偽クラウド物語~FFⅦ×IS~ 作:シャントット帝国
<元ソルジャーが報酬次第でどんな依頼も引き受けます。 なんでも屋>
なんでも屋の一日は、俺がスラムの駅でこの看板を持ちながら客が来るのを待つことから始まる。
最初は<モンスター退治 引き受けます>って宣伝したんだけどスラム街では自警団が頑張っているみたいでほとんど依頼が来なかった。仕方なく妥協して報酬次第でどんな依頼でも引き受けますという看板に変更することにした。
この看板にしたおかげで多少は依頼が来るようになったがほとんどが機械の修理やらペットの捜索やらスラムの店の手伝いやらでソルジャーとしての経歴が役に立つ仕事がほとんど舞い降りてこない。子供たちからは「ソルジャー!ソルジャー!」って結構気に入られていたから嫌な気もしないけど。料理店でバイトした時はその店の店主が「家の店で働かない?」と誘われたこともある。
そんで今日は七番街スラムの駅で店を出すことにした。
天気が雨だったこともあり、俺は合羽を被り看板を持って客を待つことにした。
「兄ちゃん、こんな雨の中突っ立っているなんて大丈夫かい?」
駅員のおっさんが見回りの際、俺を見るなり心配そうに声をかけてきてくれた。
「生憎、寝泊まりできる場所をまだ確保できていないんでね。それに宿に止めてもらうにしても金が必要だ。」
俺の答えを聞くとおっさんは、訳ありだと判断したのか水筒に入っていたお茶を紙コップに入れて俺に渡してくれた。
「じゃあ、すまねえけど俺の愚痴でも聞いてくれねえか?列車が来るまで特にすることないんでな。30分15ギルでどうだ?」
「15ギルか。話してみなよ。」
お茶を差し入れしてくれた礼も含めて俺は、30分ぐらいおっさんの愚痴に付き合ってあげることにした。それに30分付き合うだけで15ギルは割といい方でスラムなら宿代ぐらいにはなる。このおっさんこのスラムの駅員になって10年以上経つらしいがいつまでも出世できないでいること悩んでいるらしい。まあ、このミッドガルは神羅の社員ですらこのスラムに住まなくちゃいけないほど経済格差が大きいからな。特にウータイとの戦争で治安維持部門とソルジャー部門でかなり予算を喰ったからその皺寄せが今も響いている。
俺がニブルヘイムの任務に行く前は、ラザート統括がホランダー博士と内通していたことが公になったせいでハイデッカーがソルジャー部門を治安維持部門と統合させようと必死だった。統括なき後、仕切っていたセフィロスもいなくなったことから統合されてしまったのかもしれないな。尤も統合したところで予算が削られるわけでもなく、大半が奴の懐に入るだけだと思うけど。カンセルたちの給料も結構引かれたんだろうな。
「んなわけで家では嫁にも文句言われるしさ、参ったもんよ・・・・・ところで兄ちゃん、そのでっかい大剣を見るところ軍人さんかい?」
「元ソルジャーだ。今は、やめたけどな。」
「あら、ソルジャーといや軍人のエリートさんだろ?」
「職務がブラックすぎてね。文句言ったらクビにされたんだよ。」
「おぉ・・・・お宅も大変なんだな。」
そんなこんな話しているうちに離れたところから列車の走る音が聞こえてきた。
「おっ、もうこんな時間か。付き合ってくれてありがとな。」
列車が到着すると同時におっさんは俺に代金を置いて駅のホームへと戻っていった。
「・・・とりあえず飯でも食いに行くか。」
俺は、受け取った15ギルをしまうと店を畳む準備をする。どのスラムにも店はあるからこの七番街にも食事処の一軒か二軒はあるだろう。
しかし、荷物をまとめて剣を手に取ろうとしたとき背中に誰かがぶつかってきた。
「きゃっ!?」
「ん?」
後ろを振り向くと、買い物袋を落とした女性が尻餅をついていた。俺は落ちている品物を買い物袋に戻して彼女に渡す。
「大丈夫か?」
「すみません。傘持ってくるの忘れていたので急いで帰ろうとしたら・・・・・・クラウド?」
「えっ?」
その名前を聞いて俺は、ゾッとする。
クラウドの知り合いは、あの日にニブルヘイムでセフィロスに殺されたはずだ。それに生き残りがいたとしても神羅が証拠を抹消するために粛清してしまったはず。最悪、俺たち三人のように宝条博士の実験サンプルにされた可能性すらある。
女性を見る限り、神羅関係者ではなさそうだ。じゃあ、誰?
