今回は主人公が不在と言う事ですので……お話を二話に分けて、女子Partを描きたいと思います。その為に視点がコロコロ変わって行くかもしれないので、読む際は気をつけて貰えたら嬉しいです。
今回の一話では花咲川Part、次の一話では羽丘Partを書いていく予定ですので……よろしくお願いします。
それではスタートです。
「〜♪」
新年度になって入学・始業式を終えた数日後の朝……私はいつもの様に通学路を歩いていました。学年末のテストで……古文の追試を貰ってしまったけれど、何とか三年生に進級できて良かった〜。これも颯樹くんや千聖ちゃん達が、協力してくれたおかげだよね♪
「本当に颯樹くんには、私たちは色々とお世話になりっぱなしだな〜。まあ、この前の事に関しては……ちょっと怒っちゃったけど」
彼───颯樹くんには、色々な面で助けてもらう事が多くて、私はそんな彼の優しさに惹かれ、彼の事を好きになりました。その後は順風満帆で、アイドル活動も恋愛もお勉強もバイトも出来るのかな……と思ったけれど、現実はそこまで甘くは無くて。
そんな私の前に立ちはだかった障害は……なんと、一緒にパスパレをしている仲間である、千聖ちゃんや日菜ちゃんを始めとした、私とよく関わりのある女の子でした。
「颯樹くんを振り向かせるには、これくらいの壁は越えなきゃね。よ~し……彩、頑張りますっ!」
そう意気込んだ私は、学校に行く前にある場所へと訪れる事にしました。たまにお泊まりでお仕事があった時は、行けないけれど……毎朝殆どと言って良い程に訪れている所。
「……着いたね」
私が今訪れているのは、想い人である彼───颯樹くんの自宅。彼からのお誘いを何度か受けてここでお泊まりもしたし……なんなら、朝一番に来て彼と一緒に登校したいと思うけど、実際は私が寝坊してしまうのだって少なくないし、行ったとしても先を越されてしまうのが事実で、その機会は成されない事の方が多いのです。
「さーて、周りには誰もいないね……」
私は、制服のポケットから颯樹くんの家のスペアキーを取り出して、家のドアの鍵を開けました。鍵を差し込んで回したら解錠音が聞こえて来たので、私は鍵を外してドアノブを捻りました。
「失礼しま〜す……。颯樹くん、居る〜?」
一言挨拶をした私は靴を脱いで家の中へと入り、彼の部屋がある二階へと足を運ぶ事にしました。……電気が全て消えているのを見ると、颯樹くんは居ないのかな……。
「颯樹くん、居ないみたいだね……。じゃあ、颯樹くんが居ない今のうちに……」
彼がいない事を確認した後、衣装箪笥から半袖と長袖シャツを2~3枚程……皺が付かない様に丁寧に取り出しました。そして、事前に用意していた大きめの袋を取り出してその中へと直し込みました。
「こんなものかな……あとはここから出て花音ちゃんのところに行かないと」
とりあえず、誰かがここに来る前に……私は早く退散しなきゃ。そう思った私は、箪笥を音を立てずに閉めて家を後にしました。……ふふっ♪ これを見せたら、花音ちゃんはどんな反応をするかなぁ……楽しみ♪
そして周りに誰もいないことを確認したら私は学校に足を進めました……。
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「はぁ……午前中の授業が終わったよぉ〜。じゃあ、花音ちゃんの所に行こっと♡」
そう決めた私は、机の隣にあるフックにかけていた袋を持って……花音ちゃんの居るA組へと向かいました。
A組には風紀委員の紗夜ちゃんに、生徒会長の燐子ちゃんも居るからな……なるべく迅速に事を私の領分まで持って行かなきゃ!
