時間停止の能力あるなら、他に能力いらなくない? 作:Firefly1122
うちの世界は科学の世界だ。だが、ゲームなるものやプレイヤーという呼び名を広めた科学の世界の者たちとは別の世界だ。うちの世界にゲームなんて娯楽はない。いや、自由すらないのだ。
「ナンバー150。前へ」
ナンバー150はうちの名前だ。そしてうちの名前を呼ぶのはこの星の外からやってきた知的生命体である。
後頭部が異常に発達し、目は細くすべて黒目で、皮膚は真っ白。指は中指だけが長く、体は頭と不釣り合いに細い。彼らは自分たちをカナタと呼ぶ。
うちはカナタの言うことを聞き、前へ進む。まだ10代の子供たちが並ぶこの列は、人間を選別する列だ。5年おきに行われる選別はその人間がどういう使い方ができるかを選別するもので、選別先でまた別の名前を与えられる。名前と言っても記号と数字を割り当てられただけのもので、うちらが彼らの家畜であることを認識させられる。
記号はAからEまであり、Aは最も優秀で仕事を任せられる貴重な存在だ。所謂天才と呼ばれる人間しかここに割り当てられない。それから少しずつ品質が下がっていき、Cは荷物運び程度はできると認識され、食事は与えられるものの、18時間ひたすら働かされる。そしてDは彼らの食糧だ。そしてEはerrorと呼ばれ、危険分子でありバラバラにされた挙句捨てられる。Eに割り当てられるのは主に障害を持つものと自己認知できるものだ。
うちは9歳までは自分が生きているという認識ができなかった。自分が自分であると認識できたのが9歳のある日で、それに気づいたときこの世界と彼らに使われる人間が狂っているとわかった。だが、それを理解した人間はEとなるということもいろんな人間を見ているうちに気づいたのだ。そこでうちは家畜の振りをすることにした。Bに認定されれば休みはある。そのため、Bに認定されるための判断基準を理解することにした。
うちは5年間Bと認定されていた。おかげでこの一年、カナタの目を盗んで学ぶことができた。
判断基準1、身体的障害はないか。うちに障害はない。判断基準2、カナタの命令に従順であるか。これは演技していれば問題ない。判断基準3、理性や意思を持っていないか。これの測定基準が分からなかったのが厄介だ。だからうちは前に並ぶ人間たちをじっくりと観察した。当然うちと同じ理性や意思を持つ人間は数人いた。しかし、彼らが見つかった原因はわからなかった。彼らが連れていかれ、目の前でミンチにされる。それは恐怖でしかなかった。もしばれれば次はうちだ。うちは自分が自分であると認知していなかったころを思い出し、必死に演技した。正直その当時の自分がどんな風だったかなど覚えていない。一歩ずつ前に進み、謎の機械を通る。嫌でも心臓の音が大きくなっている気がしたが、それを必死に抑え込む。
「……判定Bだ。お前はB49だ」
うちは無事、判定Bと選別された。
この施設は常に明かりがついているが、彼らが夜と呼ぶ時間帯になると、うちらは寝室に誘導される。そして皆が寝付くと見張りもいなくなる。その時が動くチャンスだ。
うちはゆっくりと起き上がり、窓付きドアから外の様子を伺う。カナタはいない。そっとドアを開け、見える範囲のカメラを確認した。少なくとも出るときはばれるのを覚悟で出ないと、カメラを避けながらは無理だろう。この廊下にある扉は全て人間の寝室で、唯一の出口は一つだけだ。幸いにもその出口に近い位置にうちの部屋はある。この先出たところは加工場と作業場があり、開けた空間にある扉の先にカナタが帰っていくのを何度か見た。おそらくそこが外に出るための扉だろう。その先はわからない。
うちはそっと扉を閉め、いつ実行するか考える。まだ情報が足りないから今すぐ脱出するのは無理がある。そう考えていると、うちの肩を叩く感触があり、うちは心臓が飛び出るほどに驚く。うちの肩を叩いた犯人は、隣で眠っていた女の子だった。
「あなたは、だれ?」
「う、うちは……B49」
「そっか。私はB50?ここはどんなところなの?」
うちは理解した。この子はたった今意思を持ったばかりなのだと。
「ねえ、しゃべらない方がいいよ。もし君が自分を認識できるとわかったら、君は殺される」
そう話しても、よくわからないようだ。当然だ。まだ言葉も理解していない子供にこんなこと言っても理解はしない。うちはどうしようか悩んだが、なんとかジェスチャーで伝えた。
