偽クラウド物語~FFⅦ×IS~   作:シャントット帝国

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FF7リメイク「ユフィ編」の配信決定を記念して。


元ソルジャーのお話

「なあ、イチカ。俺にできる商売ってないか?」

 

あの運命の日、ヒッチハイクで乗せてもらったトラックの荷台に揺られながら友人は、俺に話しかけてきた。

 

「そうだな・・・・俺はレストランとかでバイトできると思うけど、ザックスは料理とかできるのか?」

 

「いや、全然!」

 

ザックスの返答は即答だった。いくら同期で長い付き合いとはいえ、できないのに自信満々で答える彼に頭を抱える。いや、むしろ俺の方がおかしいのかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とザックスが知り合ったのは9年ぐらい前だ。

 

当時の心境は今でも鮮明に憶えている。

何しろ異世界に来ちまったんだからな。千冬姉のこと知らないと言われたときはそんなド田舎にまで逃げてきたんじゃないかって思ったぐらいだよ。

 

俺が12歳の時、千冬姉の出場するISの大会「モンド・グロッソ」の決勝戦の応援するためにドイツへ一人旅行へ行ったんだ。でも、会場に入る直前後ろから何かを顔に被せられて抵抗する間もなく誘拐されてしまった。奴らの目的は決勝を控えた千冬姉に棄権させることだった。だが、テレビで何事もなく試合に出ていた姿を見て犯行グループは唖然。用済みになった俺を始末しようとしたが俺は近くに落ちていたガラス片でロープを切って脱走した。

外に出ると辺りは森で俺はとにかく人のいるところへ逃げようと必死に走った。途中で放たれた銃弾が肩に当たり、背中にも何発も当たって意識が朦朧としたところでよく覚えていないが夜中なのにオーロラのような光を発していた池を見たことはおぼろげながら覚えている。

 

 

 

気が付いたときは、ミッドガルの伍番街スラムの診療所のベッドの上だった。医師の先生に話を聞くとよく時々この辺に来る黒スーツの男の人がモンスターの生息域で倒れていた俺を拾ってきてくれたと言う。先生に「何番街スラムから来たのか?」と聞かれたときは何のことかと疑問に感じていたけど、話を聞いてく内に俺は異世界に来てしまったんだと理解した。

 

 

数日後、体の傷がほとんど治り、これからどうすればいいのか考えていると先生に「助けてくれた人にお礼を言ってきたら?」と声をかけてくれた。先生曰く、その人はこの伍番街スラムの教会に時々来ているそうで毎日ではないけど会えるかもしれないそうだ。実際、教会に行ってみるとちょうど外に額の中央に黒子があり、後頭部に長髪を結んでいる黒スーツの男がいた。男は俺の姿を見るや少し驚いた。

 

「君はあの時の・・・」

 

俺の恩人ツォンさんは、いまいち信じられないような表情で俺を見る。俺は助けてくれたお礼を述べるが彼によると「任務中のルートで君を発見しただけに過ぎない」と言って礼はいらないと答えた。

 

「ここで何をやっているんですか?」

 

「仕事だ。君には関係のないことだ。」

 

「はあ・・・」

 

「ところで君は本当に体は大丈夫なのか?」

 

「えっ?はい、おかげさまで。」

 

「ふむ・・・・・」

 

彼は、少し腕を組んで何か考え事をして俺を見直す。

 

「君、名前は?」

 

「織斑一夏です。」

 

「オリムラ?変わった名前だな。」

 

「あっ、すみません。一夏が名前の方で織斑は姓です。」

 

俺はここが改めて異世界だと思い出し、言い直す。

 

「イチカか。君、行く宛はあるのか?」

 

「いや、ないです。」

 

「そうか・・・なら、私と来ないか?良ければ仕事を紹介しよう。」

 

俺は思わずえっと思った。いや、だって俺まだ未成年だよ。

 

「あの・・・・俺まだ未成年なんですけど。」

 

「心配することはない。神羅では君ぐらいの年齢の少年はここぞとばかりに仕事を求めてくる。尤も大半はソルジャーになれずに一般兵止まりがだが。」

 

「ソルジャー?」

 

