時間停止の能力あるなら、他に能力いらなくない?   作:Firefly1122

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ボスとフィールドボス

 三層でレベリングをして2年が経った。レベリング場所はピエロが出てくるダンジョンだ。ここならば美子も活躍できる。レベルが上がったことで、みんないろんなスキルや魔法を手に入れられた。

 葵は紫電一閃、蝶の舞、毒突きを習得。紫電一閃は一閃のように一気に加速して敵を貫くスキルだが、敵一体に攻撃を当てたら効力が切れる一閃とは違い、複数の敵を貫通して攻撃できる。また、加速した時の速度も一閃よりも遥かに速い。

 蝶の舞は敵の攻撃を蝶のように躱せるようになるというスキルだ。単純に回避力が上がるのは便利だ。

 そして毒突きは文字通り毒を付与した武器で敵を突くというもので、敵に毒を付与できる。

 葵は盗賊や忍者、暗殺者のような身軽で状態異常等を扱う近接職になってきている。

 

 美子のスキルは加護、強化力上昇、状態異常強化。魔法はホールドヒールリング、ホールドストレングス、ホールドマジカルを習得。

 加護は周囲の味方のダメージを30%カットするというスキルで、魔法や物理、状態異常のダメージすらすべてを30%減らせるというかなり強力なスキルだ。

 強化力上昇は味方に付与したバフの効果をさらに上昇させるものだ。体感だが攻撃力上昇する魔法をかけてもらった時、以前は1.5倍ほどだったのが、2倍になっていたと思う。

 状態異常強化は相手に状態異常を付与する確率を上げ、その効果を高めるというものだ。

 そして魔法のホールドヒーリングは全体回復。ホールドストレングスは全体攻撃力、ホールドマジカルは全体魔法攻撃力上昇だ。

 美子は仲間を支援する神官やサポーターのような職になっている。

 

 海斗のスキルは挑発、破砕、守護、吸収を習得。

 挑発はヘイトを自身に集めるスキルで、破砕はハルバードを振り下ろし、敵を破壊するハルバード使い専用スキル。

 守護は仲間の元へ一瞬で移動し、敵の攻撃を受けるスキルだ。敵に狙われていない仲間の元へは移動できないという制約がある。

 そして吸収はあらゆる攻撃を自分へ集めるというスキルだ。全体攻撃すらすべて海斗に吸収され、ほかの仲間に当たらないという無敵持ちの海斗と相性抜群のスキルだ。

 海斗は仲間を守る戦士や騎士、パラディンといった職になっている。

 

 俺はたくさんのスキルを手に入れた弊害か、攻撃魔法は上位のものをゲットできたが、スキルはゲットできなかった。俺のプレイスタイルはどのような職業に当たるのだろうか。そもそもこの世界で職業という概念があるのかは不明だが。みんなの職業を言ったが、これはスキルを見た俺の感想でしかない。

 

 2年経っても葵と美子の関係はあの時のまま険悪だ。イーゼロやリーグ、オリーブとは結構仲良くなったようだ。特に美子とイーゼロはすごい仲がいい。

「ゼロちゃん!この服とかかわいくない?」

「みーちゃんいいねそれ!ダンジョンにそんなのあったんだね!」

 ダンジョン内で見つけた装備を二人で着せ合っている。ピエロがいるダンジョンの中に子供部屋をモチーフにした部屋があり、そこではぬいぐるみが襲ってくる。その奥にある宝箱から出てくるアイテムはすべて子供向けの装備で、葵の包丁のおもちゃもここでゲットしたものだ。そのほかにはフリルやロリータ、ウサギの絵が描かれたパジャマといった服も出てくる。そういう服はイーゼロによく似合い、美子はイーゼロを着せ替え人形にするのを毎回の楽しみにしているようだ。

 リーグと海斗は意気投合し、オリーブもつれて三人でダンジョンに行くこともあった。リーグとオリーブの戦い方は俺とは違い死線を潜り抜けてきた戦士のような戦い方らしく、海斗はその戦い方を学んでいるようだ。おかげで海斗は今までのようなごり押しではなく、ハルバードをうまく使った受け流しなども行えるようになった。

 俺はというと葵とデートだ。この目の痛くなるような世界も2年もいると慣れてくるもので、この世界での絶景だとかも見つけることができた。もっとも、それを絶景だと思うのは感覚が麻痺した人間だけだろうが。