「わかった。でも、このときくらいはしゃべってもいいよね?」
「うん……うん!」
うちは仲間ができたことに喜んだ。そして二人でしゃべって、この世界のことを理解しあった。
それから何日が経っただろう。うちはイーゼロと名前を付けてもらった。そして彼女にはアイと付けた。互いに名前を呼びあい、この世界の外がどうなっているのか、外に出たら何をしようかと話す。もちろんすべて想像の世界でしかないのだが。
「いつか一緒に外に出ようね!」
「うん!」
アイとうちは約束を交わした。いつか、いつの日かカナタを倒し、外に出る。うちらは家畜じゃない。人間だ。
アイは死んだ。ある日うちらの作業場から一人意思を持った人間が出た。意思を持ったばかりのその男の子はカナタに連れていかれそうになる。ほかの人間は一切反応しない。当然だ。それが判定Bの人間なのだから。しかし、アイは反応してしまったのだ。それをカナタは見逃さない。
「おい、Eが出たぞ!」
「ひっ!」
アイは自分に向かってくるカナタから逃げ出した。周囲には6人のカナタ。そしてカナタは確実に仕留められる銃を持つ。逃げ出したアイはその銃で胸を撃ち抜かれた。
「かはっ……い……ぜ……」
アイはこっちをうつろな目で見ながらそうつぶやく。幸いカナタには痛いと言ってるように聞こえたようで、うちが意思を持っているとは気づかれなかった。うちはBの振りをしながら、必死に涙をこらえていた。その夜はひたすら泣いた。
「アイ……この世界は……狂ってる!復讐してやる!」
うちは復讐を誓った。
「もう外などどうでもいい。奴らを根絶やしにしてやる。うちはerror0!カナタにとって最悪の存在となってやる!」
その日、いつもの仕事をしていたうちはチャンスを待っていた。カナタは武器を持っている。その武器を奪えば、うちは奴らを殺せるだろう。一歩一歩近づくカナタの足音を聞き、包丁を握る。うちの隣にカナタがやってきた。こいつも武器を持っている。うちはカナタの首を切りつけた。すぐさま武器を奪い、うちを捕らえに走ってくるカナタを次々に撃ち殺す。こんな騒ぎであるにも関わらず、人間たちは何の反応も示さず、彼らの食事を切ってる。うちは作業場から飛び出した。
警報がうるさいくらいに鳴り響く。前からも後ろからもやってくるカナタの攻撃を避けながら、時にはカナタを殺しながら、うちは闇雲に進む。扉を開けると、そこはおそらく制御室だろうか。いくつものモニターと、それを操作するカナタが数人いる。うちはカナタをすべて撃ち殺す。レーザー銃は撃ち続ければずっとレーザーが出ており、横に動かすだけでカナタの胴体を半分にする。
「エネルギー切れ!」
幸い制御室にいるカナタをすべて殺せた。すぐに死んだカナタから武器を奪い、入り口に向かってレーザーを撃ち続ける。これによりカナタは侵入できないでいた。その間にうちは制御版をみるも、それはとても理解できるものではなかった。
「くそっ!だったら壊してやる!」
うちは銃をこの部屋にある機械に次々と向けると、どんどん爆発していく。その破片が右目に当たり、うちはうずくまる。
「これで、あとは、外に!!」
うちは別の銃を拾い、入り口にいるカナタを撃ち殺しながら外へ向かって走り出す。施設を制御する機械が壊れたせいなのか、至る所から火が立ち上り、カナタは次々に逃げ出していた。もちろんうちは逃がさない。前を走るカナタを撃ち殺しながら、先に進む。そしてついに外へ出た。
「……え?」
外へ出た瞬間、うちの体に穴が開く。数百のカナタがこちらに銃を向けていた。薄れゆく意識の中見た景色は、空全体を覆う無数の機械。超巨大な宇宙船が空を覆いつくしており、青空などは見えない。地上はカナタの街ができており、うち一人ではどうしようもないことが分かる。
「ご、め……ね……あい……」
うちは悔しさで涙を流しながら、意識を失った。
はっと目を覚ますと、そこには見たことのない存在がいた。思わず手に持っていた銃を探す。しかし手に銃は持っておらず、目の前の存在に立ち向かう手段はないと理解した。しかし、相手からは敵意を感じない。うちは少し冷静になり、その存在に話かける。
「お、お前は、いったい?」
「私は神様と呼ばれている存在だ。まあ、お前たちじゃ知りようもない存在だ」
