after days(シン・エヴァンゲリオン after短編集) 作:◆QgkJwfXtqk
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一つとなった。
互いを求めあい、貪り合った夜。
いつの間にか眠り、そして目覚めた朝。
碇シンジはスッキリとした顔で、開けっ放しとなっている倉庫の入り口から空を見上げた。
快晴。
青みが鮮やかさをましていく空は、前夜の嵐が嘘のような雲一つない夜明けだった。
「朝、か」
誰に言うつもりも無く呟くシンジ。
まだ眠る式波アスカ・ラングレーを腕の中に収め、毛布に包まって見上げる空は、昨日までの朝と同じに見えて違っていた。
腕の中に居る
触れた素肌の柔らかさ、そして温もりは昨日までとは違う。
多幸感。
赤味の乗った金糸の如き髪に顔を埋めながらフト、思った。
あの市立第3中学校のあの日々 ――
喪ったと思っていた大事な人との再会。
WILLE、意味の分からないままに、憎まれたと思い、心が凍った。
NERV、喪ったものを取り返したいと思い、その果てに
第3村、かつての同級生が与えてくれた優しさ、暖かな日々。
だからこそ立ち直れた。
だからこそ、マイナス宇宙で決着をつける事を自分から選んだ。
感謝とケジメを付けたいと言う気持ち。
そしてアスカへの感情だ。
今思い返せばシンジは
訳の分からぬままに14年と言う月日を奪われ、大事であると思っていた人は、自分以外の人と親密な関係を構築していた ―― 少なくともシンジはあの時、そう思った。
だからこそシンジは、あの時、帰らぬつもりだった。
帰れなくても良いと思っていた。
それでも
本当にヤケクソだった。
だからこそ今が信じられない、そう思う時があるのだ。
アスカと一緒に居る時。
ご飯を食べる時。
デートをする時。
キスをする時。
コレが自分の、都合の良い夢では無いかと思う時があったのだ。
恐怖と言って良いだろう。
だが今はもう、それが消えた。
肌を触れ合い、心臓の音が重なった時、シンジの心から怯えは完全に消え去っていた。
腕の中の温もりがネガティブな感情の全てを消し去ったのが判る。
我ながら現金なモノだと自嘲しながらも、でも、そんな気分すらも幸せと言う感情と共にある。
フト、砂浜に固定された
そんな、愚にもつかない事を考えていたからか、シンジは懐中から伸びた白い手に気づくのが遅れた。
頬を添えられた手。
そして指先は、少しだけ生え始めたヒゲを撫でるように動く。
「ん………バカシンジ」
どこまでも優しく、そして緩い笑顔をアスカが見せた。
「おはよう、アスカ」
「おはよ」
どちらからと言う事は無くの
とは言え、シンジもアスカも耳まで真っ赤にして、とても初々しさが漂っている。
ここに
「身体は大丈夫?」
初めて尽くしの事で加減の判らなかったシンジは、快楽に溺れ、自分の思うままに動いてしまった。
そう言う自覚があったからだ。
何と言うか、叱られた子犬じみた表情をみせるシンジに、アスカは笑って口づけをした。
「ばーか、アタシが何年軍人やってたと思うのよ。アンタとは鍛え方が違うってーの」
それが何の意味があるのかとか思うし、そもそも血が出たのだから痛くは無いのかとか思ったシンジだが、それを全てのみ込んだ。
それがアスカの心づかいだと思ったからだ。
だから、シンジもアスカにキスをする。
匂いを嗅ぐように顔を寄せ、頬で頬を撫でる。
アスカも同じことをしてくる。
「鍛えててもアスカのほっぺた、凄く柔らかいよ」
「男のくせにアンタのは柔らかすぎ」
笑ってしまう。
笑い、笑われる。
穏やかな朝。
「ね、アスカ。お腹、すいてない?」
「んー そうね…………珈琲は飲みたいかな」
夜明けのコーヒーを一緒に、そんな真希波が歌っていた古い曲のフレーズを思い出したアスカは、口にしてから赤面していたのだが、流石にシンジがその事に気づく事は無かったが。
「チョコレート、貰ったのがあった筈だから、それで朝ごはんにしようか」
「いいわね」
では準備をと動こうとしたシンジ、だがアスカは手をその背中に回し動きを止めさせる。
「アスカ?」
「シンジはお腹が空いてるの?」