この時、ソルジャーが何なのかはよくわからなかった。でも、志望者が多いということはよっぽどのエリートなんだろうなととりあえずそういう風に理解しておいた。それに今のままでは無一文だし、紹介してもらえるのなら甘えさせてもらおうと考えた。

 

「わかりました。よろしくお願いします。」

 

俺は、そのまま彼に神羅カンパニー本社へと連れていかれた。本来なら書類提出から始めなくてはいけないのだがタークスがスカウトしてきたということでいきなりソルジャー適性の検査を受けることになった。結果は適正ありで早速3rdへの入隊することになった。ザックスと出会ったのはこの時期だ。

 

「よっ、俺はザックス!お前は?」

 

「い、イチカだ。」

 

「イチカか!よろしくな!」

 

初対面の印象は「大丈夫かコイツ?」と言ったものだった。だって、初見の相手にいきなり握手を求めてきたりするんだぞ。しかも寮の部屋はコイツと同室だった。同じ部屋のせいで毎日よく話しかけられてきたのは憶えている。

 

「イチカはどこ出身なんだ?」

 

「に、日本。」

 

「ニホン?どこの村だそれ?」

 

「い、いいだろう別に。ザックスは?」

 

「俺か?俺はゴンガガだ!」

 

「ゴンガガ?どこだそれ?」

 

「おっ、仕返しか?」

 

正直言って言い返すのが大変だと当時は感じていた。でも、俺から真っ向に話をかけてくれた人間は久しぶりだとも感じられた。俺をスカウトしてくれたツォンさんは何を考えているのかわからない人だったし。

 

話していくうちに俺と彼は次第に仲良くなっていった。ザックスは色々教えてくれた。

 

英雄セフィロスのことについて。

 

そのセフィロスに憧れて自分の村を出たこと。

 

いつかセフィロスのような英雄になってゴンガガを活気盛んな村にする夢。

 

成り行きで会社に入った俺には考えられない事だった。

 

 

「すごい夢だな。」

 

「イチカもセフィロスに憧れてソルジャーになったんだろ?」

 

「いや、俺は仕事が欲しかったから入っただけだよ。」

 

「えっ?マジッ!?」

 

2nd昇格試験前の夜になって、俺は親友となった彼に自分のことを打ち明けた。俺が異世界から来たことももちろんだけど興味津々で聞いていた。

 

千冬姉の存在。

 

俺が周囲から彼女のお荷物として見られていた日々。

 

その友人である篠ノ之束の開発したISとその後の世界について。

 

途中から理解しているのか怪しかったが彼はうんうんと言いながら悲しそうな顔をする俺の肩を叩きながら言ってくれた。

 

「いいじゃんか、姉貴の方がすごくたってさ。イチカはイチカで今じゃソルジャーだぜ?それになんだよ、姉貴の友達。そんな女にしか使えない欠陥品発表して失踪するなんてとんでもないじゃんか。」

 

「実家飛び出したお前が言うことか?」

 

「俺は英雄になったら帰るからいいんだよ!!よぉ~し、こうなったら何が何でも英雄になってやるぜ!イチカも一緒にな!」

 

「なんでそういう風になるんだよ!?」

 

「いいだろ?向こうに帰った時姉貴たちに英雄になったんだぞって。そうと決まれば明日の試験に備えてトレーニングだ!!」

 

その後、あまりにも騒がしくしたもんで隣部屋のカンセルに怒られたのはいい思い出だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、俺たち二人は無事に2ndに昇格した。

 

本当なら二人で1stソルジャーであるアンジールさんの所に配属されるはずだったが俺は何故か急遽変更となった。

 

当時はよく知らなかったけど科学部門が俺に興味を持ったらしく、一時宝条博士の機関で検査を受けることになった。科学者と言えば束さんという例があったが宝条博士は彼女以上にマッドサイエンティスト特有の風格をしており、俺からとれたデータを見るたびに不気味な笑みを浮かべていたのが印象的だった。ちなみに検査の内容だけど薬で眠らされたことが多いせいで何をされたのかはよく知らない。

 

その検査を受け終えた後ようやく配属されることになったのだが配属先を知った後は、顔が真っ青になった。

 

「俺の所へ入ったのがそんなに不満か?」

 

配属先で顔色の悪い俺を見ながら英雄さん(セフィロス)は腕を組みながら言う。いやいやいや、あんたの所へ配属されるなんて誰も思わないでしょ!?