でも、どこかで見覚えが・・・・・・見覚え?
『調査に来たソルジャーってあなた?』
『大丈夫だからパパ。強~いソルジャーが三人もいるのよ。』
『セフィロス・・・ソルジャー・・・魔晄炉・・・・神羅・・・ぜんぶ、全部大っ嫌い!!』
『ピンチの・・・時には・・・来てくれるって、約束したのに』
『ティファです。よろしくお願いします。』
「ティファ?」
俺は、自分の記憶を遡りながら彼女の名前を思い出す。
彼女は、ティファ。
俺がニブルヘイムの調査に行った際に出会った村のガイドを務めていた娘で村長の娘さんだ。でも、彼女はあの時・・・・・そう言えば村に彼女の師を名乗るザンガンと言う武道家がいたな。もしかして、彼に助けられたのか?
「クラウド?クラウドなんだよね?」
ティファは、俺をクラウドだと思って声をかけてくる。
「う、うん。その通り、俺はクラウドだ。」
俺は、混乱している自分を落ち着かせながら答える。
まずいことになった。
俺がクラウドの顔にしたのは、ニブルヘイムがセフィロスに焼き払われ、生き残りもいないから顔バレする心配が少ないと考えていたからだ。まさか彼女が生きていたなんて。
「本当にクラウドなのね!こんなところで会えるなんて!!」
ティファの嬉しそうな顔を見て俺は罪悪感を感じる。
「あぁ、久しぶりだな。」
「何年ぶりかな?」
「ご、7年ぶりだな。」
実際は5年ぶりだが俺はあえて7年ぶりだと訂正した。
確かに5年前、俺たちはニブルヘイムに来て彼女に会った。
でも、クラウドは彼女の前で一度もマスクを外さなかった。聞かなかったけど夢に破れた自分の姿を見せたくないと思っていたからだろう。だから、実際ティファは、クラウドがニブルヘイムに来ていたことは知らない。
「本当に久しぶりね。」
「そうだな。」
どうやら怪しまれなかったようだ。ティファの反応を見て俺は少しホッとする。
「でも、こんなところで何をしているの?」
「なんでも屋をしている。」
「なんでも屋?ソルジャーになる夢は?」
「・・・・やめたんだ。色々あってな。」
俺は、歩きながら彼女に違和感を与えなように話す。任務中、たまたま聞くことができたんだがクラウドは元々ソルジャー志望だった。でも、適性検査で魔晄耐性がないことを理由に不採用となり、一般兵になるという彼女には絶対見せたくない過去があった。
だから、俺とザックスの経歴を合わせて
・ニブルヘイムには来ていない。
・自分がソルジャークラス1stになったのは事件の後だった。
・なってからしばらくして回収された2nd(俺)に事件の実態を聞いてショックを受ける。
・その2ndも精神崩壊で退職し、神羅と言う組織に愛想をつかしてやめて現在はなんでも屋をしている。
と言う風に説明した。
「そうなんだ・・・」
「俺も事件の話を聞いたときはショックを受けたよ。」
俺たちはそんな会話をしながら『セブンスヘブン』というバーの前に来た。彼女は現在この店の看板娘なのだとか。
「入って。丁度、お店開けるところだから。」
彼女に言われて俺は来ていた合羽を柱にかけて店の中に入る。中に入ると4歳ぐらいの女の子が彼女にお帰りを言おうとするが俺の姿を見るや物陰に隠れてしまった。
「大丈夫よ、マリン。クラウドは私の知り合いだから。」
あの女の子はマリンと言う名前らしい。でも、あんな小さい女の子がこんな飲み屋にいるなんて・・・・親は一体どんな奴なんだ。マリンは、ティファの後ろに隠れながら俺の前に連れてこられた。俺は怖がらせないようにしゃがんで挨拶をする。
「初めまして、俺はクラウド。ティファの知り合いだ。怖がらせてごめんな。」
俺は、お詫びのしるしとして昨日の仕事でもらったチョコボの顔を模した棒付きキャンディーを渡す。彼女はありがとうと言うとバーの厨房の方へと去って行く。俺ってそんなに怖いのかな?
