アサルトリリィ BOUQUET ~if~ 作:クロスカウンター
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ユユは迷っていた。自分が変わることについて。自分がまるで普通の人間のように振舞うことについて。
カフェテリアで一人紅茶を飲んでいると1年生が話しかけてきた。こんなこと、以前なら有り得なかった。それを嬉しいと思う一方……遥かに、それを怖いと思う自分がいる。
尊敬の目が恐ろしい。本当の自分を知ったら、きっとそんな目は向けられない。
いや、知らない筈はない。お姉さま殺し。どう取り繕ってもその事実は消えてなくならない。それなのに、どうしてリリも……あの子たちも……。
ユユには分からなかった。理解できない。どうして自分を恐れないのか、避けないのか。この力は皆を傷付けるのだと、どうして考えないのだろうか。
このまま、立派なお姉さまとして、それらしく生きていくべきなのだろうか。過去をなかったことにして。お姉さまをなかったことにして。
それが自分にできるのだろうか。
こういう時ほど、あの憎らしい亡霊が恋しくなる。嘘でもいいから優しい言葉を、厳しい言葉を、他愛のない雑談を。何でもいいから言葉をかけて欲しかった。
それはともかく。
気付けば、周囲には木々が生い茂り、校舎が見えない。自分がどこを通ってここに来たのか皆目見当が付かない。
ユユは一旦立ち止まり、現状を捉え直した。
「なるほど」
ユユは迷っていた。
「いや、なるほどじゃないだろ……」
どこからともなく声がしたかと思うと、ひょっこりとマイが現れた。
「久しぶりね。見ないと思ったら、こんなところにいたのね」
「そんな訳ないだろー。……というか、久しぶりってほど久しぶりでもないぞ」
先日の出撃でもタヅサ、リリと共に顔を合わせている。
まぁ、ユユがリリとレギオン(仮)にかかり切りになって以来、会う機会が減ったのは事実であるが。
「どうしたんだ、こんなところに一人で来るなんて。マイにできることなら相談に乗るぞ」
マイは木の幹に寄りかかり、両手を頭の後ろに組んだまま言い放った。親身なのかぶっきらぼうなのかよく分からない。
「別に。ちょっとした気分転換です」
「こんな
「ええ、そうです」
ユユは強弁した。
お姉さまが出て来ないかと人気の少ない場所を歩いていた。そんなこと、とても口にできない。
「貴方こそ、こんな場所で何をしていたのですか。私でよろしければ相談に乗りますよ」
「ちょっとした気分転換だよ」
「こんな鬱蒼とした場所でですか?」
マイは、ユユの返しに閉口した。よくもそんな恥知らずな返答ができるもんだ。
「……ああ、そうだよ」
まさか入口からストーキングしていたとは言えない。マイは適当に誤魔化した。
「貴方もこんな場所をホームにするくらいなら仲間を作っては如何ですか」
ユユは忠告ともジョークともつかないことを口にした。
「マイは野生児じゃないぞ……?」
真顔なので、冗談かマジか若干分かりにくい。
……というか、『仲間を作っては如何』て。どんな誘い方だ。
本人も自覚してるだろうが、ユユは不器用すぎるのだった。
「私はもうしばらくここがホームでいいかな。私を必要とするレギオンも多いしな」
「言い方が悪かったですね。……お願いです、私たちのレギオンに入ってください。貴方が、マイが必要なのです」
不器用ゆえ、ストレートな言葉は胸に響く。
マイはどのレギオンにも入るつもりはなかったのだが。ユユの言葉に、心が揺らぐのを感じた。
「……順調だって聞いたけど、そんなに難航しているのか?」
「4月段階ではこれ以上ない滑り出しでした。しかし、その後は全くです」
今となっては殆どのリリィはどこかに所属しており、所属していないリリィも見習いとしてレギオン加入の準備に入っている。数少ないフリーのリリィは基本的にレギオンに入る意志はない。こうなっては引き抜きくらいしか選択肢はないが、実績のないレギオン未満ができることは限られてくる。
……実を言えば、探せば新人を融通をしてくれるレギオンはなくもない。実績がないとはいえ、ユユ、楓、シェンリン、ユージアと、名だたるリリィが加入しているのだから、交渉次第で人員を引っ張ってくることはできた。
ただ、それをすると何かあった時に逆に人員を差し出す必要に迫られる点、リリ・フミがいるため外部の新人を十分教育できないだろう点、リリたちと繋がりの薄いリリィを加えても不協和音になりかねない点……などなど、問題も多いのでそれは最終手段だった。
