after days(シン・エヴァンゲリオン after短編集)   作:◆QgkJwfXtqk

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途は遥か、歩みは小さく

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 NERVとの戦いを終えたWILLEは、その目的を人類という種の存続と定めた。

 これは文化と科学の保護と維持も含まれる。

 現時点で確認できる人類は地球全体で見ても、そして希望的な数字を入れたとしても1000万人にも満たないとされていた。

 日本列島の第3村の様な、WILLE ―― 旧NERV系の組織からの支援を受けていた避難所(コロニー)は世界中に点在し、或いは先進国などに多い独立した地下都市のお陰であった。

 問題は、人類の文明維持に必要な人口の、下限に限りなく近い数字であると言う事だった。

 故に、こと科学に於いては教育と研究を担当する科学都市が生み出される事となった。

 過去の大図書館の名を貰いアレクサンドロスと名付けられたこの科学都市は、凍結から蘇った各国のNERV施設の中で一番状態が良かった ―― MAGI-Typeの第7世代型スーパーコンピューターが維持されており各インフラの状態が良く規模も広大であった北米のUS-NERVを基に建設された。

 その上で各国の生き残った工業インフラを再稼働させ、技術発展は困難であろうとも人類が規模を取り戻すために持続的に利用可能とする事を目標とされた。

 アレクサンドロスを起点として、行われた人類再生の一大プロジェクト。

 その中で式波アスカ・ラングレーは、大規模工作用の汎用ヒト型工業機(デヴァイス)研究開発チームを率いていた。

 エヴァンゲリオンは失われた。

 だが、その製造技術も関連技術も全てが失われた訳では無い。

 だからこそ、様々な工作などで便利で汎用性の高いヒト型の工業機が開発される事となったのだった。

 コストパフォーマンスだけを見れば一般の作業用機械が遥かに利便性が高いが、少ない人数で多目的多機能に作業を行おうとすれば、ヒト型と言うものが持つ汎用性は決して侮れないからである。

 そして同時に、マイナス宇宙へと潜る為の光速発揮可能な高位次元転移体(バイ・コーザリティ・ダイバー)開発を進めていたのだった。

 

 

 

 

 

 そして月日は流れ、何時しか()()()から14年が経ってい日。

 物語は動き出す。

 

 場所は宇宙。

 観測用の衛星に囲まれた、全長40m近い大型の構造体。

 それはヒト型 ―― 汎用ヒト型工業機を中心に、幾つものブースターが増設されていた試験機だった。

 それを地上の管制室から眺めている一同。

 

『カウントダウン、カウントダウン、32_ 31_ 30_ _ _ 20_ 19_ 18_ _ _ 10_9_ 8_ 』

 

 固唾をのんで見守られる中、カウントダウンは機械的に時を刻んでいく。

 

『3_ 2_ 1_ 0_』

 

 その日、宇宙で新しい光が生み出された。

 それは新しい英知の光であった。

 試験機は、太陽系の探査と開発を目的として開発された新型の駆動システム ―― バニシングモーターを搭載した、超光速発揮実証実験用の機体だった。

 能力制御用に最新の汎用ヒト型工業機(デヴァイス)を搭載し、X-25(プロフェシー)の名前が与えられていた。

 

『月観測所! 確認しました!! 試験機(プロフェシー)、予定コース及び予定時刻に通過を確認しました!!』

 

「Wowowowowowowo!!」

 

 爆発した様な歓声が上がった。

 だがその中にあってアスカは一人、静かに壁の時計を睨んでいた。

 月からの報告なんてどうでも良かった。

 大事なのは()()()()()()のだから。

 手入れの殆どされていない伸ばし放題の髪から覗く相貌は痩せこけ、ただ赤い眼鏡(ウエアラブルディスプレイ )の奥にある蒼い瞳だけがギラギラとした輝きを放っていた。

 科学に全てをささげた女。

 アレクサンドロスでも有数の女傑(マッドエンジニア)

