時間停止の能力あるなら、他に能力いらなくない?   作:Firefly1122

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ドラゴン

 五層で十分な数の転移石を集めつつレベリングをすること5年。俺たちはついに塔へ挑むこととなった。レベリングに関しては俺の取得者の効果でメンバーの平均レベルが60になった。

 もっとも60になったのは2年も前であり、5年もかかったのは転移石の採掘が原因だ。ダンジョンから出ればリセットされる仕様を利用して何度も何度もダンジョンに入って採掘していたが、やはり転移石は出難く、焦りと憤りだけが募る日々だった。

 リーグはそんな俺を宥めつつ機を待つ。正直リーグがいなければ今すぐにでも塔に挑んでいたことだろう。

「さて、ワイバーンに気を付けつつ、行くぞ!」

 リーグの掛け声に100人のメンバーが声を上げる。塔がある場所は山の頂上であり、足場の悪い山を登りながらワイバーンという空を支配するモンスターと戦わなくてはいけない。難易度はかなり高いが、俺たちはそれをすでに数十回経験している。レベリングと素材のためにワイバーンを狩りまくったのだ。

「最初見た時はドラゴンかと思ったが、ワイバーンだったな」

「あいつの素材、装備に加工すると結構強いのよね」

 すでに何度も狩った相手であるため、皆に緊張感というものはなかった。

 前衛のプレイヤーが挑発のスキルを使い、ワイバーンの群れを誘い出す。ワイバーンは火を噴くため空からまっすぐ降りてくる。そこをアーチャーや魔法使いが貫通系魔法やスキルを使い、一網打尽にするのだ。

 ワイバーンを軽くいなし、塔の入口へ辿り着く。

「ピンチになったら迷うことなく転移石を使え。誰一人死ぬことは許さん。転移石を誰かが使ったら、すかさず全員使うこと。いいな?」

 リーグが改めて皆に言う。皆その指示に力強く頷く。四層の地獄を味わってもなお生き返りを望むプレイヤーたちだ。間違っても自分本位で転移石を使って周りに迷惑をかける者はいない。

「行くぞ!!」

 塔の扉を開き、俺たちは中へ入った。

 

 五層のボス部屋は二層のボス部屋と似ている。違う点は中央に聳え立つ物が木ではなく柱であることだ。その柱の天辺で眠りにつくのは紛れもないドラゴンであった。四つの屈強な手足、赤色の鱗がキラキラと光り、背中には自身の2倍ほどあろう翼がある。塔の壁に埋め込まれた篝火が火を灯すと、ドラゴンの目が開く。そして身を震わせる咆哮を上げた。戦闘開始の合図だった。

 ドラゴンが羽ばたくと滑空するように柱の周りを飛び始めた。そしてワイバーンの炎など比べ物にならないほどの勢いの炎を噴き出す。

「前衛!ガード!」

 リーグの指示で盾で炎を逸らす壁を作る。ドラゴンはそれを見るとその巨体で体当たりをくりだしてきた。

「舐めるなよ!トカゲ風情が!!」

 前衛のプレイヤーは想像以上に強くなっており、ドラゴンの体当たりを受け止めた。それを見て俺は時止めを発動、一気に攻撃を仕掛ける。が、俺の剣は隙間なく敷き詰められた鱗に通じなかった。

「ちっ!硬すぎる!」

 俺はすかさず貫通魔法に切り替え、MPが尽きるまで魔法を撃ち込んだ。しかし、それでもドラゴンは倒れない。仕方なくリーグの元へ戻り、時止めを解く。ドラゴンは蓄積されたダメージが一気に自身に襲い、苦痛の咆哮を上げ、空へ逃げる。

「静流、どうした?」

「MPが尽きた!あいつ俺の全魔法食らってもピンピンしてやがる!」

 俺はMP回復のポーションを飲む。どれほどのダメージを与えられてるかわからないが、ポーションをすべて使って倒せるかどうかだ。

「静流、お前は観察に回れ。弱点を見つけるんだ」

「は?俺が一番のアタッカーだろ!早々に決着付けるなら……」

 俺の反論にリーグは首を振る。

「急がば回れだ。弱点を見つけてそこを攻撃する方が遥かに時短になる。それに無駄にポーションを使っても倒せなきゃ意味がない」

「……だったら俺があいつを引き付ける!観察に回るならお前の方が!」

「俺は観察することに向いてない。そういうのは昔の仲間に任せてきたからな。それに、みんなを見ろ」

 俺はリーグに言われ仲間たちを見る。作戦通りに動く彼らに隙は無く、的確にドラゴンの攻撃を防ぎ切り、遠距離攻撃部隊は的確にドラゴンに攻撃を当て続けていた。また盾を持たない前衛職はドラゴンの弱点を探るように立ち回り、攻撃を仕掛け、すぐさま撤退を繰り返していた。

