身体は丸みを帯びていて、ぷかぷかと浮遊している。
その傍らには格子状に配置されたシールドビットが浮かんでおり、GNレールガンの弾はそれに命中し爆散した。
「まさか、ダミーバルーン?!」
直後、別方向から飛んできた光線がGNレールガンの給電レールを跳ね飛ばした。
それは間違いなくあのケルディムガンダムの攻撃…
位置を晒したのはこちらのほうだった…!
GNレールガンに火花が走り、やがてそれは銃身全体へと広がる。
急いで投げ捨てると、轟音と共にそれは派手に爆発した。
エイミーは赤面し、残った武装のGNキャノンへ粒子をチャージ。
そちらへ向ける。
だが山吹色のビームがキャノンを貫き、それが発射されることはなかった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「さっきからハルトばかり狙いやがって!俺を忘れんなよ!」
リ・ビズィが装備するビームライフルは、ベース機が登場した『逆襲のシャア』でもかなりの破壊力を持っていた。
その威力は伊達ではなく、隙をついてヤツの大型砲を破壊する事に成功する。
「よし、こんな感じでいいだろう!ハルト、逃げるぞ!」
「分かった!」
双方ともバーニアを吹かし、敵機と距離をとる。
…ヤツはまだ武器が残っているらしい。
機体前面に展開したGNフルシールド。そこに懸架されていたデュナメスと同型のスナイパーライフルを構えるとこちらへ銃口を向けた。
俺は撤退しながら振り向くと、マニピュレーターの指基部から煙の中で囮に使ったダミーバルーンを射出した。
しかも先ほど使用しなかった腰部グレネード弾のおまけ付きだ。
案の定、敵機のビームはグレネードごとダミーバルーンを貫き、巨大な煙幕が再び発生する。
「あははははは!!してやったりだぜ!!」
ハルトと共に笑いながら、俺たちはベース基地への帰路についた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
視界は煙幕に阻まれ、レーダーも再び表示されなくなった。
スコープに映るレティクルは青の表示を示しており、それは有効射程外を意味していた。
先刻の激しい戦闘とは違い、辺りに静寂が訪れる。
「………」
「逃ゲタ!逃ゲタ!」
「ムキィーーーー!!何なのあいつら!!いきなり強くなってぇぇ!もぉぉぉぉぉぉ!」
「下手ッピ!下手ッピ!」
「うるさぁぁぁい!!」
本当なら今すぐにでも機動力が高い脚部推進ユニットの〈ダッシュユニット〉を使い、奴等に追いついて撃墜したい所だけど…
視界の端に表示されたミッション
終了時間まですでに1分を切っていた。
エイミーは深く深呼吸をし、息を整えると
「こちらマトリエル。ミッションプランをB12に移行します!」
背面の太陽炉と同時に脚部のバーニアからもGN粒子が放出される。
次の瞬間には風を切り、ガンダムマトリエルはその領域から姿を消した。
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「それにしても、結構上手くいったな。アサルトモードにしたシールドビットを囮にして敵の狙撃位置を割り出す、か。中々いい作戦だったんじゃないか?」
「いや、咄嗟に思いついた作戦だったし、リ・ビズィの装備をGBNにログインする前に説明してくれたじゃないか。あれがなければあのデュナメスみたいなのに負けてたよ。」
一応あの後ベース基地へと無事に帰還でき、チュートリアルバトルもクリアとなった。
機体は先のバトルで損傷した部位を修復中だ。
初めてのGBNであんな戦闘を行って殆どダメージがないのも大したものだが、とにかく修理が完了するまでガンプラには乗れない。
現在二人はバトルで稼いだ通貨「ビルドコイン」で買い物をするため繁華街へと移動している最中だ。
その道中に、ハルトが初めて降り立ったシーサイドベース、総合受付所を通るわけだが…
…何やらざわざわと騒がしい。プレイヤーの殆どが上部に取り付けられたモニターに注目している。
何が起こったのか、最寄にいたパトリック・コーラサワーのダイバーに尋ねる。
「んぁ?何かGBNが電波ジャックされてモニター全部にアレが映ってるらしいぜ。」
皆が見るモニターの中には、「A」の文字に天使の輪と翼、そして中央に地球が描かれたロゴデザインの背景。
そして、そのロゴで顔を隠した人の上半身が表示されていた。
それはまるで、例えるなら「
『GBNにログインしている皆様。ごきげんよう。』
突如、ボイスチェンジャーを通して喋るような低い声がスピーカーから流れ始めた。
『私たちはAngelic。GBNに平和をもたらすことを目標に活動する組織です。』
周囲の中には端から興味がなく、その場から去るものやメニューを開き手作業を始める者も居た。
しかしそれはメニュー、携帯端末、掲示板。どこにでも現れる。
『私たちは本日から、4機の機動兵器”ガンダム”による武力介入を開始しました。ログインしているダイバーの中には、もうそれを体験した方もいると思います。』
画面上に4枚の写真が表示される。
それは『機動戦士ガンダム00』に登場する機体『エクシア、デュナメス、キュリオス、ヴァーチェ』の改造機の写真だった。
デュナメスの改造機に関しては見覚えがある。それもそのはず、さっき俺たちが戦闘した機体だ。
その男(でいいのだろうか…?)は、話を続ける。
『武力介入の対象はフォース、ランクを問わず中正に行います。危害を加えるようであれば、例えそれが運営であっても武力介入の対象となります。』
再びロゴと男性が表示される。
『私たちはAngelic。GBNを平和にすることを目的として結成された組織です。』
そこで画面に砂嵐が走り、クエストやトーナメント表が表示されている元の掲示板へ戻った。
「運営も敵にまわすってよwできるわけねぇじゃんwww」
「00関係のイベントかなぁ?楽しみ!」
「どのくらい強いんだろう。戦ってみたいなぁ。」
「危害を加えるっていったい何に?」
「そもそもGBNで武力介入って行為が無意味じゃね?」
鼻で笑う者、何かの演出かと目を輝かせる者、SNSで情報を調べ始める者…
周囲の反応は様々だった。
ノボルはハァ…と息を吐くと
「ビギナーの中には他のダイバーから嫌がらせを受けて辞めちまう人もいるんだ…あれがイベントの告知かどうかは知らないが、初心者のハルトに過剰な攻撃をしたのは事実だ。…散々なGBNデビューになっちまったが、大丈夫か…?」
ハルトは頷いた。迷いはなかった。
「俺は何も気にしてないよ。…にしても、めっちゃ面白いなこの世界!なぁ、今度俺のケルディムで試したい事があるんだけど付き合ってくれるか?!いや、その前に買い物だったな!早く行こうぜ!」
ハルトは特に何も気に留めていないようだ。
俺はハルトの後に続き繁華街へと向かう。
…それにしてもAngelic、か…
マスダイバー事件のように大事にならなきゃいいんだが…
あとがきです。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
※次の行からネタバレ注意です。
さて、本作のあらすじにもあった「Angelic」という名の組織が出てきました。
今後の更新予定としては、
・Angelicのメンバー視点の物語
と
・Angelicの活動に巻き込まれるもう一人の主人公「ハルト」視点の物語
とが交互に展開していきます。
よってお次はAngelicのお話になります。
散りばめられた伏線の回収や、読んだ方が少しでも楽しめるような物語を今後も作って行くので、最後まで更新できるように頑張ります!
貴重なお時間をありがとうございました!