「(でも……そう言えば、燐子ちゃんって颯樹くんの事になると、異様に鼻が良かった様な……?)」
そんな事を考えながらA組の教室に向かうと、そこには花音ちゃんがちゃんと居ました。……よーし、行動開始だ♪
「花音ちゃーん!」
「ひゃあっ!? あ、彩ちゃん……どうしたの?」
「こ、声が大きいよ! ここじゃ話しにくいから……屋上に行かない?」
「う、うん……」
花音ちゃんの返答が聞けたので、私はお弁当を持って一緒に屋上へと向かいました。それを見た花音ちゃんは不思議な顔をしていましたが、私はそれを気に留める事無く場所を移動する事にしました。
「……今の丸山さんですが、何かおかしくありませんでしたか? 白金さん」
「そうでしょうか……? いつもと変わりないと思いますけど……」
「……昼食を食べるだけで、あの袋は要りますか?」
「そう、ですね……。後を、つけますか……?」
「ええ。もし、盛谷さんの事で何やら一枚噛んでいるのであれば、本人へと後日報告が出来ますし」
「なら、行きましょうか……。バレないように……」
「ええ」
私たちのすぐ後ろを、こっそり追跡している人物が居る事も知らず……。
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教室から出た私たちは、真っ直ぐに丸山さんと松原さんを尾行していました……。後を行く時は、こっそり相手に見つからないように……。
松原さん達が屋上に入ったのを確認すると……私たちは聞き耳をたてました……。何を話してるんでしょうか……?
「花音ちゃん、颯樹くんの様子とか聞いてる? お仕事に行ってからもう4日経つけど……何の連絡も無いんだ〜」
「ううん、私の方にも連絡は来ないんだ……」
「そっかぁ……。花音ちゃんだったら、千聖ちゃんから何か聞いてないかな、と思ったんだけど……」
「千聖ちゃんは、普段から忙しいみたいだからあまり電話では話さなくて……」
傍から聞いている私たちの耳に聞こえて来たのは、盛谷さんと白鷺さんに関する事。確か、その二人は一週間ほどお仕事で不在にしている……と、聞いていましたが……。
と思ったら、何やら袋から出しているようですね……音からして衣類でしょうか……?
「あ、彩ちゃん……それって……!」
「うん♪ 颯樹くんのシャツだよ♪ 花音ちゃん、颯樹くんのことが好きなんだよね?」
「う、うん……でも、どうしたの? そのシャツ……」
「それはね……ここに来る途中で持ってきちゃったんだ♪」
……!? ま、丸山さんは……い、一体……な、何を言っている……んですか……!? あの服は彼の家に入って盗んできたんですね……、これは報告しなければ……です。
「白金さんは丸山さんと松原さんを。私は少しここから離れて、盛谷さんと電話をして来ます」
「わ、分かりました……頑張ります……」
「頼みました。……ふふっ、これで盛谷さんは私を見てくれるでしょうか……」
そう言って氷川さんは……わたしにこの場を任せ、階段を降って踊り場の前へと向かっていきました。……ですが、何やら最後にかなり不穏な言葉が聞こえたような……。わたしの気のせいでしょうか?
い、いえ……わたしも、自分のやるべき事を確りやらなければ……。わたしだって、颯樹くんに、見てもらいたいんです……から……!
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さて……とりあえず下に降りて今の様子を伝えなければ。
そう思った私は……ひとつ階をおりて、三階の階段の踊り場の前に向かう事にしました。
ここなら、通話している時に邪魔は余り入らないはずです。
「……颯樹から連絡先を聞いていてよかったわ。日菜と違って強引に行けないから、少し手間取ったけれど……」
そう言って私は、登録してある彼の電話番号で電話を掛けたわ。出てくれるかしら……。
「……ガチャ」
「もしもし、颯樹? 今『おかけになった番号は、電波の届かない所にあるか電源を切っている場合がございます』……クッ」
お仕事中ですか……、仕方ありません。メッセージとして送っておきましょう。
「『丸山さんと松原さんが不穏な動きをしていたわ。こちらで監視を続けるから、颯樹はお仕事頑張って』」
こんなものでしょうか……。さて、ここを離れて、白金さんたちの所に向かいましょうか。
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「ふぇぇ……颯樹くんの服……怒られないかなぁ……」
「大丈夫♪ ちゃんと説明するから♪」
「……で、それ……本当に、颯樹くんが、使っている……私服……なんだ、よね……?」
「うん……♪ 颯樹くんもお母さんもいなかったから持ってきちゃったんだ♪」
「い、良いのかな……」
……まだわたしには気づいていないみたいです。話を聞きながら、近寄って……見ましょう。
「大丈夫だよ♪ ちゃんと説明するから♪」
「その……本当に大丈夫……?」
「うん♪」
「そうなんだ……。そ、それじゃあ……に、臭いとか嗅いでも、いいのかな……?」
……に、匂い!? ま、丸山さんは……どこまでやる気なんですか!?
