時間停止の能力あるなら、他に能力いらなくない?   作:Firefly1122

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再開

 作戦開始場所となるキャンプ場へ着くと、すでにかなりの人数のプレイヤーが慌ただしく準備していた。このキャンプ場は塔の入り口で、街から外へ出たり入ったりするときの感覚と同じ感覚になり、外から見た景色と仲から見た景色が全く異なる形になっている。例えば外からは木の柵で囲われた場所にキャンプが3つ程度だったものが、中に入ってみると6つ、7つとあり、さらに外から見たときはなかった建物まである。これは街を作る結界と同じ働きをしているためだ。俺は準備している騎士団を眺めながら歩いていると、横から強烈なタックルを食らった。

「い……たくはないな」

 レベルを上げ、装備をしているため、タックルを食らってもダメージはなかった。ふとぶつかって来たであろうものの正体を見ると、よく知る制服の少女だった。それは紛れもなく俺が通っていた学校の女子の制服である。

「ごめん、大丈夫?よそ見してたせいでぶつかっちゃって」

 と手を差し伸べると、少女はこちらを見て、あー!っと声を上げた。

「こっちの世界に来てたんですね!よかったぁ!二度と会えないかと思いました!」

 手を取るとすぐに立ち上がり俺にすがってくる少女。俺は唐突のことで頭が混乱した。

「えっと……?」

「あっ、覚えてませんか?そうですよねー!もう1か月は経ってますし」

「え?1か月……あーあの大災害の被害者か……でも会ったことあったっけ?」

「はいっ!」

 少女は元気に返事をする。そして少し離れて自己紹介を始めた。

「私は藤原葵と申します。あなたには地震で足にガラスが刺さって動けなかったところを助けてもらいました。と言ってもその後建物が崩れて死んじゃったんですけどね」

 俺はそれで思い出した。背負って建物に避難したときの女子生徒だ。

「ああ、思い出したよ。結局助けられなくてごめんな」

「いえ、謝らないでください。あれは仕方ありません。むしろ絶望的な状態から助け出そうとしてくれたんですから感謝しかありませんよ」

「ところで君はどうしてここに?もしかしてこの作戦に参加するのか?」

「ええ、まあ。私にできることなんて荷物運びくらいですけど」

 俺は考えた。俺と同時期にこっちに来た彼女は今何レベルくらいなのだろうか。俺は最高効率でほぼ休みなくレベリングしていたため、28になっている。それは取得者と時間操作のおかげだ。俺と同じことをできるプレイヤーはいないと言ってもいいだろう。

「君は今何レベル?」

「葵って呼んでください!」

「葵は今何レベル?」

「やだっ!名前呼ばれるの照れちゃいますね!」

 なんかむかついた。こちらの質問には答えず、要望に応えてやっても無視してきやがった。俺は冷静になり、もう一度質問する。

「今、何レベル?」

「レベルですか?まだ6レベルです!」

 驚いた。まさかまだ2桁にすらなっていないとは。というかよくそのレベルでここまでこれたと思う。道中はレベル2桁のモンスターがこれでもかと襲ってくるのだ。騎士団は支給された強い武器と防具を持ってるだろうし、それなりのレベルもあるだろう。この辺にいる先遣隊のプレイヤーもそれなりのレベルはあるだろう。また、強力なスキルを持っていれば道中の相手には後れを取らないだろう。しかし彼女はレベル6だという。見た感じ騎士団でもないようだし、レベルが低いということはろくに戦ってないであろう。

「どうやってここまで?」

「えっとですねー。街の外ってどうなってるんだろーって思って外に出たら、急にワンちゃんとかに襲われて、走って逃げてるうちにここに来ちゃいました」

 デスハウンドは走って逃げれるような相手ではない。仮にも犬だ。人間が全速力で走っても犬から逃げられないだろう。だとすれば彼女のスキルは速度上昇系だろうか?

「君のスキルは?」

疾走者(はしるもの)です。神様に足が動けばあの時助かったのになーって言ったら貰いました」

 話を聞くと、どうやら俺が持っている縮地と高速移動にさらにプラスアルファの機能がついて統合されたスキルらしい。加速力と最高速度、そして障害物をものともしないスーパーアーマーがつくようだ。そしてこれらは俺のスキルの完全上位互換で、いくら走っても彼女に追いつけないということだ。

