黒き少年は彩りの花々に魅せられて   作:咲野 皐月

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 皆さん、おはこんばんにちは。初めましての方は初めまして。そうでない方はお久しぶり……咲野 皐月です。


 今回は新作を書いてみました。

 前置きが短いですが、始めましょう。それではどうぞお楽しみください。


朝から天災に遭うのはかなり大変です

「……ん」

 

 

 窓から差し込む柔らかな朝日を受け……僕はゆっくりと目を覚まし、身体を起こした。ここ最近は休みがあった様で無い日がかなり続いた為、普段起きる時間よりも少し寝過ごした感覚に見舞われてしまった。

 

 

 ……あ、ここで自己紹介をしておこうかな。

 

 僕は盛谷(もりや) 颯樹(さつき)。高校三年生の17歳で、趣味は音楽鑑賞と読書とベースの三つ。最後の方に関しては……昨年度の文化祭で校外の生徒何人かと特別バンドを組んで、実際に演奏した事があるくらいだ。

 

 現在は学生としての一面も持ちながら、事務所所属のタレントをしていて、それと並行してPastel*Palettes(パステルパレット)のマネージャーみたいな事もしている。

 

 

 さて、そんな説明を軽く終えまして。

 

 

「……下へ降りて、顔を洗うかな」

 

 

 僕は先程まで横になっていた布団から離れ、自室を後にした。まだ寝間着から着替えては居ないのだが……まぁ、後で更衣はする(ここは自宅だから、と言うのもある)ので問題は無いだろう。

 

 

 そして一階に続く階段を降りていると、何やら下の方からワイワイとした声が聞こえてくるのが分かった。声の調子が速く聞こえるのがひとつあった為、これは……あの天真爛漫天災少女だと直ぐに察した。

 

 もう一つの声は、高校生にしては大人びている様な……そんな雰囲気を感じさせる様な声色だった。

 

 

「とりあえず下に降りてみようか」

 

 

 階段を降りるスピードを上げた僕は、声の聞こえて来た場所……1階にあるリビングへとたどり着く事が出来た。そして挨拶をするべく、声をかけようとしたのだが……。

 

 

「おっはよ〜、さ〜っく〜ん!」

「ひ、日菜ぁ! ……うわぁぁぁぁっ!!!」

 

 

 僕は目の前に居る少女───《るんるん天真爛漫な天災少女》こと……氷川 日菜に、思いっきりダイビングハグをされてしまった。そのせいで尻もちをつく羽目になり、腎部から鈍い痛みが伝わった。

 

 

 ……地味に痛いな……。早く離れないと。

 

 そう思って僕が顔を上げると、琥珀色の瞳をキラキラさせながら、日菜がこちらを見つめていた。

 

 

「あのなぁ、もうちょっと考えないの……? こっちは寝起きなんだからさ」

「えー? あたしは、さっくんを部屋に起こしに行こうとしたよー? けど、千聖ちゃんが『ダーリンは自分で起きて来るから、行かなくてもいいわよ』って言うからさー」

「そんな当たり前の事を、一々ちーちゃんに言われないでよ日菜……。こっちは最近忙しくて、ロクに寝れた試しも無いんだから」

 

 

 僕が身体を起こそうとした時、身体中が優しく包まれた感覚に見舞われた。出処の方を見てみると、そこには顔を紅くした日菜が目元を潤ませていた。

 

 

「さっくん、あたし達は同じバンドメンバーで同級生で幼馴染でしょー? だから、さっくんが辛くなるのを見ると、あたし達も辛くなるし……さっくんが笑っているのを見たら、あたし達もるんっ♪てするし」

「う、うんまあそうだけど……」

「だから……ね?」

 

 

 そう言って日菜は僕に覆い被さり、僕と顔を1cmにも満たない距離まで近づけて来た。少しでもここから顔を動かせば……目の前の彼女の綺麗な唇に、うっかりキスしてしまいそうな程であった。

 

 

「辛くなったり悲しくなったりした時は……いつでもあたし達を頼って良いんだよ? あたし達はどんな事があっても、絶対にさっくんの味方で居るから……」

「日菜……」

「さっくん……だぁい好きだよ♪」

 

 

 日菜がゆっくりと目を閉じて近づけて来たので……僕は何が起きても見えない様に、目を瞑って耐え凌ぐ事にした。今にも彼女とキスをしそうな近さなので、理性が持つかどうかの瀬戸際まで立たされていた。

 

 

 ……早く、何とかしてくれ!

 

 僕が心の中でそう思った……その時だった。

 

 

「……ふふっ♪ おはよう、ダーリン♡」

「……!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 

 な、何やってんのさちーちゃんは!? 今この緊急事態むてタイミングで、耳元に息を吹きかける様に声をかけるんじゃないよ!

 

 

 僕の耳元で囁いて来たのは……互いが生まれた頃からの幼馴染で、Pastel*Palettesのベーシストと女優をしている、元が付くけど天才子役の《ちーちゃん》こと……白鷺 千聖だ。

 

 ……って、説明してる場合じゃなかったよ! 早く離れないと……あっ。

 

 

ゴチーン!!!!