「いいと思うよ♪ 颯樹くんも見てないんだし存分にしちゃお♪」
「じゃ、じゃあ……少しだけ……」
丸山さんから服を受け取った松原さんは、それを自身の鼻に近づけると……クンクンと鼻を動かして匂いを嗅ぎ始めました。
「颯樹くんの香りがする……♪」
「ね? 颯樹くんに包まれてる感じになるでしょ? はぁ……幸せ♡」
「うん……♪ ありがとう彩ちゃん♪」
……出るなら、今……ですね。お説教の後にバッグを回収し、中身も一緒に没収しないと……。そして、氷川さんとこの事を共有しなければ……。
「ま、丸山さん……! 松原さん……!」
「ひゃあっ!? り、燐子ちゃん!」
「ど、どうかしたの?」
「どうかした……じゃないです……それ……颯樹くんの着ているシャツですよね……? しっかりとやり取りは聞いてましたよ……」
二人は驚いている様ですが……私は、全部……聞いていましたので、今更取り繕おうとしても……無駄、ですよ……。ここがNFOであれば、確実に……お二人の息の根を、止めていますからね……。
「二人とも……慌てても無駄ですよ……もうすぐ氷川さんも戻ってきますので……」
「さ、紗夜ちゃんも居るの!?」
「はい……。先程別れましたが、もうすぐここへ来る頃かと……「白金さん、呼びましたか?」」
するとそこには……額に、青筋を浮かべた氷川さんが居ました。この事を颯樹くんに……連絡は、出来たん……でしょうか……。この場に彼が、居てくれたら……なんて、無い物ねだりをしても、彼には利点が、ありませんから……。
「連絡は取れませんでしたが、盛谷さんにお伝えしておきました。あと、この袋は没収です」
「「そ、そんなぁ!」」
「全く……素直に彼に聞いておけばよかったものを……あとでたっぷりとしぼられてくださいね」
「それと……普段の颯樹くんが、怒るとどうなるか……丸山さんなら、既に……経験、してます……よね?」
私の言葉を聞いた二人は……揃って、見た事もない位に顔を青くしていました……。この様子だと、普段から余程こってりと、絞られているみたい、ですね……。
「さらにタイミングが悪い事に、今回は白鷺さんにも内密に行なっていたのでしょう。彼女からのお叱りも覚悟しておく様に」
「「そ、そんなー!」」
「……お昼休みが終わりますよ? モタモタしていたら、遅刻しますよ」
「「はーい……」」
かなり気を落とした様子で、二人は午後の授業へと向かって行きました……。その後の話に拠れば、丸山さんと松原さんは氷川さんと颯樹くん……更には白鷺さんから二時間にも渡る大説教を受けていた、のだとか……。
少しは《自業自得》と言う事で……反省、してくれたら良いのですが……。
今回はここまでです。如何でしたか?
前書きでもお伝えしました様に、次は羽丘Partを描きたいと思います。設定としましては……今回のお話と同じ時間帯で書こうかと考えています。
それでは次回に……待て、しかして希望せよ。
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《内容協力者》「空丘ルミィ」さん
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【主要作品】「その目に映るものは…」
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