「それで、どうやってレベル上げたんだ?」

「このキャンプを拠点として活動する先遣隊の方や騎士団の方に手伝ってもらってレベル上げました!」

「手伝って……?」

 俺たちが話していると、唐突にプレイヤーが割り込んできた。

「こいつは俺たちに戦わせて逃げ回ってただけだぞ?ただの寄生だ!」

「ああ、なるほど。大体把握した。ところで君らは?」

 話しかけてきたプレイヤーは髪を逆立てた赤髪の男と髪を首まで伸ばした青髪の男だ。装備は街でそこそこ高く売られていた装備で、武器はゴールドソードに匹敵する槍と弓だ。それだけでこの層ではそこそこの実力者であることが分かる。

「俺の名前はリーグ。こいつはオリーブだ」

「俺は静流だ。で、寄生ってのはどういうことだ?」

「パーティーについて来て、何もせずに報酬だけ取っていくようなやつのことだ」

「いやそれは分かってる。聞きたいのはこの世界でそんなことが可能なのかということだ」

「ああ、なるほど。お前、パーティー組んだことないのか」

 リーグとオリーブは丁寧にパーティーについて説明してくれた。もっとも、リーグの説明は短く分かりにくかったため、オリーブが補足してくれる形であったが。

 リーグとオリーブ曰く、パーティーは魂の共鳴と呼ばれるものにより確立され、魂の共鳴が繋がっている者同士で経験値を分担できるそうだ。そのためたとえ戦闘していなくても仲間が倒してくれた敵の経験値を得られ、強くなれる。仲間を危険に晒さず強くするという点では素晴らしいが、これを利用すれば寄生プレイができてしまうため、信頼できるプレイヤーとしか組む人がいないようだ。また、パーティーを組めば仲間の体力が脳内に浮かび上がる。これにより、仲間がピンチだと分かればすぐにカバーに入ることができる。他にもどれだけ離れていても魂の共鳴が繋がっていられる範囲内であれば補助魔法をかけられたりと様々な特典はあるようだ。

「魂の共鳴の範囲は同じ層の同じダンジョン、または同じフィールドにいる者同士だ。ここ、塔の最前基地の周辺の森と森に入る平原ではフィールドが違うため、魂の共鳴が途切れてしまうから注意だ」

「なるほど……てことは葵は何もせずこの森の敵を倒してもらってレベル上げたってことか」

「ああ、ほんと何にもしなかったよな。何なら敵を引きつれて来やがったからな」

「えっと……てへっ?」

 舌を出しウインクする彼女に、リーグとオリーブが殺意を向けたのは気のせいではないだろう。とりあえず何かあっても守ってやれるプレイヤーが彼女を守るしかないだろう。俺は頭を掻く。ここにいるということは作戦に参加するということだろうし、このままでは足手まといにしかならない。最低限身を守れるだけの戦闘技能は身につけさせるべきだろう。

「なあ葵」

「は、はいっ!」

 急に名前を呼ばれた葵はビクッと体を震わせる。

「これからこの世界での戦い方を教える。パーティーを組んでくれ」

 そういうと、葵は笑顔になり喜び始める。リーグとオリーブは俺に心配そうな顔を向けてきたが、心配ないと仕草で伝える。

「一人でここまで来た静流なら問題ないだろ。そいつを戦えるくらいにはしてやってくれよ」

「そのつもりだ」

 俺は葵とパーティーを組み、葵の危険が少ない平原へと戻った。

 

 平原に着くとさっそくデスハウンドが現れる。レベルは2、危険は全くないだろう。

「ほら、あいつを倒してみてくれ」

「ええっ!?無理ですよ!怖いです!」

「あの塔のボスはこいつよりももっと怖いぞ。こいつくらい倒せないとこの先やっていけない。いざとなったら守ってやるから戦ってこい」

「ううっ……わかりましたよぉ……」

 すこし半泣きになりながら前に出た葵は、腰に携えた短剣を握る。その姿勢は生まれたての小鹿のようだった。俺はこの先どうなるか心配で仕方ない。

 葵が構えたをの皮切りに、デスハウンドが葵に向かって飛び掛かる。その瞬間、葵は物凄い速度でデスハウンドから逃げ出した。その速度は想像以上のものだ。葵が走ったところに砂煙が立ち上り、それに気づいたモンスターが寄ってくる。しかしモンスターは葵に追いつけず翻弄され続けていた。

