ハードディスクの奥で眠っていたので、何となく投稿。
推敲は投稿前に一回見ただけなので、誤字脱字多分ある。
続きは考えてないのでない。
誤字脱字は気にしない方向で。
日本国内とはいえ、南国特有のキツい日差しにじんわりと汗が滲んでくるのを全身に感じ、少々うんざりする。
40半ばもなれば、強烈な日差しは正直厳しい。
しかし、現在の日本においてそのことを口にした結果、非難の眼差しで遠まきにされるのもあまり趣味ではない。
部下とはいえ、可愛らしい少女から見目麗しき美女とまで幅広く表現できる艦娘達のジト目を想像してみると、こう何か背中にはしるものがある。
「うん。俺はMだったのか?」
「何をほざいてやがりますか、提督」
「うん、きつい一言ありがとう。報告書かい、大淀?」
きつい口調と眼差しを向けられているにもかかわらず、飄々とした態度を崩す風でもない様子に。
あきらめたようにため息をつくと、大淀は言葉をつづけた。
「はい。ただ今第2艦隊から第4艦隊まで3個艦隊、帰投いたしました」
「ご苦労様。今日のデイリー任務はこれで終了だね?」
手渡された書類をめくりながらの問いに、大淀は右手で眼鏡を直しながら答える。
「そうですね。事前にご指示いただいたように、損傷の大きい艦より順次入渠、場合によっては高速修復剤も併用しております」
「了解。さて、急ぎの書類は完了してるし、と。これで本日のお仕事は……」
「終わりではありません。ヒトナナマルマルまであと三時間あります」
さりげなく軍服の釦を外しながら立とうとしたのを、いつの間にか真後ろに立っていた大淀が両肩を抑えこむ。
「もうお仕事無いんだからいいじゃないか、大淀。真面目すぎるよ?」
「私が真面目なのではなく、提督が不真面目すぎるのです。もう少し提督としての自覚をですね……」
「ちょいまち」
眼鏡を光らせた状態で詰め寄ってくる大淀顔の前に左手を差し出し、右手で赤いランプが点滅する通信機の受話ボタンを押す。
「こちら提督さんだよ。どうしたんだい?」
『提督。もう少し真面目に応答してもらえないか?』
「無理」
後ろで大淀が顔に手をあてて天を仰いでいるのを感じながらも即答すると。
『……はぁ。もういい。とりあえず、提督。現在沖合にて哨戒行動中なのだが……』
「まてこら、長門」
『なんだ?』
「お前、改二になって余計に燃費悪くなったんだから、大規模戦闘時や遠海攻略時以外出撃すんなっつったろ?
なんで海に出てんだ、コラ」
『……ひゅーひゅー』
「口笛ふけてねーぞ、ビッグセブン」
とりあえず、ため息をついて軍帽をとって頭をかく。後ろでは同じタイミングで大淀もため息をついていた。
『な、長門さん、まだ許可が下りないんですか? 早くしないと……』
「まぁ、いい。とりあえず話は後だ。でんちゃん、どうたんだ?」
『し、司令官さん、いいかげんに電のことをでんと呼ぶのはやめるのです!』
「いや、仮名遣いわからんし」
『こっちこそ意味がわかりません!!』
明らかに面白がっている様子の提督から、大淀が後頭部に肘を入れながらマイクを奪い取った。
結構いいところに入ったのか、後頭部から少々煙を吹きながら執務机にうつぶせに倒れこんだままの提督をよそに、大淀はマイクを口元に動かした。
「電ちゃん、現状を報告してください」
『は。はい。正面海域で、訓練を兼ねまして哨戒行動中に損傷艦娘を発見。大破3、中破2、小破1です』
「艦種はどうですか?」
『天龍型軽巡2、睦月型駆逐艦4。遠征がえりの様子ですが、全員疲労及び損傷のため正確な応答はありませんでした』
「了解しました。至急泊地まで曳航してください」
『了解しました』
「あと長門さん」
『なんだ?』
「陸奥さんに連絡しておきます」