「それでマイに話が来たって訳か。……タヅサと一緒に入ったら、丁度9人だもんな」
「あら。鋭いですね」
ユユは事も無げに言った。ユユはこういうところがあるんだよな……。
しかしながら、ユユのお願いは真剣だった。
「勝手なのは承知で、お願いします。これ以上、リリに無為な時間を過ごさせたくないのです」
ユユは頭を下げた。マイとタヅサはフリーでやってきた実力者であり、また、教室や戦場で顔を合わせているのでリリたちとも関係が良好だ。加えて言えば、TZ(中衛)、BZ(後衛)に寄りがちな現メンバーに対し、AZ(前衛)を担当できる2人はそのニーズにマッチしている。選択肢としてこれ以上ない……というか、これ以外ないと思わせるような絶妙な2人だった。
抜けている穴にぴたりとはまる。
「まるでパズルのピースみたいだ」
「え……?」
「まるでマイたちがそこに入ることを計算されたみたいな空き方だなって」
マイは何となく、美鈴様を思い出していた。もしかしたら、美鈴様がマイやユユを導いたのかもしれないな……。
そんな漠然とした、マイとしては他意のない言葉だったが、ユユは妙に考え込んだ。
「……やっぱり止めておきましょう」
「オイオイ。どうしたんだ、ユユ?」
ユユはそれとなく視線を床に落とした。それから改めて視線を合わせる。
「いえ、もう少しリリに頑張らせてみます。私のおかげでレギオンができたと思うより、やはり自分の力でやり遂げた方が力になる筈です。それに、貴方も乗り気という訳ではないようですから」
マイとしてもここで首を縦に振るつもりはなかったが……。この唐突な態度の変化は少し気になる。
「やっぱり困り事があるならマイに相談してくれよな?」
「この森の大将にですか?」
見ると、いつの間にかふてぶてしい素のユユに戻っていた。
「だから野生児じゃ……オイ、もっと酷い悪口じゃないかそれ……?」
「この鬱蒼とした森の一番ですよ。その
お願いする相手に取る態度かそれは……?
マイはため息を吐いた。ユユは、こういうところがあるのだった。
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「うわっ、ユユ様じゃねぇですか!」
ルイセは、急に現れたユユに驚きの声を上げた。まぁ、驚いたとはいえ先輩に『うわっ』と声を上げるのはいかがなものかと思うが。
なお、ユユはマイと「オマエ、迷子になってたろ?」「何を。一人でも帰れましたよ」とどうでもいい小競り合いをしていた。どうでもいいついでに、ルイセの反応くらいは水に流せるのだった。
「ごきげんよう、ルイセさん。先日はお話しいただきありがとうございます」
「なんだ、ユユんとこの新メンバーか?」とマイ。
「マイ様。ルイセはサングリーズルですよ」とタヅサ。
ルイセの横で、タヅサはやや不機嫌そうにしていた。
タヅサはそこでばったりとルイセに会って、(無視するつもりだったが)妙に寄ってこられ、適当にあしらっているところだった。
「なんだ、
マイは愉快そうに笑った。近藤貞花。サングリーズルの隊長で、マイとはちょっとした友人だった。
「いえ、むしろヒバリ様と
「我の強い奴ばっか集めるからそうなるんだ。これもアイツが悪い」
マイからも妙に風当たりが強く、ルイセは苦笑いした。何やかんや(主にヒバリなどが)事件を起こすと、なぜかいつも貞花の所為になるので肩身が狭そうにしている。
制御不能のレギオンのリーダー、ギガント級と互角に渡り合った制御不能のリリィ……など、その破天荒な肩書の割に苦労人である。
「そういえば、ルイセさんは
ユユが非常に直球の質問を投げかけ、ルイセは狼狽えた。
「な、なんで知ってるんですか!?」
「どうせフミだろ……」とタヅサ。
なお、ユユの情報ソースは同室の
マイは真面目くさった顔をした。
「悪いことは言わないからやめとけ、トウカは碌な奴じゃないぞ。使った後、リモコンの位置が数ミリずれてたら怒られる」
「マイさん、その手のジョークは部外者に伝わらないので止めておきましょう」
トウカはセンチ単位で味方の立ち位置を調節する、非常に優れたサポートリリィだ。ただ、その指示の細かさはネタにされやすく、アールヴヘイムでは鉄板のジョークだった。
「いえ、まだそうと決まった訳じゃねぇですから……」
微妙にジョークにも反応しづらく、ルイセは口ごもった。
「なんだ、嫌なのか。おまえにはもったいないくらいだぞ」とタヅサ。
「いえ、光栄なのですが……唐突で面を喰らっていると申しますか……」
