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それでは、どうぞ
ピピッ...ピピッ...
規則的な電子音が正しく聞こえ、ツンとする消毒液の匂いがする
まだはっきりとしない意識の中、私は重い瞼を開いた
すると視界にはにはぼんやりと白い天井が映った
「優ちゃん!?大丈夫?」
「大丈夫か?」
そして、少女と少年が私の顔を覗き込む
えっと…この容姿と声、少女の方は桔梗ちゃん、だよね。
でももう1人の少年は誰かはわからない…あ、でも確かDクラスの教室にいた気がする。同じクラスの人、なのかな?自己紹介、最後まで聞いてなかったから名前は分からないけど…
とにかく、返事をしないと。
そう思いながら私は唇を動かした
「き、きょ、ちゃ」
だけれど、喉がカラカラになっており掠れた声しか出なかった
そしてその事に気づいた桔梗ちゃんが素早くストロー付きの水が入ったコップを私の顔の前に近づけた
「取り敢えずこのお水飲んで!」
そう言いながら、ストローの口を私の口につける
私は聞きちゃんに申し訳ないと思いながらも取り敢えずお水を飲んだ。
「ふぅ、ありがとう。桔梗ちゃん」
「優ちゃん3日も目が覚めなかったんだよ。心配したんだからね。…でも、目が覚めて本当によかった…!!」
少し涙ぐみながら嬉しそうに微笑みながら彼女はそう言った。
3日も寝てたんだ…有る意味凄いな。
「心配かけちゃってごめんね。ありがとう」
「ううん、…あ、そうだ!私、優ちゃんが目を覚ましたこと看護師さんに伝えてくるね!色々聞きたいことがあると思うけど…それは綾小路くんに聞けば答えてくれると思うから!」
そう言うと、すぐ戻るね!と、最後に一言言い病室から立ち去った
すると自然と少年と目が合う
…えーと、今この場には私と少年以外誰もいないからたぶん、桔梗ちゃんが言ってる綾小路くんって今目が合ってる彼のことだよね。
そう思いながら私は引き続き彼を見ていると彼も私を見てくる。
その状態から数秒程経過して沈黙の状態が続いた
…これは、えーと話しかけて良いんだよね?何か話しかけずらそうなオーラがするんだけど…
それにしても綾小路くんって無表情だね。数奇からずっと表情に変化が無いよ?何を考えてるのか全く分からない。でもいいなぁ、綾小路くんババ抜きとか強そう。
…それに、綾小路くんって何かめちゃくちゃ頭良さそうな顔してる。
私がそう思っていると、彼が口を開いた
「あー、俺は不留美と同じクラスの綾小路清隆だ。よろしくな」
あ、やっぱり同じクラスだったか。よかった!これでクラス違かったら私は知ったかぶってる人になってたよ。
「あ、やっぱり同じクラスだったんだ。なんか見覚えあるなーって思ってたから。こちらこそよろしくね綾小路くん。…それと、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「なんだ?」
「私のこと、皆に何て言ってる?倒れて病院にいること知ってたりする、かな?」
私が最後意識を手放す前に先生に言った言葉、聞こえてたら良いんだけど…。須藤くん、大丈夫かな
すると、綾小路くんは淡々と私の質問に答える。
「否、不留美が思っているようなことにはなってないぞ。一応表向きには風邪で寝込んでるっていうことになってる。この事を知ってるのは教師と須藤と、高円寺と俺と櫛田だけだ。…だが、教室で起こった出来事は防犯カメラに映ってたから教師も須藤が蹴った椅子が不留美の頭に当たったという事については知っているみたいだぞ。…たぶん後で話を聞かれると思うが」
「そっか…うん、わかった。教えてくれてありがとう」
防犯カメラ…そんなものが教室にあったんだ。…でもそれじゃあ、ずっと私達の行動監視されてたってことだよね?…びっくりしたな。普通教室に防犯カメラなんて無いと思うんだけど…でもまぁ、政府が運営してる学校だからそれが当たり前なのかな?
…でもそれなら有るなら有るって言って欲しいよ。教室に防犯カメラあること気づいてる人何ているのかな?