「こいつはすげえや。ブラックパンサーよりはやい」

「のんきなこと言ってないで助けて下さあああい!」

 仕方ないから時止めで敵を全滅させ、葵を捕まえた。

「あっ!?えっ!?」

 突然自分が捕まえられたことに驚き、目を丸くする葵。俺は呆れた顔で彼女を見つめた。

「いいか、この程度の敵は君のレベルであればまず負けない。その短剣とその足の速さで一気に仕留めてしまえ」

「うぅ……怖いですよ……」

「怖がってたって何も始まらない。君の身を守ってくれる人がいつでもいるわけじゃない」

「……わかりました」

 再び現れたデスハウンドに短剣を向ける葵。目をつぶり、前に飛ぶように攻撃を繰り出す。いや、飛んでいる。超高速で前に飛んでいる。短剣が赤く光っているため、これはスキルなのだろう。赤く光った短剣の軌道が一筋の線となりデスハウンドを貫いた。スキルの効力がなくなり、葵はお腹から地面に墜落し、デスハウンドは光の粒子となって消えた。

「やったな」

「え?やったんですか?」

「間違いなく君が倒したんだよ。しかしなんだ今のは」

「えっと。目をつぶったら頭の中に文字が浮かんできて、それをなぞるように唱えたらいつの間にか倒してました」

 なるほど。俺がスキルを発動するときと同じだな。これはVRゲームをやるときに身につけた技能であり、VRゲームを触ってないプレイヤーには難しいことかもしれない。本来魔法やスキルというものは唱えることで発現する。例えば俺の時間停止の能力は時間操作の能力であり、時間操作と口に出すことで発現する。またストーンショット等の魔法も同じで、口に出すことで魔法を放てる。しかしそれは口に出すことで相手にどんなスキル、または魔法が飛んでくるかが分かるという弱点が存在するのだ。それはPVPにおいて致命的な弱点となる。それを克服するのがVRゲーム特有のシステムだ。本来口に出すことでしか発動しないスキルや魔法を脳内で唱えることで発現させるという技術で、これにより相手にスキルや魔法を悟られずに発動させられる。これを無詠唱発動と呼ぶ。感覚としてはキーボードを叩くことに似ているだろうか。最初は一つ一つ見ながらタイピングするが、そのうち考えるだけで指が動き、打ちたい文字をタイピングできるようになる。それと同じかもしれない。本来この技術を身につけるのにはそれなりの経験が必要なのだが、葵はそれを目をつぶり頭の中にあるスキルを思い浮かべることで発現させた。全く意図してない形だったのだろうが、才能はあるかもしれない。

「葵はVRゲームはしたことあるか?」

「VRゲーム?いえ、聞いたことくらいしかないです」

 葵はきょとんとしているが、俺にとっては死活問題である。ゲームに似た世界だからゲームを元に説明できるが、ゲームをしたことがない相手にどう説明しろというのだろう。

「まあいいや。それじゃあ、さっきみたいに敵を倒してみてくれ」

「さっき?なんか体がびゅーんてなってどさーってなったやつですか?」

「ああ、うん」

「どうやったんですか?私」

 俺は頭を抱えた。

 

 一つ一つ説明し、葵は無事無詠唱発動を覚えた。そしてそれをデスハウンド相手に実践しようとしている。

「相手を見て、脳内でスキルを浮かべて、撃つ!」

 説明を思い出しながら、無詠唱発動し、デスハウンドを葬る。

「やった!やりましたよ!」

「ああ、おめでとう」

 ちなみに彼女が発動させているスキルは、短剣のスキル「一閃」。前方へ超加速し、敵を貫くという技で、1対1でかつ相手を正面に捉えている際にのみ効果のあるスキルである。

「しかし葵、短剣の持ち方どうにかならないか?それじゃあヒステリー起こして包丁握ってるヤンデレ妻みたいな持ち方だぞ」

「なんですかその例え」

 葵の短剣の持ち方はしっかり両手で柄を握り、お腹の当たりで構えるという持ち方だ。これではいざというとき対応できない。俺は葵に短剣の持ち方を教え、今度はスキルなしで戦えるように鍛える。

 昼頃に平原に出た俺たち。ようやく構えや無詠唱発動が完璧に身に着いたときには真夜中であった。

「今日はありがとうございました!おかげでどんな敵とも戦えるようになった気がします!」

 今日の訓練だけでブラックパンサーや今後出てくるであろうモンスターと戦えるようになったと思っているのならばそれは自信過剰だと思うが、レベル差によるステータス格差の理不尽さを教えたから無茶することはないだろう。

