_大阪 村上家 夜
日が暮れて町に街灯や店の光が綺麗に灯り始めた頃。
俺は自分の少ない荷物をまとめて居間に向かう。
荷物はリュック一個におさまった。
我ながら少ないとは思うがパソコンなどの電子機器以外の必要なものは現地で買えばいい。思い出の品なんてものは持っていく意味がないしほとんど持ってない。金がなければこんなことはできないだろう。そこらへんは家の財力に感謝する。
廊下に出た後ゆっくりとした足取りで歩いていく。
自分の家はけっこう広い。造りは日本屋敷で廊下はぐるっと一周している。正直、使っている部屋が三部屋ぐらいしかなくて、空いてる部屋は時々親戚が泊まったりすこしの間居座ったりすることが可能なほどだ。中庭、庭園もあり、昔は庭で父さんによく武術を教えてもあった。今も庭師がきて整備されているが使うことはない。俺が武術をやめたからだ。
居間に着くといいにおいが漂ってくる。母さんが台所で晩御飯を作っているのだろう。
母さんの名前は村上美香。母さんと父さんは高校時代に両方が一目惚れをして付き合い始め、大学を卒業後すぐに結婚したらしい。
ここは父さんの実家で母さんのほうが嫁いできた形だ。俺は会ったことがないが、爺ちゃんや婆ちゃんももともとは住んでいたらしい。けれど、父さんに仕事を継がせるとすぐに海外へ飛び出していったそうだ。どこに行ったかは母さんも知らないらしい。
「あ、恭くんもう準備できたの?」
「うん。もとから持っていくものなんてほとんどなかったけどね」
母さんがお盆にご飯を載せて居間に戻ってくる。
母さんはまだ三十代前半で若くて綺麗だ。肩あたりまで伸びた日本人特有の黒髪と凛とした顔立ちでプロポーションもいい。自分の身近にいる美人は誰かと聞かれたら確実に母さんの名前を出すだろう。
俺の思春期のピークであった時はヤバかった。自分が暇になってボーっとしていると母親でエロイことを考えてしまうのだ。正直なところ、学校の女子とか下手なグラビアアイドルよりも興奮してしまうのだ。これに関しては母さんが魅力的過ぎなだけか自分の好みにほぼ一致しているからだと結論づけた。そして深く考えないようにした。
晩飯を食べながら母さんと会話する。
「ごめんな。全然家に帰ってこれなくて。家に一人やからさみしくない?」
「うん。たしかにちょっとさみしいけどさ。仕事の忙しさで紛れるし、ときどき恭介も帰ってきてくれるし大丈夫、大丈夫」
「夏休みとかには帰ってくるつもりやから」
「うん。ありがと。・・また、探しにいくの?」
「うん。それもあるし、もともと向こうに誘われてもいたし」
「そっか~。・・・じゃあ今度晩御飯を作るのもいつになるかな~」
「すぐに帰ってくるって」
母さんは父さんが死んでしまったとき人形のようだった。いつものように家事をこなしているのに感情が感じられなかった。そのとき思春期真っ盛りだったのも相まってよく母さんに対してセクハラまがいのことをして怒られていた。けれど、そのときは何をしても母さんは怒らなかった。一度、押し倒しかけたこともあった。けれど、母さんは「ダメだよ、恭くん」と言っただけだった。いつもは笑いながらもしっかり怒ってくれていたのに。まるで自分がどうなろうと気にしないように。そのとき、俺は思った。
母さんは俺が守らなきゃいけない。俺の責任なのだから。
そのあ、俺は色々な問題に直面した。テレビなどの報道による俺への疑惑と非難。それによって父さんが死んだことで出てきた会社の後継者問題で分家とのいざこざもあった。けれど、俺は母さんの負担にならないように頑張った。自分が優秀で素晴らしい人間であると周りに思われるために努力をした。その間、母方の親や母さんとの話相手になってくれる人を家に呼んだりして、母さんがはやく元気になれるように試行錯誤もした。そのおかげか母さんもある程度元気になって笑ってくれたりするようになったし、会社の問題もなんとか分家を黙らせることができた。さすがに中学生が後を継ぐわけにもいかないので会社については母さんがかわりにやってもらっている。忙しいながらも充実を感じると言ってくれる。
けれど、やはり元気になってからも父さんがいた頃より寂しそうな目をよくするようになった。
その目を見るとおれは罪悪感にさいなまれるのだ。
俺がいなければ父さんは死ななかった。母さんをこんな顔にさせているのは俺のせいだ。
食事が終わったあとも俺は母さんとお茶を飲みながら学校の事や友達の話、仕事の話なんかもする。
「へえ、鉢屋君が・・・なの。それは・・・ね」
「そのときに石田が・・・して・・・になったんだよ」
そのあと風呂に入って自分の部屋に戻る。荷物を確認し、あとは寝るだけとなったときに障子が開いた。
「ねえ、・・一緒に寝てもいい?」
寝間着姿の母さんがあの寂しそうな目で立っていた。
「あー、・・うん。いいよ」
ここで断ることができるはずもない。帰ってきた日の夜はいつもかこうやって部屋にやってくる。
母さんが寂しがってることはわかっている。だから、母方の親に一緒に住まないかと話を持ち掛けたこともあった。しかし、自分たちには都会の空気は合わないと言って断られてしまった。母さんの身近にいる心の支えは俺しかいないのだ。俺は安心して寝れるように母さんを抱きしめながら目を閉じる。