 それが今のアスカだった。

 戸籍の上では42歳となったアスカだが、その外見は28歳と言う女盛りであったが、そこに色気めいたものは無かった。

 顔立ちは美人で身体は頗る付きであったが、化粧すらせず、男が寄り付く事を許さず、常に研究室に籠って過ごして来ていた。

 アレクサンドロスの男性向け閉鎖ネットワークでの人気投票での勿体ない美人部門で、4年連続1位の実績持ち(タイトルホルダー)でもあった。

 アスカの下に付いた男たちは誰もが一度は落としたいと願い、そして敗れていく。

 歯牙にもかけないその様は、何時しか鉄の女などと揶揄される様になっていた。

 それすらもアスカは相手にする事はなかった。

 

 と、通信設備に付いていた研究員が声を上げた。

 

「火星観測所より報告です! 試験機(プロフェシー)到達を確認!! 予定時刻に誤差なしとの事ですっ!!!」

 

「Wooooooooooo!!!」

 

 先ほどよりも更に大きな歓声が、正しく爆発した。

 所員の多くが手に持っていた紙束を天井に投げ、誰もが手近な人たちとハグやキスを繰り広げている。

 アスカはどさくさに紛れて近づいてくる(スケベ)どもを、見ることなく軍隊式の荒っぽい仕草で頭を掴んで鎮圧し睨んだ。

 それから声を出す。

 

傾注(アハトゥング)!」

 

 裂ぱくの声に耳目が集まる。

 煙草で焼けたハスキーな声は、掠れず、独特の艶があった。

 

「諸君、ご苦労。これで太陽系開発計画は大きく前進する事になったわ。アタシは赤木総括の所に報告に行くけど、貴方たちは自由にしていい。今日はこれまで。パーティーでも何でもやって英気を養いなさい。ツケはアタシに回して良し。以上」

 

 それまでとは別種の歓声が上がった。

 男女的な所から見れば取っ付きにくい所が大きいアスカであったが、この様な心配りが出来る為、部下からの評判は良かった。

 

「主任は来ないのですか?」

 

「何年もの研究が漸く実ったのです、一緒に祝いましょうよ!」

 

 下心だけではないスタッフ、女性までもが今宵ばかりはと声を掛けて来るがアスカは断った。

 気持ちだけ貰っておくと言って、管制室を出て行った。

 

 

 

 

 

 アレクサンドロスを総括する赤木リツコの部屋は常に煙草の匂いをさせていた。

 人類と言う種を守る為として巨大化したWILLE、その差配と言う大きなストレスが赤木を蝕んでいるとも言えた。

 老境、目や口元に刻まれた皺がその日々の過酷さを教えていた。

 応接用のソファに身を預けるその姿は、50代ではなく60代後半と言われても通りそうだった。

 

 赤い口紅の塗られた唇に細巻き(シガリロ)を咥え、ゆっくりと吹かす。

 そして、まだ半分以上も残っているソレを、安タバコの様に手荒くもみ消す。

 

「14年、ね」

 

 アスカの報告を受け、感慨深く言葉を発した。

 あの懐かしい第3村で連日連夜と激論して、そして今、と。

 

「貴方、良く折れなかったわね」

 

 そう声を掛けた相手は、言うまでも無くアスカだ。

 赤木の正面に座り、長い脚を組んで気だるげに背をソファに預けている。

 

「それだけしかないのに、折れる間なんてある訳ないじゃない」

 

 旧NERV以来の30年近い関係は、2人の言葉に気安さを与えていた。

 とは言え、その態度は決して親し気と言う訳でも無かった。

 余人には理解しがたい、或いは絆であった。

 

「そうね、全てを捧げてきたんだもの、止まる訳にはいかないわね」

 

「そういう事。だから試験ユニットの2号機、貰うわよ」

 

「良いわ、約束だもの好きになさい」

 

ダンケ(有難う)

 

 

 