 そんなこんなで皆のレベルも上がり、この辺ではもうレベルが上がりづらくなったため、そろそろ次へ向かおうという話が出た。

「そろそろ四層へ向かうか。三層のボスはどんな敵なんだ?」

 俺はイーゼロに聞いてみる。イーゼロは知らないといった。

「ここにいる人たちはこの先進んだことない人たちばっかりだ。この先どんな奴がいるかわかんない」

「つまり情報なしのぶっつけ本番だな。まあ、何とかなるだろ」

 そういうのは海斗だ。俺と海斗は間違いなく負けないだろう。だが、ほかのプレイヤーはそうはいかない。

「情報を集める方法は何かないか……二層に戻るか?」

「俺はそれがいいと思うが、問題がある」

 その問題とは塔の周りに建つ一際大きい五つのビル。そこをテリトリーにするあのフィールドボスだ。フィールドボスの名はデストロイ。ビルの上から超強力なビームを発射してくる化け物だ。それだけならまだしも、奴は近づけばビットという一体一体が意思を持つ三角錐のブロックを放つ。こいつらからもビームが発射される。本当に厄介な相手だ。こいつを倒さないと塔に近づくことすら難しい。それなのにこいつは地面に降りることはない。そのため、遠距離戦を余儀なくされる。

「俺のスキルだと紡ぐ者での拘束が有効かな。だが、これは単体を拘束するスキルで、ビットを飛ばされればどうしようもない」

「ビットを飛ばされるのだけは避けなければな。あいつを撒くのは大変だった」

 リーグとオリーブは追いかけられたことのあるような発言をするが、それは海斗と共に喧嘩を売ったことがあるからだ。もっとも、それはデストロイの情報を集めるためなのだが、海斗がいなければ死んでいたという。

「そのデストロイってやつを倒せばいいんだね?」

 ポテチをかじりながらそういうイーゼロ。ポテチは美子から聞いたイーゼロが、スキルで再現して出したものだ。

「簡単に言うな。できるのか?」

「もちろんだよ!うちならどんな相手でも倒せるよ!」

 さすがはチートクラスのスキル持ちだ。頼りになる。

「そのあとは二層に行って情報聞いてくるでいいのか?」

「いや、そのまま塔に入るのがいいだろ。さすがにデストロイや草原を徘徊するナメイルほどの化け物は出てこないと信じたい」

 デストロイは単純に高い位置にいるせいで倒しづらい。そしてナメイルは絶対に倒せないモンスターだ。おそらく本来こいつらは関わらずに抜けるのが定石のモンスターなのだと思う。そう思う理由は絶対に決まった範囲から出てこないということだ。ほかのモンスターは補足されていればどこまでも追ってきた。もちろんダンジョン内や街の中までは追ってこないが。それに対して奴らはテリトリー内に入らなければ補足されていても攻撃してこないのだ。そのことから決まった範囲を守る守護者的な役割であると予想できる。そんな相手よりボスが弱いというのはよくあることだ。

「もしデストロイよりも強い奴が来たらその時はその時だ」

「……仕方ないな。それで行こう」

 時止めで抜けて二層に行くのもありだが、俺は葵を一人にしたくなかった。俺のわがままではあるが、葵を心配させたくないのは偽りない本心である。

 

 次の日、四層へ向かう者たちと共に、デストロイのテリトリーの前まで行く。ここからはイーゼロだけが行くという。不安はあったが、それは杞憂だとすぐに分かった。

 イーゼロを補足したデストロイは、頭の部分からビームを発射する。イーゼロはそれに対して反転を使い、デストロイのビームは自身の弱点であろう水晶玉に直撃し、怯んで落下した。まだ消えないデストロイに対し、イーゼロは現実改変を使い、消滅させた。

「終わったよ!ささ、どうぞどうぞー!」

 イーゼロは手を振る。俺たちは苦笑しつつ塔へ向かう。美子はイーゼロとの別れを悲しみ、別れの挨拶をしていた。

「またね!きっとまた、会えるよね!」

「会えるさ!この世界でもあっちの世界でもどこでも!願っていればきっと!」

「うん!会いにいくよ!」

 そういいながら抱きしめ合う。俺は美子に先に行くよう促し、イーゼロを勧誘する。

「イーゼロ。俺たちと一緒に行かないか?君がいれば塔を攻略するのもわけないと思うんだ」

「誘いはありがたいけど、うちは三層のみんなを見捨てられない。うちにとってみんな家族なんだ。置いていけないよ」

 そういって笑うイーゼロ。俺は少し残念な気持ちになりつつ、イーゼロの気持ちを尊重する。

「わかった。いままでありがとうな。元気で」

「うん。そっちこそ。死ぬんじゃないよ?」

 そう言って別れて、塔へと向かった。

 

 今回三層のボスへ挑むのは、1180名。三層が気に入り、ここに留まることを決めたプレイヤーが20名ほどいたようだ。

「よし、いくぞ!」

 その掛け声とともに、塔になだれ込む。塔の中のフィールドは、四角いブロックで作られた色とりどりの床と壁だけがあるだだっ広い空間だった。その中央に四角いブロックがあった。俺たちはキマイラとの戦いのときと同じ布陣を取り、開戦のフレアシュートを放つ。フレアシュートが当たった四角いブロックは上部が開き、その中から様々な形の物体が飛び出し、それぞれがくっつきその形を作り上げる。

 丸い赤い頭に黄色い縦に伸びた楕円の体。青い楕円の腰に緑色の腕と脚。手は丸い紫に足は黒。顔などはついてない人型がそこに現れた。そして名前が表示される。ランだーRANバー。レベル45だ。