って、あれ?ちょっと待って。クラスの皆に知らされてない事をどうして桔梗ちゃんと綾小路くんは知っているんだろう。あの場に居て私を職員室まで運んでくれた高円寺くんと椅子を蹴った須藤くんはわかるけど、いつ知る機会があったんだろ
そう思っていると、私の考えている事が分かっているみたいに綾小路くんは言葉を発した
「俺と櫛田がどうして不留美が倒れて病院にいるのかを知ってるかと言うと、高円寺が櫛田に状況を説明してクラスの奴らが騒ぎ立てたりしないようにフォローして欲しいと相談して来たんだ。」
あぁ、なるほど。そういうことか。それじゃあ桔梗ちゃんと高円寺くんに感謝しないとな
「そうなんだ…それで綾小路くんはどうして?」
「…俺は櫛田と高円寺がその会話をしている所を偶然聞いてな、それで知ったんだ」
淡々と無表情で話す綾小路くん。
「ふぅん、偶然、ね」
私は納得したように思わずポツリと言った。確かに良くあることだよね、偶数って。私なんて偶然で1日に2回も鳩の糞落ちてきた事あるし。
「へぇ、そうなんだ。綾小路くんにまで迷惑かけちゃったね。でも、ありがとう。皆に知られてたらきっと須藤くんが教室に入れづらくなってたと思うから。…後で高円寺くんにもお礼を言わないとな」
「あぁ。…そういえば高円寺、先程までお見舞いに来てたんだぞ。正直言って高円寺がお見舞いに来るとか、不留美を職員室まで運ぶとかそういう事はしないやつだと思ってたから少し意外だったが。…不留美は高円寺と以前からの知り合いだったのか?」
高円寺くん…お見舞いにも来てくれたんだ。…ますますお礼を言わないといけないな。
それにしても流石綾小路くん。鋭いところ突くね。
私は綾小路くんの質問に答えた。
「うーん、それが正直言ってわからないんだよね。あ、2年前に会ったことがあるって言ってたんだけど思い出せなくてさ」
「…そうか」
綾小路くんがそう言うと、
ガラガラ
ドアが開いて桔梗ちゃんと看護師さんとお医者さんが病室に入ってきた
「遅くなってごめん!ちょっとバタバタしてたみたいで連れてくるの遅くなっちゃったけど連れてきたよ」
「ありがとう」
私は桔梗ちゃんにお礼を言い、先生の診察を受けた。
***
そして、綾小路くん達と話してから約3時間程経った頃、須藤くんと茶柱先生、それから星野宮先生が病室に来ていた。
「具合は大丈夫か?不留美」
無表情で淡々とそう言う茶柱先生。
「はい、検査の為一応2日ほど入院するそうですがとても元気ですよ」
ニコリと微笑みながら元気アピールをしていると、バッと私の目の前に星野宮先生が現れた。
「もう、心配したのよ~?入学式前に保健室に来て、具合良くなって教室に行ったと思ったら今度は頭を打って職員室にくるんだもの。私もうびっくりよ!」
明るく手を広げてそう言う星野宮先生。
確かに、星野宮先生にしてみれば入学前に保健室に来るだけでも極稀だと思うのに、更に入学式後に頭打ってくるなんて絶対に想像つかないと思うな。
私も全く想像つかなかったしね。
「すいません、何度もお手数かけてしまって。」
私が星野宮先生に向かってそう言うと、先程まで黙っていた須藤くんが申し訳なさそうに口を開いた
「不留美、その…すまねぇ」
「気にしてないから大丈夫だよ、須藤くん」
心配をかけないようにそう言うと、茶柱先生が一歩前に出た
「目覚めたところ早速で悪いが不留美、教室での出来事は防犯カメラの映像を見て知っているが一応の確認だ。須藤が意図的に椅子を蹴り、それが不留美の頭部に当たったで間違いないか?」
…まぁ、一応間違ってはいないけど…
そう思いながら私はチラッと須藤くんを見た。
すると、彼は納得が行ってないような表情をしていた
「…意図的じゃねぇよ、少し足で椅子を叩いただけだ。不留美に当たったのも偶然だぜ」
そう須藤くんが言った瞬間、茶柱先生がニヤリと笑った。
「ほぅ、偶然、か。確かにお前は軽い気持ちでやっただけかもしれない。しかし、実際には不留美の頭にお前が蹴った椅子が当ったのは事実だ。事実がある限り偶然で済まされる問題ではないのだ」