中等部時代、そこまでトウカやサングリーズルの面々と親しかった記憶はない。急に引っ張られて、急にシュッツエンゲルの契りを申し込まれたといった感で、ルイセは返事に困っていた。
「そうなのですか? 聞いた話では、トウカさんはそのつもりで貴方を引き入れたという話でしたが」
「え!? そうなんですか?」
ルイセは驚いた。そんな素振り、全く感じなかった。
……て言いますか、何でユユ様はそんなこと知ってんですかね……? (※祀情報)
「ついでに言えば、貞花さんはそのつもりで絆奈さんを引き入れたとか」
「え!? そうなのか?」
マイは驚いた。そんな素振り、全然見せていなかった。
「……いやいや! マジでアイツ、マイに相談せずにシルトを決めるのかよ! オイ、私たちは戦友だとか何とか言った癖して酷いじゃないか!」
予想外の場所でマイはショックを受けていた。
「貴方と貞花さん、そんなに仲が良かった記憶はありませんが」とユユ。
「御台場以来、ちょっと仲良かった時期もあったんだよ……」
『御台場』とは1年ほど前にあった御台場迎撃戦のことだ。百合ヶ丘女学院、御台場女学校を始めとした関東の1年生を集めた合宿中に起きた大規模な戦闘で、数々の逸話が語られる屈指の激戦だった。
貞花も御台場迎撃戦で共闘しており、戦いの後にお互いを称え合った。まぁ、それだけと言えばそれだけだが、激戦を乗り越えた者同士の絆みたいなものがある……つもりだったのだが。
マイは肩を落とした。
「デュエルバカにありがちなんだが、一期一会みたいな感じで、戦いが終わったら関係が切れるんだよな……。御台場の第5部隊とか、学外で連絡先知ってんの
なお、マイは御台場迎撃戦の第5部隊、千香瑠は第3部隊、楪は第1部隊、ちなみにユユも第1部隊だった。
「まぁまぁ。
「そういう問題じゃなくて、マイに相談してほしかったの! ……というか、ユユもマイに相談してくれなかったし……」
フォローしようとしたら藪蛇だった。
「マイ様……もしかして人望がないんですか?」とタヅサ。
「うるせー! マイの知り合いはみんなそんな奴らなの!」
……知り合いにそういう人間しかいないのはやはり人望がないからではないだろうか。
ぎゃーぎゃーと騒ぐマイを見ながら……。やはり、マイ様を一人にできない。しばらくレギオンに入るのは止めておこう。
そう固く決心するタヅサであった。
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「あれ、お姉さまですか?」
変に白熱した空気の4人に話しかけたのはリリだった。
リリの登場でマイは口を止めた。これ幸いとユユは話題を逸らした。
「リリ。どこに行っていたのですか? 探しましたよ」
「探していただいていたんですか!? ごめんなさい、私もお姉さまを探してて……」
そもそも、ユユは『リリが森に入った』という情報を受けてそこを探していた、という経緯があった。
まぁ、そうと言ってくれたらマイも、『リリはカフェテリアに行った』と教えられたのだが……。
「というか、携帯で連絡を取ればいいだろ?」
「あ、マイ様。タヅサさんにルイセさんも! 皆さん、さっきぶりですね!」
返事もそこそこに、えへへ、とリリは楽しそうに笑った。何となく、それぞれ繋がりの違う友達が揃うと嬉しい気持ちになる。なぜだろうか。
ちなみにリリは機械音痴とは言わないが、あまり携帯は使わない。コミュニケーションは対面で行うというこだわりがあるのだった。
「それにしても、お二人ともお互いを探してたんですか。やっぱ仲がいいじゃねぇですか」
ルイセは
「ルイセさん、ありがとうございます! えへへ、お姉さま、少し恥ずかしいですね?」
「リリさん、これは皮肉というものですよ」
ユユは努めて冷静に返した。
「……それで、私に何の用だったのです?」
「あ、はい。実は、講義が振り替えになったので、空いた時間でご指導いただけないかと思いまして」
ユユは、はて、今はどれくらいの時間だったかと思い返した。タヅサが時計を確認すると、殆ど講義の時間は終わっていた。
「……もしかして、今までずっと探していたのか?」とタヅサ。
「いえ、まぁ……寄り道もしたけど、はい」
よく1時間以上、人探しに費やせるものだなと変に感心してしまった。
「それを言うならユユもだろ。リリに何の用事だったんだ?」
マイに話を向けられ、ユユは答えに詰まった。
用事など特になかった。単にリリが一人森の中に入っていくと聞いて心配になった(という