『な、なにぃ!』
無線機の向こうで絶叫する長門をよそに、大淀は眼鏡を光らせながら無線機の送受信ボタンから指を離した。
「提督、そろそろ起きてください」
「起きろってお前。結構きいたぞ、この打撃」
うつぶせのまま後頭部をさする提督に、大淀は言葉を続けた。
「ご指示を」
「よきにはからえ」
「仰せのままに」
いまだうつぶせのままの提督に一礼すると、大淀は足早に執務室を退出した。
「う~ん……」
大げさに押さえていた後頭部から手をはなし、そのまま軍帽を外しておさまりの悪い髪をかきまわす。
軍の規定からするとちょっと長めなのだが、本人は特に気にした様子もない。
「何がおきてっかねぇ? やっぱ、”ゲーム”とはちゃうか。長門も大淀も愉快な性格しとるしなぁ」
のっそりと起き上がると、窓に歩み寄る。
”ゲーム”の時と同じようにバー仕様になっている執務室内を窓辺から見渡すと、もう一度髪をかきまわした。
「はてさて、どうなることやら。寝て起きたら現実に戻るかとも思ったけど、そうなる風でもなし。よくある二次小説とかかねぇ?」
その割にはチートなんかねーけどな。
内心そうぼやくと、もう一度執務机にもどる。
ボタン一つで机と酒棚が入れ替わるという、妖精さんの謎仕様には一週間ほど新鮮味を感じていたのだが、さすがに半年もたてば慣れもあるし飽きても来る。
この半年で分かったことといえば、そう多くはない。
最後にプレイしていた”ゲーム”の状態と、今所属している泊地の内容が同じこと。
自分の階級が少将であること。
この世界に自身がなぜか溶け込んでおり、軍に関する知識、歴史等頭に入っていたこと。
大まかにわけるとこの3点なのだが、生来の性格上細かいことは放置する傾向にあるので、深くは探っていない。
また、メンタル的には一般人のつもりなので、マジもんの戦争はのーせんきゅーである。
その為か、この宿毛泊地に所属する艦娘たちは、いわゆる赤疲労での進軍、捨て艦、等々ブラックな艦隊運営を経験していない。
いないのだが、提督がこのような性格のため、艦娘たちが頑張っているのである。
特に嫁と大淀。
あと、他の鎮守府。
「……呉にはお中元届けたほうがいいかな?」
ぼそり呟かれた言葉にとりあえず首を横に振る妖精さんたちを尻目に、提督は再び酒棚から執務机に変更し、大淀からの報告を待つために椅子に腰をおろした。
1時間後。
報告書を片手に、大淀が入室してきた。
その表情が硬くこわばっているのを見て、提督はいやな表情を浮かべた。
「また、なにさね?」
「ブラックです」
「……あいた~」
やりきれない表情を両手で隠す提督に、大淀は吐き捨てた。
「根絶したと思っていたのですが。大本営の締め付けが甘かったようで」
「……たぶん、違うな」
眼鏡が光って眼(まなこ)は見えない状態の大淀であったが、その視線が自分を射抜いていることを感じ取った。
「頭のいいアホってのは、結局皆同じような考えになるんだよ。本人いわく、効率化を突き詰めていくと、ってさ」
「なるほど。では、大本営の甘さではなく、過去を過去と学ばず……」
「そーゆーこと。で、どこの所属だって?」
多少落ち着いたのか、光っていた眼鏡が通常モードに戻った大淀。
「彼女たちの認識票より、横須賀鎮守府と判明しました」
「やっぱ、頭のいいアホの仕業だったか」
「いかがいたしましょうか?」
表情は冷静そのものであったが、目の奥に感情の揺らぎがあるのを確認すると、提督は言葉を続けた。
「本人たちの希望は何かな? 可能なら直接聞きたいんだけど」
「会話できる状態ではありません。ひどくおびえている状態です」
「軽巡もか?」
「はい」
その言葉に、提督は腹をくくった。
「大淀」