その言葉に、星野宮先生も便乗する形で乗った。
「そうよ、残念ながらこれはね、偶然なら仕方ない、で済まされる問題じゃないの。彼女は3日も意識を失っていたもの。須藤くん、貴方は退学になるかもしれないのよ?」
「!!…退学……」
星野宮先生の言葉を聞いた瞬間、須藤くんは大きく目を見開いて呆然そう呟いた。
私はその須藤くんの姿を見て、少し感心した。
須藤くん、ちゃんと反省してるんだな。
私が彼に名前を聞いたときや自己紹介の時の彼からの様子を見るに、前までの彼だったら此処で何の躊躇いもなく反論していたと思う。
退学なんて冗談じゃない、とか、もしくは暴れ回っていたかもしれない。自己紹介を断って椅子を蹴った時みたいに。
でも、今はそれらしき様子は見あたらない。俯いて黙ってはいるけど、決して暴れる様子は見受けられないのだ。だから、少なくとも少しでも反省している、申し訳ないと少しでも思っているんだと思う。
そう思っていると、茶柱先生が私に追い討ちをかけるように言ってくる。
「そうだな。それ相応の処罰は受けてもらうぞ。…それで不留美、私が先程言った事に間違いはないか?」
…やばい。どうしよう、このままだと須藤くんが危険だ。私の言葉で彼のこれからの運命が決まってしまう。少し甘かったな。…どうしよう
「…不留美、助けてくれ。…俺は、俺は謝ったんだ。此れからは気をつける。だから助けてくれ」
そう必死に私に頼み込んでくる。そして教師2人はその様子を見たままなにも言わない。
…私は、須藤くんを許したい。確かに須藤くんは椅子を蹴って私の頭に当てた。でも、悪気が無かったのは知ってるし謝ってくれた。
それに、全て須藤くんが悪い訳じゃない。だって、あの場所に座っていた私にも非はある。大前提にまず、私があそこに居なければ椅子は当たらなかった。
そして、きっと私が3日間も意識不明で入院してなかったら須藤くんに処罰を受けされる、とか、そういう話にはまずならなかった筈だ。
…この学校に入ったら何か変わると思ったのに。やっぱり不幸なことは起きてしまう。しかも今回は、否、今回も周りの人を巻き込んでしまった。
私は罪悪感で胸が一杯になり唇を噛み締めた。
…後悔は後だ。その前に須藤くんの処罰の事をなんとかしないと。
でも、例え私が許したとしても、須藤くんの処罰が軽くなるかどうかはわからない。何故なら、私が3日も意識不明で入院しちゃってるから。…でも、策はあるよ。一応ある。須藤くんが退学にならない方法はわかる。
でも、もし私がそれを実行して行ったとしても須藤くんの根本的の部分が直るかどうかは分からない。
須藤くんの最大の短所を直すには…
「…茶柱先生、その解答する前に須藤くんと少し話がしたいです。」
「ほぉ?いいぞ」
不適な笑みを浮べながらそう言う。
茶柱先生の言葉を聞いて私は須藤くんに質問を投げ掛けた。
「…ねぇ、須藤くん。須藤くんはどうして椅子を蹴ったの?」
「…んなのむしゃくしゃしてたからだ」
「なるほど、そっか。むしゃくしゃして、モノにあたったと。…じゃあさ、もし、本当に今回のことで須藤くんが反省してるのなら、此からは感情の任せに行動しないで。じゃないと、一番最後に後悔するのは須藤くん自身になっちゃうよ。それは今回の事で良くわかったはず。」
私は須藤くんの目を見ながらそのまま話を続ける。
「でも、それを直すのにはたぶん相当の努力がいると思う。須藤くん自身が耐えなくちゃいけないから。それはきっと、簡単なことではない。その気持ち、良くわかるよ。私も、私もそうだったから。私もそんな時期があったから。」
最後の、『私もそんな時期があったから』その言葉を言った時、須藤くんは少し動揺した。
「…もし、何か耐えられなくなったら、耐えられなくなる前に誰かに、私に相談して。必ず須藤くんの力になるから。少しで良い。少しで良いから感情を抑えてみて。そうすればきっと、毎日が楽しくなるはずだから」