「敵、なのか?」
「私はお前を助ける存在だ。どうだ?お前は生き返りたくはないか?」
生き返り……それがどういうものなのか理解するのに時間がかかった。あの世界に生き返る価値はあるのだろうか。でも、もう一度チャンスを貰えるなら、今度こそあいつらを滅ぼしてやろうと思う。
「生き返りってできるのか?」
「できる。だがな、そのためにエイデンと呼ばれる世界で、塔の最上階に行かないといけないんだ。厳しい道のりだ。それでも生き返りを望むか?」
「うちはあいつらを滅ぼしたい。そのためなら、なんだって!」
「よかろう。お前は特別だ。一つ力をやろう。何か願ってみろ」
「うちの願いは現実を変える力!奴らのすべてを跳ね返す力がほしい!」
その瞬間、脳内に声が響く。
エクストラスキル「現実改変」を習得。ユニークスキル「反転」を習得。
そしてうちの視界は真っ白になり、次に目を開けると、そこは見たことのない美しい世界が広がっていた。
「お嬢ちゃん、そんなに若いのに死んでしまったんだな」
うちの目の前に人間?がいる。背の高さは奴らと同じくらいだが、見た目が人間とそっくりだ。その人間はそっと手を伸ばしてくる。うちはそれを払い、逃げ出した。わからない存在に対する恐怖によるものだった。敵意はないように感じたが、自分よりも遥かに背が高いその存在を信じることができなかった。
階段を降り、大きな建物で挟まれた道を走る。そこにはさっきのやつと同じような奴、人間とは到底思えない奴、奴らに似た存在がそこにいた。怖い。うちはひたすら逃げ、大きな門を通る。
門の外は緑色の草原が広がる美しい光景が広がっていた。アイと話した世界と似たような世界だ。色彩豊かなだけでうちは感動する。それと同時にこの光景をアイと一緒に見れなかったことが悔しく、奴らに対しての怒りが湧いてくる。
草原を歩いていると、四足歩行の獣が襲ってきた。それは明らかな敵意があることが分かり、うちは戦闘態勢を取る。そういえばスキルなるものを貰っていたことを思い出し、その力を使ってみる。
反転。これにより突撃してくる敵を反転させると、不思議な力で敵が真逆に向いた。しかしすぐにこちらに向かって来ようとしており、見ているとシュールな光景がそこに広がる。くるくるくるくる回る獣にうちは笑ってしまった。そしてそんな行動をとる獣に意思がないことを理解する。
それからスキルをどういう使い方ができるのかといろんな実験をしてみた。反転は自分にも効果を発揮できる。地面に立っているうちに反転を使ってみると、上に落ちる感覚があった。まさに落ちる感覚だ。まるで天地が逆転したような。どんどん上に上に落ちるうちは慌てて反転を使うと、今度は下へ落ち始める。地面に叩きつけられたうちは足に痛みを感じたが、不思議なことに思ったほどの痛みではなかった。
次に現実改変なるスキルを使ってみた。痛みを消そうと思ったとき、どこからともなく丸い瓶が現れる。黄緑色のその飲み物にうちは若干抵抗感を感じつつ、少し飲んでみると、体の痛みがどんどんなくなっていく。
次に武器が欲しいと考えると、銃が現れた。しかしこれは奴らが持っていたレーザー銃とは違い、見たことのないタイプの物だった。しかし使い方は同じだ。引き金を引けば弾が発射される。重い破裂音と共に金属の弾が発射される。これは使えると確信した。エネルギー残量とかの確認してみたが、どうやら残量とか弾数とかは無いようだ。
そうしていると銃声に引き寄せられた先ほどの獣が多数襲ってくる。銃を撃つと、その獣を一撃で光へと変えた。5体ほど倒した時、現実改変を使えばこいつらを簡単に倒せるのではと思い立つ。
「消えろ!」
そう念じると、獣は光の粒子にすらなることなく一瞬でその場から掻き消えた。なんでもできるこの力にうちは希望を見出す。これがあれば奴らを根絶やしにできる!そう思い立ち、さっさとこの世界から生き返ろうと生き返りを望んだが、うまく発動しなかった。
いろんなことを試してみたが、この世界の根本的なシステムには干渉できないことが分かった。例えば元の世界に生き返るや、次の階層へ進むなど。アイをこの世界に復活させようとしたけどそれも無理だった。しかし天変地異クラスの力、例えば地割れや地面の隆起、嵐や吹雪などの天候操作などは可能だ。強いアイテムの入手も可能で、まさに万能スキルである。
