時間停止の能力あるなら、他に能力いらなくない?   作:Firefly1122

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絶対守護者

 右翼にゼラチナ率いる騎士団、左翼にエドマルス率いる騎士団、中央にその他のプレイヤーが展開する。今回作戦に参加するプレイヤーが全員入ると、背後のドアが閉まり、天井から光が差し込む。塔の内部すべてを明るく照らす光のおかげで、敵の姿がしっかりと見えるようになった。赤い鎧を纏い、顔まで覆うヘルムを被った大きな盾を持つ重鎧の戦士。右手には情報通り大きな大剣を持つ見えている弱点はヘルムから見える赤い目と鎧とヘルムの隙間くらいだろうか。想像以上に厄介かもしれない。1歩1歩階段を降り、戦いの場に降り立つ絶対守護者、近づけば近づくほど、その大きさに圧倒された。ドン・サーベルモグラの1周りほど大きい鎧の戦士だ。俺は縮地と高速移動で一気に前に出ると、アルティメットガーディアンは剣を横に振る。そのスピードは恐ろしく、かろうじて回避できるほどだった。かろうじて回避した俺はそのままガーディアンの体を駆け上り、高い位置から弱点に向かって魔法を唱える。

「ファイヤショット!!」

 それは難なく盾で防がれた。しかし、それも俺の作戦の内だ。盾を足場に紡ぐ者を発動。ガーディアンの動きを止め、腕を退かし、皆に指示をする。

「いまだ!弱点に魔法や遠距離攻撃を叩き込め!!」

 俺の指示に従い、魔法や遠距離攻撃ができるプレイヤーがヘルムの隙間を狙って攻撃を行う。それでダメージを与えたかと思ったが、まったく動じていないように見えた。その証拠に俺の紡ぐ者はあり得ない力で引きちぎられ、再び動き出した。

「やっぱうまくいかねえか……!」

 俺はガーディアンの攻撃をかわし、背後に立つ。鎧の隙間に至近距離からレベリング中に新たに手に入れた魔法を当てる。

「フレアシュート!」

 鎧の中に強制的に放たれた炎は行き場を無くし、鎧の隙間の至る所から漏れ出てくる。真っ赤に燃える戦士になったアルティメットガーディアンだが、俺は少々違和感を感じた。今だとばかりに魔法、遠距離攻撃が飛んでくる。しかし、アルティメットガーディアンは燃えているにも関わらず平然と動きだしそれらの攻撃を盾で塞いでしまった。

「やっぱりかっ!」

 違和感の正体は手ごたえだ。ダメージを与えられている感じがしない。俺は一度引き、他のプレイヤーと合流する。

「どうした!静流君!」

「ダメだっ!あいつ、炎耐性持っていやがる!」

「何ッ!?」

 俺の魔法は炎だけだから炎耐性を持っているのかもしくは魔法耐性を持っているのかは分からない。だが、少なくとも俺の炎は効かないことが分かった。

「ええいっ!やっぱりあの子供じゃ話にならん!突撃してあやつを殺すのだ!」

「待てっ!」

 俺の制止を聞かず、エドマルス率いる騎士団は突撃。ガーディアンが剣を一振りすると、彼らは撥ね飛ばされ、そのまま光の粒子へと変わる。次々と死にゆく騎士団に怯え、パニックになったプレイヤーは閉まったドアに駆け寄り、ドアを叩く。エドマルスは怯え、その場に腰を抜かす。

「くそがっ!」

 俺は時止めを使い、エドマルスを投げ飛ばし、アルティメットガーディアンと対峙する。振るわれた剣を時止めで回避し、一気に加速しヘルムの隙間の目に剣を突き刺す。この小さな隙間には無限斬撃は通らないため、無限斬撃は使えない。しかし、俺は止まらない。ストーンショット、強斬撃、状態異常付与などのスキルを放ち、決定打となる攻撃を探る。時止めを解除し、その様子を見るが、状態異常付与は不発、ストーンショットは鎧に弾かれ当たらない。強斬撃は通るもののダメージが微々たるものだった。

「ダメ……か……!」

 その圧倒的な硬さに俺は絶望した。俺に振り下ろされる剣、ここまで来て倒せないのか?そんな絶望の中佇むと、突然横から強い力で撥ね飛ばされる。

「静流君!諦めるな!君が負ければ我々全員が死ぬ!援護すると言っただろう!君一人じゃないんだ!」

 俺を突き飛ばしたのはゼラチナだった。いつの間にこんな最前線まで来ていたのだろうか。

「スケルタルウォール!!」

 骨の壁を作りだし、俺たちの姿を隠す。しかしそれは一瞬で破壊される。だが、その瞬間背後から魔法が飛んでくる。左翼の騎士が全滅したにも関わらず怯えず戦おうとするプレイヤーたちだった。そうだ、俺が何とかしないといけない。俺の攻撃が通らずとも、足止めくらいはできる!

