時間停止の能力あるなら、他に能力いらなくない? 作:Firefly1122
奴の無限斬撃を回避した俺のトリックはもちろん、時止めによる回避だ。どう考えても人が動く速度よりも早く放たれる、空間すらも切り裂く斬撃を普通に回避するのは無理だ。俺は奴の剣が振るわれる瞬間に時を止め、背後に回ったのだ。その時に攻撃してもよかったのだが、レベル差があるからと調子に乗ってる奴の心を折るのが目的だ。今まで何の罪もなく、生き返りを望んだ人々を殺した奴への罰だ。
また最後腕や首を切断する際は、1発では切れないために数回切る必要があった。恐らくこれは防御力に対し俺の攻撃力が足らないからだろう。恐らくは1ダメージしか入ってなかったに違いない。時間を止めて切り続ければ時間を解除した際に、そのダメージが一度に入る。無限斬撃の回数が何回かは分からないが、腕を切るだけで300回、首を撥ねるのに800回は切った俺の攻撃は無限斬撃を超えるだろう。しかも俺からしたら長い時間だが、相手からしたらそれはまさに一瞬の斬撃だろう。これが無限斬撃を超える斬撃の正体だ。
俺が剣をしまうと同時に脳内に流れる文字。
『エクストラスキル「気剣、無限斬撃」を取得。ユニークスキル「
またその他複数のスキルを手に入れた。
「いやいやおかしいだろ。というかエクストラユニークとユニークスキルって簡単にゲットできないやつじゃなかったのか!?」
俺は自分の脳内に流れる文字にツッコミを入れる。それから、自分の力がみなぎってくる感じがあった。これはおそらくレベルアップだろう。俺は情報整理の為に一度町に戻ることにした。
町に戻るとさっそくさっき俺を見送ってくれた騎士に話しを聞かれる。倒したことを報告すると、驚き、そして感謝してくれた。そしてこの世界のことを知るならやはり。
「で、私のところに戻ってきたということか」
一馬のところだろう。倒した報告もしたいしエレメンツのお礼もしたかったから他に選択肢などない。
「で、どう思います?」
俺はスキル獲得のことについて聞く。すぐに答えが来ると思ったが、一馬は考え込む。
「まず前提として、エクストラスキルやユニークスキルは取得すること自体が難しい。ただ倒すだけで取得するとは考えられないのだ。ましてや相手のスキルをそのまま自分のスキルにしているわけだ。これは君のスキルに関係あるのではないか?」
そう言われて俺は一つだけ可能性を考える。それは取得者だ。いまだにどんなスキルかまるで分かってないが、もう一つが時間操作であることを考えてもこれが可能性として高いだろう。一馬にそのことを伝えると、それじゃあと俺をスキルカスタム屋に連れてきた。
「スキルは魂に結合されていて、自分ではスキルを引き離したりはできない。また、エクストラスキルのような特殊なスキルは、スキル同士を結合させてできる場合もある。ここはいわゆるスキルの統合や分離、消去を行う店だ」
「なるほど。それでここで何をするんですか?」
「この店では統合や分離の他にも1000Eで自分の持っているスキルの一覧を作ってもらえる。それで君のスキルについて分かるはずだ」
「なるほど」
俺は一馬に促されカウンターに行き、スキル一覧の作成をお願いする。
「それでは、この水晶に手を触れてください」
俺は言われるがままに水晶に手を触れると、水晶の中で青い渦が回る。しばらくするとその渦が紫に染まり、渦が止まる。それと同時に水晶が明るく光る。
「はい。解析が終わりました。ではこれを書き留めてきますので少々お待ちください」
店員さんは水晶を手に持ち、店の奥に消えていった。待っている間、俺はレベル鑑定紙を使う。町を出る前に買ったものだ。レベルアップした感じがあったため、どれくらい上がったか気になった。奴はレベル30台だという話だ。ゲームではレベル10くらいまで上がっててもおかしくない。俺は鑑定紙に手をかざすと、うっすらと文字が浮かび上がってくる。鑑定紙には俺の名前と今のレベル、それからステータスが書かれていた。