自分の力を確認したうちは、塔へ向かった。塔の最上階へ行かなければ生き返れないため、さっさと塔を登りきりたいのだ。塔の入り口はかなりの人数の人間がいた。うちは人間にバレないように駆け抜ける。塔の中は広いフィールドで、その奥に赤い金属の塊の巨大な人型がいた。
「消えろ!」
瞬時に敵であると認識したうちは、現実改変を使う。これで敵は先ほどのように消えるはずだ。しかし、あの金属の塊は消えることなく、こちらに歩みを進める。世界の根本的なシステムには干渉できない。こいつは世界のシステムの一部なのだ。
現実改変で敵を浮かし、地面に叩き落してみても、体制は崩れるもののダメージが入った手ごたえはない。銃を撃ちまくってみてもダメージは入らない。
敵に干渉できないのなら、銃を細工すればいい。うちは銃の威力を極限まで上げ、弾は全てを貫くといった改変を行い、敵に撃つ。するとこれが正解だった。金属の塊を貫通して敵にダメージが入り、一撃で光の粒子に変わった。敵を倒すと視界は光に包まれる。そして気づけば別の街に来ていた。ここにも人間がたくさんいる。前の街よりは少ないが、ここも危険かもしれない。うちは休むこともなく塔を目指して走り出した。
塔の中へ入るとそこは森が広がっていた。上に獣の気配を感じた。獣は寝ているが、おそらくこいつを倒さないと次へは進めないだろう。うちは銃を構え、撃つ。先ほどと同じであればこれで獣を倒せるが、不思議なことに敵に接触せずに弾かれた。しかし、それにより獣は起き上がり、起き上がったと同時に謎の光線を放ってきた。うちは咄嗟に反転を使い、その光線を獣に返した。獣は石化し、この塔もクリアできたのだった。
ここまでがこの世界に来て僅か五日のできごとだ。
三層。ここは異質な空間だった。街は先ほどの街よりも小さい。そして人間も数人見えるくらいだ。このくらいなら囲まれても何とかなる。警戒しつつ出口へ向かおうとしていると、こちらに気づいた人間がいた。
「初めて見る顔だな!嬢ちゃん、こっち来なよ!」
笑顔でこちらに手を振る人間。その素振りでこちらに友好的なことが分かる。恐る恐るその人間に近づくと、笑いながら飲み物をくれた。
「そんなに怖がらなくていいぜ!嬢ちゃん一人でここまで来たのか?そいつはすげえな!」
「一人であれ倒すって無理だろ!今までどこかに隠れてたか?」
そういいながら笑いあう男たち。仲間を呼んだのかどんどんこちらに集まってくる大きい人間。うちはしまったと思った。罠だ。やられる前にやる!うちは現実改変を使う。
「死ね!」
唐突にそう言ったうちに対して、男たちは驚いた顔をする。が、すぐに笑い始める。
「おいおい!そりゃねえぜ!」
現実改変は効かなかったのだ。だが、死ねと明らかに敵意むき出しのうちの発言に対し、男たちは笑い、うちを撫でる。ひっと手を振り払い、逃げようとするが、いつの間にか後ろにいた大きな女にぶつかった。
「あっ、ごめんよ嬢ちゃん」
赤いぼさぼさの髪の胸の大きい女はうちに手を差し伸べる。うちは後ずさる。
「あっちゃーこりゃ人間不信だな。相当つらい目に遭ったんだな」
髪をガシガシと搔きながら困り顔の女。うちは銃を取り出し、向ける。女はしゃがみ込み、うちを見る。
「何だいそれは。武器か?残念だけど、街の中にいる以上どんな手段でも殺すことはできないぜ」
その言葉ははったりだと思い、撃つ。手ごたえはあったが、弾丸が当たった女はいたたと言いつつしりもちをつくだけだった。先ほどの現実改変による攻撃が効かなかったのも街中では死なないというシステムによるものだと瞬時に理解した。そしてこの女が嘘をついていないことも。
女はうちが攻撃したにも関わらず、優しく声をかけてくる。
「大丈夫だ。安心しな。ここのやつらは根はいいやつだ。みんな味方だよ」
そういいながらうちを抱きしめてくれる女。その温かさはどこか懐かしく、うちは泣き出してしまった。
落ち着いたころ、うちは皆に囲まれながら話を聞いていた。
「あたいの名前はディエナ。こいつはアクト。んでレン、ジュウシ、ベルワンその他だ」
女は皆を代表して自己紹介をする。その他と言われた男たちはそりゃねえぜと言いながら笑う。
「う、うちの名前は……B49」
「ん?ビーヨンジュウキュウって名前なのか?長いな~じゃあビーちゃんでいいか?」
「あ、いや、じゃあイーゼロって呼んで」