「明日は君のレベル上げだ。かなり強い敵と戦うことになるから君は見ていていい。いや、見て学んでくれ」

「はいっ!」

 葵は元気よく返事をした。俺たちは塔の最前基地へと帰り、キャンプを借りて眠りについた。

 目を覚ますと、俺の目の前に葵がいた。

「おはようございます!」

「……なんでいるんだよ」

 昨日の夜葵と俺は分かれ、別々のキャンプに入ったはずだ。

「今日も一緒にいれると思ったら我慢できなくなって!」

「そうか。だからって俺のキャンプに入ってこないでくれ。こんなとこ見られたらめんど……」

「おーい静流君?起きてるか?」

 ガバっとキャンプの入り口が開かれ、声の主が入ってくる。どうしてここのやつらはみんな勝手に人のキャンプに入ってくるんだ。声の主はゼラチナだ。

「……あっと!お楽しみの最中だったか!すまん!」

「ほらもう面倒くさいことになった!」

 俺は葵をキャンプの外に追い出し、ベッドをきれいに片づけて外にでる。

 

「それで、何の用ですか?」

「今回の作戦についてだ。我々騎士団は2つに分かれ、先遣隊ギルドのプレイヤーやギルドに入ってないプレイヤーは大きく一つのチームとなってもらった。ただし君は別だ。君のスキルだと一人の方が動きやすいのではないかと思ってな」

「俺のスキルがどんなものか分かってるんですか?」

「正確にはわかっていない。だが、ある程度は理解しているつもりだ。そこで提案だ。君には今回の軍隊すべてに指示を出してもらいたい」

「俺が?」

「そう。今回の戦いでは君が最高戦力だ。君の邪魔をしないように援護するつもりだが、それならば君に指示を出してもらった方がいいと思ってな」

 俺は考えた。確かに俺のスキルは俺にしか効果がない。今回の相手、アルティメットガーディアンの防御力は異常に高く、また攻撃力も高いと聞く。それならば危険がないよう立ち回り、的確に弱点を突かなければいけない。軍で動くとなるとその立ち回りも遅くなり、ダメージを受けるプレイヤーが出る可能性もある。ダメージを受ければ死ぬ可能性すらあるため、無茶に動いて戦ってもらうより、俺の支援をしてもらったほうが楽にかつ安全に戦えるかもしれない。

「わかりました。ただし、俺の指示を聞かなかった場合、命の保証はできませんよ」

「もちろんだ。皆にしっかり言い聞かせておくから安心してくれ」

 それだけ言うとゼラチナは立ち去って行った。葵は目を輝かせてこちらを見ていた。

「作戦の指揮官ですか!かっこいいですね!」

「人の気も知らずに……まあいいや。レベリングに行くぞ」

「はいっ!」

 俺は葵を連れて蟻の古城に向かった。

 葵のスキルは一気に距離を詰めて急所を的確につくことに向いている。今回はその戦い方を学ばせるために、やばいとき以外は時止めを禁止し戦うつもりだ。洞窟に入ると、一番最初の広場に出る。葵は背後に入り口しかない道の入り口で待機させ、俺の戦いを学ばせる。

「葵はここで待っててくれ。昨日の戦い方をもっと洗練した戦い方を見せてあげるから」

「はい」

 この言葉は本当だ。VRゲームの世界ではずっとこの戦い方で戦ってきたため、体の動かし方、詰めるタイミングなどすべて把握している。初見の相手でなければ無傷で勝つことは可能だ。

 さっそくベアアントが1体、俺に向かって突進してくる。素早く牙を躱し、足元へ入り込む。すれ違いざまに一発入れると、弱点を突かれたベアアントが悲鳴を上げる。しかし、素早くこちらを向き、再び突進の構えだ。

「危ない!」

 突然葵が声をあげるが、その心配は無用だ。能力向上、縮地、高速移動の重ね掛けで速度を上げた俺は、上からの蟻酸攻撃を回避し、壁を走って蟻酸を放ってきたベアアントの元へたどり着く。反応が遅れたベアアントの弱点部である腹に無限斬撃を放ち、仕留める。勢いが落ち落下する俺を食おうと牙を開くベアアント。その牙に剣を当て、体を翻し回避し、背中に乗り込む。縮地で一気に腹部に接近し、強斬撃。この一撃を受けたベアアントは光の粒子となって消える。休む間もなく3体のベアアントがこちらに接近。2体は後ろから蟻酸を吐き、1体が突進。素早く牙を躱し、強斬撃を打ち込み、続いて後衛のベアアントの元へ高速移動で詰める。ストーンショットにファイヤショットを重ね、燃える岩の弾丸を放つ。これにはベアアントは耐えられず、1対目が消えた。その後もサクサクと敵を倒し続ける。チラッと葵を見ると、目を輝かせてみていた。ちゃんと学んでいるのかは分からないが。

 4時間ほど戦闘し、葵と共にダンジョンを出る。レベル6の葵のレベルは8まで上がっていた。取得者を持っていなければこんなものかと俺は改めてこの世界のバランスのおかしさを認識する。