「は?」
俺は目を疑った。レベルはたったの3。恐ろしいほどのレベルの低さだ。この世界ではそういうものなのか?それとも奴の経験値は大したことなかったのか?俺は困惑した。そんな俺の様子を見た一馬はチラッと俺のレベルを見て、
「すごいな。もうレベル3なのか」
と感心したような声を出す。
「いやいや、レベル30台のプレイヤーを倒してレベル3って低すぎないですか?」
「いや、この世界ではこんなもんなんだ。何ならレベル2になるのに5日かかるからな。たった数時間でレベル3って相当だ」
俺はいまいち納得できないが、この世界ではそういうものなのだろう。俺が項垂れていると、奥から店員さんが出てきた。
「お待たせしました。こちらが一覧になります。今後能力取得した際には、こちらに手をかざすと項目が増えます」
俺はクリスタルに手をかざし支払いを終えると、店員さんに笑って見送ってもらった。
一馬と共に家に戻り、俺のスキルを確認する。
ユニークスキル「時間操作」―時間を自由に動かすことのできる神の御業。時間停止の際に与えられたダメージは、再び時間が動いたときにすべて与えられる。
ユニークスキル「取得者」―相手を倒した際に得られる経験値の倍率が大幅に上昇。また、相手の持っていたスキルをすべて自身のものにできる。
ユニークスキル「殺人者」―プレイヤーとの戦闘の際に、自身のステータスを大幅に上昇。プレイヤーを殺した際に得られる経験値倍率が大幅に上昇する。
ユニークスキルは3つ。読むだけでも分かる時間操作と取得者の桁違いの強さは目を見張るものがある。時間操作に至っては神の御業とまで書かれている。
「やはり君がユニークスキルやエクストラスキルを手に入れられたのは、君のスキルによるものだったか」
一馬は俺のスキルを見て納得しているようだった。取得者という名前であるため、何かを得るものだとは思っていたが、まさかスキルまでも得られるとは思っていなかった。そして取得者で得られたのが殺人者だ。
「あいつこんな能力持ってたのか。道理で今まで誰も勝てなかったわけだ」
レベル差があるだけでなく、プレイヤーとの戦闘の際にステータスが上がっていたとは無茶苦茶だ。さらにはあの威力のエクストラスキルだ。誰も勝てなかったであろう。俺はふと思うことがあった。
「あいつなんで俺の攻撃で死んだんだ?」
ステータスだけ見たら俺の攻撃では1ダメージしか入らない。また、レベル3の俺のHPは120なのだが、奴はレベル30。優に体力1000を超えていただろう。たった1100ダメージで倒せたのは不思議だ。
「恐らく弱点ダメージだろう。この世界は弱点を突くとダメージ3倍になる。君の話では首を800回切ったそうだな。首は当然弱点だ。単純計算で2400ダメージ、それだけ食らってようやく死んだんだ。化け物であったのは間違いない。たとえ1ダメージでも弱点をつければ確実に3ダメージ入る」
「0ダメージとかはないんですか」
「ないな。どんな攻撃でも受ければ無傷とはいかないのだ。もちろんそれは生身に受けた場合だが。鎧に受ければ鎧の防御力分マイナスされて攻撃が入る。そのため鎧の防御力以下であれば0ダメージになる」
俺は奴の腕と首、すなわち奴の露出した生身の部分を切ったため、確実にダメージが入ったのだ。本当に不思議な世界だ。
そしてもう一つ気づいたことがあった。それは殺人者はユニークスキルであることだ。
「もしかしてあいつ、前世から殺人鬼だったのかもしれないな」
「それはどうしてそう思うんだい?」
「この殺人者はユニークスキルです。ユニークスキルは種族、個人によって異なるスキルだと聞きました」
俺の言葉に一馬もはっとする。
「奴がどう願ったのか知らないですが、恐らくは『もっと人を殺したい』だったのではと」