イーゼロ。アイに付けてもらった大切な名前だ。
「分かった。じゃあゼロちゃんだな!」
「お前たちは、人間?」
その質問にみなきょとんとする。
「見ればわかるだろう?ここにいるのはみんな人間だ。魔物のプレイヤーもいたんだが、そいつらはカリュブディスについて行っちまった」
「カリュブディス?」
それからこの世界のことを聞いた。うちと同じように生き返りを望む人間や魔物が数多ある別世界からこの世界にやってきて、塔の最上階を目指すということ。だがそれがとてつもなく難しくて、心が折れた者たちがたくさんいるということ。三層のここまで来た人たちでも十分すごいということ。そして彼らはプレイヤーと呼ばれているということ。
彼らは魔法の世界から来た人たちがほとんどだった。その中でも科学の世界の人間もいる。そして科学の世界の人間は神様から特殊な力を貰えるということらしい。理由はその科学の世界では戦う力を得られないそうで、そのままこちらに来たら生き返りなど夢のまた夢であると神様が判断し、ハンデがあるとして科学の世界の人間には力を授けるようにしたという。これは神様から聞いたことだとその科学の世界から来た人間は言っていた。
「ゼロちゃんの世界はどんな世界だ?生き返りを望むくらいだからいい世界なんじゃないのか?」
「そんなわけがない!」
うちは思わず大声を上げる。
「あんな、あんな人を家畜のように扱う世界がいい世界なわけない!友達が目の前でミンチになる世界なんて!」
うちは凄惨な前世を思い出しながらガタガタと震え、自分の肩を抱く。するとそっとうちを抱きしめるディエナ。
「すまなかった。誰にでも事情はあるよな。もういい忘れな。ここなら怖いことは何もない」
「ご、ごめん……」
うちは大声を上げたことを詫び、うちの世界について話す。ディエナもほかの男たちも神妙な顔で聞いてくれた。
「だから!あいつらを根絶やしにするために!」
つい熱くなるうちをディエナは悲しそうな顔をしていう。
「ゼロはそいつらを殺して世界が変わると思うか?ゼロ一人で何とかできると思うか?」
「で、でも!」
「アイって子はこの世界に来なかった。いや、来ていたのかもしれないけど、少なくともあたいは生き返りたいなんて思わない。多分アイって子もそうなんじゃないかな」
そういわれて、ハッとする。うちはアイが惨たらしく殺されたことにより、奴らに復讐することだけを考えていた。だから生き返りを望んだが、普通に考えればあんな世界生き返りたいとは思わない。生き返ったところでまた同じ目に合うだけだ。
「アイちゃんはさ、復讐を望まない。望んでいるならゼロちゃんのようにこの世界に来ている。アイちゃんはあの世界から解放されたと考えるのがいいんじゃないか?」
「じゃあ、なんでうち、この世界に……何のためにこの力を!」
「いいじゃないか。すごい力を手に入れて、この世界で好きに生きて死ねば。あたいはもう生き返りなんてどうでもいい。こいつらと死ぬまで楽しく過ごしたい」
うちはそれをすごく魅力的な提案だと感じた。アイが復讐を望まないなら、せめてアイのことは忘れず、あの世界のことだけを忘れてこの世界で楽しくすごしたい。もしアイに会うことがあったら、この世界でどういう風に楽しく過ごしたって話したい。そう思ったとき、今までの暗い感情はどこかへ消えた。
あれから13年が経った。ディエナは制限時間でこの世界からいなくなった。うちはディエナや周りから認められ、ギルド長という立場に立つことになった。ギルド長と言ってもこの三層でギルドのシステムは生きていない。街自体もブロックで構築された建物をとりあえず家にしているだけで、街として生きてない。飲食を売る屋台やいろいろなアイテムを売る屋台はあるものの、それだけだ。それらを売るのも今飲んだくれてる男たちだ。しかも売るわけではくただで配っているため、売買の概念すら崩壊していた。それもそうだろう。商品はすべてうちの現実改変が作り出した、望んだアイテムが出る箱から取り出してる物だ。そこに価値などない。
「ゼロちゃん!転移門が光ってるぜ!」
それはうちがこちらに来てから初めてのことだった。
「そうだ!これから来る人達を脅かすのはどうだろう!」
「いいねぇ!びっくりして尻もちついちゃうかもな!」
そう笑いながら、これからやってくる人たちを脅かす準備をした。