「いや、実はそんなに」
「ならもう少し、もう少しだけこうしていたいの、駄目?」
「良いけど、もしかしてアスカ………その、やっぱり
顔を真っ赤にして聞くシンジ。
直ぐにその言葉の意味を把握してアスカも顔を真っ赤にする。
「馬鹿。
スケベ、そう言ってアスカはシンジに罰を与える様にギュっと抱きしめた。
特務南極調査艦あおばの士官食堂で、薄いクラムチャウダーとクラッカーと言う簡素な朝食を貪っていた真希波は
「ビンビンに何かを感じる!」
「………とうとう壊れた?」
相席していた北上ミドリが呆れた様に呟いた。
近くに纏まっていた女性乗組員たちも同様の顔をしている。
男女混合のあおばでは、艦長である青葉シゲルの方針もあって、
「違っがーう! アッシのわんこ君と姫とのストロベリーセンサーにビンビンに」
「はいはい。夕べのが残ってるって事っショ。コーヒーでも飲んで酔いを醒ましとかないと後がマヂヤヴよ?」
「残ってない! だいたい、電波じゃない!!」
「んじゃ、どうやって判るの?」
「愛」
真希波は
付き合いきれぬと北上は、戻した脱脂粉乳のマグカップを呷った。
対NERV戦、ヤマト作戦が終決して以降、この元エヴァンゲリオンパイロットはぶっ壊れてきたナァなどと呆れながら。
だが、フチに残っている最後の1滴まで飲んでいて、フト、気づいた。
平和になったからか、と。
地球のコア化が解けて以降、食糧事情が劇的に改善し、こうやって自分たちにも嗜好品みたいなものが支給される様になった。
濾過を繰り返した、誰かの排泄物を基にした水を飲む事もなくなった。
北上は、ストンと腑に落ちた。
「平和よね」
「ん?」
「アンタのその反応が平和の証拠って事ッショ。アタシも男でも見つけるかなー」
「青葉っち?」
「そのネタ、マジむり」
笑えないっショと、手をパタパタと振って否定する北上。
真希波もケタケタと笑っていた。
「ポカポカする」
薄日の差す中、朝餉として味噌汁を作っている綾波レイ。
お玉ですくって口に含み、その味を確かめている時、ふと感じた直感めいたナニカによって、そんな事を呟いていた。
大根と大豆、それに最近になって手に入る様になったワカメと言うシンプルな具材で出来ている味噌汁は、綾波家の朝の味であった。
第3村の皆で作る味噌は、味噌汁や調味料として重宝していた。
農作業その他、村での仕事は塩分を失うので、その補充の役割も果たしてくれる。
後、火力調整が楽なのも良かった。
第3村で使える火力は、ソーラーパネルが設置されている家がIH。
アディショナルインパクト以降に増設された様な家では、竈で薪を燃やすと言う極端な2択状態であった。
そして綾波家は後者の側であった。
2Kのプレハブハウス、土間のキッチンに廃材を組み合わせて作った鉄製の竈が鎮座しているのだ。
それでも、キッチンがあるだけ綾波家はまだ恵まれていた。
第3村で医師役として影響力を持っている鈴原の知り合いであり、子育てに協力している関係で回ってきた物件だったからだ。
対して最近に建てられた家の場合だと、数家で共用する集団キッチン方式が採用されているのだ。
竈の共用による燃料の節約や、水回り配管の手間を惜しんだと言う面があった。
それだけ、帰ってくる人間が増えていた。
「出来が良かったのかい?」
隣でお握りを握っていた、同居人である渚カヲルが、何時もの様に楽しそうな顔で尋ねてくる。
否、
楽しいのだ、実際に。
元使徒。
元NERV第2代司令。
元SEELEのエージェント。
元エヴァンゲリオン操縦者。
いくつもの肩書を過去形にしたこの少年は、今はただの人間として第3村で生活していた。
地に足を付けて生活する。
全ての事が楽しくて、そして愛おしいのだ。
尤も、楽しいからと言って全てが簡単にいく訳では無い。
大層な肩書、立場故に様々な事が出来るのだが、事、日常生活のスキルと言う意味に於いてはからっきしであった。
家を掃除する事、洗濯する事、料理する事。
誠に持って駄目であった。
だから、綾波家に入る事になっていた。
顔見知りであるのだからと、綾波が面倒を見る事になったのだ。
尚、恋人でも婚姻関係もない若い男女を一緒に住ませるなんて、と言う様な反対意見は出なかった。