 

後にソルジャー部門のラザード統括に聞いて分かった事なんだけど、俺が彼の所へ配属させるように根回ししたのは宝条博士らしい。

 

「あの男に目を付けられるとは、いい玩具にされているのかもしれんな。」

 

セフィロスさんは、俺を哀れむかのような目で慰める。本人も博士があんな顔をするのは珍しいそうだ。

 

その後、彼の下で働くようになってからザックスと再会したのは、ウータイとの戦争が終結してからしばらくだった。いつの間にかガールフレンド作ってやるなと思っていたけど、同時に重い経験をしたのだと彼の背中に背負われているバスターソードを見て感じた。

 

 

俺は、セフィロスさんの下でソルジャーとして動き続けた。彼の実力は本物でどんな凶暴なモンスターだろうと呆気なくただの肉片へと変わっていく。俺は、周囲に被害が広がらないようにその後始末を行っていた。ジェネシスさんがホランダー博士と結託してミッドガル中がモンスターだらけになった時と言い、世界中にジェネシス・コピーが発生した時と言い、俺は自分の実力がちゃんと上がっているのか不安になることがある。だって、あのセフィロスさんの配属で大半の敵は本人が倒しちゃうんだぜ?時々稽古をつけてもらうこともあるんだけど、勝ったことはない。

 

そんな不安を抱えたまま俺は、彼とザックスの三人でニブルヘイムの魔晄炉の調査へ行くこととなった。ザックスは1st、俺は今だに2nd。いつの間にかすごく差が開いちゃったな。

 

ちなみにこの作戦の一般兵には友人であるクラウドもいた。今回向かう村は彼の出身地だそうなのだが何故か彼は、村で一度もマスクを外さなかった。まあ、理由は何となく理解できるけど。

 

村の旅館で休んでいるとき、セフィロスさんはぎこちない表情をしている俺に声をかけてきた。

 

「最近浮かない顔をしているな、何かあったのか?」

 

「・・・・いや、ちょっと。」

 

「ん?」

 

「俺って・・・ソルジャーなのに弱いんじゃないかって。何時もセフィロスさんに頼りっぱなしで。」

 

「何故、そう考える?」

 

「ザックスは、俺とは比べ物にならない経験を積んで1stになりました。けど、俺は・・・・」

 

「・・・・フッフフフ。」

 

俺の悩みに対して彼は、突然笑い始めた。

 

「そんなに変ですか?」

 

「クックククク・・・・そんなことを考えていたとは意外だったのでな。」

 

「はっ?」

 

「時々つけている稽古、俺が手加減していると思っていたのか?」

 

セフィロスさんは、からかうように聞く。今まで彼の下で働いていたけどこんな表情をするのは意外だった。

 

「いつも加減していたんですよね?」

 

「残念だったな、いつも本気だ。正直言って本気を出すのはジェネシスとアンジールと三人でふざけていた時ぐらいだ。」

 

「ってことは・・・」

 

「お前の実力は、入ってきた時よりも確実に上がっている。その内クラス1stに昇格できるだろう。今の神羅の現状で推薦するのは時間がかかるがな。」

 

「ありがとうございます!」

 

今までの不安が和らいだのか俺は、彼に頭を下げて礼を言う。

 

「まだ推薦できるとは言っていないぞ?それにしばらくは調査でこの村にいなくてはならないのだからな・・・・」

 

そう言うとセフィロスさんは、窓からニブルヘイムの風景を眺め始める。

 

「・・・・・」

 

「どうしたんですか?」

 

「この風景・・・・・初めてきたはずなのに何故か知っているような気がする。」

 

この時の彼の言葉に対して、俺は偶然だろうと思っていた。

 

 

 

でも、その後・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う・・・・うぅ・・・・・」

 

走馬灯を見ていたのか、俺は意識を取り戻した。

 

そうだ。トラックから降りた後クラウドを隠して神羅兵の大軍を相手にしていたんだっけ。

 

「痛ぅう・・・・」

 

俺は、痛みに耐えながら体を起こす。胸には何発も銃弾が当たったようだが急所は外れているらしい。落としたロングソードを探すと崖から落ちた際に折れてしまったのか剣先から半分が無くなっている。

 

「そうだ!ザックスは!?」

 