「はっ」
普段と違う表情と雰囲気に、大淀は背筋を伸ばした。
「横鎮には哨戒途中で沈没途中の一個艦隊を発見、救助を試みたが全員大幅な損傷及び疲労により、戦死を確認。当方交戦中のため、認識票の回収のみ成功と、横鎮に連絡」
「はっ」
続けて内線電話をとり、工廠の番号をかける。
プッシュしてから2秒とたたずに、受話器があげられた。
「明石か?」
『はい、明石です。どうされました、提督?』
「今日からさかのぼって一か月の間に、”天龍型巡洋艦”と”暁型駆逐艦”を合計6隻、建造されていたはずなんだが、書類がまだ届いていない。早急に提出しなさい」
『はっ! 申し訳ありません、直ちに作成して提出いたします』
はずんだ声で電話を切る明石に苦笑しながら、大淀を見上げた。
「よろしいのですか?」
「頭のいいアホは嫌いだ。地獄に落ちてほしいほどね。だけど、そういうやつに限って保身にたけている。となれば、足元をすくって遊ぶしかないだろう」
「……遊ぶんですか!?」
思わず、といった声を上げた大淀にたいして、提督はただ無言で笑みを浮かべた。
「俺は頭悪いし、要領もよくないからな。できることからこつこつと、だ」
「意味が違います。ですが……」
「どったの?」
「ありがとうございます、提督」
深く頭を下げる大淀に、提督は困ったような笑みを浮かべた。
「ま、それはいいから。はやく横須賀に連絡したんさい」
「は、了解しました」
大淀も明石と同じく弾んだ声で敬礼とともに応えると、早々に退出していった。
「さてさて。どーなることやら」
椅子の背もたれに体重を預けながら、提督はため息をつき、帽子を目深に下げた。
「願わくば……」
自分でも何を言おうと思ったのか。
続けようとした言葉にかぶせるよううに、扉が乱暴に開かれた。
「提督っ! 提督っ! 助けてくれ!!」
「なにごとっ!?」
戦艦とは思えぬ速度で走り込み、そのまま流れるように提督の座っている椅子の背になだれこむ。
「うふふ。ねぇ、長門? まだ提督に迷惑をかけるの?」
「い、いやそうではないのだが……」
大柄な身体を精一杯縮め、提督の座っている椅子の背に隠れているつもりで全然隠れていない長門に対して陸奥が笑顔を向ける。
「あらあら? はっきり言ってもらえないかしら?」
「あ、いや、その……」
笑顔なのに笑顔でない陸奥の表情に、長門は顔をそむけた。
「ねぇ、長門? 姉さん? どうしたの?」
「う……その、だな……」
顔をそむけつつ冷や汗をたれながす長門の握っている提督の椅子が、いやな軋みの音を立て始めたのが聞こえたため。
提督は決断した。
「あ~、むっちゃん」
「なにかしら、提督?」
声をかけられても長門から目線を離さない陸奥にたいして。
「強制執行を許可する。私の後ろのでかいのをさっさと連行しなさい」
「なっ、提督っ!?」
「あらあら~。了解よ、提督」
「裏切ったな! 提督、裏切ったな!!」
「裏切っとらんわ、人聞きの悪い。つーか、出撃すなっつーのに出撃しとる時点で、お前が裏切っとるわ」
長門を見もしないで放たれた言葉に絶句する長門を、陸奥がさっくりとその両肩をとらえた。
「あっ……」
「うふふ。な~がとっ♪ つ~か~ま~え~た~」
硬直する長門をよそに、提督は館内放送のスイッチを入れた。
『あ~、提督です。川内型の諸君、ちょっと執務室においで』
「提督!?」
悪あがきをつづけ、陸奥が手間取っているのを見ての放送に、長門が愕然とした。
「ま、川内型各二名がいたらなんとかなるだろ」
「あらあら、ありがとうございます、提督」
騒々しい足音が近づいてくる中、満面の笑みを浮かべる陸奥と、無駄に足掻いている長門に対し。
ひらひらとハンカチを振る提督であった。