「なるほど。それでこの能力が授けられたと。PK大好きではなく殺人が大好きだったわけだ」
「まあ死人に口なし、真相は分かりませんが、これ以上やつのことを考えると胸糞悪くなる」
「違いない」
俺たちは本をめくり、スキルを確認していった。神様が言っていたノーマルスキルやレアスキルというものは奴が最初に放ってきた軌道が具現化して放たれるスキル真空斬とヘルハウンドの縮地、奴は使ってなかったが奴を倒したときに得られたスキル、高速移動、能力向上、空間斬りといったスキルもある。
まず縮地は初速から最高速度で動くことが可能なスキルで、高速移動は文字通り高速に動くことができるもの。また能力向上はすべてのステータスを一時的に上昇させるもので空間斬りは空間そのものを斬ることで自身の姿を隠すこともできるらしい。
そして高速移動と空間斬りを統合し作られたのが、無限斬撃だ。ステータス上昇系のものを持っているあたり、レベルというより自身のステータスだけで今まで勝ってきたんだろう。脳筋と言っても差し支えない。
「それにしてもレベル30でたったこれだけしかスキル手に入れられないのか」
「いや君がそれ言うのか……」
この世界のスキルの手に入れづらさに嘆くと、一馬が呆れながらツッコんでくる。他の人から見たら、レベル3でこれだけのスキル持ってる俺はおかしいだろう。というかゴブリンなんのスキルも持ってないんだな。
「ゴブリンは集団で1体だ。能力やステータスというより数の暴力で襲ってくる」
あまりにも弱いせいであまり気にしてなかったが、思えばゴブリンは1体倒したら次々と襲ってきた。神によって作られた魔物は能力ないやつもいるようだ。
一通りスキルを確認し終えると、一馬はコーヒーを片手に尋ねてくる。
「君はこれからどうするんだ?」
「どうするって……もちろんこの世界のラスボスとやらに挑みに行きますが」
「そうか。ではまずは試練の塔に行きなさい」
「試練の塔?ああ、あの森の奥から伸びてたあの塔ですか」
「そう。あれは次の階層に進むためのエレベーターとなっている。それに乗れば次の階層にいける。だが、試練の塔はその名の通り試練らしいボスがいる」
俺はゴクリと唾をのむ。
「1層のボスは絶対守護者と呼ばれる騎士だ。名前をアルティメットガーディアンという。この世界ができて数千万、いや下手すれば億を超える者が挑んだが、突破できたのは1万程度という話だ」
「とんでもない強さですね」
「各階層ごとにボスがおり、それぞれ攻略方法はあるが、このアルティメットガーディアンだけは純粋な殴り合いになる。もっとも、奴はスキルと圧倒的なステータスを持って襲ってくるから、殴り合いとなると相手の方が分があるが」
「スキル……」
「ああ、スキルはユニークスキル『絶対防御』。状態異常は一切無効、物理攻撃も魔法攻撃も半減する。そして奴のステータスだが、HPは五万、攻撃は鎧を付けていても一撃で殺されるほどの攻撃力だという。防御力も桁違いで生半可な攻撃は絶対防御のせいで半減するうえ奴が付けている鎧でダメージが入らないこともしばしば。また遠距離からの攻撃は巨大な盾で防いでくるため、まさに絶対守護者の何相応しい強さだ」
「は?そんな奴どうやって……」
「だから億のプレイヤーが挑んで1万程度しかクリアできなかったんだ」
俺は絶句する。第一層でこれだ。まだ上があるというのだから、この世界の理不尽さは分かるだろう。それでも俺は……
「ゲーマーなら、そんなことで諦められないよな。クリア者がいないゲームをクリアしてこそ、真のゲーマーってやつだ」
そんな俺を見て一馬は笑う。
「君ならそういうと思ったよ。もう私から言えることはない。ゲームであってゲームでないこの世界の最初のクリア者になってくれよ」
「もちろんです」
俺は一馬と握手を交わし、外へでた。