「あれ、ユユ様とマイ様じゃないですか……ってリリさん!? ルイセさんとタヅサさんまで……」
ユユが答えあぐねていると、丁度フミが声を掛けてきた。後ろには楓、シェンリン、ユージアまでいる。
フミと楓はタヅサに話を聞いてカフェに行ったのだが、そこでリリと入れ違いとなり、折角なので全員でリリを探しに向かったのだった。
「貴方、まだこんなところで油を売っていたんですか?」とシェンリン。
「いいじゃねぇですか。今夜には発つんですから、今くらいゆっくりさせてくださいよ」
「え? ルイセさん、また遠征なんですか?」
「そうなんですよ。全く、レギオン遣いの荒いガーデンですよ」
「……ルイセ。帰ってきたら、一緒にカフェでお茶しよう!」とユージア。
「もちろんいいですが……何で死亡フラグ風なんですか?」とルイセ。
「死んでも死なないような顔をして何を」とシェンリン。「オマエは良い奴だった」とタヅサ。「とりあえず
「誰か私を心配してくれねぇんですか!?」
ルイセは吠えた。
「前情報ではかなり温い戦いなのでしょう?」と楓。
「温いと言うのはアールヴヘイムの新潟遠征と比べて、ですよ。アルトラ級はもとより、ギガント級がわんさかいますよ」
「でも、ルイセさんならできるって信じてます!」とリリ。
「ありがたいですが、この期に及んではリリの純粋さすら裏を感じますよ……」
「何じゃ。お主らなら楽勝じゃろうが」とミリアム。
「オマエはどっから出てきたんですか!?」
いつの間にかちんちくりんがひょっこり生えていた。
「て言いますか、死闘に行く相手にその扱いはひでぇですよ。精神ガタガタになったらどうしてくれるんですか」
リリィは精神状態が戦力に直結する。遠征直前に休養が入っているのもそれが理由となっている。
「でも、出撃直前に滅茶苦茶優しくされるのも嫌ではありませんか?」(楓)
「あー、何か自分だけ知らない真実がありそうで不安になりますね……」(フミ)
「確かに、それはそれで嫌ですが……」
それでもルイセが反論しようとしたその時、シェンリンは静かに人差し指を立てた。
「貴方はここで死ぬようなリリィではない。皆さんそう信じているのです」
急にシェンリンが通る声で言った。
ルイセは背筋が伸びる気がした。シェンリンにそう言われると、胸が詰まり何も言えなくなる。
「そうじゃ」(ミリアム)「そうそう」(タヅサ)「そうです」(フミ)
「オイ! テメェらは信用なんねぇんですよ!!」
感動が台無しだった。
「不快に思われたらごめんなさい。本当に、地獄行きはトウカさんだけで結構ですので」とユユ。
「いえ、あの……トウカ様って嫌われてんですか……?」
「いや、ツッコんでくれるから弄りやすかったんだよ。オマエと
ルイセは苦い顔をした。マイたちには、ルイセのキャラクターは既にお見通しのようだった。
「私、信じてる……。ルイセは元気に帰ってくるって」(ユージア)
「だから何で死亡フラグ風なんです?」
「私、ルイセさんが帰ってくるのを待ってるからね?」(リリ)
「何でリリまで死亡フラグ風なんですか!」
「違いますわ。『私……きっと待ってるから……!』ですわ!」(楓)
「それはガチの死亡フラグじゃねぇですか!」
「無事帰ったらパーティを開きましょう」(シェンリン)「帰ったら大事な話がある」(タヅサ)「ルイセ……行くのか?」(ミリアム)「ルイセさん……取材させてくれるって、そう約束しましたよね?!」(フミ)「止めろ! 一番辛いのはルイセなんだぞ……!」(マイ)「そうよ、ルイセさんはきっと帰ってくる……そう信じましょう?」(ユユ)
「おい、オマエら!! 私を殺すなですよ!!」
怒りの余り、先輩込みで『オマエら』呼びをするルイセであった。
「遠征! リリィの死地! ギガント級一杯! 縁起でもねぇですよ!!」
若干、片言になりつつルイセは叫び声をあげた。
「知っとるか? 死亡フラグはあまりに立てすぎると逆に折れるらしいぞ?」
ミリアムの言葉に、(反論が思い付かず)少しクールダウンする。
「……何ですか。では皆さんは、死亡フラグっぽくなったユージアの言葉を気にして、あえて死亡フラグを立てたということですか?」
「そうじゃ」とミリアム。「そうそう」とタヅサ。「そうです」(フミ)「そうですよ」(シェンリン)「そうだよ」「そうですわ」「そうだよ?」「そうだぞ」「その通りです」
「テメェら、マジ信用できねぇんですけど……」
妙に連帯感があるのも信用できない。
「ここは素直にありがとうと言うところですわ!」と楓。
盗人猛々しいとはこのことですよ……!