「…もしよかったら約束してくれるかな?感情任せに行動しないって。…もし絶対にしないって約束してくれるのなら、須藤くんが退学にならないように必ずしてみせる」
…私のこの最後の言葉は、悪く言うと脅しになるかもしれない。
退学になりたくなければ私と約束をしろ、という脅しになるかもしれない。
私の言葉を聞いた須藤くんは、少し考えながらも答えを出してくれた。
「!………あぁ。わかった。約束するぜ、もう感情任せに行動しない」
「そっか、ありがとう。じゃあ、ちゃんと約束守ってね?守らなかったら許さないよ?」
「あぁ。勿論だ」
私はその言葉にニコリと微笑むと、茶柱先生達の方へ向いて言葉を発した。
「…茶柱先生、先程仰っていたことですが、間違っています」
「…なに?」
「須藤くんはただ、椅子を蹴ってしまっただけです。良くありますよね、わざとではなくてうっかり椅子に足が当たってしまったこと。…須藤くんがしたのはただそれだけですよ?」
「いや、だが」
「怪我した私がそう言っているんです。怪我をしてしまったのは私が不注意で自分から椅子に当たってしまった、つまり自業自得というだけです。…このようなこと、特に問題にはなりませんよね?」
…あの場の出来事は茶柱先生達の言動から見るにしっかりと防犯カメラに記録されていたはず。それにあの現場はクラスメイト全員が目撃している。だからわざわざ3日間も意識不明だった私に確認を取る必要なんてなかった筈だ。
だからたぶん、この学校は―――
私がそう思っていると茶柱先生が突然笑い出した。
「はははっ、お前は面白いな。そうだな、怪我をした本人であるお前がそういうならそうなんだろう。…よかったな須藤」
「本当にそれで良いの?不留美さん。貴女は怪我をしてるのよ?」
「そこまでだ。本人がそう言っているのだからそうなんだろ、これ以上我々教師が加入してはいけない」
「…そうね」
ふぅ、これで須藤くんは処分されないだろう。よかった。
「それじゃあ、我々はこれで失礼する。…行くぞ星野宮」
「えー、私はもっと不留美さんとお話ししたいもの!さえちゃんは先に行って良いわよ~?」
「ダメだ。この後報告があるだろう。行くぞ」
「ちぇ、わかったわよ。じゃあね、不留美さん。今度また会ったらじっくりとお話ししましょ!」
そう言って2人は病室から出ていった。
すると、須藤くんが私に近づいてきた。
「…不留美、ありがとな。色々…」
「うん、その代わりに約束忘れないでね!」
「おう、…そうだ、俺もこの後部活あるから行くぜ」
部活…あぁ。確か入学式の次の日に部活紹介があったんだっけ。行きのがしちゃったな。でも特に部活に入るつもりは無かったから良いんだけど。
「部活何処に入ったの?」
「バスケ部だ。バスケだったら誰にも負けないぜ?小さい頃からバスケ一筋やってんだ」
楽しそうに話す須藤くんを見てすごくバスケのことが好きなんだなと思った。
でも、なるほど。だからあんなに椅子の威力があったのか。…でも、羨ましいな。何か1つの事でも夢中になれるなんて。
「…へぇ、そうなんだ。凄いね!部活頑張ってね、バイバイ」
そう私は手を振りながら笑顔で言い、須藤くんを見送った。
〇〇〇
はぁ、これでよかったのかな…
実はあの時、須藤くんの短所を直す方法を考えていた時、もう1つ有る案が思いついていた。
そっちの方が遥かに効率的で、先程実行した案よりも余程良いものだった。
でも…あの場には先生がいたから。
あの場でそれを実行すると絶対にあの2人の先生の中で要注意人物になっていたかもしれないから。
出来るだけ目立ちたくないから。それに―――
私は、やり過ぎると絶対に最悪な状況がもっと最悪になるから。
だから、それは実行しなかった。
…須藤くん。君はちゃんと、正しい道に進んでね。絶対に、私のようになっちゃ駄目だよ。
私は、小さい頃のある出来事を思い出しながらそう思った。
どうでしたか?
もうすぐ夏休みに入りますので近いうちにまた投稿できると思います。
もしよければ、感想や評価などつけてくださると嬉しいです。
最後まで読んでくださりありがとうございました!