 それから後は私を離れ、責任者としての報告や所見を述べていく。

 後で書類でも行う事であったが、この光速発揮可能な推進システムの開発はWILLEが計画している2060年代以降の太陽系資源開発計画にとって重要な役割を担う為、赤木も気を掛けていたのだ。

 地球資源の開発は埋蔵地帯こそ判ってはいても、どうしても人手が大量に必要となるし、環境対策が簡単ではない。

 だが宇宙はその点で楽だった。

 少なくとも環境対策は不要だった。

 

 富国強兵(産めよ増やせよ地に満ちよ)の如き合言葉と、クローン技術の積極的活用 ―― 式波Typeと綾波Typeの生産技術を基にして開発された成人クローンの量産と言う人倫を捨てた政策を実行したお陰で、地球人類は漸く3000万を超える所まで回復した。

 だがそれでもまだ、労働人口は不足気味であった。

 故に、コストよりも人手が少なく済むと言うのがとても大きなメリットとなるのだ。

 

「貴方が居なくなるのは大きな損失だわ」

 

「脳みそで良ければ2′(ツーダッシュ)に頼ってよね。あの子はは残していくんだから」

 

 2´、それは即ちアスカのクローンであった。

 式波Typeの技術確認用として冷凍保存されていた式波Typeの卵子を使って生み出された、作られた子ども(デザインチャイルド)だった。

 そして、アスカのあずかり知らぬ場所で作り出された命でもあった。

 内部監査でその事を知った赤木は激怒してクローンを行った部門を閉鎖、併せて実験動物の様に扱われていた2’(アスカクローン)を救出した。

 生体年齢で3歳の頃であった。

 そして現在はアレクサンドロスの児童福祉施設で育っている。

 まだ9歳であるにも拘わらず明晰な頭脳を見せつけていた。

 名前はストレリチア・ラングレー。

 アスカが与えた名前だった。

 そして稀に顔を合わせる際には、遠縁のお姉さんとして接していた。

 接触を拒否する事は無かった。

 子ども(クローン)に罪は無いのだから。

 2’(ツーダッシュ)などとと呼ぶのも本人の居ない場所だけで、しかも露悪的に言う時だけであった。

 アスカなりに愛しているとも言えた。

 だがそれでも同居しない理由は、単純に仕事が忙しいからだ。

 アスカは自分に宛がわれた家に帰るのは、週に一度か二度と言う程度だった為、子供を育てる余裕など無いのだ。

 そして何よりも、絆されぬ為であった。

 アスカは碇シンジの所へ行く、それ以外の全てを切り捨てて生きているのだ。

 

「あの娘と貴方は別よ?」

 

「脳みその構造は同じなら、同じ事が出来る筈よ。教育さえ間違わなければ」

 

「教育は兎も角、経験は別よ」

 

「そうね、あの子にワタシみたいな経験はして欲しくないわ」

 

 物心ついた時には周りは全部同じ顔(クローン)

 疑問すら持たずに研磨され、自分の居なくなっていく日々。

 シンジに出会った。

 (リリン)では無くなり、只ひたすらにNERVと戦う日々。

 シンジに再会した。

 そして別れた。

 それからの日々 ―― 今。

 不幸であったと嘆くつもりは無い。

 だが、誰かが同じ(運命)を辿るならば止めたいとは思っていた。

 たとえそれが(自分のクローン)であっても。

 

 

 

「何時立つの?」

 

「2号機の組み立てが終わり次第、その前に第3村に行ってからね」

 

 別れの挨拶程度はしなければと続ける。

 今、第3村は正式には第3東京圏と名前を変えていた。

 人口はこの14年間で遥かに増えて優に2万人を突破し、主要産業はWILLEへと食料と物資を供給する複合経済圏へと成長しつつあった。

 アスカにとって第3村は帰るべき場所では無かった。

 居るべき場所でも無かった。

 その意識あればこそアスカは(綾波)レイや鈴原ヒカリ、相田ケンスケと言った面々との連絡こそすれども、14年前以来一度たりとも行った事が無かった。

 シンジとの思いで ―― あの14年前の自分のシンジへの態度が余りのも重くアスカに圧し掛かっていたと言うのも大きかったが。

 それでも、不帰(最早会えぬ)となれば話は別であった。

 