 葵は一気に距離を詰め、確実に死蝶一閃を決める。しかし、ランだーRANバーは体をバラバラに分解し、葵の周りを飛び回る。

「え!?」

 死蝶一閃を躱された葵は驚き、その場で立ち止まった。ランだーRANバーのパーツはピタッと動きが止まったと思いきや、葵に向かってすべてのパーツが集まる。圧死させるつもりだ。俺は時止めで葵を救う。

「ありがとうございます!」

 俺はすかさず紡ぐ者を放ち、ランだーRANバーの動きを封じることを試みる。しかし、うまくいかず、バラバラになった部品は赤い球を先頭に一列になり、フィールドをぐるぐると回り始める。それを見た仲間たちはそれを撃ち落とさんと魔法を放つ。しかし、勢いが落ちることなく、美子を狙って飛んでいく。体のパーツはドリルの形を作り、美子を襲った。

「きゃっ!」

 ドリルを間一髪避けた美子の前に人型となり立ち上がり、その腕で殴りつけてきた。

「美子っ!」

 それを守ったのは守護で美子とランだーRANバーの間に割って入った海斗だった。海斗は奴の攻撃を受け流し、すかさず破砕で頭を攻撃する。ランだーRANバーはまた分離して逃げ出す。

「あ、ありがとう!」

「いいってことよ!」

 海斗は美子に手を差し伸べ、立ち上がらせる。俺は時止めを使い、ランだーRANバーの部品を一つ一つ攻撃してみるが、どの部品に攻撃しても手加減はなかった。

「ちっ!やつの弱点はどこだ!?」

「どうする!静流!」

 リーグと奴の動きを観察しながら話し合う。

「奴の体は全て破壊不能オブジェクトだと思う。だが、この手のやつはどこかに本体がいるはずだ!」

 奴の動きを目で追う。丸い赤い球を先頭に部品がくるくる回り、その形はノコギリへと変わった。そのまま集団に向かってくる。

「う、うわああ!」

 プレイヤーの一人が逃げ出すが、プレイヤーとノコギリの間に海斗が入り、海斗はノコギリを受け止める。

「静流!攻撃は俺がすべて受け止める!早く弱点を見つけてくれ!」

 海斗に止められたノコギリはまたバラバラになり、フィールドをぐるぐると回る。そして俺は気づいた。赤い球が必ず先頭にあることを。おそらくこいつが本体だ。しかし、先ほどはダメージを与えられなかった。何か条件があるのかもしれない。

 そう考えているうちに奴は人型となり、上空から腕を振り下ろしながら降ってくる。全員そこから避けるが、地面が揺れるほどの衝撃があり、体制を崩す。次の瞬間、体制を崩したプレイヤーを狙って、腕を伸ばす。そこに海斗が入りこみ、また守る。動きが止まったランだーRANバーに魔法を放つプレイヤー。どれもダメージが入っていないように思えたが、頭に魔法が入った瞬間、ランだーRANバーはガタガタと揺れ、再びフィールドを回り始めた。

「分かった!美子!俺に強化を!」

「わ、わかった!」

 敵の動きを観察し、人型になるのを待つ。いくつもの銃に変形したランだーRANバーの攻撃を海斗が吸収ですべて受け止めると、ランだーRANバーは手をガトリングにして、人型になった。

 俺はそのすきを逃さず、時止めで近づき、頭に向かって無限斬撃を放つ。バフが入った無限斬撃はかなり効いたようで、地面にバラバラになってダウンする。しかし、すぐにフィールドを回り始める。

「もうちょっとやる必要があるっぽいな!」

 そう思っていると、どんどん上に上がるランだーRANバー。そして天井付近に着いたと持ったら、人型となり、下に向かって腕を伸ばす。そしてその姿が見えなくなった。

 姿が見えなくなったのは、やつの手が天井全てを埋め尽くすほど広がったからだ。これはプレス攻撃だ。すべてを潰すつもりなのだ。

「全員、魔法攻撃!」

 全員で魔法を上に向かって放つ。しかし一向に勢いが落ちない。

「静流さん!ここは私に!」

「葵!?何を!?」

 葵は何か作戦があるようで、俺にそれを伝えてくる。今はそれにかけるしかないか。

「美子!葵にバフ魔法を!海斗、ハルバードで葵を高く飛ばせるか!?」

「ああ!できるぜ!」

 美子は葵に攻撃力上昇の魔法を唱え、海斗はハルバードを横に倒し葵が乗りやすくする。葵は走り、ハルバードに足を乗せると、海斗はハルバードを思いっきり振り、葵を高く飛ばす。葵はその勢いのまま紫電一閃を唱え、プレスを貫通し、ランだーRANバーの頭を貫く。葵の一撃は最後の止めとなったようで、プレスは光の粒子となって消え去った。

「勝った……!勝ったぞ!!」

 そう声を上げるのは、リーグだった。それに続いて、みな歓声を上げる。そして光に包まれ、次の階層へ上がるのだった。

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