何と言うか、ルイセはツッコむのも疲れてきた。
「まぁ、オマエららしいですが、出撃前なのでもう少し労ってほしかったですね……」
「出撃前はいつも通りが一番だぞ。ルーティーンって奴だな」とマイ。
まぁ、一癖も二癖もある奴らなので、素直に応援されるとは思っていなかったが。
「騒がしくしてごめんね? みんな、本当は応援してると思うから……」(リリ)
「やっぱオマエが隊の良心ですよ……」
「真面目な話、帰ったらルイセの話、聞かせてくれよ」(タヅサ)
「ようやく話せましたからね。オマエこそ忘れないでくださいよ?」
「ちょっと! 私との約束も忘れないでくださいよ!」(フミ)
「フミこそ帰ってくるまで無事でいてくださいよ? むしろ任務よりオマエの方が不安なくらいですよ……」
「ルイセさん、貴方の話は私の耳にも届いていますよ。自信をお持ちなさい。練習では最悪を想定しますが、実戦では最高をイメージするのです。貴方ならできると信じていますよ」(ユユ)
「もったいないお言葉です。必ず働きで証明してみせましょう」
「本当にラムネパーティの用意をして差し上げますよ。貴方、友達が少なそうですから」(シェンリン)
「一言余計なんですよ! て言いますか、シェンリンがそれ言いますか……?」
「身体にはお気を付けくださいね。
「何と言うか……普通に気遣われると面映ゆいものですね……」
「チャームならいくらでもボロボロにしてきて構わぬぞ。わし手ずから直して進ぜよう」(ミリアム)
「まぁ、オマエの腕は本物ですからね。頼りにさせてもらいますよ」
「ルイセは、強いリリィだよ。本当に強いリリィしか、本当に優しくなれないから……。だから、ルイセは絶対に負けないよ」(ユージア)
「あぁ……そうですね……」
急にルイセは弱々しい声を出した。
「ルイセさん……?」(リリ)「えっと、どうされたんですか、ルイセさん?」(フミ)「オイ、大丈夫か?」(マイ)
ルイセはもじもじとしながら、か細い声をあげた。
「な、なんか、手厚く送り出されると……今から死地に向かうみたいで……すごく恐くなってきたんですが……」
「……やっぱり慣れないことはするもんじゃないだろ?」とマイ。
「それでは、もう一度最初からやり直しましょう」とシェンリン。
「いや、そんな器用なことできるわけ」「……ルイセ。帰ってきたら、一緒にカフェでお茶しよう!」「いや、できるんですか!?」
「死んでも死なないような顔をして何を」とシェンリン。「オマエは良い奴だった」とタヅサ。「とりあえず
「やっぱ誰も私を心配してねぇじゃねぇですか!?」
改めて思い返して気付いてしまった。
「知っとるか? 死亡フラグはあまりに立てすぎると逆に折れるらしいぞ?」「貴方はここで死ぬようなリリィではない」「騒がしくしてごめんね? みんな、本当は応援してると思うから……」「ルイセは、強いリリィだよ」
「オマエらのそれも一切信用できなくなりましたよ!!」
「出撃前はいつも通りが一番だぞ。ルーティーンって奴だな」
「こんなルーティーンがあってたまりますか!!」
ルイセは全力で叫んだ。
それが呼び水となったように、強風が吹く。風に乗って、どこからともなく白い花びらが飛んでくる。
ルイセの不安も恐怖も出撃前のモヤモヤも、全部花びらと一緒に吹き飛ばされて消えていった。
ただ、一同への信頼も同時に吹き飛んで消えたような気がするルイセだった。