「すみません、ゼラチナさん」

 俺は立ち上がり、紡ぐ者を発動。再びガーディアンの動きを止め、攻撃をヘルムの隙間に集中させる。すぐにほどかれるが、何度も紡ぐ者で動きを止め続ける。

 

 何時間経っただろうか。この世界に疲労はないとはいえ、精神的疲労はどうしようもない。皆にも絶望の色が見え始め、攻撃をするものも少なくなってきた。どうしようもないのか?このまま全滅するしかないのか?俺は動きを止めつつ考える。

「静流さん!」

「葵!?」

 俺の近くに葵が来ている。接近戦は危険すぎるため、近接部隊は後方で待機させていたのだが、いつの間に来ていたのだろうか。

「早く戻れ!攻撃されたら守ってやれないぞ!」

「でもっ!私でもっ!戦力にはならないかもしれませんけど、僅かかもしれませんけどダメージを与えられたら!」

 葵の目は決意した目だった。1週間前はデスハウンド相手にもビクビクしていた葵が、アルティメットガーディアン相手に戦おうとしている。しかし、

「もう、守ってもらう私ではありません!少しでも戦力にっ!」

 俺は葵の決意を見て、この戦いの活路を見出した。なんでもっと早くに頼っていなかったんだろう。あいつに勝てるかもしれない技を持っているではないか。発動しないかもしれない。そもそもあいつに効かないかもしれない。だが、いつまで経っても倒せない相手に勝つにはこれしかない。

「わかった。俺が全力で足止めする。一気に駆け上り、あいつの弱点にあれをぶちかましてやれ!」

「っ!わかりました!」

 葵はそう返事すると、一気に駆け出す。もう何度目だろうか。いともたやすく紡ぐ者を振り払うその腕を再び紡ぐ者で固定する。

「まだだっ!その鎧にこの技は効かないと思って使ってなかったが、レベリングでゲットした魔法は、まだあるんだよ!!ストーンドロップ!!」

 大きな岩がガーディアンの頭上に現れ、落下。その衝撃でガーディアンは膝をつく。

「今だっ!」

 葵はその膝を利用し駆け上り、今まで練習した構えで弱点を捉える。

「死蝶、一閃!!!」

 その一撃はまっすぐヘルムの隙間に吸い込まれ、禍々しいオーラと髑髏マークが現れる。葵はガーディアンを蹴り、こちらに戻ってきた。俺は警戒する。奴が立ち上がって攻撃してこないか、また先ほどまでと同じ展開にならないかと。しかし、それは杞憂だった。アルティメットガーディアンはそのまま項垂れ、光の粒子となって消えていった。

「や……やった……やったああああ!!!」

 葵は喜び、俺に抱き着く。他のプレイヤーも歓声を上げる。しかし、俺は喜びと共に怒りが沸きあがってきた。塔の中が光り、何も見えなくなる。そして光が収まり周りが見えるようになった時、そこは見たことのない街が広がっていた。皆はワイワイと階段を下りて街へ向かうが、数人が残る。俺は立ち上がり、いまだうずくまる男につかみかかった。

「お前がっ!!お前が指揮官じゃなければっ!!」

 その男、エドマルスは驚きと悲しみ、恐れなど様々な感情が入り混じった顔をして涙を流す。この男は気に入らなかった。王様だからではない。俺の指示を聞かなかったからでもない。生きている間先ほどのような指示で、数多の命を奪ってきておいて、大きな顔をしているからだ。もっとも彼が生きている間何をしたのかなど詳しいことは知らないが、農民の無能という言葉を聞く限り、今回と同じことをしていたに違いない。俺の様子を見たゼラチナはそっと肩に手を置く。

「静流君。君の気持はわかる。ここは私に任せてくれ」

 俺を引き離すと、ゼラチナはエドマルスの前に立つ。

「お前は大事な作戦で大戦犯を犯した。その被害は甚大だ。50年間、1層の留置所に入ってもらう」

「そ、それでは私は生き返りがっ!」

「多くの死者を出しておきながら、まだ生き返ろうとするのか!?お前が犯した罪がどれほどのものか分からないか!?」

「っ!」

「そこの二人、この男を連れてきてくれ。ひとまずこの層の留置所に入れておく」

「ハッ」

 騎士団二人はエドマルスを立たせる。エドマルスは抵抗する気力もなく、ただ素直に従った。

「そういうことだ。静流君、君の活躍には今後も期待しているぞ」

 ゼラチナは俺の肩を叩き、階段を下りて行った。その様子を眺めていると、葵が俺の袖を引っ張ってくる。

「静流さん。あの、私を信じてくれて、ありがとうございました!」

「え?」

「実は私も戦うって言っておきながら怖かったんです。でも私を信じてわかったって言ってくれた時、本当に勇気が出ました。もしあの時もう一度無理だと、下がれと言われたら、素直に下がってたかもしれません。それほどに怖かったんです」

「はは、まったく無茶をする。でも本当に助かった。ありがとう」

 俺は葵の頭に手を置く。この少女は本当に俺を信じてくれた。紡ぐ者の拘束力は回数をこなすたびに落ちていたのだ。それは葵も気づいていたはずだ。それでも俺を信じて前に出てくれたんだ。ありがとう。お礼を言うのは俺の方だった。

「えへへ」

 葵は笑う。その笑顔はとても眩しく見えた。

「……この後、どうするんだ?」

「え?」

「この先、さっきみたいな強いやつらばかりかもしれない。今後も守ってやれるという確証はない。君はどうするんだ?」

 葵はそんなのは決まっていると言わんばかりの笑顔を見せ、答えた。

「静流さんについていきますよ!」

 俺は照れ隠しにそっぽを向き、階段を降りる。

「どうせレベリングを手伝ってもらいたいだけだろ!」

「そ、そんなことないですよ!」

「全く調子いいんだから。ほら、行くぞ」

「っ!はい!」

 俺の後をついて階段を駆け下りる葵。階段を照らす夕日は、とてもきれいだった。

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