俺たちは、神羅兵たちを相手に戦っていた。そして、ヘリからのミサイルで俺は足を踏み外して崖から落っこちたんだ。すでに辺りは静かで戦いが終わっているように見える。

 

「ザックス!クラウド!」

 

俺は折れた剣を崖に突き刺しながら登っていく。崖の上に上ると銃弾で撃ち抜かれたのか倒れている二人の周囲の水たまりは血の色に染まっていた。

 

「ザックス・・・・クラウド・・・・」

 

俺は、変わり果てた二人の友人の姿に絶望する。

 

 

 

『何をするにしてもまずは金だよな。』

 

『イチカ、決めたぜ!俺は「なんでも屋」をやる!面倒なこと、危険なことを報酬次第でなんでもやるんだ!』

 

『クラウドの魔晄中毒もいつかきっと治る。そしたら、三人でやろうぜ!なっ!』

 

 

 

 

「・・・・・」

 

数時間前までミッドガルに就いた後のことを話していたザックスは額から血を流しながら俺が来たことに気が付く。

 

「ザックス!」

 

「・・・・クラウドは・・・?」

 

「・・・・」

 

俺は、少し離れた場所でこと切れているクラウドを見る。ほとんど声しか出せなかったのに何故、ここまで来られたのだろうか。隠れていれば銃撃を浴びずに済んだのに。俺の反応を見てザックスは、残ったのが俺だけだというのを理解してしまったようだ。

 

「・・そ・・・・か・・・」

 

ザックスは、俺の折れたロングソードを見る。そして、自分が握っていたバスターソードを持ち上げて俺の前に出した。

 

「イチカ・・・・・」

 

「なんだ?」

 

「俺の・・・・誇り・・・・夢・・・・・受け取ってくれ・・・」

 

俺は、彼の手をそっと握りしめた。

 

「無茶いうよな・・・・・俺にはそんな器ねえよ・・・」

 

俺は、弱気になって答える。

 

守れなかった。友達である二人を。俺だけが生き残ってしまった。俺はあの時の無力だった自分と何も変わらない。

 

だけど、ザックスはそんな俺を力強く寄せて答えた。

 

「お前が・・・・俺たちの生きた証だ・・・・・」

 

「ザックス・・・・」

 

ザックスは、俺にバスターソードを託すとそのまま息を引き取ってしまった。

 

雨は強くなり、一人になった俺は剣を強く握りしめながら叫んだ。

 

「俺は・・・・・俺はああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一年後

 

二人を手厚く葬った後にミッドガルへと辿り着いた。

 

俺は、生きていたことが悟られないよう顔を変えることにした。

 

2ndとはいえ、セフィロスの部下だった俺だ。生きていたと知ったら神羅は血眼になって俺を探すだろう。しかし、そうそう変えようという顔は選べな・・・・

 

 

『俺も二人みたいにソルジャーだったらな・・・・・』

 

 

そうだ。

 

一つだけある。神羅にバレにくい顔が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッドガル七番街にある病院

 

「では、包帯を取ってください。」

 

医師に言われて、俺は顔の包帯を取る。そして、看護婦から鏡を受け取って自分の顔を見てみた。

 

「クラウド・・・」

 

そこには彼の顔があった。俺は、クラウドの顔を借りることにした。クラウドは治安維持部門の人間だが何しろ統括があのハイデッカーだ。管理が杜撰でバレにくいはずだ。

 

「お望みの顔にはなりましたか。」

 

「あぁ。ありがとう。」

 

俺は医師にお礼を言い、料金を渡す。

 

「念のために言うがこの手術のことは誰にも言わないでくださいよ。」

 

俺は念押しに言い、医師に賄賂を渡して病院を後にする。

 

「さて・・・・これからどうするか。」

 

俺は背負っていたバスターソードを手に取り、街を見つめる。今回の整形手術のせいで稼いでいた金はすっからかんになってしまった。

 

「・・・・・・とりあえず、『なんでも屋』でも始めるか。」

 

そう言いながらとりあえずスラムの方へ行ってみることにする。これで元の世界に戻れたとしても誰も俺のことわからないだろう。

 

「俺は元ソルジャー クラウド。クラス1stだ。」

 




予定では三本目で本編に入る予定。
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