バンドリ短編集   作:KaNO(カノ)

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バンドリ世界の謎は大体弦巻家


パステル*会議 前編

とある事務所のとある会議室。"隣の天才ちゃん“の異名を持つギタリスト曰く、どうせ使うなら広いほうがいいでしょ?ということで事務所の人に無理を言って借りた部屋のど真ん中にある机を今をときめくアイドルである5人が囲みながら座っていた。

 

「それではこれより第n回パステル会議を始めます」

 

幼い頃から女優の道を歩み続け今なお大人気女優として活躍しながらも、アイドルバンドであるパスパレのベースも務めるスーパー芸能人、白鷺千聖の一声でそれは始まった。

 

 

パステル会議。

 

 

パスパレの名が売れ始め、個人の仕事が増えてきた時に起こった解散未遂騒動。あの騒動以来最低でも月に一度は近況報告をしようということで設けられたのがこの会議である。そんなの5人揃って練習する時にでもすれば良いじゃないかと思うかもしれないが、ちゃんとした形でやらないと三日坊主になる、こういうのは雰囲気が大事、など理由は色々とあるらしい。

ちなみに最低でも月に一度というだけで全員の都合と予定が合えばいつでも誰でもこの会議を開くことができる。

 

「今回は千聖さんの招集ということでいいんですか?」

 

「ええ、みんな忙しいと思うのに集まってくれてありがとう」

 

「チサトさんが会議を開くなんて珍しいですね。定例会議以外だと私かアヤさん、もしくはヒナさんの中の誰かが開くことが多いですから」

 

「前前回の会議はイヴさんが開いたんですよね。たしかお題は『箸でハエを捕まえた写真をSNSにアップするか否か』でしたっけ?」

 

「あの時は大変だったよねー。イヴちゃんがどうしてもって熱弁するから、今までで一番長い会議になっちゃったもん」

 

「私は楽しかったから良かったけどな。みんな焦っちゃってさ、特に千聖ちゃんのあんなに焦った顔は初めて見たよー」

 

「宮本武蔵...ブシに一歩近づけたと思ったのでそれをファンの皆さんと共有したかったのですが...残念でした」

 

過去の思い出話ーーーとは言っても一ヶ月くらい前のものだがーーーに花を咲かせるアイドルたち。この状況を見れば彼女たちもアイドルの前にただの女子高生なのだと、誰もが微笑ましく思えることだろう。

 

彼女ーーー白鷺千聖が肘をつき顔の前で手を組みながら神妙な面持ちでいることを除けば、だが。

 

「みんな、早速だけど本題に入ってもいいかしら」

 

千聖から発せられるいつもとは違う並々ならぬ雰囲気を感じ取った四人はすぐさまお喋りをやめて体を千聖の方に向けて話を聞く体制に入った。

 

千聖はそれを見て軽く息を吐き、やがて覚悟を決めたような顔で話し始めた。

 

「まずは最初に謝っておくわ、ごめんなさい。おそらく今回の話はみんなにとって相当辛いものになると思うの。それでも.....私の話を聞いてくれるかしら」

 

真剣な表情で一人一人の目を見据える千聖。四人はそれぞれ、あの白鷺千聖がここまで言うこととは一体なんなのだろうかと一瞬狼狽えるが一度四人で顔を見合わせると力強く頷いた。

 

「もちろん聞くよ千聖ちゃん。これまでだって5人でどんな困難でも乗り越えてきたじゃん!」

 

「まあ千聖ちゃんが会議を開いたって時点で何かあることは予想してたしね〜」

 

「むしろジブンは千聖さんが一人で抱え込まないでこうしてみんなに話してくれたことが嬉しいっす!」

 

「ブシは目の前の敵から逃げたりしません!みんなで一致団結して挑めば何も怖くないです!」

 

辛いことがあると話したにも関わらず、嫌な顔をするどころかみんなで乗り越えようと言ってくれる仲間たち。千聖はいい仲間を持ったなと改めて認識し、強張っていた顔が少しだけ緩むのを感じた。

 

「ありがとうみんな。こんなことを聞くのは野暮だったようね。それじゃあ早速だけどこの映像を見て欲しいの」

 

そう言って千聖は何かのリモコンを取り出してそれを操作し始めた。

するとモニターのようなものが降りてきて電源が付き、そこに映像が流れ始めた。

 

「これって.....この前の私たちのライブだよね?」

 

「あっ!たしかビビキャンの子達との合同ライブだよね?この時のライブはるるるんってしたなあー」

 

ビビキャン。

 

正式名称ViVidCanvas。パスパレの次にデビューしたグループであり、彩たちの後輩に当たるアイドルたちである。

パスパレとビビキャンは色々とあったが、今ではビビキャンは目指すべき先輩としてパスパレを尊敬し、彩たちも可愛い後輩として接していてお互いに良い関係を築けているようだ。

 

「そうよ。これはその時の映像を借りてきたの」

 

「でも、この時のライブがどうかしたの?別に何も問題なかったと思うんだけど.....」

 

「ええ、ライブ自体は何も問題はなかったわ。とりあえずみんな、ここをよーく見て欲しいの」

 

そう言って千聖はライブの観客の映像をアップし始めた。拡大しても何故かほとんど画質が悪くならない。一体こんな良質な映像をどこで手に入れたんだと問いかけたくなるが、今はそんなことを聞いてる場合ではないだろう。