ごめん。母さん。もう少し待ってくれ。自分が。自分を知ることができるまで。
_川神学園 朝 全校朝礼
その同日、川神学園のグラウンドでは多くの生徒たちが歓喜の声を上げていた。
昨日、九鬼が言っていた通り武士道プランはテレビや新聞などで大きく取り上げられていた。
過去の偉人、英雄たちの細胞を使ったクローンの作成。英雄そのものをもう一度生み出すという普通なら考えられないものだった。
・・・まあ、川神ならなにが起こっても不思議ではないのでそこまで驚くこともなかったが。
この全校朝礼で九鬼に関係のある六人の編入生が紹介された。もちろん武士道プランの申し子もこの中に当てはまる。
まず三年に編入された葉桜清楚。名前からしても清楚だが性格も見た目も予想以上に清楚だった。趣味は読書と動物の飼育。長い黒髪を背中に流していて、美人である。その姿からは趣味の読書や飼育が絵になりそうなほど似合うところが想像できる。自分がなんと言う英雄かはまだ聞かされていないそうで、二十五歳になった時に教えてもらえるらしい。姐さんはもはや口説きにかかっていた。
次に現れたのは武蔵坊弁慶。昔の武勇伝などを聞く限り、ゴツイ巨漢であると予想をつけていた。が、予想に反して細身のお姉さんのような美人であった。胸も大きく、ガクト達は登場寸前までの反応と打って変わって大興奮である。けっこう柔軟な考え方は自分と気が合いそうである。
そして昨日自分が会い損ねた源義経。京によると俺を気絶させた村上恭介と戦っていたのは彼女だそうだ。彼女はまじめであろうとしているが天然なところがあるかわいらしい美人だ。挨拶の後、マイクが切れてないままで戻っていくところなど和むしかない。一応清楚先輩を除く武士道プランの申し子の主にあたるようだ。
そして壇上には現れなかった那須与一。こいつものちのちわかるだろう。これだけ女子が美人しかいなかったのだ。きっとこいつも美形のイケメンに違いない。この四人は全員Sクラスらしい。まあ、当然といえば当然である。
さらに大量に並ぶ人の上を歩いて現れた人物は九鬼の妹にあたる九鬼紋白であった。登場の仕方といい額の傷といい喋り方まで九鬼英雄にそっくりである。彼女の見た目は小さいが歳はどうも年上らしい。自分より年上なのに英雄の妹とはこれはまたいかに。しかし、おれは見逃さなかった。2-Sのハゲが悟りを開いた顔をしていたところを。
そして最後の編入生として現れた人物が予想外だった。ヒューム・ヘルシング。武道において川神鉄心と同じく最強と謳われ、九鬼家従者部隊ナンバーゼロという永久欠番を持つ最強のじいさんである。そんな年齢の高校生なんかいないだろ。彼は英雄のそばにいるあずみと同じく紋白の護衛として編入されることになったらしい。それなら納得ができる。あれも年・・やめておこう。考えただけで殺しにきそうだ。
このような色物が六人も入ってきたのだ反応しないほうがおかしい。姐さんなんてほとんどが自分と戦いになりそうな人物なので超笑顔である。そしてみんなこれで終わりかと思い会話をはじめていたところ・・
「静まれえええい!まだ九鬼とは関係のない編入生がおるぞい!どうせだから一緒に紹介しておこうと思う上がってきなさい」
「はい。わかりました」
まだほかにもいたらしくみんな壇上の方向にむく。
そこには髪をサイドポニーにして束ねて、眼鏡のおくには切れ目の瞳が映る女性が檀上に上がっていた。
「わたしは天皇守護一族、近衛家の次期当主、近衛京香と申します。このたびは天皇様との様々なこれからの話の関係により、天皇様のお住いの東京に近くさらに武道などの経験の積むことのできる川神学園に編入させていただきました」
近衛一族。歴史の古くからある細かい資料にはこの名前が存在する。平安や戦国、長い日本の歴史の代名詞のように存在する天皇を幾多の危険から守護する一族。昔、本を読んだ時に気になって調べた記憶がある。そんな古くからある一族の次期当主に選ばれた彼女も姐さん達のように強いに違いない。
「これからよろしくお願いします」
お辞儀をする彼女をみてそう思った。
「おいおい、今回はかわいい子おおすぎないか~。やっべーよ。弁慶とかもろタイプだよ俺。はあ・はあ・・むね・・」
「欲望がダダ漏れになってるよガクト。僕は清楚先輩かな。なんか見てて心が落ち着くし」
「そんなこと言って。あの清楚な姿を俺色に汚したいとか思ってんだろ。モロ漏れだぜ」
「僕はそんなこと一言もいってないよ!あと、地味にぼくの名前を上手く使わないでよ!」
「俺の天才的な使い方には感動だろ」
「不愉快だよ!」
ガクトとモロが女子の話で盛り上がり・・
「私は義経とはやく戦ってみたいわ!前は敵の攻撃を避けるのに必死でよく見れなかったのよね」
「よし。順番待ちだろうが私も義経に決闘を申し込むぞ」
「どっちがさきに義経に勝つか競争よ!クリ」
「どっちも負ける気がするのだが」
「しょーもない・・」
クリスやワン子が決闘に燃え・・
「う~ん、あの子も強いな。ふふ、今年は退屈せずに済みそうだ」
こうして新しい物語が始まろうとしていた・・・
普通に大学の事でいろいろ忙しくなってきた。別に書くけどさ。