「そ、ならストレリチアも連れて行って貰えるかしら?」

 

「何で?」

 

「情操教育よ。都市部、と言うかこのアレクサンドロスだけを知って育った子どもたち、少しばかり特権意識が強く育つ傾向が出て居るのよ」

 

 アレクサンドロス以外は全てが植民地の様に思っている人間が出て居ると言う。

 特権意識、或いは階級意識(社会階級)の萌芽と赤木やアレクサンドロスの管理者たちは感じていた。

 組織運営者と言うよりも、人間と言うよりも、科学者であった赤木は、その様なモノが趣味では無かった。

 人間は等しいとか平等と言うのはありえないとは理解しているが、であるが故に公平であるべきだと信奉していた。

 それが人間の進歩であると確信していた。

 

「馬鹿?」

 

「そうね、馬鹿よ。だけど馬鹿だからと放置する訳にもいかないわ」

 

「大変ね、リツコも」

 

「同情するなら残って運営にも参加して欲しいわね」

 

 割と本気な赤木の希望。

 それをアスカは流す(知らんぷり)

 

「………明後日には、第3村に行くわ」

 

「ストレリチアの書類は明日中に用意しておくわ。施設へもこちらから連絡しておくから」

 

「宜しく」

 

 

 

 

 

 アスカとストレリチア。

 二人が並ぶと親子にしか見えなかった。

 特にアスカは、日ごろしない身だしなみを整え、薄っすらと化粧をしていたのだ。

 その様にアスカの部下たちは軽いパニック状態に陥った。

 女性陣は、アスカに比べて礼儀正しい(まだ愛想のある)ストレリチアの可愛らしさにメロメロになっていた。

 問題は男性陣、それもアスカに気のあった(スケベな)連中である。

 

「子どもが!? 式波主任に子どもが!?」

 

「挨拶に行くとかっ!?」

 

「しかもストレちゃんの事で帰ってくる日取りは未定とか!?」

 

 バカであるとうのも理由であったが、アスカの説明も悪かった。

 第3村(第3東京圏)()()に行く。

 ストレリチアも連れていく。

 帰ってくるのは()()()()()()()()()()()()()()()

 

 気の早い人間が、婚外子であるストレリチアを連れて相手の実家に挨拶に行くと捉えてしまうのも仕方の無い話であった。

 又、祝勝会の酒が残っていたのかもしれない。

 兎も角、アスカはバカな話とバカな連中は無視して、2号機の建造を進める様に指示し、それ以外の諸事を次席主任に任せる手続きを行った(書類を作成した)

 

 

 

 

「アスカ、あの人たちって馬鹿バッカ?」

 

 アスカの事をアスカと呼ぶストレリチア。

 対するアスカも、こればかりは仕方がないと苦笑した。

 とは言え、と続ける。

 

「倫理観はあるし、無能ではないわ」

 

「そうなんだ」

 

 親子にも、或いは姉妹にも見える2人は、あまり意味の無い会話をしつつ、第3東京圏との定期貨物航空機に乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

 




純愛だよ、汚姫様アスカ編。
尚、ギャグ要素は行方不明に。
SF要素がinしますた。
多分に作者の趣味。
何時もの手癖で話を組むとこーなる。
話が半分も進まなかった件ェェェェェ


所でストレリチア・ラングレーの外見はまんまシンで出たロリッ子のアスカでつ。
発言内容が電子の妖精っぽいが気にしない
(∩゚Д゚) アーアー キコエナーイ
名前とかアレコレが02っぽいのは気にしない
(∩゚Д゚) アーアー キコエナーイ
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