 

千聖が画面を拡大すると四人は画面に映った人物に気が付いた。

 

「あれ?これって.....」

 

「スタッフさんです!」

 

「へー、スタッフさんきてたんだー。言ってくれれば良かったのに」

 

「ええ、どうやらそのようね。でもそれ自体も別に大した事ではないわ」

 

スタッフがパスパレのライブに来ることは珍しいことではない。都合さえ合えば必ずライブに行ってるし、なんならライブの為に予定を調整するくらいだ。本人もパスパレファンを自称しており、自他共に認めるパスパレファンである。

 

「本当に問題なのはここからよ。みんな...覚悟はいいかしら?」

 

千聖の問いかけに四人は無言でじっと画面を見つめる。千聖はそれを肯定と受け取ったのかさらに映像を流し始めた。

 

「さっきの映像でスタッフさんがライブに来たことは分かったと思うのだけれど、それを踏まえた上でこの映像を見てて欲しいの」

 

「「「「?.........」」」」

 

「「「「............」」」」

 

「「「「.........!」」」」

 

「「「「あ、ああああああぁぁぁぁ!!!!!」」」」

 

最初は千聖の言葉の意味がよく分からずにただ映像を見続けていた四人だが、映像が進んでいくとだんだんと違和感を感じ始め、最終的にそれは確信に至った。

 

この映像はあのライブの後の握手会の映像であり、あのライブに参加していたスタッフももちろん参加していたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.....ビビキャンの握手会に、である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なるほど.......

 

 

 

 

これはつらい...............!

 

 

 

 

たしかにつらい...............................!!

 

 

 

 

たかがファンの一人が握手会に来なかっただけで大袈裟な、と思うかもしれないがここにいる5人は大なり小なりスタッフに好意を抱いてる者たちだ。その好意を抱いている相手が自分たちのところではなく自分たちの後輩の握手会に行ったのだ。一人の乙女としてもアイドルとしてもプライドはズタズタだろう。そのダメージは計り知れない。

 

「スタッフさん...ずっと私のファンでいるよって言ってくれたのに...言ったのに.....」

 

「へー、私でもお姉ちゃんでもなくてビビキャンの子を選ぶんだー。全っ然るんってしないなぁー」

 

「これがNTRというやつですか.....日本の文化は奥が深いです。勉強になりました。これはもう切腹をしてもらうしかありません.....介錯は私が」

 

あるものは呪詛のようにブツブツと何かをしゃべっており、あるものは目から光を無くし、またあるものはアイドルの口から出してはいけない物騒な言葉を口にしていた。まさに阿鼻叫喚である。

 

「み、皆さん落ち着いてください!もしかしたらスタッフさんにも何か事情が.....」

 

「いえ、それはありえないわ。麻弥ちゃん、スタッフさんの服装をよく見てみなさい」

 

「服装...ですか?....っっっ!」

 

「どうやら気づいたようね。そう、これはビビキャンのCDに付いている抽選券で当たる数量限定の超レアビビキャンTシャツ!そしてこれが示すことはただ一つ!!あの男は私たちを裏切ってビビキャンに魂を売ったということよ!!!」

 

麻弥の淡い希望も打ち砕かれ、とうとうパスパレの中でスタッフの裏切りが確定してしまった。

 

「でもねみんな、私は別にただこの事実を伝えてみんなを悲しませたかったわけではないの」

 

「千聖ちゃん...?」

 

この世の終わりのような顔をしているメンバーに千聖は優しく諭すように語りかける。

 

「もちろん私だってこの事実を知った時はみんなと同じように取り乱したわ。だけどここで騒いでるだけでは何も変わらないわ」

 

その言葉に思うところがあるのか、少し気まづそうな顔をする彩、日菜、イヴの3人。

 

「たしかにスタッフさんが私たちからビビキャンに乗り換えたのは悲しいことよ。でもそれならまたこっちに乗り換えらせればいいじゃない。そうでしょ?」

 

その言葉に光を失っていた3人の目に少しづつ光が宿っていく。

 

「.....そうだよね。奪われたならまた奪い返せばいいんだよね.....!」

 

「ちょっと今回は日菜ちゃんも本気出しちゃおっかなー」

 

「ブシの名にかけて必ず取り返してみせます!」

 

「あの、みなさん?やる気を出すのはいいんですけどくれぐれもやりすぎないようにして下さいね?特に彩さんと日菜さんと千聖さんはスタッフさんのことになると暴走しがちですから.....」

 

麻弥はスタッフに対して並々ならぬ感情を抱いてる三人に特に釘を刺しておく。

 

彩と日菜はともかく千聖はそんな心配をする必要はないのでは?と思われるかもしれないが、何故かスタッフがあのライブに行った事を特定し、ビビキャンの握手会にいた事を確認してどこから調達したかも分からない映像を使ってスタッフを取り返すためのプレゼンをしてる時点で暴走状態の彩や日菜と比べても大概にヤベー女である。

 

「ふふっ。みんなが私と同じ思いで良かったわ。それじゃあ『スタッフさん奪還作戦』の会議を始めましょうか」




ビビキャンに嫉妬するパスパレを書きたかっただけです。見切り発車なのでオチを全く考えていません。よって次いつ投稿できるか分かりませんが気長にお待ちください。
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