本人たちに拒否感が無いならそれで良いと言う様な適当さと、
尚、WILLE ―― AAAブンダーから
結果としてなるならまだしも、狙って喰いに行こうとする人の所へ渚を住ませるのは流石に非人道的と言う話であった。
第3村の重鎮会から見て、超然とした雰囲気を持った渚も、ただの子どもでしか無かった。
渚は力仕事が得意と言う訳でも農業が出来る訳でも無かったが、手先が器用であり、骨惜しみする事無く働き、何よりも
「美味しい。でもそれだけじゃない。ポカポカするの」
そっとお玉を置き、両手を胸に当てる綾波。
「嬉しいの。嬉しいと言う気持ちが溢れて来るの。これは、ナニ?」
「
「幸せ? 判らない。貴方は判るの?」
「実は僕も良く分からないんだ。この村での生活は楽しいって思う。だけど、幸せと言うのはまだ、僕には良く分からないんだ」
使徒と言う完全な存在として生れ落ちて、そして今まで生きてきた。
いつからか、シンジを幸せにしたいと思って生きてきた。
幸せにしたいと言う思いは抱いていた。
だが、自分が幸せに成りたいと思った事は無かった。
判らなかったのだ。
ある意味で死すらも超越した、孤立して存在できるが故の事だった。
「そう、貴方も探しているのね」
「探すしかないからね」
炊きあがったご飯でお握りを作りながら渚は思索し、言葉を返す。
その手は柔らかくも的確に動いていく。
絶妙な力加減で握られ、見事な三角形に仕上がったソレは朝ごはんではり、昼の弁当でもあった。
ただの塩お握りだが、渚が作るソレは一味違うと、農作業で振舞えば大人気の逸品だった。
「僕はシンジ君の為に幸せにならないと駄目だからね」
シンジを、他人を幸せにするには、先ず、自分が幸せでなければならない。
第3村に腰を下ろした後、何かの時に、
「だから、とりあえずは今日も頑張ろう」
「そう、そうね。頑張りましょう」
第3村の1日が始まる。
コーヒーとチョコレートと言う簡素な朝ごはん。
倉庫にあったアウトドア用の小さなストーブに、廃材などをくべてお湯を沸かし、コーヒーを淹れる。
金属製のマグカップに粉末コーヒーを入れて、お湯を注ぐだけの簡単調理だ。
粉末コーヒーは、オーストラリア大陸に残されていた旧オーストラリア軍の倉庫から掘り出してきた
チョコレートも含めて、おやつ用にとシンジがアルバトロスの空きスペースに放り込んでいたものだった。
「アンタもマメよね」
「こうやって一緒にコーヒーが飲めればな、って思ってただけだよ」
もう服は着ている。
少し湿気った厚手のフライトスーツ、アスカは上半身を脱いで腰に巻いている。
インナーの白いスポーツブラが、濃緑のフライトスーツとのコントラストになって何とも刺激的だ。
シンジも着込んでいるが、此方は裾と袖を巻いて首元を開けてきている。
共に、ラフな格好だった。
「スケベ」
ピトッとシンジに体を寄せるアスカ。
密着した事で素肌程では無いが、体温が相手に伝わる。
シンジの顔が一気に赤くなった。
「ちっ、違うよ! 此処までは考えて無かったよ!!」
「本当に? それとも嫌だった??」
「いっ、嫌な訳、ある筈無いよっ!!」
「じゃぁシンジも__ 」
アスカが肘でシンジの腕を突っつく。
そこで漸くシンジは、アスカが求めていた事に気づいた。
おずおずと、優しく、だけど断固とした仕草で、空いていた腕でアスカの腰を抱く。
抱きしめる。
アスカもまた、腕をシンジの腰に回した。
顔を見合わせれば笑みが零れる。
「碇二等兵、察し悪すぎ」
「式波少佐、上官からの指示は判りやすくお願いします、どうぞ」
真面目くさった顔を作ったアスカに、シンジも不満気な表情を作る。
そして同じタイミングで吹き出す。
笑いが倉庫に満ち満ちる。
コーヒーを飲み切って、チョコレートを食べて。
そして片づけを始める。
感謝を込めて、そして出来れば又、使える様に。
「良い場所よね、ここ。でも、とっととメルボルンに帰りたいわね」
「どうして?」
楽しいのに? と言う顔を見せるシンジに、アスカは楽しい事とは別の問題があると言う。
「海で身体洗ったけど肌はべた付くし髪はごわごわになるし、やっぱり真水で温水のシャワーとシャンプーは必要ね」