「ごめんね。マリン、知らない人には恥ずかしがり屋だから。」
「気にしないさ。」
俺は、腹が減っていたのでとりあえず料理を注文して食事を取ることにした。
「・・・・・・あのね、クラウド。」
「ん?」
「なんでも屋ってどんな仕事も引き受けるんだよね?」
食事をしている俺にティファは、少し悩んでいるかのような顔で聞く。
「あぁ、報酬次第だけどな。何か困ったことでもあるのか?この店のことか。」
「そういうわけじゃないんだけど・・・・実はね」
「おーい、ティファ!」
彼女が何か言いかけた時、店の入り口からでかい声が響く。振り向くと入り口から俺より一回りでかく、右腕が銃の大男が入ってきた。男が入ってくると同時に隠れていたマリンが嬉しそうに向かっていった。
「父ちゃん、お帰りなさい!!」
「ただいま~~!!いい子にしてたか?」
「うん!」
「そうかそうか~~よしよしよし~。」
どうやらこの大男が彼女の父親らしい。男はマリンを肩に乗せると俺たちのほうへとやって来た。
「うん?」
男は、俺の前に来るや表情が険しくなる。
「なんだ?俺の顔に何かついているのか?」
「魔晄の匂いがするな。お前神羅の人間か?」
男はマリンを下すと更に近づいてくる。いや、あまり嗅いだことないけどそんなに匂うか?魔晄って。
「元ソルジャーだ。今は神羅をやめてスラムで『なんでも屋』をやっている。」
「悪いが痛い目にあいたくなけりゃ、とっとと帰んな。ここはお前のような人間が来る場所じゃねえ。」
そう言うと俺に右腕の銃を突き付けてきた。銃にはいい思い出がないから向けないでほしいもんだ。っていうか何だこの男。神羅に恨みでもあるのか?
「わかった。引き上げるからその銃を下ろしてくれ。ティファ、勘定を頼む。」
俺は、代金を置いて店から出ようとする。あまり一緒にいると彼女に違和感を持たれる危険性がある。それならこの男の言う通り退散した方が良さそうだ。
だが、そんな俺の考えに反してティファは、慌てて男を制す。
「バレット、落ち着いて!クラウドは私の幼馴染なの!!」
「なに?」
「明日の作戦、一人でも多い方が成功の確率上がるでしょ?だから、彼に『アバランチ』の仕事を紹介しようと思ったの!!」
「アバランチ?」
「お、おいティファ!?」
彼女の言葉に対して大男バレットは、顔色を変える。俺も『アバランチ』の単語を聞いて驚いた。
『アバランチ』といえば反神羅思想を掲げるテロリスト集団だ。でも、確かジュノンにおけるプレジデントの暗殺失敗を境にリーダーが暗殺されたとか大打撃を受けたとか聞いたはずだけど。
「クラウド、『なんでも屋』ならどんな依頼でも引き受けてくれるんだよね?」
「ティファ!まさか、コイツに明日の作戦に参加させよっていうのか?勘弁してくれよ!!神羅の人間なんだぜ!?」
バレットは俺をじろじろ見ながら言う。この男、どれだけ神羅が嫌いなんだ。でも、流石にテロ活動への参加はやめておいた方がいいな。目立つ行動をすると神羅に目を付けられる。
「でも、人手不足でしょ?ソルジャーなら魔晄炉の中も多少詳しいはずだし、雇っても損はないはずよ。」
「うっ。そりゃあ、そうだけどよ・・・・」
二人は小声で話しているが丸聞こえだった。魔晄炉という単語が出た時点で何をするかはある程度察しがつく。本当にテロを起こす気だ。
「おい、聞こえているぞ。言っとくけど少ない報酬だったら引き受けないからな。」
俺は、釘を刺すように言う。リスクを負うならそれなりの代償を払ってもらわなくちゃ困る。神羅に追われる日はあの時で沢山だからな。
「むう~~~~~」
「いやならいいぞ。俺は別にこの店に寄っただけだからな。」
俺は、剣を背負って店を出ようとする。
「・・・しょうがねえ、2000だ!2000ギルでどうだ!!」
入口から出る直前、バレットは不満ではあるものの報酬の金額を挙げる。
2000ギルか。結構いい報酬だな。でも、話を聞く限り魔晄炉を爆破するつもりなんだろうな。
けど、神羅に対しては拾ってけれた感謝とかけがえのない親友二人を奪った恨みがある。それにティファを騙してしまっている罪悪感もあった。
仕方ない。今回だけは引き受けよう。作戦が終わったら別れればいいだけのことだし。
「・・・いいだろう。何をすればいい?」
その日の夜、久しぶりに千冬姉の夢を見た。
今の俺を見たら失望するんだろうな、見損なったって。
次回でやっと原作開始?