「静流さん!私も戦いたいです!」

「わかった。じゃあもうちょっと楽なところに行こうか」

 俺たちは土竜の巣穴に行く。あそこの敵のレベルは12。8レベルであってもなんとか倒せる相手だろう。バッドバットは俺が倒すとして、サーベルモグラくらいは倒してもらいたい。

 ダンジョンへ入ると、さっそくバッドバットが現れる。ニヤニヤといやらしい笑顔をした人面蝙蝠。盲目者を持っていた時は目が見えなかったから普通に切っていたが、これは切るのが躊躇われる。というか近づきたくない。俺はファイヤショットで撃ち落とした。サーベルモグラを見つけると、葵は前日教えた構えでサーベルモグラを狙う。葵は疾走者で一気に距離を詰める。サーベルモグラは腕の剣を振るい、葵を刈り取ろうとするが、葵はジャンプし身を翻して回避。素早く背後を取ると、一閃。サーベルモグラは弱点を突かれ、光の粒子となって消えた。その動きは前日のものとは違い、先ほど俺がベアアントと戦っていた時の動きだった。もともと運動神経はいいのかもしれない。それに見て覚えるあたり天才肌なのかもしれない。俺は始めて感心した。

 二人で敵を倒しながら奥へ進み、いよいよボス戦だ。今までの敵と比べ物にならない大きさのボスに、葵は委縮してしまっていた。もっとも、強さで言えばベアアントの方が強いのだが。俺は葵の肩に手を置いて、大丈夫だと語り掛けると。葵も息を吐いて、緊張をほぐす。刹那葵は疾走者で前に出ると、それに合わせてドン・サーベルモグラは剣を振り下ろす。しかし、葵はさらに加速、剣は空振りし、葵は背後を取った。トンっとジャンプし、短剣を構える。

「やあああああ!!」

 その一撃はドン・サーベルモグラの後頭部に突き刺さり、禍々しいオーラと髑髏を出して光の粒子へと変えた。まさに一撃必殺だった。

「なんだ今の……」

「えっと……さっき戦っててゲットしたスキルです。名前は死蝶一閃ですね」

 なんでも一閃の上位互換で、低確率で敵を一撃死させるという能力を持った一閃らしい。しかしボスにまで効くとはとんでもないスキルだ。

「いいスキルゲットしたな。これなら今後も心配なさそうだ」

「えへへ」

 その後も俺たちは土竜の巣穴を出たり入ったりし、レベリングに勤しんだ。

 

 あれから六日が経ち、いよいよ作戦開始の日だ。今回参加するプレイヤーの数は騎士団3000名、先遣隊6000名、ギルド未加入プレイヤー500名の計9500名だ。かなり大きい戦いになりそうで、少し緊張していた。皆がワイワイ騒いでいると、演説台にゼラチナが現れる。

「聞けっ!我々は10年間、一度もここを突破できなかった!それは我々に力がなかったからだ!しかし今回は違う!突破できる兆しがある!皆も聞いているだろうが、私が見込んだ一人のプレイヤーがこの戦いの要だ!今回の指揮は彼に行ってもらう!皆もしっかり言うことを聞くように!誰一人として死ぬことは許さない!」

 今まで見たゼラチナの雰囲気とは違い、皆をまとめるカリスマ的な雰囲気を出していた。これがギルド長の威厳だろう。俺はゼラチナに手招きされ、台の上に上がる。

「彼が今回の作戦の要、山口静流君だ。彼の言うことをしっかり聞き、勝手な行動をしないようにしろ!」

 皆が歓声を上げる中、一人の男が前に出て声を上げる。

「どうしてそんな子供が指揮官なのだ!私こそが指揮官に相応しいであろう!」

 そこに出てきたのはいつぞやの王様だった。

「彼の実力は確かだ。アルティメットガーディアンにダメージを与えられる唯一の人物と言っても過言ではない」

「ふん!そんな子供にそんな実力があるとも思えん!せいぜい私の身を護る盾になってもらう!」

「あなたを護るくらいならば敵を倒してもらった方がいい。そして的確に指示を出してもらったほうが尚更いい」

「そんな子供の指示など聞かん!話の無駄だ!さっさと作戦を開始するぞ!」

 そういうとエドマルスは騎士団の半分を連れて入って行ってしまった。仕方なく俺達も後に続く。中はかなり広々とした空間で、奥に蝋燭の光が2つ見える。その光に照らされて見えるシルエットは重厚な鎧を纏った大盾を持つ戦士だった。

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