じゃないと汗やらナニやらで酷いことになる、なったと笑うアスカ。
倉庫の傍に蛇口を見つけたが、水は出てこなかった。
流石に14年から放置されていた場所なので、そこら辺が機能している筈も無かった。
井戸が枯れたか、浄水器が壊れたか、配管が駄目になったのか。
何にせよ、人が居る為には手を入れる必要があった。
「でも、ボクはまた来たいって思ったんだ」
「そうね、いつかきっと、又、来れるわよ」
「一緒に?」
「一緒に!」
嵐の夜を越えてもアルバトロスに被害は無かった。
操縦席の防水カバーを外せば、中にまで水は入って居なかった。
電機システムにも異常はない。
操縦席に座ったアスカは、システムを立ち上げて自己診断プログラムを走らせる。
シンジは注意深く外側から機体状態を確認しながら、主翼に取り付けられているソーラーパネルの清掃を行い、それから機体を固定していたロープを外していく。
異常は見られなかった。
「アスカ、大丈夫みたいだよ!」
「ならプロペラを回して後進をさせる離れて注意してて!!」
「判った!!」
機敏な動作でアルバトロスからシンジが離れたのを確認して、アスカは機体のモーターを回す。
水上機としての、かつお節の様な機体の上部に取り付けていたモーターが電力を喰らってプロペラを回しだす。
ゆっくりとアルバトロスが砂浜を離れる。
「大丈夫みたいね、シンジ! 戻ってきて!!」
大声を張り上げるアスカに、シンジが了解と手を振る。
それから
操縦席から機内に降りて、航法席に出たアスカはロープを引っ張ってシンジの手助けをする。
少ししてシンジが機体に這い上がる。
肩で息をしながら仰向けに寝転がる。
日射で温まった赤い機体は、濡れて体温を奪われたシンジにとって最高の懐炉代わりになった。
「良い恰好ね、シンジ」
「ずぶ濡れだよ!」
「だから言ったじゃない、最初っから裸だったら良いって」
「さすがに恥ずかしいよ!!」
「はん、夕べ、アタシが嫌がったのに隅々まで見るわ舐めるわした癖に。恥ずかしいとかよく言うわっ」
「それはその……」
「ナニ?」
「アスカが…」
「アタシが?」
「アスカが可愛いのがイケナイんだよ」
「…………………バカ、バカシンジ」
結局、モーターを収めているナセルから後方の尾翼に伸びている
改めてアルバトロスから錨を下して流されないように固定する。
そしてタオルで腰を隠したシンジは釣りを始めようかとした所で、アスカがバカシンジだけが裸なんてかわいそうだと言ってシンジが止めるよりも先に裸になる。
堂々とした仕草。
強い日差しの下で見るアスカの体は、シンジには輝いて見えた。
だから、アスカの顔が笑っている事に気づかなかった。
「行くわよバカシンジ!」
見とれて反応をする前に、アスカに掴まって海へと飛び込む羽目になる。
ドボンっと、一塊になった水柱があがる。
「何てことするんだよアスカ!?」
「泳ぎの練習よ、アンタ泳げないんだから丁度良いじゃない!」
「人間は陸棲なんだよ!!」
「14年もL.C.Lに浸かってたんだから、多分、アンタは水陸両用になってるわよ!」
「無茶苦茶だっ!?」
抗議の声を上げた瞬間、アスカが両手で掬った海水がシンジの顔を直撃した。
咽るシンジ。
笑うアスカ。
「やったなぁっ!!」
シンジだって男の子だ。
復讐に襲う事だってある。
アスカは黄色い声をあげて逃げ出した。
「こうなってくると小さくても良いからボートが欲しいわね」
「そうだね」
一通り遊んで疲れた2人は、今は浮き輪にしがみ付いて波に漂っていた。
強い日差しをアルバトロスの翼で遮り、揺蕩うっている。
「後、ご飯と水と着替えと、それから__ 」
「色々と持って、又、来ようよ」
「そうね」
指切りで約束をする2人。
一日が始まる。
海行きたいっすー
南の海ー
公式ウ=ス異本なEEEのあの南国っぽい奴がスコーン と頭に刺さってこうなりました。
次は5人でこよーずー と(お
ま、あの写真ポイのをネタにしたSSも用意しつつあるんですけどね。
それは又、今度でー
後、ひととおりの辺りはマッパァ!! なのでお察しください(ゲス笑顔
尚、わっふるわっふると(うーそーでーすー