 

 

「「いっ……てぇぇぇ(たぁぁぁい)!」」

 

 

 僕と日菜は二人揃っておでこがぶつかり……突如として伝わった強烈な痛みに見舞われていた。後にそれは状況を傍から眺めていたちーちゃんにより鎮まって、朝ご飯へとありつく事ができたのだった。

 

 その後、ちーちゃんから美味しく頂かれるトラブルこそあれど、何とか準備を終えて学校へと向かう事にした。

 

────────────────────────

 

「ダーリン♪」

「さっくん♪」

 

 

 学校に行く為の通学路を通る最中でも、僕は非常に肩の狭い状況を味わっていた。左手には日菜がしがみついて居て、右手にはちーちゃんがくっ付いている……と言う、傍から見れば《両手に花》と言わんばかりであった。

 

 ちなみに僕は最初、断ろうとしたのだが……二人から上目遣いと涙目をされてしまい、最終的に折れてしまったのだ。

 

 

「あー、今日から新学期だってのに……この状況はどうすれば良いのやら」

 

 

 僕がここから先の展開に不安視をしたその時、お互いの学校に向かう為の分岐点へと来てしまった。左が花咲川へのルートで、右が羽丘と言う所である。

 

 

 ちなみにこれは余談なのだが……花咲川と羽丘の両校は学校間での交流がかなり強く、学校行事を合同と言う形で行なったりもしている。

 

 そのせいで……学校の垣根すら越えて誰かに会いに行ったりするなんて、いつもの事だったりする。

 

 

「ダーリンと離れたくないわ……」

「千聖ちゃん、往生際が悪いよー? さっくんが通っているのは羽丘なんだし、ここで一旦のお別れじゃーん」

「それはそうよ。……けど……」

 

 

 僕と日菜から掛けられた言葉に、一度は納得したちーちゃんだったが、まだ諦められない気持ちがあるのだろう……僕の制服の袖を強く握っていた。

 

 

 ……参ったな。このままここに立ち止まってたら、確実に始業時間に間に合わなくなるし……言ってしまえば、ちーちゃんや日菜も巻き添えを食うかもしれないからな。

 

 なれば。

 

 

「ちーちゃん」

「……ダーリン?」

「僕たちは学校が違っても、何もかもが離れた訳では無いでしょ? これから同じ高校三年生になるんだからさ」

 

 

 僕は彼女の整った顔を少し持ち上げて、声を掛けることにした。周りの人たちがワーキャーワーキャー騒いでいるが、この状況を治めるには致し方無しだろう(ここで渋れば、後々に面倒臭い事になりかねないので)。

 

 

「……」

「だから、暇な時は電話してよ。それぐらいなら応答するからさ。……まぁ、こっちにも事情があって出られなくなるのは勘弁して欲しいけど」

 

 

 ……さて、ここで言えるだけの事は、もう全部言ったんだけど……果たしてどうだ。

 

 

「わかったわ」

「わかってくれたんだね、ちーちゃ『ただし』?」

「言質は確り取ったわよ♪ 私が何もする事が無くて暇になった時……アナタの声が聞きたくなった時は、ガンガン電話をかけるから覚悟しなさい?」

「oh……」

「ふふっ、今から楽しみね♪ ダーリン♡」

 

 

 僕の言葉に賛同したかと思ったら……ちーちゃんは不敵な笑みを浮かべて、僕へとそんな宣言をして来た。周りに人が居るのもお構い無しにそんな事を言うもんだから、噂話の格好の餌食だよ全く……。

 

 

 そんなこんなで話を進めていると、後ろから何かが近づいて来る感覚が。それは音も無く忍び寄ったかと思えば、僕の首の後ろから腕を回して来ていた。

 

 ……わかったぞ、こんな事をするのは。

 

 

「リサ」

「おっはよー、颯樹☆ 登校してたら、颯樹の後ろ姿が見えたから驚かせようと思って♪」

 

 

 僕にいきなり抱き着いて来たのは、見た目こそギャルのソレと同じだが……実際は面倒見が良くて家庭的で女子力高めな女の子、今井 リサだ。

 

 昨年度は同じクラスに所属していて、度々からかわれてはキレイに返されて遊ばれる事が絶えなかったのだ。

 

 

「リサちー、おはよぉー!」

「おっ、日菜〜。おはよう☆ 千聖も」

「ええ、おはようリサちゃん。そして……私のダーリンに一体何をしているのかしら?」

「? アタシはただ、未来の旦那様である颯樹に愛情表現をしているだけなんだけどな〜☆」

 

 

 どっちも売り言葉に買い言葉で、ヘタしたらここで争いが起こりかねないこの状況が……本当に笑い事で済む話では無い。二人は絶対にここから退く気は無い様で、僕を抱き締める力を徐々に強めていた。

 

 

 ……あぁ、もう! こんな所で時間を潰してたら、本当に学校に遅刻する! そして僕の通っている学校が学校なだけに、とんでもない事になるのは明白だし!

 

 そう思ったその時、僕は今の今までずっと横に居た日菜と目が合った。……頼りにさせてね、日菜!

 

 

「日菜!」

「なーにー?」

「僕の左手を掴んで、そこから全速力で走って!」

「何それ面白そう、すっごくるんっ♪て来た! ……良いよー、任せて!」

 

 

 僕は日菜にそう頼み込んだ後、彼女の力を借りて二人のベーシストによる拘束から逃れる事に成功した。それを見た二人は顔を見合わせて驚いていて、気づいた時にはもう居ないと言う状況に陥っていた。

 

 

 ……その後の話なのだが、僕と日菜は始業時間には間に合いこそしたが、先に生徒会室に来ていた《つぐ》こと──羽沢 つぐみから注意を受ける羽目になり、式に何とか間に合う形で参加する事が出来た。

 

 一方の二人はと言うと、一人は風紀委員に……もう一人は生活指導の先生に見つかり、お説教を受ける事になったのだとか。

 

 

 ……全く。この先どうすればいいのかね……。




 今回はここまでです。如何でしたか?


 更新が不定期なこの小説ですが、続話を気長にお待ち頂けたら幸いです。


 それでは次回に……待て、しかして希望せよ。
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