 非戦闘要員のメンバーもただ見ているだけではない。負傷した仲間をポーションなどで回復、支援魔法などを唱えフォローしている。皆が皆を支え、自分たちができる精一杯で戦っていた。

「皆強くなっている。お前たちに頼って何もできなかった奴はもういない。皆精一杯戦う覚悟があるしその実力もある」

 そう言いながらリーグは俺の目を見る。

「みんなを信じてみないか?俺たちはみんな”仲間”だろ?」

 俺はそこで目が覚めた。

(俺は焦りで何も見えなくなっていたんだ。仲間がいる。時間もまだまだある。俺も俺ができることを!)

 俺はリーグの目を見つめ返し、しっかりと返事をする。

「分かった。俺が必ずあいつを倒す糸口を見つける!」

 その返事を待ってましたと言わんばかりにリーグが笑うと、仲間たちに指示を出す。

「盾部隊!挑発でドラゴンを惹きつけろ!静流が弱点を見つけるまで耐え抜け!魔法使い部隊!攻撃をやめて盾部隊の支援をしろ!」

 その指示に仲間が呼応する。挑発によりドラゴンが盾部隊へ苛烈な攻撃を繰り返す。俺はドラゴンが地上に降りてきた時には時止めで弱点を調べ、空へ上がった時はその行動原理から弱点を探す。

 ドラゴンの鱗は地上に降りた時、一歩も動かず近接攻撃は必ず滑空攻撃だけだ。尻尾はブンブンと振り回され、背後へ回るのは難しい。時止めでしっぽを攻撃してみたが、ダメージはあるものの煩わしいといった感じでしっぽを振る勢いが増すだけだった。

 魔法も様々な属性魔法を放ってみたが、どれも大差ないように思える。

「弱点はないのか!?」

 俺は一旦リーグの元へ戻る。

「何か分かったか?」

「いや、これと言った決定打は見つからない。あいつは全身鎧でも着てるのかってくらいに隙がない」

「あの鱗さえ剝がせればダメージを与えやすくなるはずだ」

「あれが鎧のようなものだとするなら死神の時の鎧貫通でもなければ無理だ。あれがスキルだったらよかったのに」

 死神のスキルは無限斬撃と死のオーラのみで、鎧貫通やスキル無効なんてものはなかった。死のオーラはドラゴンに効果がなかった。

「鎧を着てあんなふうに空は飛べないはず。どこかに隙があるはずだ」

 リーグと俺が作戦会議していると、近接戦闘部隊の一人が攻撃を仕掛けていた。

「飛ぶなクソトカゲ!この羽落としてやるわっ!」

 地上に降り立ったドラゴンの羽に攻撃を仕掛けているが、やはり鱗に弾かれているようだった。

「なあ、関節部分を攻撃してみるってのはどうだ?」

 俺が何気なく言った言葉に、リーグがハッとする。

「全身鎧は動くために可動域がある。関節部分だ。もしあいつの鱗が関節を覆うようにできているのなら地上での戦いは無意味だ」

 そう言われて思い返す。ドラゴンの攻撃は全て空からか火を噴くかであり、地上で唯一動くのはダメージがほとんど入らないしっぽのみ。地上で足の一本すら動かさなかった。そんな状態で空が飛べるはずがないし、空では足を腹の方に倒している。つまり動いているのだ。

「弱点は空にいるとき。いや、空へ舞う瞬間だ!」

 今まさに空を飛ぼうとしているドラゴンを見た俺は時止めを使い、ドラゴンの体を見る。鱗と鱗の間に隙間があった。先ほどまでは隙間なく敷き詰められていたのが、開いているのだ。

「ここだっ!!」

 俺は鱗の隙間に剣を突き刺し、時止めを解除した。

「グオオオオオオッ!!」

 ドラゴンは咆哮を上げ、地面に倒れる。鱗を見ると、隙間を埋めようと動いているものの、剣が邪魔してその弱点をさらけ出していた。

「「いまだ!!総攻撃!!」」

 リーグと俺は同タイミングで同じ指示を皆に出す。魔法部隊は貫通攻撃主体で攻撃し、近接部隊は鱗の隙間を攻撃した。その総攻撃でドラゴンは光の粒子へと変わっていった。

「勝ったっ!!」

 俺たちは誰一人失うことなくドラゴンを倒せたのだった。

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